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概要

キュウレンジャーが生まれた宇宙において、宇宙幕府ジャークマターを通し333年以上もの間宇宙のほぼ全てを我が物にして来た正体不明の独裁者、ドン・アルマゲ

物語終盤、そのキュウレンジャーに潜伏場所への突入を許し、果てにはジャークマターその物を失う損失へ見舞われたアルマゲだったが、それと引き換えに『生命体をプラネジュームに変換する能力』を造り出すや宇宙全土の命を我が身に吸収。

最終形態へ進化しキュウレンジャーを一蹴すると、脈絡も無しに自身の正体―――宇宙中の命が己の無力に打ちひしがれた時に発した嘆きと苦しみが集合して誕生した邪悪な思念体である事を告げた。

嘆きと苦しみという、マイナス方向の感情エネルギーが集合し自我を得た誕生経緯からか、極めて自在なエネルギーの操作能力を種族(?)の特有として持ち、ビームや電撃等の方向性を持たせての放出で攻撃手段にしたり、物質化を応用した巨大化や死者蘇生等といった、発想とセンス次第で如何なる事も実現可能なほぼ全能に近い規格外の存在。その出自上、嘆きと苦しみの感情から生じるエネルギーが最も糧として効率が良い様だが、惑星を構成するプラネジュームといった別のエネルギーでも代替は可能らしい。

ただし、操作する膨大なエネルギーを自力で得続ける事は出来なかったらしく、それを補う術として他者を頼っていたのも見受けられ、それが結実した形がジャークマター(=エネルギー略奪を宇宙全土規模で行う組織システム)であり、かつその上位互換として『生命体をプラネジュームに変換する能力』を求めた様子。

そして生命体の負の感情から生まれた以上、一定以上の嘆きと苦しみに満ちた環境では存在を半永久的に維持出来るが、真逆に正の感情に満たされた環境では自我が霧散して消える恐れも抱えるので、悪霊めいた希薄な脆弱さも有する。

一方その出自故に、他者の心の弱さを突く事へも長け、それを上手く利用して自身を支配する側に担ぎ上げさせてもいた。

自らを独裁者に担ぎ上げさせたアンラッキーの被害者の影、その栄枯盛衰

種族分類に由来する規格外の能力の反面、それを十全に扱うには相応に周りへ働き掛けて操るエネルギーを手に入れなければならない実情からして、結局はアルマゲも自分1人では大した事の出来ない、長所と短所を併せ持った小さな存在であるといえる。

しかしアルマゲ当人に他者への謙虚さ等は微塵も無く、ジャークマターを通して自らに従う者を道具同然に扱き使い、従わぬ者は圧政で嘆きと苦しみを絞り出す資源元にする横暴を実行する、非常に傲慢な態度で終始振舞っていた。

この、曲がりなりにも超巨大組織(国家)の頂点かつ、組織の力へ大いに頼っていた立場に反した、欲深く自分勝手な悪党とそう変わらないアルマゲの性根は、彼の誕生ルーツであるアンラッキーに遭った者らの嘆きと苦しみの念とは何かと考える事で紐解ける。

端的に述べるなら、嘆きと苦しみの念とは、身も蓋も無く言えばアンラッキーに遭った者の被害者としての意識感情。更に視点を変えると、アンラッキーに遭った者が仮想(妄想)する“無力な自分をアンラッキーで苦しめる加害者”の概念≒被害妄想がその裏で発生している。

即ち、宇宙一つ分の命が発した嘆きと苦しみより生じた「アンラッキーの塊」とも呼べる思念体=ドン・アルマゲとは、アンラッキーの被害意識を持ってしまった者達が妄想した「アンラッキーを齎す力を持った加害者」の仮想概念が実体化してしまった存在だったとも言えるのだ。

勿論、元が被害妄想故に素のアルマゲは規格外の能力こそ持てど、宇宙を思い通りにする力は有していなかった。

だが嘆きと苦しみを発する者が、自分の弱さとそれを取り巻く現実の厳しさ等を受け入れられず「自分がアンラッキー(無力)なのが悪いので、どうしようもない」との言い訳へ逃げてしまう事もその出自故に知っていたアルマゲは、これを利用し才覚や資質等はあれど自分の弱さに振り回されている者らを巧みに誑かして取り込み、彼等が生んだ力をまんまと横領・悪用するやり方で自らの手中に収め、蓄えていった。

事実、アルマゲの息が直に掛かっていたジャークマター中枢部の面々は、為政者として破格の才等があっても目立たず貧弱な自分を認められなかったクエルボや、倫理観無き狂った科学研究を求めた末で自制心を別人格として排除し自己保全が出来なくなってしまったアントン博士に、我が身を削りながらの忠誠の果てに死んでも心身を切り貼りされながら蘇生され酷使される主体性や尊厳等が奪われた立場へと成り下がったフクショーグンと、それぞれが持っていた自分の弱さへの対処を誤った結果アルマゲに都合良く使い潰され捨てられた者達しかいなかった(※少なくともクエルボは、才能と内面の矛盾を見抜いて付け込んだアルマゲが直接干渉し、自身最大の手駒に堕としたのが示唆される)。

そしてこの中枢部の采配を恐れ、自分達が虐げられまいと加害者側に加担したのが、ジャークマターの一般権力層=カローダイカーン等なのだろう。しかし連中も自らが強くなる事は許されず、組織の主戦力である無尽蔵に生産・支給される量産兵士や兵器を使っての支配を暗に強要されていたと思わしき点からして、所詮は被支配層(ジャークマターの被害者)同様「強大な力を後ろ盾とした存在に脅かされて屈服し、現状に縛られ心が腐敗した者ら」に過ぎないとも言える。

