「聞け、妖怪共! 今日から人間を全て滅ぼし、この地上に妖怪王国を作るため、私に忠誠を尽くすのだ!!」(第31話)
概要
『忍者戦隊カクレンジャー』のラスボス。第31話から登場。一人称は「私」。
当初は指導者がいないと思われていた妖怪達の支配者にして、貴公子ジュニア(ガシャドクロ)の実の父親。眼鏡がチャームポイントで、誕生日は10月28日(らしい)で、スーパー戦隊シリーズに登場する先天的な人外のキャラで誕生日まで判明しているのは珍しい。
後に登場するダイダラボッチとヤマンバはそれぞれ弟と妹に当たる。
能力
破壊光線を放つ杖を武器としており、己の欲望のままに行動を起こしがちな妖怪達を束ねる頭目だけに、相手の力を吸い取り自身の力として取り込む力を持った自身の分身である妖怪ダラダラを生み出すなどといった強大な力を秘めており、分け身の術や消え身の術と言った忍法のほか、人間を犬に変えてしまうといった摩訶不思議な様々な妖術を行使することもできる。
また、火球を放って敵を攻撃することも可能で、自身の身体の大きさを自在に変えることもでき、スーパー無敵将軍やスーパー隠大将軍の必殺技を受けてダメージは受けるものの決して倒れることのないタフさを持つ。
さらに「人間には姿が見えず、声も聞こえない」という厄介な性質を持つ(大魔王の存在をあらかじめ知っているカクレンジャーとその関係者は例外)。
人物像
あくまで指導者として妖怪王国樹立のために、敢えて肉親であるダイダラボッチとヤマンバ達と絶縁して非情に徹しているが、心の底では情は完全に捨て去っていなかったようで、妹のヤマンバがカクレンジャー達に討たれた際には激しく動揺していた。
加えて実子である貴公子ジュニアへの愛情もしっかりとあり、本人曰く「自身の後継ぎは何があってもジュニアにする」と決めていたらしく、復活後にジュニアが死んだことを知った際には深い悲しみを見せていた。彼の「大魔王たる者、非情でなければならん」という指導者としての信念を考えれば、上記の兄妹と同様に息子に対しても表面上はあくまで冷たく接していたと思われるが、その上でジュニアの方からも慕われており、互いに親子関係は良好だった模様。
また、自身に図々しく恋慕で押しの強い猛アプローチを仕掛けてくるスナカケババアに思わず「ゲェ~」と呟いてタジタジになったり、不運にもビンボーガミが発射した光線を浴びた際は、みすぼらしい姿をしたボロボロ大魔王になってしまうなど、その肩書やビジュアルの印象に反して家族との絆や情には厚い一方で、意外にもコミカルな面を覗かせることもあった。
その正体
妖怪達の中でダラダラと同じく伝承となった妖怪が見受けられない存在だが、それもそのはず、その正体は人間の憎しみの化身。要は我々人間の持つ憎悪等の負の感情——すなわち「マイナスエネルギーが実体化し具現化した存在」こそが妖怪大魔王であり、彼等の力の源であったことが最終回で明かされる。
まあ、その割りには兄妹がいたり息子がいたりするのはよく分からないが…。というかこのような明らかに寿命も無い存在なのに、何故後継ぎが必要なのかもよく分からない。
そのため、「自分以外の妖怪が倒された状態で大魔王を倒すと大魔王を構成していたマイナスエネルギーが一気に世界中に放出され、それが人々の心に植え付けられることで負の感情が高まり、それによってカクレンジャーが倒した妖怪達が全員復活してしまう」という最悪の事態になってしまうため、大魔王は倒すのではなく「『封印の扉』=誰にでもある心の扉の奥底へと封印する以外しか手段がない」という非常に厄介な存在である。
結末
弟のダイダラボッチに続き妹のヤマンバがカクレンジャーとの死闘の末に敗れ去ったことを受け、2人の仇討ちを兼ねて遂に自身が打って出ることを決意。
地上にいたカクレンジャー達めがけてガイコツ城ごと特攻した後に彼等が無事なのを見て直接対決に持ち込むが、わざと倒されて憎しみの破片となり、人々の心に入り込むことで全妖怪を復活させることがその真の狙いだった。
しかしこの策略は三神将の指摘でカクレンジャーに気づかれたため、今度は街に現れて分け身の術で三人に分身。
カクレンジャー達を挑発し、あの手この手を使って自分を倒させようと目論む。
あちこちで暴れ回った末、一人に戻って五人を妖術で圧倒。
「これでわかっただろう? 私を斬らずに生け捕りにすることなど、最初から無理だったのだ」
たまりかねたジライヤが変身して斬りかかろうとするが、そこに無敵将軍達三神将が待ったをかける。
三神将「大魔王が憎しみの化身なら、私達三神将は、愛と、勇気と、希望の化身! 全ては人間の心の問題! 心の中の戦いなのだ!」
その言葉で、カクレンジャーは大魔王をどうするべきか、その答えにたどり着く。
人は誰しも心の中で、良い心と悪い心が戦っている。だが憎しみを始めとする負の感情は、消し去ったつもりでもまた心の中に湧き出てくる。
憎しみを完全に消すことなど、できはしないのだ。ならば、その化身である大魔王は?
