「キュウレンジャーに遅れを取った。そうだなエリードロン? 反逆者キュウレンジャーを抹殺せよ」(Space.1)
「キュウレンジャーよ、チキュウと共に消えるがよい!!」(Space.21)
データ
役職 | ショーグン |
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出身 | 宇宙 |
身長 | 198cm(ヒカエオロー身長:68.3m) |
体重 | 178kg(ヒカエオロー体重:614.1t) |
装備 | ダークサイズ |
分類 | 宇宙思念体 |
CV | 谷昌樹 |
スーツアクター | 藤田洋平、清家利一(Space.29以降) |
概要
88星座系を支配する宇宙幕府ジャークマターの頂点に立つショーグン(首領)。
無数にいる配下を統率して来た宇宙のドン。
姿が覆い被さる程のローブを着ており、素顔を確認することができない。
そのため、人によってはかの有名なシスの暗黒卿を思い浮かべた人もいるかもしれない(HPを見ると黒い体色をした怪物のような見た目であるのがわかる)。
エリードロンを含むカローにも正体を知られていない謎の存在だが、立体映像でありながらエリードロンを吹き飛ばす程の衝撃波を放てたり、ヒューマノイド型宇宙人であるスコルピオを怪人化させる等、その力は事実上全宇宙の頂点に立つショーグンの名に恥じない相当な物。
一方、物語開始の段階では事実上、“この宇宙で最も巨大な力を振るう存在”と言うイメージだけが先行していて、アルマゲ自身の実力やパーソナリティ等は一切不明になった状態である。
言い換えるなら、宇宙の人々が恐れているのはアルマゲその物ではなくジャークマターの強大さであり、アルマゲ当人はその象徴=偶像でしかない。しかし、その矛盾を巨大な力の誇示で黙殺しているのが、アルマゲとジャークマターの根幹的な実情でもある。
支配体制
物語開始の時点で全宇宙のほぼ全てを支配しているという、過去の戦隊に登場した敵組織達が霞む程の凄まじい規模と実績を有するジャークマターだが、全宇宙の支配が目的だと仮定すればその組織体制も残酷さを感じる程に合理的な物となっている。
以下の文はそれを具体的に説明する物であり、長期的な計画を練る事が得意だったと言うドン・アルマゲ(の協力者)に対するツルギの評価を裏付けている。
理に適った侵略手順
組織の主な活動目的である、惑星の大まかな侵略手順は以下の三段階になっている模様。
- 第一段階:カロー率いる侵略部隊の武力制圧
ドン・アルマゲ直属であるカローが指揮する侵略部隊が対象の惑星に攻め込み、圧倒的な武力で蹂躙。抵抗勢力がいれば徹底的に壊滅へ追い込み、惑星の住民の精神をへし折る。
- 第二段階:派遣されたダイカーンによる圧政
支配惑星を管理するため派遣されたダイカーンは、後述するプラネジューム採取に関する仕事をこなしていれば支配場所で何をしても構わない。即ち自身の欲望のために統治の名目で住民をこき使うことが容認されており、それにより住民の心身を疲弊させてジャークマターへの反抗心を摘み取る。
- 第三段階:モライマーズによるプラネジュームの収奪
片手間次いでに圧政を敷くダイカーンだが、その目的は第一に、預けられたモライマーズによる支配した惑星のプラネジューム採取を邪魔されないようにするため。そしてそれが完了、プラネジュームを収奪された星は自壊・爆発して滅んでしまう。そしてこの段階に到り、とうとう自分達の星まで失ってしまった住民は最早ジャークマターへ反抗する気すら失せていることだろう。
全宇宙を未来永劫支配し続けようと考えている勢力に取って、常につきまとう懸念は反乱分子の出現や台頭であるが、この侵略方法は最初から最後まで支配対象を虐げ、精神を挫き続けることで反乱を未然に防ぐやり方のため、長期的に見ればかなり理へ適っている。
内部崩壊の起き難い人事運用
全宇宙に比肩する物の無い規模と戦力を誇るジャークマターでも、所詮それを行使する連中には個々に思想や意志がある。それを完全にコントロール出来なければ独裁体制な組織の内部崩壊に繋がりかねないが、ドン・アルマゲはそれを最小限の労力かつ無理のない方法で実現している。
- 疑似生命体にも出世の可能性を示す完全実力主義
下級兵士であるインダベーやツヨインダベーは、戦闘用にジャークマターが大量製造した疑似生命体である。だが彼等にも個々の意思がある故、製造時に小細工(忠誠心の刷り込み等)をしても扱いが悪ければ反逆、その膨大な数で組織に大きな被害をもたらす可能性を持つ。それを防ぐ為、組織内で実績を積めばそれ相応の階級に昇格出来るジャークマターの実力主義な昇進制度が下級の疑似生命体達にも適用されている。
劇中で度々出て来るダイカーンの位に伸し上がったツヨインダベー達の存在がその証拠であり、それに憧れ自分達も同じ風に出世しようとする形で他のツヨインダベーやインダベーもジャークマターに帰属。結果的に上からの待遇が多少悪くとも離反する気は起こらない位のスタンスが下級兵士間に広まり、些細なことでは一斉謀反が起こり難い空気となっている。
- 圧政を『させる』事でのダイカーン達の飼い殺し
侵略手順の第二段階を読んで察した人もいるだろうが、ダイカーン達の支配惑星での圧政を容認するのは支配層で最も数が多い故、忠誠心にバラツキがある(時と場合によっては反旗を翻す可能性も)であろう連中達を手っ取り早く手懐ける手段でもある。だがこれは同時に、ダイカーンとなった宇宙人達を圧政に酔いしれ『させる』ことで堕落させ、ジャークマターに謀反を起こす気をなくさせ当人達の武力を衰えさせる一石二鳥どころか三鳥のメリットがある。
