バラカクタス
ばらかくたす
マシン帝国バラノイアが開発したマシン獣の一種。作中ではバラカクタス-1(ワン)と、バラカクタス-2(ツー)の計2体が登場している。
その名の通り、サボテンの特徴を人型に落とし込んだような出で立ちが特徴で、両肩には巨大な花状の部位も備えている。この点は2体とも共通しているが、一方で頭部の形状には明らかな差異が見られる他、1の方は頭部が白っぽく身体の棘も赤い、2はボディに迷彩パターンが施され棘の色も黄色い、などといった具合にそれぞれの個性が押し出されている。
主要な能力として、両肩に付いた大きな花から特殊な花粉を放つことができる。この花粉には吸った人間に「機械を喰らう事でその機械の能力を我が物にすることができる」という効果を与える一方、最終的には理性を失い暴れるだけの存在となる、という弊害も孕んだものとなっている。花の姿に化けることもでき、広範囲に花粉を散布する時は主にこの姿を取る。
戦闘向きの能力としては、目から放つ光線や手から発生させる電磁ムチ、花から発射するおしべ爆弾などが挙げられる。
しかしこれら上記した点以上に特筆すべきなのが、この2体が「明確な自我と言語能力を備えている」兄弟機として開発された、という点であろう。
これは従前までの、純然たる破壊兵器然としたマシン獣とは一線を画すものであり、作中でも兄弟ならではの息の合った強力なコンビネーションを発揮した他、1に至っては無意識ながらも兄弟に対する情愛に目覚めるなど、主題歌でも謳われている「心を持たない」マシン獣としては異質さが際立った存在ともなっている。
もっともそのことが、後述する理想を掲げるバッカスフンドの不興を買い、結果として兄弟共々悲惨な末路を迎えたのは、当のバッカスフンドやその一族が最終的に(自覚の有無を問わず)情愛に目覚めたことなども含め、痛烈な皮肉と理不尽さを際立たせる格好となったと言えよう。
剛と隆の兄弟喧嘩の仲裁に入っていた裕司を、バラカクタス-1が急襲。裕司はオーブルーに変身して応戦し、キングブラスターの銃撃で撤退に追い込むが、一方でその最中にバラカクタス-1が放出した花粉を、弟の隆が吸い込んでしまい昏倒。これが思わぬ事態へと繋がっていくこととなる。
程なく意識を取り戻した隆であったが、花粉を吸い込んだ影響は早くも現れ始めており、密かに自宅にあったパソコンやガスコンロを喰らう事で、学校の授業でも問題に難無く答え、さらに前述の兄弟喧嘩の一因でもあったいじめっ子達に対しても、火を噴いて撃退できるだけの力を獲得するに至る。しかしその一方で隆は、兄の剛を下等な人間と見下すようにもなっていた。
その一方、バラカクタス-1は花に化けては各地に出没し、人間に花粉を浴びせては隆と同様に体質を変化させていたが、そこに異変を嗅ぎつけた裕司が現れると、作戦の立案者であったブルドントの呼び出しによってバラカクタス-2も出現。裕司や後から駆けつけた吾郎達と戦闘状態に入る。
廃車置き場に戦場を移しての両者の戦闘は、息の合ったコンビネーションを駆使するバラカクタス兄弟優位に進んでいたが、バラカクタス-2の些細なミスとそれに対する1の激昂が、たまたまその場に居合わせていた剛と隆を巻き込んでしまう。その際、剛が怪我を負いながらも必死に隆を逃がそうとする光景を目の当たりにし、バラカクタス-1に自身にとって未知の感覚を呼び起こさせる事となった。
すると、この様子をモニターしていたバッカスフンドによって、バラカクタス兄弟は突如月面基地へと召還されてしまう。バッカスフンドはバラカクタス-1に対し、彼の中に呼び起こされた感覚が「兄弟愛」であると看破しつつも、その眼前で弟のバラカクタス-2を拘束、兄一人だけの力で人間社会を破滅させるよう厳命する。