鶴姫「最初から倒すことなんかできなかったのよ! 心の奥に閉じ込めて、二度と出て来ないようにすればいいんだわ!」
サスケ「ということは封印の扉とは……わかったぞ! 誰にでもある、人の心の扉だったんだ!」
サイゾウ「湧き上がる怒りや憎しみを、心の奥底へしまい込む扉……それが封印の扉だったのか!」
力ずくでは憎しみの化身を滅ぼせないし、そもそも滅ぼすことは不可能。
先代のカクレンジャーがそうしたように、封印の扉という人の心の牢獄に、永久に閉じ込めるしかない。心の戦いに勝利し続けること。それこそが、妖怪軍団を倒すたった一つの方法だったのだ。
満を持してスーパー変化を遂げた5人を前に、大魔王も花のくノ一組を呼び出して迎撃しようとするが、5人はくの一組を飛び越えて大魔王に組み付く。
三神将が全員まとめて封印の扉があった森の中に転送し、その中でサスケが封印の扉の召喚に成功。
くノ一組は三神将の力で元の猫に戻されて大人しくなったが、残された大魔王は「おのれ、そうは行くかぁぁ!」と無理矢理包囲を抜け出して巨大化。
しかし、待ち構えていた三神将とニンジャマンに抑え込まれ、巨大化を解かれた上に封印の扉の真ん前に転送されてしまう。
泡を食って逃げ出そうとするが、カクレンジャーがそうはさせじと飛びつき妨害。
大魔王も電撃や妖術で抵抗するが、ここが最後と死力を振り絞る5人を突破できず押し込まれていく。
「おのれカクレンジャー、出せぇぇ! ぬおおおおお!」
それでも執念で押し返さんとしたが、奮起する五人を押し切るには至らず、異空間に押し込められた大魔王の眼前で封印の扉は閉ざされ、ドロンチェンジャーをかけられ封印された。
「覚えていろ!人間がいる限り、私達は必ず甦る!必ずゥゥゥゥ!!」
扉を激しく殴りつけながら、未来での復活を宣告する大魔王の捨て台詞とともに、現代のカクレンジャーの戦いは幕を閉じた。
しかし、カクレンジャーに登場する妖怪達は人間誰しもが抱く憎しみの化身である。
人間がいる限り決して滅びることのない存在であるため、いつの日か復活する日が来るのかもしれない……。
サスケ(妖怪さん達よ、長い間手を焼かせてくれたな。もう二度と表へ出て来るんじゃねえぞ)
なお、最終話のエンディングの直前には封印された妖怪達の姿が描かれたが、大魔王こそいなかったもののカッパを始めとする主だった面々は全て揃っており、嘆きながらも復活を心に誓っていた。
カッパ「悔しい~! 力が出ない~! 力が~!」
オボログルマ「おのれ~! 俺達は必ず蘇る!」
アズキアライ「人間共! その日を楽しみに待ってるがいい!」
ケウケゲン「必ず力を取り戻すぞ~!」
30年後の中年奮闘編にて妖怪大魔王とその他の妖怪が封印されたまま、新たな妖怪大魔王が現世に現れ、破壊活動を始める。
海外版
初代第3シーズン後半で初登場するM51銀河の支配者マスターヴァイルで、原作同様リト・レボルト((後述のガシャドクロ)の父親だが、リタ・レパルサ(魔女バンドーラ)の父親でもある。
強大な魔力を持つジオクリスタル(超力クリスタル)の本来の持ち主だが、パワーレンジャーに奪われ、5分割した上で宇宙のあちこちへと封印された。次作となる『ジオ』ではパワーレンジャーがそれを再回収して変身手段とした為、文字通り1の力を5分割して戦っている。
地球の時間を巻き戻してパワーレンジャーを子供に若返らせて戦闘不能に、巨大ロボもほぼ半数が消滅する壊滅状態に追いやった。この為ゾードンは別の惑星で活躍するエイリアンレンジャー(忍者戦隊カクレンジャー)を派遣する事態となった。
『イン・スペース』では序盤で悪の皇帝ダークスペクターがゾードン捕獲成功祝いで開いた祝賀会に参加する悪党達の中にいた。最終回でゾードンが自身の命と引き換えに放った奇跡の光を浴びた悪党は消滅するか、悪の心を浄化されて生存したが、マスターヴァイルは直接浴びた描写が無く、現在でも生死不明となっている。
後年放送された『ミスティックフォース(魔法戦隊マジレンジャーの海外版)』で登場する魔法世界の長ミスティックマザー(天空大聖者マジエル)の設定がリタ・レパルサが正義の魔術師となった姿とされた為、(原作視点で見ると)妖怪大魔王とマジエルが親子関係というトンデモ設定が出来上がった。
