「おーほっほほ! どう?驚いたオーレンジャー! 私って強いでしょ? じゃ、またね♡」(第41話)
概要
物語終盤より登場する、マシン帝国バラノイアの幹部の一人。バラノイアの二代目皇妃であると共に、本作のラスボスの一人でもある。
詳しい出自については明らかでない部分も多いものの、皇妃ヒステリアの姪であること、そして登場以前よりバラノイアの未来の皇妃として位置付けられていたことは作中でも言明されている。そのヒステリアの言いつけにより、他の惑星にて長らく眠りについていたが、ブルドントの再生・強化と時同じくして彼女からの力を得て再起動を果たし、ブルドントに先んじて地球へと降り立つこととなる。
帝国の三代目皇帝にして、マルチーワの夫たるカイザーブルドントとは、恐らくは成長するまで面識はなかったものと見られるが、作中では初対面の時点で早くも意気投合しており、彼がボンバー・ザ・グレート1世を下して新たな皇帝に就任すると、マルチーワもその最愛最強のパートナーとして地球侵略作戦に取り組んでいくのである。
特徴・性格
いかにもロボットないしアンドロイド然とした、無機質な造形こそ他の幹部級のマシン獣とも共通している一方、人としての要素も含みながらも「作り物」としての趣の強かった以前までのそれ等と比べると、その容貌やプロポーションはより人間に近いものとされている。
また、ピンクと白を基調としたカラーリングや、レオタード的なボディの造形、それに肩口・腰回りに見られるフリル状の意匠などに女性的な要素を有しながらも、その出で立ちはヒステリア以上にスマートかつ活動的なものとなっているのも特徴の一つである。そうした見た目とは裏腹にボディの耐久性は極めて高く、初登場の際には火の玉と化して大気圏に突入し、無傷の状態で地上へと到達。即座に戦闘に移るという離れ業までやってのけている。
その性格は見た目相応の無邪気さと、残酷かつ冷酷なサディストな側面、そしてバラノイアの幹部らしい徹底した機械至上主義が同居したものとなっており、カイザーブルドントがボンバーへの報復に及んだ際には「面白そうだから」とこれに便乗したり、オーレンジャーの公開処刑や最終決戦などのように平然と赤ん坊を人質にとる等、非道極まりない行為を見せている。
他方で、前述した通りカイザーブルドントとの夫婦仲は異常なまでに良好で、互いを「ぶるぴー」「まるぴー」と呼び合い、果ては愛息までも設けるなど、作中でも折に触れてそのアツアツぶりを見せ付けている。年若というのもあろうとはいえ、夫婦仲は良好ながらも夫が妻の尻に敷かれることもままあったバッカスフンド夫婦と比べても、その関係性は明らかに趣を異にしたものであるとも言える。
寝返ったアチャとコチャが手のひらを返した時、罵倒しなかった辺りそこまで陰湿な性格ではないようだ。
性能
その出で立ちに違わず、戦闘においては卓越した運動能力・機動力をもって相手を翻弄する戦法を得意としており、蹴り技を主体とした白兵戦では屈強なガンマジンさえも蹴飛ばせるなど、その実力は折り紙付きである。
専用武器として、光の矢を放つ「マルチアロー」を装備しており、連続しての弓射で雨のように矢を降らすこともできる他、本体を細身の剣へと変形させて近接戦闘にも活用できるなど、遠近双方に隙のない性能を発揮する。これ以外にも手からのビーム、爆発を引き起こす投げキッス等といった攻撃手段も有し、さらにカイザーブルドントとの合体技として、2人でハート型の閃光と化して体当たりを繰り出す「ラブラブペアアタック」も多用される。
作中では1度のみであるが、成人女性の「愛」(※)へと変身したこともあり、その際右目でウィンクを放つことにより、それを目にした男性を催眠術に掛けて洗脳できるという機能も披露している。
この機能でオーレンジャーの男性陣を虜にしてみせる等、人間としての姿でも厄介極まる実力を示したマルチーワであるが、流石に三浦参謀長ほどの「古狸」相手には通用せず、結果としてその優位を覆されてもいる。
(※ オープニングクレジット、および一部ムック本では「アイ」と表記)
作中での動向
ヒステリアの手により目覚めたマルチーワは、前述の通りカイザーブルドントの起動に先んじて地球へと降り立ち、逃亡を図っていたボンバーの前に出現。彼を追撃していたオーレンジャーやガンマジンを難なく一蹴しその別格な強さをまざまざと示してみせた。
が、当然この行動はボンバーへの助け舟などではなく、月面基地へと逃げ延びたボンバーの前に再度立ちはだかるや、自らが目覚めるまでの経緯を明かして彼を追い詰め、後から現れたカイザーブルドントと共にボンバーを徹底的に甚振ると、その身に改造を施しオーレンジャー打倒の走狗として利用した。ボンバーを使ったオーレンジャー打倒、そして太陽破壊作戦こそ失敗に終わったものの、その直後にはカイザーブルドントと共に月面基地にて盛大な挙式を執り行い、バラノイアの世代交代とパワーアップぶりを、人類にも強くアピールしたのであった。
