「古いイメージは、俺の名誉に関わる。鷲に蛇、ライオン、虎のパワーが時空を超えて、妖怪戦士ヌエとなったのだ!お分かりかな?ジュニア。余りにもお前が生温い故に、この俺が大魔王様の使者としてやって来たのだ!」(第27話)
「お前たちは生きながらに河童になるのだ。それも河童の中でも最下級のへのカッパに!」(同上)
CV:玄田哲章
概要
妖怪大魔王直属の妖怪戦士。原典の鵺は猿の頭部に狸の身体、蛇の尻尾に虎の手足)を有した、伝統と格式を誇る妖怪の中の妖怪で京の都を騒がせたが、現代では上記の台詞にある理由から古いイメージを嫌い、蛇と虎はそのまま鷲とライオンの4匹の動物が組み合わさった姿の「妖怪戦士」となっている。
説明のために昔の鵺の絵を持っていただけのドロドロを殺害したことからも、余程古いイメージに対するコンプレックスが強いようである。
大魔王の腹心で妖怪戦士を名乗るだけ有ってその戦闘能力は高く、念力や羽根手裏剣、目から放つ破壊光線等、実に多彩な攻撃を繰り出して来る他、人間をドロドロ以下のへのカッパに変えるという恐ろしい術まで使う。
これだけでもガシャドクロに比肩する程の強豪妖怪なのだが、何とロサンゼルスで暗殺組織まで率いている。如何にヌエが妖怪の中でもかなりのエリートであることが分かるだろう(この時はまだ封印の扉によって妖怪エネルギーが封じられているにも拘わらず、それでもかなりの力を有していることがうかがえる)。
尚、彼はジライヤの実の父を、彼の育ての親にして親友であるガリに殺させているため、ジライヤにとっては憎むべき怨敵である。
劇中ではサイゾウとセイカイ、ジライヤの忍之巻の捜索を妨害するどころか、自らへのカッパに変えた前者2人を人間に戻すことを条件に、そして手駒にしたガリに後者の抹殺を命じてそれぞれ殺し合わせ、その様子を陰で楽しむ外道振りを見せ付けている。まさしく忍之巻捜索における最大最後の関門と言うべき難敵と言えよう。
ダラダラ同様、3話に亘って登場している点もその脅威を如実に物語っている。
活躍
第27話「無敵将軍の最期」
忍之巻を捜索中のサイゾウとセイカイが貴公子ジュニアと交戦している所へ出現。上記の台詞を発して鷲の羽根を2人に投げ付け、へのカッパへと変貌させる妖怪刑に処してしまう。
ドロドロにサイゾウとセイカイの周りで歌って踊らせるヌエの姿に、ジュニアは内心「何て恐ろしい奴……」と警戒せざるを得なかった。
何とかその場を逃れるも、どんどん身体がカッパに近付いて行く2人の元に現れたヌエは彼等に互いを殺し合う様命じ、生き残った方が人間に戻れると嘯く。当然2人にそんな事が出来る筈も無く、反発するも人間の醜い本質を知るヌエは無情にこう返した。
「なれば2人ともへのカッパになれ。へのカッパになって2時間経つと、もう絶対に人間には戻れんのだぞ?必ず戦う事になる。たとえ仲間と言っても、いよいよとなれば自分だけが助かりたくなる。人間とはそういうものだ」
そう言って高みの見物を決め込む中、忍之巻の力があれば助かると言う希望から2人は次の目的地の街へと向かう。必死で捜す2人だが、その姿を好奇の目で見る人々から迫害を受け、その場から逃げ出してしまう。
タイムリミットが迫る中、「もう時間が無いぞ?いいのか、2人とも?へのカッパになってしまったら、人間には戻れない。それでも良いのか?」と殺し合いを煽るヌエ。とうとう2人は殺し合いを始める寸前にまで精神的に追い詰められる(正確には、セイカイがサイゾウの手にかかって死ぬことで、サイゾウだけでも助かってほしくて襲いかかっただけであった)が、すんでのところで思い止まり、ヌエと戦う道を選ぶ。
その後、2人に戦いを挑まれるとジュニアとドロドロが見物する中、妖術の数々で変身不能のサイゾウとセイカイを絶体絶命の大ピンチに陥れる。だが、へのカッパになっても諦めずに立ち向かうその姿に心動かされたドロドロが水を掛けたために2人は復活。不意打ちのキックで蹴り飛ばされ、その弾みで妖怪刑の術を解いてしまい、2人は元通りになる。
「一寸の虫にも五分の魂ってね。ドロドロは最下級の妖怪。同じ最下級のへのカッパの戦い振りに思わず共感しちゃったという訳」というジュニアの言葉を聞き、激昂したヌエは2人を助けたドロドロを処刑する。
直後に無敵将軍が現れたのを受け、妖怪エネルギーの落雷を浴びて巨大化すると、一瞬の隙を突いて無敵将軍を蛇で拘束し、そのまま退けてしまう。
だが、スーパー変化してカクレイザーで応戦するブルーとイエローの前に忍之巻が出現した事で形勢は逆転。2人が召喚したゴッドロウガンとゴッドクマードの猛撃に怯み、後者の起こした地割れに飲み込まれてその場を退場するのだった。
第28話「超大物・来日!!」
前回の戦いから生き残っていたヌエは、次のターゲットをジライヤに変更。彼にとっての師匠であり育ての親でもあるガリをけしかけ、互いに殺し合いをさせる。