実際ダイカーンの中には使い様によってはジャークマターの脅威になりかねない能力を持った者が少なくないのだが、そうした連中はことごとく圧政により実現した自らの欲望に溺れており、そのせいで少人数で挑んでくるキュウレンジャーにアッサリ倒され戦死する程度まで戦闘能力が低下している。一方で結局、一惑星の管理者に過ぎないダイカーン達が多少倒されてもジャークマターは痛くも痒くもないため、そうして実質飼い殺されてしまう。
- 特権を与えられての勅命=厄介者の追放と処分
下層の不満を抑えるために敷かれた実力主義な昇進制度だが、これを昇り詰めてカローとなった者全てがジャークマターに都合が良い訳ではないのは想像の通り。武闘派が過ぎて自らの安全管理が疎かだったり、ショーグンへの下克上を内心で企む者等を放っておけば組織にとっての不安材料となる。
どうやら、そうした連中を波風立てずに処分する方法が“戦死するリスクの高い特別な指令=勅命”を下すことらしく、更に別星系を跨いで活動出来る特権も与えることで支配星系に立て籠もるのも封じている模様。劇中前半に出て来た幹部格はこの扱いを下されているようで、それと対決して撃破して来たキュウレンジャーはまんまとジャークマターにとっての厄介者を処分する役をさせられていたこととなる。
また勅命を下されたカローに対し、アルマゲの命令の元宇宙を飛び回るショーグンの刺客や独立部隊は、内乱の火種になり得る個の武力が優れた者を力を付けた反抗勢力へぶつけて互いに潰し合わせる、厄介払いを兼ねた汚れ役の地位でもある様子。
結局、ドン・アルマゲが恐怖を持って自らの都合を自身以外の他者へ押し付けるためにジャークマターは存在している。それはドン・アルマゲ以外のジャークマター構成員とて同じであり、一見傘下へ与した者には寛容な人事運用であってもその背後にはドン・アルマゲからの恐怖があるのが伝わって来る。
支配体制の本当の意味
最初に書いたように上記の考察はドン・アルマゲが全宇宙の支配を目的としているという仮定に依る物であり、実際にジャークマターの構成員はその多くが全宇宙の支配が目的だと考えているが、ドン・アルマゲにとって全宇宙の支配はただの手段である。
ドン・アルマゲの目的は矛盾に満ち溢れた今の宇宙を破壊し、そこに住む全ての生命を新しい宇宙へと転生させて強制的に救済することにある。
- 理に叶った侵略手順の実態
未来永劫の支配など最初から考えておらず、支配が手段に過ぎないからこそ強固かつ合理的な侵略・支配体制が必要とされる。
合理的な侵略・支配システムは一日も早く救済を実行する、言い換えれば一日も早く宇宙を滅ぼすためのシステムであり、それがたまたま未来永劫の支配に都合のよいシステムでもあったに過ぎない。
- 内部崩壊の起き難い人事運用の実態
来世での救済という絵に描いた餅では、人はついて来ない。ましてや救済の方法が今ある宇宙を滅ぼす等と言う物ならついてくる方がおかしい。
そこで、救済の為の方便として部下の好き勝手を許す風土を作り上げているのであり、飼い殺しは結果論に過ぎない。
ジャークマターの全ては、ドン・アルマゲの掌で転がされているに過ぎないのだ。……そしてそれは、アルマゲの代わりにここまでの支配体制を一から考え実践して来た協力者(※その経歴上、組織としてのジャークマターに最も貢献した事実上のトップになる)も例外ではなかった。
主な経歴
- Space.4
キュウレンジャーが惑星チキュウへ向かったことを知り、チキュウにある何かしらの秘密を知っているのか、「あの星の秘密を知られてはならん、必ずキュウレンジャーを抹殺しろ」とエリードロンに厳命した。
- Space.8
チキュウに派遣されたイカーゲンとマーダッコに対し「宇宙は誰の物だ?」「チキュウは誰の物だ?」と問い、自身の物であると改めて確かめ、キュウレンジャー殲滅を下知している。
- Space.15
スコルピオにキュウレンジャーの抹殺を再度命じ、モライマーズの大艦隊を指揮しチキュウに残った全てのプラネジュームを速やかに搾取する様命令。
しかし特殊ではある物の、宇宙全土からすれば辺境の一惑星に過ぎないチキュウの破壊に力を入れようとするその姿勢から「焦っているのか?」とスコルピオに内心疑念を抱かれている。
- Space.21
「スコルピオ、少しは役に立つと思ったが。 …全モライマーズを起動せよ!!」
スコルピオがキュウレンジャーに敗れると同時に、キュウレンジャーの前に立体映像越しに初めて姿を現し、マーダッコを介してチキュウ上のモライマーズをすべて起動させた上でキュウレンジャーの目前に巨大光弾を射出、自らの手で始末しようとする。
しかしスコルピオがキュウレンジャーを庇ったことで失敗し、彼等がアルゴキュータマより呼び出したアルゴ船から目覚めたホウオウソルジャーに中核であるビッグモライマーズを撃滅されたことでモライマーズ大艦隊も一斉に停止・沈黙、チキュウの破壊は阻止された。
浮かび上がった謎
- Space.22
なんと300年前にホウオウソルジャー=鳳ツルギによって倒されたと言う衝撃的な事実がツルギ本人の口から判明した。
しかし何故か生き延びており、その事実を隠すために歴史改竄を行なっていると推察される。つまりチキュウの滅亡を急いでいたのも、そこに眠る自身の天敵を排除するために他ならなかったのだ。
またツルギからそのことを聞かされたマナビルの様子からして、ジャークマターの関係者であってもその情報は極秘にされているようだ。
