「君は思い違いをしている。僕こそが救世主なんだよ…」
「ドン・アルマゲになって解ったよ、宇宙は苦しみに溢れている。だから宇宙を消すんだ!僕が宇宙を苦しみから解放してあげるんだ!!」
「“仲間”…? 僕はツルギの仲間だなんて思った事は一度も無い‼︎ 仲間なんて利用するか、されるかだけだ‼︎」
データ
概要
333年前の宇宙幕府ジャークマターとの戦いで戦死したと思われていたクエルボがドン・アルマゲに憑りつかれ、洗脳された(ただし、クエルボ自身は英雄鳳ツルギを超える力を手に入れる為にドン・アルマゲと取引して力を取り込んだと主張している)姿。
白い甲冑に黒と白の六枚の翼を持ち、色こそ対照的だがドン・アルマゲに酷似した姿をしている。しかし実際は近くで見ると、アルマゲが白い甲冑で全身を覆った様な外見。カラスの頭部もクリアスモークの兜で、喋る際はその奥にある口が動く。
変貌前と同じく2本の釵型片手剣『アルマ剣』(よく見ると変貌前のアルマゲの武器『ダークサイズ』を小型化した外見である)を用いた接近戦を得意とし、持ち手にあるスパイクからビームを撃つ事も可能。頭頂部より放つ強力な紫色の光弾やアルマ剣より放つ交差状の必殺斬撃は強力であり、その実力は(※心身のコンディションが最悪の状態ではあったが)全力のツルギ/ホウオウソルジャーを遥かに凌駕する。
クエルボがキュータマを使う戦士・キュウレンジャーの参謀役だった経験からか、キュータマに対して豊富な知識があったらしく、現代のキュウレンジャー及びその装備を開発したリベリオンの装備でも動作するジャークマターオリジナルのキュータマを製作するだけに留まらず、リベリオン製の装備システムへ干渉してキュウレンジャーをジャークマターの先兵に造り変える技術を編み出し、アントン博士へ供与していた存在なのが示唆される。
そしてその技術成果の一つなのか、専用ツールを使わずキュータマの力を引き出す能力も持ち、これと自分の出身星系の力を宿したカラスキュータマを用いる事で、対象者を絶望のビジョンへ閉じ込める精神攻撃を仕掛ける事が可能。攻撃を喰らったラッキーが見たビジョンの内容からして、対象者の脳裏にある迎えたくない最悪の結果イメージを引き出し、それにドン・クエルボの認知を加えて更に誇張させた光景を見せる事で相手を絶望に追いやる物と推測される。
その頭脳を持ってジャークマターのショーグンとなり、名実共に宇宙のほぼ全てを支配した凄まじい実績や絶大な地位・権力等を有するも、正体を現して以降はツルギを心身両面より苦しめる事を優先していた節が強く、その為に他のキュウレンジャーへの対処がなおざり気味だったりと手順の悪さも目立つ。
それに加えて、自分の有利な状況を突き崩されると著しく動揺して隙を晒し、そのまま押し切られてしまうという、超巨大組織のトップには似つかわしい精神的な脆さも見せている。
劇中の主な行動
本編開始前まで
ドン・アルマゲと融合するとまず、親友のツルギへの劣等感からツルギとオライオンを抹殺するべく自らの分身をコールドスリープ中のツルギの下へと送り込み、(未来からやって来た別のツルギではあるが)一度は殺害に成功する。
その後、ドン・アルマゲと融合した事で全宇宙に住む全ての生命を悲しみや苦しみといった矛盾から解放するという彼の目的を知り、その願いを叶えるべくジャークマターを再結成する。
ジャークマターが行った圧政の数々は人々を矛盾から解放するどころか、人々を悲しませ、苦しませる矛盾その物だったが、クエルボ及び彼と融合したドン・アルマゲは人々が矛盾から解放されないのはこの宇宙が矛盾に満ち溢れている為と判断し、一度宇宙を破壊した上で新しく作り直す事を決める。