(尚、この回では終始、地割れで落ちた地中から見物していた)
第29話「史上初の超対決(スーパーバトル)」
激しい死闘の末、ガリを打ち倒したジライヤ。今わの際、ガリの口からヌエの過去の悪事が明らかとなる。
物語が始まる前の1986年、ヌエはロサンゼルスで暗殺組織を率いて悪行の限りを尽くしていた。ジライヤの父はそれを嗅ぎ回る警察官だったのだが、その存在が目障りでならなかったヌエは、折しも彼の親友であったガリが交通事故に遭い、娘が助かる見込みの無い危篤状態に陥っている所へ現れ、ガリに取引を持ち掛ける。それは交通事故で生死を彷徨う彼の娘を蘇生させる代わりに、自分の手先となってジライヤの父を殺害するというものであった(ガリの装着しているアーマーや短剣、ビームを放つ爪は彼が与えたもの)。
約束通りガリの娘を生き返らせたヌエだったが、それから先も度々ヌエはガリに暗殺を命じ、今回遂にジライヤの抹殺を持ち掛けて来た。拒めば娘に全てをバラすと脅迫した上で……。
だが、ガリはジライヤの手に掛かって死ぬ事を望んでここに来たのであった。
真実を話し、事切れる恩師の姿に号泣するジライヤ。だが、悲しむ間も無くヌエに出て来る様怒号を張り上げる。その呼び声に応じて姿を現し、「面白い見物だったぞ、ジライヤ。2人が相撃ちになるのを望んだが、出来なければ仕方が無い。私の手で地獄へ送ってやる!」と言い放つヌエに対し、ジライヤはサスケと共に父と師の仇討ちとばかりにスーパー変化して立ち向かって行く。
再度巨大化し、目からのビームで攻撃するヌエに対し、カクレイザーで応戦する2人。すると忍之巻がブラックの元に飛んで来た為、ブラックはゴッドガンマーを召喚。ガンマーダイナマイトとガンマーファイヤーでヌエを攻撃する。
やがて他の4人も超忍獣を召喚して駆けつけ、更にツバサマルも参戦。その一斉攻撃の前に、ヌエは「妖怪大魔王様!」という断末魔と共に爆散した。
余談
妖怪モチーフは鵺。それ以外にも鷲や蛇、ライオンに虎も含まれる。
原典の鵺は『平家物語』等、中世日本の軍記物に登場する妖怪で、猿の顔に狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇と言う姿が一般的である。ただ、文献によっては胴体については何も書かれなかったり、胴が虎で描かれる事もある他、『源平盛衰記』では背が虎で足が狸、尾は狐になっており、更には頭が猫で胴は鶏と書かれた資料まで存在する等、姿の伝承が安定しないが、キメラ的な外見である事は間違い無い。
「ヒョーヒョー」と言う鳥のトラツグミに似た大変気味の悪い鳴き声も特徴の1つで、『平家物語』等では近衛天皇の住む清涼殿近くの東三条の森から暗雲を伴って出現し、天皇を病で苦しめたが、弓の名手で源頼光の子孫である源頼政の放った弓によって二条城近くに落下。猪早太に取り押さえられ、止めを刺された。この妖怪を退治した事で天皇もすっかり快癒し、頼政は獅子王と言う刀を褒美に賜ったと言う。
『百化繚乱[上之巻]』にてデザイナーの篠原保氏は、「元々はガリが変身する妖怪だった」とコメントしている。
ガリのアーマーに虎の衣装があるのはこのためだろう。
第28、29話でにはジライヤ役のケイン・コスギ氏の父親であるショー・コスギ氏がガリ役としてゲスト出演しており、図らずも親子での共演となった。
声を演じた玄田氏は今作がスーパー戦隊シリーズ初出演となった。ちなみに特撮自体は『仮面ライダー(新)』の黄金ジャガー役でデビュー済みである。その後は戦隊ロボの玩具のCMナレーションを歴任している。尚、次のシリーズ自体への出演は11年後の『魔法戦隊マジレンジャー』におけるナレーションおよびマージフォンの音声。
また中の人ネタとしてはゲゲゲの鬼太郎の妖怪やミラクルサイキッカーSEIZANゲラン(悪霊)を担当し、前者は元より後者は特に中の人ネタとしてまるでヌエのような雰囲気でもある。
第28話に登場したモブ妖怪のうち、オオカミや一つ目小僧型の個体は第8話をはじめ様々なシーンに登場。中にはキャベツが頭になっている妖怪もいるが、総じて正式名称は不明なままであった。
関連タグ
忍者戦隊カクレンジャー 妖怪軍団 妖怪(カクレンジャー) 鵺
マダコダマ:天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャーに登場した、26年越しに玄田氏が演じた妖怪敵キャラ。こちらの怪人のモチーフ妖怪は幽谷響(やまびこ)である。
上級妖怪ヌエ:忍者スーパー戦隊第3作目『手裏剣戦隊ニンニンジャー』に登場する後輩怪人。
デラツエイガー:『海賊戦隊ゴーカイジャー』の怪人で、こちらも敵の首領が息子の為に派遣した腹心である点が共通している。