同話でスコルピオの敗北、大部隊の全滅を機に「フクショーグン」と呼ばれる最高幹部3名を召集し、今度こそ完全にツルギを抹殺しようと彼等に命令を下した。
- Space.24
テッチュウとギャブラーの猛攻で劣勢に陥ったツルギとラッキーの前に姿を現し、恐れていた彼がもはや自分の脅威たりうる存在ではなくなったと判断。勝てていた筈のテッチュウ達を「いつでも止めを刺せるから」と一時撤退させるという余裕を見せつける。
自身が何故死んでないのかと問われたが、答えはせず「思い上がるな!貴様は無駄に不死身の力と仲間の命を失っただけに過ぎん!」とツルギを愚弄して消えていった。
明かされたローブの下の姿(Space.29、30)
やはり現在のアルマゲの言うとおり、88星座の戦士が激闘の末に倒した過去のアルマゲは虚影に過ぎず、激闘の後も生き延びていた。
Space.29の舞台である333年前の世界(チキュウ)で、ラッキー達とオライオンに次々倒されていくフクショーグン達。
最後の一人になったククルーガが追い詰められた時、いつもの巨大なホログラムで出現。
そこにラッキー達のオールスタークラッシュが加えられ倒されたかに見えたが…。
爆風と煙の向こうから小さな黒い光弾をラッキーに向かって放つ不意討ちで反撃。
気付いた時には後ろで爆発が起こり、あまりに一瞬の事で状況を理解できなかったラッキーだが、腹部に貫通した光弾で重傷を負ってしまい、倒れ込んでしまった。
突然の事態に動揺するキュウレンジャーの元へと歩きながらローブを纏った等身大の姿で現れ、ローブを脱ぎ捨て、ついに真の姿を現した。
「さぁ、次はどいつだ?」
脳味噌や骨を彷彿とさせる部位がある黒い身体、悪魔の様な巨大な翼、全てを制圧するかの様な視線を感じる複数の黄色い眼……。
その姿はまさに「ショーグン」と呼ぶにふさわしい、禍々しく邪悪な姿であった。
能力
自らの背丈程もある大鎌『ダークサイズ』を武器に振るい、掌から光線を撃ったり漆黒の雷を生み出して敵へ降り注がせる、身体をガス状に変えての連続体当たりでオリオン号を撃墜する等、その戦闘力は規格外。
更に特筆すべき点として、死者を蘇生したり巨大化させる能力を持つ。これはアルマゲ自身にも有効であり、キョダインロウの機能『ヒカエオロー』はこの能力を機械的に再現した物だった様である。
これら多彩な能力の本質は、“膨大なエネルギー(プラネジューム)を自由自在に操れる”と言う物で、十分なエネルギーを確保できるなら後はアルマゲの発想やセンス次第でいかなることも実行可能なほぼ全能に等しい能力と言える。
逆を言うと、操るエネルギーは使ったら当然減るため、相当量のエネルギーを補充し続けられなければ能力その物が回らなくなる制約も抱えている。そして、この時代のアルマゲは自力でエネルギーを補充する手段を有していなかったようで、エネルギーを略奪する目的でジャークマターを動かし全宇宙への侵略を行っていたと推測される。
活躍(Space.30)
ラッキーを瀕死状態にしたことで激昂し向かって来たキュウレンジャーを軽く返り討ち。
そのまま仕留めようとしたがオライオンが我が身を顧みず全力で自身の攻撃を防いだため、その隙にツルギがホウオウボイジャーを召喚、撤退されてしまう。
しかし消耗が著しいキュウレンジャーが遠くへ逃げられる訳も無いので、すぐに居場所を突き止めククルーガを差し向ける。
それでもまだ抵抗して来たため、一旦ククルーガを引かせた上で自身も合流。今度こそ止めを刺そうと進軍した先で、ツルギがラッキーを蘇生する時間を稼ごうとするキュウレンジャー3人とオライオンが立ちはだかる。
何度も奇跡を起こして来たラッキーの復活を信じるキュウレンジャー達を見て「ハッハッハ!もはや奇跡にすがることしかできんか?」と見下しつつ規格外の戦闘力を発揮、変身解除させ地面へ倒れ伏させる。
だが止めを刺そうとした本当にギリギリの所で復活したラッキーが割り込み、それで士気を取り戻したオライオンとラッキーが心をシンクロさせた時、自らの血筋によりシシ座とオリオン座の力を併せ持つラッキーに反応しサイコーキュータマが出現。それを使いラッキーが変身した最高の救世主・シシレッドオリオンの誕生を目撃する。
これに対し一足早く攻撃したククルーガがアッサリ返り討ちにされたのを見て脅威を感じ、直前に倒れたククルーガ含めたフクショーグン3人を巨大化させることで他のキュウレンジャーを引き離した上で交戦。しかし瞬間移動や空間操作、キューザウェポン等を駆使して戦う相手へ翻弄、圧倒されてしまう。
そして最後はオールスターギャラクシー「インフィニッシュブラスト」を喰らい、「この私が負けるだとォ!!?」と自身の敗北を認められない断末魔を残して爆散した。
そして力尽きたオライオンを埋葬、彼の代わりに宇宙中へ伝説を広める行動を取ることにしたショウ司令とチャンプを残したキュウレンジャーは現在へ帰還。
しかしそこでラッキー達を待っていたのは、ダークナーガを連れたフクショーグンや生きて健在のローブ姿のアルマゲが映った数多の映像であり、過去への出発前とまるで変わっていない状況だった……。
未だ続く暗躍(Space.32~40)
Space.31でダークナーガを擁した作戦が失敗、というアキャンバーの報告を受け、残っている全宇宙のカローに対し「キュウレンジャー全員を倒した者にフクショーグンの地位を与える」と通達した。
ナーガ曰く現時点の彼の潜伏先は「ミナミジュウジ座……らへん」らしく、後にケンビキョウキュータマの力で再びナーガの脳内に侵入したバランスによって、その場所がミナミジュウジ座系の中心部の惑星・サザンクロスだと発覚している。