こうして、自分の弱さとそれに触れた周りを貶してしまう、意志ある者が普遍的に持ち得る業を宇宙一つ分で煽る事に成功したアルマゲは、自分達を知らぬ内に業で縛り傷付け合う地獄に閉じ込めてしまった宇宙中の命らより「自分達にアンラッキーを齎す、絶対的な力を有した独裁者」と錯覚及び諦観された事で宇宙規模の共同幻想を確立、自分に膨大な嘆きと苦しみの感情が自然と供給され続ける、自身1人に都合のいい理想郷を手に入れるに至ったのだった。

だがしばらくして、共同幻想を維持させ続ける力として頼っていたジャークマター=国家共同体の難点や不安定な面にアルマゲは気付いたらしく、ジャークマター全体を切り捨てた上でより手間無く自身のみで扱える力を手にする算段を考え始める。

この内、新しい力を得る為の素材として、クエルボを引き込んだ時より目を付けていたと思わしきツルギと、その彼が長い眠りに就いた場所故にプラネジュームが無尽蔵に蓄えられる場所となった惑星チキュウをジャークマターを介して手の届く内に収めていたアルマゲだったが、そこに到着したキュウレンジャーを敢えて放置。ジャークマター(を率いるクエルボら中枢部)と潰し合わせ、やがてキュウレンジャーに組織システムの自壊と中枢部の全滅が成された格好でジャークマターの排除を達成し、その上で自分が密かに抱えてしまった弱点を持て余していたツルギを前もっての心理工作で揺さぶり、彼が心理的に弱る様誘導した上で満を持して憑依し、身体の主導権の完全掌握に成功

そしてここから、本記事冒頭で書いた経緯を経て最終形態への進化、つまりは宇宙の頂点に立ち続ける為ジャークマターを超えた力を手に入れる目的を果たしたのだった。

この遠大な経緯から成る事実からして、前述のアルマゲが正体を自ら明かした言動は脈絡が無い様に見えて、アンラッキー=自分の無力さ・弱さが周りに曝け出された事態に耐えられず被害意識に逃げる、意志ある者らの業より生まれた身分かつ、それを上手く利用して宇宙中の他者を手玉に取りそれを服従させる立場へ成り上がったアルマゲ当人の、ある種の勝利宣言だったと取れるかもしれない。

またこれによる成功経験から、抱えている弱さを突けばいとも簡単に支配し操れる愚かな存在として、全ての他者を十把一絡げに見下していたと考えられる。

しかし、この勝利宣言と共に放った宇宙全土の命が放つ嘆きと苦しみを使った精神攻撃は、自分の弱さに向き合い乗り越えるのを個々に果たし一つへ結集した救世主達、キュウレンジャーに受け止められ逆に説得の場として利用されてしまう。そしてそれを起点に、アルマゲは自分がついさっきまで手玉に取っていた筈の宇宙中の他者より逆襲されて瞬く間に支配者の力を失い、矮小な1人だけの悪党として打ち倒される末路を迎えるのだった。

これを、究極の救世主に願いを託す形で、宇宙全土の命が募らせた被害妄想の負債=アルマゲを清算した”と見るか、あるいは“独裁者になった以降の放漫が祟り、『アンラッキーの被害者の影=被害「妄想」の産物』という自らのルーツを超えられずに終わった悪の思念体の顛末”と考えるかは人によるのだろう。

関連タグ

宇宙戦隊キュウレンジャー

ドン・アルマゲ 悪霊

不幸被害妄想(によって仮想される加害者のイメージ):恐らくルーツにして本質。

クエルボ(キュウレンジャー):為政者=組織のトップとしての破格の才と頭脳に、ツルギから親友として信頼される良縁等、圧倒的な素質や運に恵まれていたが、そうした長所を自分が弱点と考えていた目立たなさや貧弱さと比較、自分の弱さとそれに繋がった周りを貶す事を止められなかった節があり、それへ付け込んだアルマゲの口車に乗せられて操り人形(道具)へと堕し、恵まれた面を最後まで都合良く使い潰されてしまった様子。

こうした、自分の弱さ(アンラッキー)を持て余す面に付け込んで意志ある者らをネガティブな思考で縛って支配し、それらが持っている長所等を横領し我が物顔で使っていた思念体にして悪党こそがドン・アルマゲと言えよう。そして支配と横領を成功させ続けた結果、他者から奪った力等に胡坐を掻いて自己研鑽を怠る放漫へ陥ってもおり、そのツケがあの卑小な存在に成り下がって散る最後だったとも酷評出来よう。

妖怪大魔王:人間の負の思念(マイナスエネルギー)の集合体である戦隊首領で、特性的にアルマゲと同質の存在と思われる。倒されると貯め込まれた負の思念が拡散、配下兼同胞を蘇らせてしまう為、人知れず戦っていて人々の正の思念を集める方法を見出せなかった戦隊側は変身能力を犠牲にして、精神世界の奥底に封印するしか対抗手段がなかった。

ツルギの設定が固められた事で本編シナリオの路線変更がされた結果、アルマゲはツルギの力を悪用した結果存在を維持出来ずに滅び去る末路となったが、変更がなければ大魔王と似た結末を迎えていた可能性がある。

ユートピア・ドーパント:『理想郷』の名を冠した、一人の人間のエゴの元回る管理社会をモチーフとしたライダー怪人で、人々より生きる希望の感情をエネルギーとして搾取し利用する能力を持つ、アルマゲの自己理想像に極めて近い存在。

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