皇妃ヒステリア
こうひひすてりあ
マシン帝国バラノイアの女性幹部で、皇帝バッカスフンドの妻に当たる。
その性分は蛇のように冷酷で、立案・指揮する作戦も人間の本質を抉るようなものが散見される。またボンバー・ザ・グレートに対して敢えて抵抗せず、これを利用しようとするなど、知略派な面も備えている。
また夫と同様にマシン至上主義の持ち主であり、人間の愛や優しさを軽蔑している……のだが、一方で夫にはベタ惚れし、息子のブルドントを溺愛する等、自覚こそないものの家族に対する情愛は持ち合わせている。名前の由来であるヒステリーを体現するかの如く感情の起伏も激しく、怒ると夫も息子も震え上がるほど怖い(実際バッカスフンドがマシン獣に対して「油断するなよ。女は狡賢くて嘘が上手いからな」と忠告した時や、バッカスフンド・ブルドント親子が読んでいる雑誌に載っている人間の女性にデヘデヘしていた際にそれがよく表れている)。
他の家族に比べると前線に赴く場面は多い方ではなく、また三浦参謀長を捕らえた際には処刑のために銃を取りはしたものの、結局使用には至っておらずその戦闘能力は未知数である。
物語後半にて、バッカスフンドがオーレンジャーに敗れると、バラノイアの実権を握ったボンバー・ザ・グレートに息子と共に冷遇されるようになり、挙句皇位継承を賭けた決闘でブルドントを喪い、自らもその亡骸と共に宇宙へと追放される憂き目に遭う。
しかし、実は辛うじて生きていたバッカスフンドの導きにより、ブルドントはカイザーブルドントとなって復活。ヒステリアもこれを受け、未来の皇妃候補として眠らせていたマルチーワに全パワーを与え地球に送り込んで、バラノイアの世代交代への道筋を付けた。
新体制となったバラノイアにおいては第一線より退き、皇太后としてブルドントとマルチーワの戦いを見守るようになる。また、マルチーワにパワーを与えた代償として戦闘力を失い、外観も今までの金色から色褪せたような銀色へと変化した。
前述の通り、冷酷なマシンでありながら人間らしい感情も持ち合わせている矛盾を孕んでいたヒステリア(と、皇帝一家)であるが、一方で彼女の場合、物語が終盤を迎えるにつれてその自覚が芽生えていった点において、夫や息子夫婦らとは一線を画している。
これはバラノイアの地球制圧が完了し、孫に当たるブルドントJr.が生まれて表面化していく。この頃になるとかつての冷酷さはすっかり鳴りを潜め、息子夫婦等の前ですら孫に対する溺愛ぶりを最早隠す素振りもなくなり、彼らもそんなヒステリアを特に気にするでもなく普通に接していた。また、地球へと帰還したオーレンジャーとブルドント夫妻の最終決戦に際しては、彼らが死んだ後の孫の行く末を案じ、更に息子夫婦が人間の赤子を盾に取った際には「その赤子も自らの孫も同じ命である」と痛切な思いを覗かせていた。
そして息子夫婦が戦いの末に敗死し、オーレンジャーが宮殿の内部にまで押し寄せる中、これと対峙したヒステリアは彼らに対しブルドントJr.の助命を嘆願。そして自らは今までの罪を償うべく、隠し持っていた爆弾を起動させ自決するに至った。
「カイザーブルドントはマシンは非情だと言った。でもそうじゃなかったんだ。ヒステリアにも子供を愛する気持ちがあったんだ。マシンにも愛する心があったんだ……!」
その壮絶な最期は、オーレンジャーの「マシン」に対する認識を根本より改めさせ、彼女の願い通り「愛する家族」の命を救う未来にも繋がったのである。