Space.35にてクジャク座系惑星ピコークでホシ★ミナトの左肩に乗ったマスコットの姿に化けていたが、ハミィの使ったエリダヌスキュータマの力で姿が見えてしまい、三度姿を現す。
近くにいたにも拘らずキュウレンジャーの侵入を許したアキャンバーに対し「使えない奴だ。この場で消されたくなかったら、分かっているだろうな?」と完全に信頼をなくした彼女を脅迫し、自身は自力でヒカエオローを行って巨大化。オリオンバトラー・ギガントホウオーと交戦の末、オリオンバトラーのオリオン砲を喰らってからのスペースロボの猛攻に敗れ、「無駄だ…!全て無駄なのだッ…!!」との捨て台詞を残し爆散した。
また、倒される間際に「しかし、たとえこの私を倒せても、貴様等に私の命は奪えん!」と挑発するが、この一言によってラッキーとツルギに不死身のカラクリを見抜かれてしまう。
目の前にいるドン・アルマゲ、そして過去で2度に渡って倒したドン・アルマゲは、実は同じ能力と記憶と思考を共有しながら、全宇宙に無数に存在するドン・アルマゲの中の一体に過ぎなかったのである(※恐らくはSpace.30の巨大フクショーグンを繰り出したのと似た要領で、十分なエネルギーさえあれば自らの分身をいくらでも作り出せるのだろう)。
しかもこの回で倒したドン・アルマゲは、用意周到なことに全宇宙No.1タレント・ホシ★ミナトを依代とし、陰ながら全宇宙の人々を洗脳していたのだった。
ラッキーとツルギによってこのドン・アルマゲは倒されたものの、ジャークマターを倒す方法が「宇宙全体に無数に存在するアルマゲを全て倒す」という、それは単純ながらも予想以上に困難なものであることを意味していた。
しかしながら「ホシ★ミナトを操っていた個体が過去で戦った個体と比べてあまりにも手応えがなさ過ぎた」というツルギの疑問から、スティンガーは「今まで戦ったドン・アルマゲは分身で、どこかにいる本物を倒せば全てが終わる」と推測している。
この一筋の希望を確かめるべくキュウレンジャーは惑星サザンクロスに向かうことになるが、ミナミジュウジ座には全体にバリアが張り巡らされていると判明。
ツルギによると333年前にカシオペア座・ケフェウス座・アンドロメダ座・ペルセウス座の戦士がバリアを破った所を目撃しており、その術を再現できれば突破が可能とのこと。
一行は既に所持しているアンドロメダキュータマ以外のキュータマを確保するべく、まずはそれぞれケフェウス座とペルセウス座へと向かうことになった。
アルマゲもどこからかその情報を聞きつけ(※思えばこれも伏線の一つだったのか)、Space.38でケフェウス座系・カシオペア座系それぞれのカローや、ペルセウス座系惑星ゲムにいたアントン博士、そして彼に強化改造を施されペルセウス座系カローに昇進したメカマーダッコにかつてのローブ姿のホログラムで現れ、バリア破壊を阻止する様に命じた。
その目的と、隠された姿…?(Space.41~43)
しかしカロー達はことごとく撃破された後、Space.41でついにミナミジュウジ座へと辿り着いたキュウレンジャーによってバリアは破壊され、サザンクロスへの突入を許してしまう。
これに対しアルマゲはククルーガが殺したと思われていたアスランに(分身の一体が)取り憑き、ジャークマター最凶の戦士・『ドン・アスラン』として差し向けキュウレンジャー、特にラッキーを精神的に追い込んで抹殺しようと目論む。
その一方でSpace.42終盤~43では、ツルギに対しメカマーダッコを通して「二人だけで話がしたい」と言って自身の下に招き寄せ、彼に宇宙を消滅させ、一から作り直すという真の目的を伝える。
「色んな肉体に取り憑き続けて生きることを不死身って言うなら、愚かだな。宇宙が消えてなくなる。すなわち取り憑く肉体もない。すなわち、貴様も消えるということだ」とツルギに指摘されるが、
「ツルギ、君に僕の考えは分からないよ」
「僕が何故、君をここに呼んだか…僕の本当の姿を見せたかったからだよ!」
といい、ツルギにのみ自身の正体を明かした(※)。
その後、ラッキーに敗れ洗脳が解けたアスランから放出された邪気から出現。
アルマゲの真の目的を聞き動揺するメカマーダッコに「奴らを倒せば、お前だけは助けてやる」とダークサイズを向けて脅し、彼女と共にキュウレンジャーと交戦。
メカマーダッコを盾にしてキュウレンジャーの攻撃を防ぎ交戦するも、これまでに力を少しずつ蓄え続けていたキュウレンジャーに追い詰められてしまう。
ダークサイズから電撃を放って抵抗するもアスランが投げた剣が腕にあたり、ダークサイズを手放した隙を突かれインフィニッシュブラスト・オールスタークラッシュ・フェニックスエンドの同時攻撃を受けてメカマーダッコと共に敗北。
消滅と同時に「ただでは死なぬ!!」とアスランを始末するべくレーザーを放つが、あっさり避けられてしまう。
それもそのはず…アルマゲの真の狙いはアスランの後ろにあったブラックホール発生装置で、アスランが避けたら発生装置に当たるようにレーザーを撃っていたのだ。
装置は自動制御を破壊されただけで作動自体には問題がなかった物の、手動になったために作動させるとブラックホール発生と同時に作動者が飲み込まれて帰ってこれないというリスクが出来てしまったが、アスランが自ら犠牲となって装置を作動させたことで宇宙消滅は免れた。
この時点でまだアルマゲは生きており、「これで私の野望が終わったと思うな。束の間の勝利を味わうがいい…」とジャークマターの恐怖はまだ終わらないことをキュウレンジャーに再認識させた。