こうして、宇宙を破壊する為の爆弾の原料となるプラネジュームの搾取が始まり、宇宙は究極の救世主を待つ事となる。
Space.44・45
前話においてツルギに自らの正体を明かした後、自身とツルギの出会いの地であるカラス座系惑星・ベローナで再会。ツルギが自身の事をキュウレンジャーに話さなかったのを確認すると、自ら正体を明かしチキュウを第二のプラネジューム爆弾に変える事を仄めかす発言を残して撤退する。
そして超弩級ビッグモライマーズに乗りチキュウへ来襲。遅れてやって来たツルギ達の前に現れ、彼を挑発しながら交戦。圧倒的な実力で身体が限界に近付いているツルギを圧倒して変身解除へ追い込んだ後、ツルギを追って来たラッキーに自身が宇宙を破壊した後憑依、新たな宇宙と化す事で全てを救済すると言う最終目的を語った。
当然ラッキーには理解されず反発された為、アルマ剣のスパイクから光線を放って始末しようとするが咄嗟にツルギがラッキーを庇って光線を喰らい重傷を追う。そうしてボロボロになり、もう限界が近いかつての親友を一瞥した後、間もなく今の宇宙は滅び自身による救済がなされる事を告げ撤退した。
Space.46
全員出撃を果たしたキュウレンジャーがスーパーキュウレンオーやリュウテイオーで超弩級ビッグモライマーズを破壊しようとする中、自身の力でバリアを展開してスペースロボ達の攻撃をシャットアウト。同時に巨大ツヨインダベー軍団を召喚しつつ立体映像越しで姿を見せ、自身を引き離さない限り超弩級ビッグモライマーズには手出しが出来ないと挑発する。
程無く、モライマーズ内部に突入して来たツルギとラッキーを直々に出迎えて交戦。全力を大いに発揮して圧倒した上、「ツルギの“盾”になった事で自分が見下されたと思っていた」「それでも力の無い自分が後世へ名を残す為“盾”になった」と言う嫉妬に劣等感と矛盾が混ざった本音を吐露。更に攻撃を畳み掛けて変身解除へ追い込んだラッキーへ斬撃を浴びせたが、それをツルギが咄嗟に庇う。
これにより今のツルギが“盾”になれる相手を見付けていた事を確信、更に嫉妬を燃やしたドン・クエルボはカラスキュータマの力を発動。ラッキーを爆発寸前のチキュウを前に、バトルオリオンシップ内のブリッジで絶望に心折れたツルギ以外の仲間達に取り囲まれる幻を見せ、出口のない絶望へと落とそうとする。
しかし、出撃前に仲間達から聞いた『平和になった宇宙でやりたい事』を心の中に刻んでいたラッキーはいつものポジティブシンキングを燃え上がらせてオリオン砲を起動・発射。崩壊するチキュウを消し飛ばす事で出口の無い絶望に風穴を開け脱出を遂げた。
この有り得ない事態に動揺している間にスティンガーとナーガも遅れて参戦し、シシレッドオリオン・サソリオレンジ・ヘビツカイメタル・ホウオウソルジャーとの決戦に突入。だが今度はシシレッドオリオンの召喚したキューザウェポンやリュウツエーダーを持ち替えて戦うオレンジとヘビツカイメタルに散々翻弄された挙句、それで出来た隙を突かれて超弩級ビッグモライマーズの外へ放り出されてしまう。
そして、これによりバリアが消えたのを見逃さなかった残りのキュウレンジャーはスペースロボ2体でオリオンビッグバンキャノンを発射。超弩級ビッグモライマーズを破壊してチキュウと宇宙の消滅を阻止した。
その光景を放り出された先で見せ付けられたドン・クエルボは現実を受け入れられず激昂するが、それを見てラッキーは「諦めなければいつか絶対に願いは叶う。俺は…俺達は信じてここまで来た!俺達はお前とは違う‼︎」と高らかに叫ぶ。
そしてその状態からインフィニッシュブラスト・オールスタークラッシュ・フェニックスエンドを喰らい敗北。身体よりドン・アルマゲが抜け出しクエルボの姿へ戻るが、宇宙を自身の所有物にする執着は捨てられず釵を片手にキュウレンジャーに襲い掛かろうとした為ツルギに斬り捨てられて死亡、身体は灰となり散っていった。
