「マシンは永久に死なない。不滅の命を持つ神と同じだ。この宇宙を支配できる唯一の存在なのだ!」(第1話)
概要
本作の敵組織・マシン帝国バラノイアを築き上げた機械生命体。帝国の初代皇帝に当たる。一人称は「わし」。
今から遡ること6億年前、超古代文明によって労働用マシンとして作り上げられながらも、自我と知能を持ち、そして記事冒頭にも示した機械至上の思想に目覚めたことで、他のマシンたちを煽動し人類に反旗を翻すに至った。
その反乱は最終的には鎮圧されるも、一人生き延びたバッカスフンドは外宇宙へ逃れ、バラノイア星にて家族やマシン獣を造り出し、一代でマシン帝国を築き上げるに至った。そして6億年後の西暦1999年、満を持して地球に逆襲を仕掛けてきたのである。
マシンをこよなく愛し、自らの作り出したマシン獣を「愛しいマシン獣」と称する一方で、部下達の失敗や無能さの露呈、それに反逆行為に対しては容赦のない制裁を加えることもしばしばである。
また人間の脆弱さや、彼等の持つ感情――とりわけ情愛をひどく軽蔑・憎悪しており、作戦行動等を通して偶発的にそうした感情が芽生えたマシン獣に対しても、自らの理念から逸脱した存在として特に厳しい姿勢を顕わにし、粛清すらも辞さないほどである。
手にした杖は打撃に用いられるのみならず、非常に強力な光線を放つことも可能で、これが制裁の手段として多用される。第10話のように怒りが頂点に達すると頭脳回路がショートしてパニックになることもあり、目の上に瞼のようなものが重なることで、あたかも目を細めたような動作をする。
このように冷酷にして残虐な性質を備えている一方、自らの「家族」に対しては前述した理念や行動とは裏腹な姿勢を見せることも少なくはない。
妻であるヒステリアとは良好を通り越して熱々な仲であるものの、彼女の激情家なところにたじろぎ気味だったり、時には狸寝入りに及んで蹴り飛ばされたりと、恐妻家な面も折に触れて見せている。また息子のブルドントに対しても、やはり溺愛しながらもどちらが先にオーレンジャーを倒すか大人気なく張り合ってみせたり、かと思えば人間女性のグラビア写真を眺めては父子共々デレデレしたりといった具合に、家族思いな一面やコミカルさを強調する場面もしばしば見られた。
こうした、本人も自覚しているのか定かではない理念と実際の行動との「矛盾」こそが、見ようによってはその性質を引き継いで造られた部下達からの反逆に繋がっているとも言え、ひいては後々の世代のマシン達にも少なからぬ影響を及ぼすこととなるのである。
敗北と継承
バッカスフンドの宿願であった地球侵攻は、オーレンジャーという思わぬ障害の前にその当初から軌道修正を余儀なくされ、その後も敗北に敗北を重ねるな等、正しく屈辱的な推移をたどることとなった。
こうした状況の長期化に業を煮やしたバッカスフンドは、自らのプライドにかけて地上制圧を完遂すべく、地球に眠るマグマのエネルギーを利用し、過去に散っていった多数のマシン獣達を強化再生することで、一大攻勢を仕掛けるという「究極にして最後の作戦」に打って出る。しかしその作戦すらも、オーレンジャーのしかけた「トロイの木馬作戦」の前に頓挫を迎え、彼等の新戦力であるブロッカーロボの猛攻の前に超マシン獣軍団は壊滅。皇帝一家もアジトとしていた大洞窟の崩落に巻き込まれ姿を消した・・・かに思われた。
しかし、それでもなお打倒オーレンジャーの執念に燃えるバッカスフンドは、自らマグマのエネルギーにより巨大化・パワーアップを果たすと、宇宙から隕石となって飛来したスペースメタル製の魔剣を携え、オーレンジャーに対し最後の決戦を挑んだ。
一度はブルーブロッカーを難なく退け、その絶大な強さを示したバッカスフンドであったが、ブロッカーロボの合体により誕生したオーブロッカーとの対決では、息詰まる攻防を展開しながらも自慢の魔剣を折られた末、必殺のツインブロッケンクラッシュを受けて敗北、爆散するという壮絶な最期を迎えた。
バッカスフンドの死は残された家族のみならず、バラノイアという組織そのものにも動揺を与え、かつて自身が追放したボンバー・ザ・グレートの台頭という事態をも引き起こすこととなる。