リタと結婚したロード・ゼッドがセルペンテラ(大神龍)を保有し、その彼が『ジオ』でM51銀河のマスターヴァイルの元に亡命した事から、セルペンテラを間接的に保有している事にもなる。ゼッドは先述の奇跡の光を浴びて悪の心を浄化された後、セルペンテラを月面に廃棄した為、『ワイルドフォース』でマシン帝国バラノイアの手に渡る恐ろしい展開になるのだが……。
パワーレンジャーを壊滅、セルペンテラを(間接的に)保有、ミスティックマザーの父親と、実績・肩書きの両面で見ても「30年以上の歴史を持つパワーレンジャーシリーズ通して最強の敵」といっても過言ではない。
余談
妖怪大魔王は本編開始よりはるか以前にも三神将やニンジャマンと対峙した因縁のある敵だが、そのあたりの設定考証がしっかりしていなかったのか、一部出来事の年代に矛盾を抱えている。
劇中では2000年前に妖怪軍団の長として三神将のかつての姿である三賢人率いる人間と戦い、その末に封印されたことが明言されている。
にもかかわらず、劇中にて1200歳の誕生日を迎えたことが複数のエピソードで言及されている。
また封印中のはずの1000年前に、老人に化けニンジャマンを騙したとされている。
これらを矛盾なく成立させるには
- 「封印の扉内で何らかの強化や変化を果たしてから1200年目を迎えた」
- 「過去に封印されたのは先代の大魔王で、彼自身は封印の扉内で誕生した二代目」
- 「1200歳を迎える直前で封印され、封印の扉内では年齢経過をカウントしていない」
などの可能性を考えなければならない。
劇中で封印の扉内から白面郎にエネルギーを与えたように、封印中でもある程度外部に干渉できることも考慮する必要があるだろう。
デザイナーによればモチーフは特にないが、現代風になった妖怪の総大将といわれているぬらりひょんをイメージしてデザインしたらしい。
ちなみにヌラリヒョン自体は妖怪忍者の頭領として戦国時代に活動していた。先述する後者の説と合わせると、封印の扉内でヌラリヒョンが先代の大魔王と同化した、もしくはその力を受け継いだとも思えるが、果たして…。
ただし、大魔王が世襲しているのだとすると、いつどうやって作中の二代目は息子の貴公子ジュニアを封印の扉の中で生んで、扉の外に出したのかが分からなくなる。もし封印前に生んだのだとしたら、それは先代という事になるので、作中の大魔王とは血縁関係は無い事になってしまう。
声を担当した柴田秀勝氏は『太陽戦隊サンバルカン』にて全能の神の声を担当しており、スーパー戦隊シリーズへの出演は13年ぶりとなる。また、同作品での因縁の相手である2台目バルイーグル/飛羽高之役を演じた五代高之も大魔王の部下にして鶴姫の父である白面郎義輝役を担当している。また、柴田氏は2年後の『激走戦隊カーレンジャー』にてCCパッチョーネの声を担当した。
関連タグ
忍者戦隊カクレンジャー 妖怪軍団 ラスボス(スーパー戦隊シリーズ)
作中の関連妖怪
ダラダラ:大魔王の分身。
ダイダラボッチ、ヤマンバ:それぞれ大魔王の弟と妹に当たる(ちなみにダイダラボッチが末っ子である)。
他作品の関連項目
ゼイハブ船長:4年後に登場する悪の組織の首領で、声は妖怪大魔王と同じく柴田秀勝氏が担当している。ちなみにゼイハブと敵対する番外戦士を演じるのは、サスケを演じた小川輝晃氏である。
ドン・アルマゲ:23年後に登場した悪の組織の首領で、こちらは「宇宙に生きる者達がアンラッキーに苦しみ嘆く時に発した負の感情より生まれた思念体」と妖怪大魔王とはほぼ同質の存在。その出自から他者の心の隙を突くのに長けていて、ある人物を密かにコントロールする事で宇宙規模の組織を作り上げて宇宙に生きる者達を苦しめ、発せられた負の思念を貪っていた。
しかし終盤で取った行動が裏目に出た結果、糧となる負の感情が失われた環境で倒されてしまいその思念は消滅。完全に滅び去る末路を迎えている。
死霊サイマ獣:同じく「マイナスエネルギー」を持つ敵だが、マイナスエネルギーの定義が異なると思われる。
バンドーラ/天空大聖者マジエル:前述の通り海外版で親子関係。