直後の展開を見る限り、不死の身体を求めていたアルマゲにとってドン・クエルボとしての姿は本命の憑依対象であるツルギを誘い出す“囮”でしかなかった模様。内心に破滅願望を抱えるクエルボの考えをジャークマターの組織運営に反映させたのも、全ては依り代であるクエルボが自らを手放さない様にする方策だった様だ。
ドン・アルマゲ(素体)
ツルギを介してプラネジュームを摂取、自身の身体を完全に蘇らせたドン・アルマゲの本来の姿にして他の生命体に憑依していない素体の状態。Space.47でラッキーの作戦によりツルギから引き剥がされた為、この姿をキュウレンジャーの目前に晒す事となった。
ドン・クエルボが先に登場した為、それに引っ張られる形で背中の翼と鳥型の兜を除いた姿が借り物臭くなっているが、実際はアルマゲ本来の姿にクエルボが影響を与えてドン・クエルボになったので、因果関係は逆である。
全体的にはアルマゲが白い鎧に着替えた様な姿。頭部は肥大化して飛び出ていた脳髄が引っ込んでおり、耳部分にあった触角が頭頂部に移動している。
ただし他者に融合した形態や分身と比べて大幅に戦闘力が劣るらしく、この姿を晒したアルマゲはすぐさまツルギと融合した際に造り出した“生命体をプラネジュームに変換して取り込む能力”を発動、全宇宙の命を我が身に取り込んで最終形態に変貌している。
その最終形態が敗れて能力を喪失、Space.Final終盤にこの姿へ戻った際は悪足掻き気味で両手から電撃を放つも、救世主の使命を達成するあと一歩の所まで来たキュウレンジャーには足止め程度にしかならなかった。
公式名称はドン・アルマゲ(新)。新は『新生』の略と思われる。
“救世主”を名乗った者の、誰よりも自分を見下し続けた内面~ラッキーのifとして~
“ドン・アルマゲの依り代”と言う立場でならSpace.1の時点で既に物語へ登場していたクエルボだが、その本性と正体を明かしてからは僅か3話で退場してしまっており、一見キャラの扱いが雑に見える。
しかし結局、Space.46で発した薄っぺらい二言の本音こそがクエルボの全てだったと言える。二つの本音より矛盾を除いて組み合わせると浮かび上がって来るのは「ツルギと違って無力で目立たない自分が嫌いだった」と言う自己嫌悪であり、クエルボ以外の他人にはどうでもいい事である。
だが困った事に、クエルボは自らの自己嫌悪を受け入れず雑に扱い続けた。自分より遥かに優れた面が目立つツルギの為に尽くし宇宙を救う事すら、それを自分が抱える自己嫌悪へと見せ付けて比較、『どうでもいい』と見下す手段になっており、そうした結果いつの間にか自分にまつわる良い事・悪い事の全てが自分の自己嫌悪をバカにする道具へと変わっていた。
※ツルギの回想に登場した際のクエルボは物語が進む度に時間軸が過去へ遡っていたが、それに反比例して自身のネガティブさを垣間みせる描写が強くなっていた。そして、表向きツルギと死別する事となる最初の回想でのクエルボにはネガティブさが殆ど無かったが、これはどうやら自分の自己嫌悪を見下す手段がストレートな物からツルギの役に立って尽くす物にシフトした事を表していた模様。
勿論、ツルギと別れる時のクエルボも自分の命と引き換えでアルマゲを倒せたのなら、心より満足しあの世へ旅立っただろう。だが彼の心に付け込む隙を見つけた瀕死状態のドン・アルマゲはクエルボに憑依、「矛盾に満ちた宇宙を救うには一度全てを破壊して自分が宇宙になるしか無い」と騙る事でクエルボが自分の自己嫌悪を見下す手段を新しく提供。