・・・こうして、志半ばで物語から去っていったかに見えたバッカスフンドであるが、実はまだ完全には死んでおらず、首だけの状態で宇宙へと逃れていたことが物語終盤にて判明する。
この事実が判明したのは、折しもボンバーによってバラノイアの皇位が簒奪された直後であり、その際バッカスフンドはバラノイアより追放されたヒステリアを自らのいる星へと導き、無惨に破壊されたブルドントが復活可能であることを告げると共に、残された全ての力をブルドントに注ぎ込むことでカイザーブルドントとして蘇生・強化させた。
そしてエネルギーを使い果たしたバッカスフンドは、ヒステリアに後事を託すと彼女に看取られながらその機能を停止。今度こそ完全な死を迎えたのであった。
他媒体への登場
決定!これが日本のベスト100
同番組の2002年9月8日放送分「特撮とアニメのヒーロー&ヒロインベスト100」に、バーロ兵を引き連れてスタジオに乱入。オーピンクがおらず、全力を発揮できないオーレンジャーを苦戦させるが、さとう珠緒がオーピンクに変身し、集結したオーレンジャーの超力アタックを浴びて退散した。
同番組への登場により、少なくともTVシリーズ終了から6年余りが経過したこの時点では、撮影用もしくはアトラク用のスーツは残っていたことが窺える。
備考
ネーミングは、ローマ神話に登場する酒の神バッカスと、ダックスフントに由来するもので、その他にも後述のデザインの意図から「憤怒」もかけたものであろうと見られる。
デザインは阿部統が担当。車などのパーツから形状を拾っているものが多いバラノイアの幹部達の中にあって、バッカスフンドもエンジンファンやバンパー、マフラー、ナンバープレートなどといったパーツを取り入れ、色合いもストレートにレトロなところを狙いつつ、布地も組み合わせることで操り人形っぽい雰囲気が目指されている。
また、常に怒っているように見える顔は「怒っている者」として意図的にデザインされたもので、明確に人間とは異なる気色の悪さをイメージしたものとなっている。
後背のように背負った歯車は、造形物ではモーターによる回転ギミックが盛り込まれたものとなっており、最終決戦に際してはこの後背が翼を模したより大掛かりなものへと変化しているが、いずれもギミックやそのサイズ故に相当重たいものとなったらしく、その点についての反省を後年のインタビューで語っている。
CV担当の大平は、スーパー戦隊シリーズには『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)以来の参加であり、そして結果的に特撮ものの最後の参加となった。同作も含めた初期のスーパー戦隊、それに他のシリーズも含め、東映特撮へはナレーターとしての参加が主であっただけに、その長いキャリアに比して役付きでの参加は意外にも極めて稀なケースであり、本作以外の東映特撮では『アクマイザー3』(1977年)にダルニアの父役として出演した程度である。
大平氏は生前声優業界でも最も怖い人物として知られているがオーレンジャーの収録現場でもそれは同様であり、ある日の収録時に声優陣は朝7時に集合し自分達の出番が来るまでJACの控室を借りて待機していたが、オーレンジャー5人の俳優の撮影が遅れて声優陣を8時間待たせてしまい大平氏が激怒、この結果この事件以降オーレンジャー及び以降の戦隊シリーズのアフレコは、戦隊側と悪側が別々の日に録音をするというルールが生まれることになった。
関連タグ
超力戦隊オーレンジャー マシン帝国バラノイア 皇妃ヒステリア 皇子ブルドント
暴魔大帝ラゴーン:『高速戦隊ターボレンジャー』の登場人物の一人。バッカスフンドと同様に敵組織の首領格で、その暴君そのものな振る舞いから反感を持つ配下が度々現れるという点においても共通項が見られる
アクドス・ギル:『海賊戦隊ゴーカイジャー』の登場人物の一人。こちらもやはり敵組織の首領格で、配下に厳しく身内に甘い点でも共通する一方、出番が物語序盤から中盤であったバッカスフンドに対し、こちらは逆に終盤になって登場したという点で相違している
魔神提督:何故か頭部だけ逃げ延びて生存していた者繋がり。しかし魔神提督は処刑されバッカスフンドはエネルギー切れになって尽きている。