かくして再度地球に降り立ったバラカクタス-1は、逃げた隆を探す裕司以外のオーレンジャー4人と再戦。当初こそ数の差で押され気味だったものの、そこに新たに拳銃の能力を得た隆がバラカクタス-1の危機を感知して加勢に及んだため、オーレンジャーが隆を攻撃できないのをいいことに一転して圧倒。レッドのスターライザーを電磁ムチで弾き飛ばすなど、5人揃わぬオーレンジャーを追い詰めて見せる。
だがその間、隆を追って駆けつけた剛の必死の呼びかけにより、隆が正気と元の姿を取り戻すに至り、兄弟は傍らに刺さっていたスターライザーでバラカクタス-1に立ち向かうことを決意。さらにその姿に感銘を受けた裕司も助勢に入り、バラカクタス-1は3人の突然の特攻に遭って身体を貫かれ、再び形勢は逆転。5人揃ったオーレンジャーのキングスマッシャーを喰らって敗北を喫した。
深手を負いながらも月面基地に帰還したバラカクタス-1は、そこでバラカクタス-2が既に磔刑に処され、破壊された様を目の当たりにしてしまう。愕然とするバラカクタス-1に、バッカスフンドはバラカクタス-2が兄と同じ構造を持つこと、そして(構造を同じくするが故に)愛などという愚劣な感情を持つ可能性のあるものは全て排除すると、その破壊に至った理由を告げる。
そして弟の残骸に縋り付いて嘆き悲しむバラカクタス-1もまた、バッカスフンドによっては粛清の対象に過ぎなかった。破壊されたバラカクタス-1の頭部を踏みつけながら、バッカスフンドは、
「如何なる愛もいらぬ。機械の沈黙こそ我が理想。この次こそオーレンジャーに死を。そして、大いなる沈黙が全世界を覆うのだ」
と、オーレンジャーの打倒と自らの信念の貫徹に執念を燃やすのであった。
デザインは大畑晃一が担当。同じく大畑が手がけたバラソーサーのように、明確なモチーフこそ定められながらも漠然とした抽象的なデザインが志向されていたそれまでのマシン獣に対し、このバラカクタスは一転してモチーフにハッキリ動植物が来てしまったことによる難しさや、弱冠の面白くなさがあったという。またコミカルに振るのかシリアスに振るのかが中途半端となってしまい、正直あまり気に入ってはいないことも後に述懐している。
CVについては、1の方を2022年現在唯一のシリーズ参加となる菅原正志が、2の方を津久井教生がそれぞれ担当。いずれもスーパー戦隊シリーズ、ひいては特撮作品へは初出演であり、このうち後者は翌年の『激走戦隊カーレンジャー』にも副長ゼルモダとしてレギュラー出演する等、シリーズの常連格ともいうべき存在へと定着していくことになる。
心を持たないマシン獣:主題歌『オーレ!オーレンジャー』の2番の歌詞の一部だが、前述の通りバラカクタスは皮肉にもこのフレーズに反しており、彼の後にも心を持っているとしか思えないマシン獣が作中で何体か登場することになる。
シュテンドウジ兄弟、ヒトツメコゾウ兄弟:『忍者戦隊カクレンジャー』に登場する、兄弟という間柄として設定されている敵怪人達
ゴクアクボーマ:『高速戦隊ターボレンジャー』に登場する敵怪人の一体。こちらも兄弟怪人の合体によって構成されており、さらに登場エピソードの脚本を井上敏樹が手がけている、皮肉にも主題歌の歌詞の一部に反する特徴を持っているという共通項も有する
ハイエナモズー:『大戦隊ゴーグルファイブ』に登場する敵怪人の一体。バラカクタスと同様に、人間を金属や機械を貪る体質へと変える能力を持つ