(※)この時は一人称が「私」ではなく「僕」となっており、声も少し青年の様な声に変わった他、宿敵の筈のツルギに対して「君」と呼びかけている。
本体は眩い光に包まれていて分からなかったが、背中から黒い6つの翼を広げており、その姿を見たツルギは「なんてこった…」と衝撃を受けていた。
明かされるその正体、そして…(Space.44~)
Space.44では(前述の真の目的を知って我が身を案じたためか)ほとんどのカローやダイカーンがジャークマターから離反する中、超弩級サイズのビッグモライマーズヘと潜伏する。1人だけ離反する事なく仕えるアントン博士が開発した新型プラネジューム爆弾(黒いモライマーズから吸い上げたプラネジュームのエネルギーを『ダークプラネジューム』に変化させ、少量でも惑星が滅ぼせる威力を持たせた)の実験用にカラス座系の惑星を提供し、次々と爆発させていた。
そしてカラス座系の最後の惑星・ベローナでモライマーズを破壊しようとするキュウレンジャーを襲撃し、ツルギに対し前話でも垣間見せた青年風の声で「ツルギ。僕の正体、ちゃんと伝えてくれたかい?」と自分の正体をラッキー達に教えたかを確認。
そこでツルギが自分の正体を誰にも言わず胸の中にしまっていたことを確認した上で、キュウレンジャー全員の前で本当の正体を現した………
ツルギ「信じたくなかった。すなわち、今のドン・アルマゲは…“俺様の知っている男”だ」
Space.45では、他者が知るアルマゲは黒幕によって作り出された分身であったことが判明。
黒幕がいればキュウレンジャーに倒されても何度でも作り出す事ができるため、アルマゲが現代でも生きているというトリックを仕掛けることが可能となっていた。分身のアルマゲは支配をより長期化させるための影武者に過ぎなかったのだ。
本当の目的(Space.46以降のネタバレ注意)
Space.46で、キュウレンジャーはチキュウに刺さった超弩級ビッグモライマーズを破壊、更には黒幕も撃破したことでアルマゲの手から宇宙を救い、長い激闘を制し安堵するキュウレンジャー。
しかし…
「救われた? 愚かな! 本当の地獄はこれからだ!」
なんと撃破したと思われたドン・アルマゲは黒幕の身から脱出、しぶとく生き延びており、今度はホウオウキュータマの力によって不死身の力を持つ男、すなわちツルギに乗り移る。
アルマゲの真の目的は鳳ツルギの肉体を手に入れ、今まで掻き集めたプラネジュームを取り込んで不死身の肉体を再度得ることで、全宇宙の支配者に君臨すること。
ジャークマターという組織はアルマゲの個人的願望を達成するために作り上げたに過ぎず、アルマゲの中に潜む黒幕と思われた人物も、ツルギを誘き寄せるために用意した捨て石だったのだ。
「俺様は鳳ツルギ、すなわち…ドン・アルマゲ。俺様は最強の身体を手に入れた」
ツルギの肉体を取り込んだアルマゲはドン・ツルギに変貌、キュウレンジャーに向かってプラネジュームを掻き集めて作り出した光線を放ち、ラッキー達を庇ったショウ司令を取り込み自身の肉体の一部に変えてしまう。
そしてようやく必要な物を手にしたドン・ツルギ=アルマゲは自身の目的を実行に移すべく、チキュウのとある場所へ移動。Space.47で膨大な量のプラネジュームを99時間掛けて取り込む事でかつて失った肉体を再生、不死身になろうとする。
そしてプラネジュームとは全宇宙にある命を構成するエネルギーでもある為、アルマゲが完全に甦れば全宇宙の命がアルマゲに飲み込まれて“支配”されてしまう最悪の未来が現実の物になろうとしていた。
これに対し、ツルギとショウ司令を失いながらもラッキーを中心に団結したキュウレンジャー10人はアルマゲがプラネジュームを摂取している場所へ乗り込もうとする。しかしアルマゲもジャークマターの全戦力を投入して対抗、強くとも数える数しかいないキュウレンジャーを消耗させ次々に戦闘不能へ追い込んで行く。
やがてキュウレンジャーで行動可能なのはラッキー1人になったのに対し、アルマゲは既にプラネジュームを摂取し終えて完全な肉体を取り戻した状態に。更にはハミィや別の場所で戦闘不能になっていた他のキュウレンジャーをプラネジュームとして体内に吸収してしまう(※描写されていないが、この時にジャークマターの大軍隊も用済みとして吸収された模様)。
だがここまでの流れはラッキーの想定通り。彼はドン・ツルギがショウ司令を取り込んだ際、チェンジキュータマだけはプラネジュームに変えられずそのまま取り込んでいたのを見抜いており、それを利用するべく仲間達をわざと倒させることでアルマゲへと取り込ませてその体内にいたツルギやショウ司令と合流、仲間達が持つ物とドン・ツルギの体表に埋め込んだ自分の物を合わせたチェンジキュータマ12個を介してアルマゲ体内のプラネジュームを反転。そのパワーを流し込んでツルギ達をアルマゲから分離させる作戦を立案して実行していたのだった。
こうして、ラッキーの『生きて勝つ』捨て身の作戦に嵌ったアルマゲは、そのまま内外からのキュウレンジャー12人の攻撃により不死身の力を取り戻して復調したツルギを他のキュウレンジャー諸共吐き出してしまう。
結果ツルギと分離してしまったアルマゲは、長らく依り代としていた人物に似た素体の姿(※背中の羽と頭の兜が消えた借り物感ある外見で、前話で依り代へした仕打ちを考えると皮肉である)となってキュウレンジャーと対峙。