滅多に前線に赴くことのなかった先代とは対照的に、これ以降もマルチーワは皇妃という立場ながらもカイザーブルドントに付き従い、自ら前線に立ってオーレンジャーとも度々干戈を交えるなど、バラノイアによる地球侵略作戦をさらに推進。マシン獣・バラミクロンを投入した大規模侵攻においても、ドリンを消滅に追いやる等地球侵略の完遂に大きく貢献する格好となった。
地球征服後は本拠を月面から地球に移し、愛息まで設ける等正しく絶頂期にあったブルドント夫婦であったが、半年の時を経てオーレンジャーが地球へと帰還、反攻に打って出ると夫と共にこれを追い詰め、さらに彼等が超力を取り戻した後もなお、赤ん坊を人質に取るなどの悪辣な手を用い苦戦を強いてみせたが、人間の持つ勇気を信じて果敢に挑むオーレンジャーの前にはそれすらも意味をなさず、カイザーブルドント共々超力ダイナマイトアタックで手痛いダメージを負うこととなる。
已む無く、最後の手段として自力で巨大化した2人は、当初相対したオーレンジャーロボを数的優位と巧みな連携で苦戦せしめるが、三浦参謀長やキングレンジャーの尽力でレッドパンチャーとオーブロッカーが奪還され、タックルボーイも含めた全ロボが加勢に入ると次第に劣勢に立たされてしまう。それでもなおラブラブペアアタックで反撃を試みるなど、皇帝夫婦としての意地を示したものの、マルチアローをツインブロッケンソードの投擲で叩き落され、再度のラブラブペアアタックも打ち破られた末に、キングピラミッダーのスーパーレジェンドビームによって、カイザーブルドントと共に最期を迎えたのであった。
備考
デザインは阿部統が担当。彼自身が好きな要素、描きたいものが詰め込まれた一体であり、当時韮沢靖が描いていた女性キャラクターのイラストのカッコよさに触発された部分もあることを、後年のインタビューやコラムにて明らかにしている。
また、本作のプロデューサーである髙寺成紀が、この手の女性幹部の在り方に強いこだわりのある人物であったことから、頭部造形についてもそのこだわりを反映する形で一度作り直されている他、デザイン画稿ではやや太めな感のあったプロポーションも、造形に際してより細身かつ頭身を上げる形でアレンジされた。
当初のラフ段階では、決定稿よりも細身かつ幼い出で立ち(ただしロボットなので頭部デザインは実写と同じ)とされ、各部の意匠も後年の『カードキャプターさくら』などにも通ずる、どちらかと言えば魔法少女的なテイストでまとめられていた(直上のイラストも参照)。
後に阿部がマルチーワのドールを自作した際には、イラストレーターの香坂真帆の協力の元このラフを元にした衣装も製作されており、雑誌『宇宙船』のVol.78(1996年秋号)や、阿部の開設しているWebサイトにてその作例を確認することができる(参考リンク)。
海外版
『オーレンジャー』の英語版ローカライズ作品『パワーレンジャー・ZEO』では、プリンセス・アーチェリーナの名称で登場。
台頭したルイ・カブーン(ボンバー・ザ・グレート)を打倒し、マシン・エンパイアの支配者となるべくプリンス・ガスケット(カイザーブルドント)と共に姿を現したという大まかな流れこそ原典に準じているが、同作ではキング・モンド(バッカスフンド)の仇敵であったキング・アードン(オリジナルキャラクターで台詞上でのみ登場)の娘という独自の設定も追加されており、ガスケットとの結婚を認めてもらえなかったために2人で駆け落ちに及び、長らく音信不通となっていたという経緯が語られている。
こうした設定の変更については、恐らくはアメリカにおいて従兄弟同士の結婚が認められていないという事情が影響しているのではないか、と見る向きもある。
性格についても国民性の違いか、ぶりっ子な側面や原典で見られたような残虐性は薄れており、お茶目かつやや好戦的な範疇に留められているなど、どちらかと言えばラミイ(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)に近いそれへと変更されている。弓矢を武器に戦う点も原典と同様だが、同作では矢を受けた相手を洗脳し操る能力も披露している他、テレポートや身体を量子化して物体に忍び込むといった能力も追加されている。
同作でもガスケットとの間に子供を作っているものの、最後の戦いにおいては原典のように敗死には至らず、復活したモンドやプリンス・スプロケット(皇子ブルドント※)がマシン・エンパイアに復帰したのに伴い、ガスケットと共に再び行方をくらますという、原典とは大きく異なる結末を迎えた。
(※ 同作では、ガスケットとスプロケットは同一人物の成長前後ではなく、別個の存在として扱われているが、これは原典ではパラレルワールド的な扱いとされている、OV『オーレVSカクレンジャー』をそのままTVシリーズの流れに組み込む都合ではないかと指摘する向きもあり、前述した結末もやはりそれに関係していると見られる)
関連タグ
石破ラブラブ天驚拳:『機動武闘伝Gガンダム』に登場する技の一つ。所謂「中の人ネタ」として、この技が前出のラブラブペアアタックの元ネタになったのではないかと見る向きも根強く残されている
レー・ネフェル:人間の赤ん坊を人質に取る非情な作戦を決行した女幹部繋がり。
妖怪大魔王←カイザーブルドント/マルチーワ→エグゾス・スーパーストロング