だが、完全復活した際に得た、宇宙にある命をプラネジュームに変えて取り込む能力は健在であり、それで宇宙中の命をプラネジュームに変えて体内へ取り込む事でモライマーズロボを思わせる光背状のパーツ(よく見るとウロボロスの意匠がある)と人型の面が付いた白い兜を身に着けた最終形態へと変貌。
「私は宇宙…宇宙そのものとなった。来い!宇宙に刃向かうとはどういうことか教えてやる‼︎」
12人全員揃ったキュウレンジャーとの最終決戦に突入する。
真の正体と決着(Space.Final)
黒幕が使っていた物と同じ『アルマ剣』を両手に持ち、キュウレンジャーと決戦に挑むが次々と繰り出されるキュウレンジャーの攻撃を立て続けに喰らってしまう。しかし、負った傷を瞬時に修復させて受けたダメージを無効化。更にアルマ剣を交差し放った衝撃波で全員に大ダメージを与えた上、地面にアルマ剣を突き立てて衝撃波を放つ追撃でキュウレンジャーを変身解除に追い込み、全宇宙の生命を取り込んだことで得た凄まじい力をキュウレンジャーに見せつける。
それでも諦めず、自分の運を信じ続けるラッキーを「運か…信じるだけ無駄だ!」と一蹴すると、自身の正体と目的の真意を語り出す。
「私は全宇宙に生きる、最悪な運を持つ者達から生まれた。宇宙の嘆きと苦しみが、私という存在を生み出した!」
「私が支配する宇宙は、さらなる絶望にあふれている!そこから絶え間なく生まれる嘆きと苦しみ、その終わりのない絶望が私に永遠の力を与え続けるのだ!!」
ドン・アルマゲの正体は、一介の宇宙人や生命体ではなく、宇宙中の命が己の無力に打ちひしがれた時に発した嘆きと苦しみが集合して誕生した思念体。端的に言ってしまえば「全宇宙の絶望の化身」「アンラッキーの塊」とでもいえる存在である。
その特性上常に嘆きと苦しみを吸収し続けなければ存在が維持できなかった(ジャークマターが圧制を行ったのもこれが理由と推測できる)ため、宇宙中の命をプラネジュームに変えて自らの体内に吸収、その中で永久に嘆き苦しませることで自身の存在を永久に維持、かつ更なる成長を遂げることを目論んでいたのだ。
そして直後、「聞くがいい!我が宇宙の中で嘆き苦しむ、運無き者の声を‼︎ そして絶望するが良い!救世主でありながら宇宙を救えぬ事実を‼︎」と自身の体内へ取り込んだ宇宙中の命が発する嘆きと苦しみの声をキュウレンジャーに聞かせ、その心を絶望でへし折ろうとする。
しかしこれまでに各々の抱えた問題を協力し合って乗り越えて来たキュウレンジャーには効かなかったどころか、その際の反論に宇宙中の命が勇気付けられて希望を抱いたことでアルマゲの体内に満ちていた嘆きと苦しみが薄れて力が弱まってしまい、精神攻撃は跳ね除けられてしまう。
そしてその隙に生身での名乗りと最後のスターチェンジを行ったキュウレンジャーは、プラネジューム化した宇宙中の命から力を貰って一時的にパワーアップ。アルマゲはキューザウェポン等での連続攻撃を受けてしまい、取り込んだプラネジュームを放出しながら彼等に圧倒されてしまう。
そしてその勢いからインフィニッシュブラスト・フェニックスエンド・オールスタークラッシュ(+ドラゴクラッシュ)を合わせた一撃を放たれるがこれをアルマ剣で受け止め撃ち返し、相手側に踏み止まれて押し合いになるも耐え切れず直撃、敗北。
直後に「控えい!控えおろう‼︎私はドン・アルマゲ。貴様等ごときに敗れるはずがないのだ‼︎」とヒカエオローを果たし巨大化、キュータマジンと交戦。
今度は全てのプラネジュームを使い、キュウレンジャーを倒して自身が宇宙だと証明させようと渾身のビームを放つも、キュータマジンもキューエナジーの大出力ビームを放って相殺、再び押し合いに。
今度は自身の方が優勢だったが、それでも諦めないキュウレンジャーに今度は88星座系の星々が力を貸したことで強化されたキュータマジンが放った『アルティメットオールスターブレイク』に押し負け、「そんな、まさかぁぁぁッ!!」と叫びながら大爆散。
これだけの攻撃を受けても生き延びていたが、取り込んだプラネジュームは開放してしまったことで吸収能力を失い、変貌前の素体の姿に戻ってしまい大幅に弱体化。それに対してキュウレンジャーはキュータマジンから降り、今度こそ引導を渡そうとするが、
「ここまで私を追い詰めたことは誉めてやろう。」
「忘れたのか?私が憑依を繰り返してきたということを。貴様の体を頂くぞ‼︎」
往生際の悪いことに今度は自身の分身をラッキーに撃ち込み、宇宙空間へ放り出して身動きを取れなくする上で憑依。全意識を分身に移すことで逃げ延びようとする。
チキュウにいるアルマゲもラッキー以外のキュウレンジャーに電撃を放ち、止めを刺そうと襲いかかる。
「フハハハハハハ!!! 私はお前を取り込み、不死身になるのだ!」
「ん?!なぜだ...?! なぜこいつを操ることができない!?」
しかし、取り憑いても上手くラッキーを操ることができない。なぜなら彼が宇宙一のラッキーを自称する絶望しない男だから。
直後に彼の運へ引き寄せられる形でSpace.1の再来の如くシシ座流星群が飛来、それに運ばれる形で地表に戻ってこられた上に分身もラッキーの身体から追い出されてしまう。
この予想外過ぎる事態に気が動転している間に目の前のキュウレンジャーからアルティメットオールスタークラッシュを喰らった上に、流星群の勢いも乗せたラッキー=シシレッドからレグルスインパクトも叩き込まれた(※レグルスインパクトの一撃を食らわせる直前、シシレッドからアルマゲの分身らしき者がアルマゲの目前に放出されて諸共攻撃されている)。
これで遂に止めを刺され「どこまで、ラッキーな男だ…!!」と毒づくも、「だから…“宇宙一”って言っただろ」とラッキーに返された上で力尽き爆散、戦死。思念の残滓も霧散した事でとうとう完全に滅び去り、宇宙の嘆きと苦しみの化身は宇宙一ラッキーな男より引導を渡されることとなった。
かくして“宇宙を支配し、そこに生きる者全てを涙させた者”は、キュータマに選ばれた究極の12人の救世主に打ち倒され、最期を迎えた。
なお思念体の特性上、アルマゲが不滅たり得たのは他者に憑依できたからではなく、宇宙全体に自身の糧となる負の思念が濃く満ちていたからであった。ツルギの不死身の力を悪用したのはその環境を維持し続けるためだったのだが、それを利用して嘆き苦しむ全宇宙の命の意識をキュウレンジャーに向けたのは致命的な失敗だった。
何故なら、そこで相手が全宇宙の命を説得してしまえば、アルマゲが苦労して築いたネガティブな思念に満ちた空気が瞬く間にポジティブな物に変わってしまい、自らを維持出来る環境がなくなってしまう危険もあったからである。そしてこの点をいくつもの困難を乗り越えて自身の前に立ちはだかった救世主達に突かれた結果、長い時間と苦労を掛けて作った負の思念に満ちた環境が一気に失われ、アルマゲは不滅の大本を失くしてしまう。そしてその状態で撃破された結果、思念が糧になる物のない環境に晒されて霧散、完全に滅ぶ末路を迎えたのだった。
性格と総評(※ネタバレ含む)
自身の代わりにジャークマターの組織管理を任せていた、協力者であるクエルボの思惑に長い間合わせていた事から混同しがちだが、アルマゲ自身の性格は徹頭徹尾自身以外の全てを見下して苦しめ、支配しようとする傲慢で身勝手な独裁者であった。
だが、独裁者としての自らの気質に忠実過ぎた結果、彼は自身に与する者へ何らかの利益を与えることすら苦痛と捉えていた様子。実際、全宇宙を支配出来るジャークマターの全てを動かせる反面、動かす対象の構成員に見返りを与えなければならないショーグンの立場=実務を、アルマゲは同化したクエルボに事実上押し付けていた。そしてクエルボは前述の支配体制で書かれたように、功績を出した者へ相応の見返りを与えるのを徹底するやり方で組織を運営、ジャークマターを全宇宙を支配する超巨大国家へと成長させると言う、歴代戦隊における悪の組織トップとして最高峰の功績を打ち立てた。
しかし終盤、ドン・ツルギになれる=全宇宙の命を我が身に取り込める算段がついたアルマゲは、ツルギを追い詰めるためだけにクエルボの心の隙を突いて煽り、彼が自分の最終目標を強行して自滅するよう誘導。その途上で全ジャークマター構成員を見捨てる態度を取らせたことで、ジャークマターの組織網を瓦解させ、クエルボの打ち立てた功績を水の泡にしてしまった。
また、立体映像越しと実体を見せた以降のアルマゲの実力に大きな差があるのも見逃せない。記事冒頭で触れたように立体映像越しのアルマゲは摩訶不思議な力を行使する得体の知れない存在感だったのに対し、実体のアルマゲは確かに強いがその差はキュウレンジャーが戦力を集中させれば埋まる程度であり、ジャークマターの戦力やプラネジュームでの補強を差し引けば思念体特有の長所や能力を踏まえても“1人だけ”で宇宙全体を支配する力を持っていないのは明らかである。
要するに、アルマゲが映像越しで見せた能力は何らかの科学的なトリックを仕込んでいた可能性が高く(少なくとも怪人化の技術に関しては、科学者であるアントン博士の方が秀でている)、ジャークマターの中枢部であるクエルボとアントン博士がアルマゲを“宇宙の全てを支配する力を持つ唯一絶対の支配者”に見せ掛けるため演出していたと考えられる。それは同時に中枢部の組織運営の成果が丸ごとアルマゲの功績にすり替わっているということだが、中枢部の主だった人員はいずれも精神面に大きな矛盾や隙を抱えており、それをアルマゲにまんまと突かれたことで最後までこの境遇に甘んじてしまった。
結局、徹頭徹尾独裁者であったアルマゲは、配下に何らかの利益を与える立場=『支配者』になることが不可能であり、他者が作り上げた組織のトップに憑りつく形で組織の『偶像』の座に寄生、組織が生む力を間接的に使う方法でしか全てを支配する立場を得られないと言える。彼が宇宙の頂点に立てたのは、同化していたクエルボが支配者として非凡な才覚を発揮して、憑りついた自身を神の如き力を持つ存在へと演出してくれたからで、それがなければ彼は宇宙の支配者どころか、分不相応に大きい欲を持った一介の悪党に過ぎなかった。
そして自分のことしか考えない悪党故に、もっと直接な形で操れる大きな力を得る算段がつけば寄生している組織を、憑りついていたトップを煽って暴走させる方法で内部から瓦解させる行動も躊躇なく起こせたと言う訳である。
最終的に、クエルボを切り捨てた後のアルマゲは、全宇宙の命を我が身に取り込むことで「自身が宇宙(≒神)になった」と自称するも、彼に威圧感を与えていたジャークマターは育て主のクエルボを介す形で、アルマゲが瓦解させてしまっており、最早アルマゲは強い力を振りかざして威張る、1人だけの悪党に成り下がっていた。そしてキュウレンジャーに打ち負かされたことで、全宇宙の上に立つ力を失って偶像ですら無い矮小な悪党に転落、悪足掻きすら破られた末に完全に滅ぼされると言う、正に因果応報かつ自業自得の侘しい最期となった。
アンラッキーの化身として
その出自より、全宇宙の生命を嘆き苦しめることを終始目論み続けたアルマゲであったが、それを自身一人で成す方法は有しておらずクエルボやツルギと言った才能や素質のある者に取り憑き、依り代が持っている物を勝手に悪用して方法を確立するやり方を取るしかなかった。
しかしそのやり方を実現させる手段として、
- どうしても受け入れられない自分が内面に燻り続けている人物に憑依し『自分と一つになれば受け入れられない面を消し去れる』と嘘をついて都合良くコントロールする
- 受け入れたくない最悪の現実に直面した相手の心にできた隙を心理工作で広げ、相手自身から絶望に沈むよう誘導する
と言った、他者の心の弱点に敏感かつそれを起点にした洗脳・精神支配が得意であった。
ここからして、全宇宙の生命が心に等しく持つだろう『弱い自分自身への残酷さ』こそが、アンラッキーの化身たる思念体であるアルマゲのルーツにしてその性格のベースと考えられる。
厳しい現実等に見舞われて自分が無力で弱いことを痛感させられても、その当人が現実を認められず何とか逃げようとするのはよくあることだが、それすらできない場合『自分が不幸だから悪い』との理屈をこねて弱い自分より目を逸らすその場凌ぎの解決法に走ることも多い。
しかしこの行動を起こすと、目を逸らした自分の一面を心理的に切り離し誤魔化すことになり、そこから弱い自分を見れなくなったので無力な状態の根本的な克服ができなくなり、その上で再び無力さを痛感させられたらまた『自分が不幸だから悪い』と理屈をこねて更に弱い自分を見れなくなる悪循環が発生することもまた珍しくないが、この悪循環を心理的に切り離された自分の一面の側から見ると、自分が周りにある物(=現実)を振りかざして弱い自分を苦しめていると言い換えられる。
こうした意志ある者の心の動きが全宇宙レベルで一所に集約、そこから誕生したのが自身以外の全てを弱いと決めつけ見下す生まれながらに残酷な独裁者、ドン・アルマゲだったと言う訳である。また奴が心の弱さを突くのに長けているのは、元々自身がそれを行うべく意志ある者の心の中で生み出された存在が故だった。
そしてだからこそ、各々が弱い自分に向き合って厳しい現実を乗り越える経験を積み重ねたキュウレンジャーは、最終局面でアルマゲの対極の存在となって全宇宙の生命を味方につけることができた。更にこれへ連動する形で、全宇宙の生命がアルマゲの本性を知った上でその存在を拒絶するダイナミックな動きがさりげなく自然に発生する奇跡が導かれており、この一手が決まったことで前述したように立場・精神面のどちらでも完全に孤立したアルマゲは倒された瞬間で人格が完全消滅、事実上の死を迎える結果となった。
作中の演出がアッサリしていたせいであまりインパクトに残らなかったが、上の事実から負の思念に寄生する不滅の思念体だったアルマゲを滅ぼしたのは間違いなく、究極の救世主の導きで一つの方向へ向いた全宇宙の生命が発した正の思念=ラッキーを引き寄せるポジティブシンキングであったと言えよう。
余談
ドン・アルマゲに関する設定の多くは、鳳ツルギの設定から逆算する形で作られている。
(例)大統領のツルギとショーグンのドン・アルマゲ、キュータマの力で不死身のツルギと依り代を次々乗り換えることで不滅のドン・アルマゲ等。
スタッフによると、これは当初の構想ではキュウレンジャーに倒されない予定だったドン・アルマゲが途中でラスボスに変更された為、鳳ツルギの設定を詰めていくのと同時進行でドン・アルマゲにラスボスにふさわしい設定を追加していった名残だという。
ミステリーモチーフは南米・ペルーで発掘されたパラカスの頭蓋骨。見た目は頭頂部が縦方向に伸びた人間の頭蓋骨なのだが、現生人類の物と違い質量に差があることや頭頂部のパーツが一体化している点、遺伝子解析で完全一致しなかった等を理由に宇宙人の遺骨と言う仮説が立てられている。
それに加えて、レトロフューチャーに出て来る脳味噌が剥き出しの宇宙人や光線銃(翼の骨部分に反映されている)の意匠も混ぜ合わせ、悪魔のようなデザインへ纏めている。これはいずれ、堕天使を模した姿を経て神の如き姿の最終形態になることへの対比にして布石だったらしい。
名前の由来は「アルマゲドン」と首領を意味する「ドン」。
それに加えて漫画版人造人間キカイダーのラスボスである『アーマゲドン・ゴッド』にもかけていると思われる他、その兵器を操ったギルハカイダーは漆黒の身体に頭の脳髄が剥き出しになった姿を持つ。
また、自身が宇宙になったと言う終盤の発言からして、ローマ時代の占星術師・プトレマイオス(※88星座の前身である『トレミーの48星座』を定めた人物)が著した天文学書『アルマゲスト』もかけられている模様。ただし紀元前の著書のため、その内容の根底には天動説=間違った宇宙観があり、アルマゲの独裁者設定はこれも反映された物と思われる。
声を演じる谷氏は『未来戦隊タイムレンジャー』の傭兵オーグ以来、17年ぶりのスーパー戦隊シリーズ出演となる。
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ドン・アルカゲ:Vシネクスト『ルパンレンジャーVSパトレンジャーVSキュウレンジャー』で登場した、アルマゲの影武者。その性格・動向は一言で表すと『頭脳役を持てなかったアルマゲのif』であり、“予め持たされていた強大な力を過信、力を使い果たした後に四面楚歌に陥る”、“力を発揮する前で一時的に手を組んだ協力者を軽視した結果援護を失ってしまう”等、本編終盤でアルマゲが犯した物とほぼ同じ愚行を重ねた。そして最後は何も残せないまま、戦隊達に倒され1人寂しく散った。
ジニス←ドン・アルマゲ→ドグラニオ・ヤーブン/ザミーゴ・デルマ