これにまんまと魅せられてしまったクエルボは本来アルマゲの手駒だったジャークマターの組織体系を大幅に組み替えた上で、宇宙を破壊する前準備の為全宇宙への侵略行動に没頭する事になる。
宇宙その物になって全てを救う“救世主”となった自分を、無力で目立たなかった頃の自分へ見せ付ける為に…。
そしてクエルボと同じく、心の底にしまった自分の認められない自分を嫌っていたのが物語序盤におけるラッキーだった。Space.11・12において、自分のラッキーを信じ続ける信念が破綻しアンラッキー(=無力)だった過去を思い出す様は解かり易い自己嫌悪の姿である。
だがクエルボと違い、ラッキーは仲間達からの叱咤激励を貰った事で今の自分が昔と違う事を自覚。それでいてそこに逃げるのでは無く、心の底にあった認められない自分と向き合い受け入れる事も行った(実質自分で自分を救った)結果、過去を乗り越えて著しく成長(後に完全克服)。その上で更なる経験等を積み重ねた結果、自分は勿論周りにも“救世主”として認めて貰える人物となった。
即ち“認められない自分への態度”から見れば、ラッキーとクエルボは表裏一体だったと言える(※2人と深い関係を持つツルギが自分を叱る姿を見て面影を重ねた事、ラッキーのチェンジしたシシレッドオリオンがドン・クエルボと同じく白い姿である事からも暗示されている)。
自分への自己嫌悪は他人に取って“どうでもいい”物だが、その認識を自分自身が信じてしまえば自己嫌悪を晴らす事が困難になる。この状態から抜け出すには今現在の自分と認められない自分が違う事を自覚した上で認められない自分を受け入れてあげるしか無いのだが、今現在の自分がやった事に胡坐を掻いて認められない自分と比較、認めるのでは無く見下してしまう事を繰り返す(=まだ自分の自己嫌悪を“どうでもいい”と信じ込んでいる)場合も多い。
この堂々巡りに嵌らず、自分の過去を乗り越えるチャンスを物にした結果人としての厚みを増す下地を得たラッキーに対し、ツルギとの関係を自分の自己嫌悪を見下すのに費やし続けたクエルボはアルマゲを介して全宇宙を支配出来る様になっても内面は捨てられない自己嫌悪を抱えているだけと言う、人としての厚みが無い存在となってしまった。
補足:アンラッキーのメカニズムとドン・アルマゲのルーツ
クエルボが道を踏み外す切っ掛けとなった“認められない自分を見下す態度”は、彼のみならず誰でも『できない』と思った時にしがちな物である。勿論キュウレンジャー側も例外ではなく、クエルボと表裏一体の関係であるラッキーですらこの面を終盤直前まで引き摺っていた。
しかし厄介な事に、この態度は「それをするのが正しかった」「誰かの為にそうした」等と合理化する事も出来てしまう。そうすれば自分自身を慰められる他、『できない』事を乗り越えるのを諦められるからである。
だが合理化はタダでは出来ず、何らかの“対価”を払う必要がある。この“対価”は千差万別ではある物の、最終的には合理化した本人をより『できない』状態にする形で現れてくる。
※クエルボの場合は『ツルギから自立出来ない』と言う形で“対価”を払っており、それによって“ツルギとの関係に拘る⇒ますますツルギから自立出来ない”の悪循環に陥っていた。
……これこそが、人が不幸(アンラッキー)に陥る=『できない』状態を拗らせるメカニズムの根幹であり、最もありふれた傲慢でもある。
人が傲慢になるのは力や物等を手にしたからでは無く、自分自身を筆頭に『見下す対象』を作り出すからなのだ。
そして、このメカニズムに嵌りアンラッキーになった者達の思念から誕生したドン・アルマゲが、生まれながらに自身以外の全てを見下す傲慢な独裁者だったのは、アンラッキーになった者達の自分自身を見下す悪い面がアルマゲの人格に反映されていた為に他ならなかったからである。
アルマゲの騙りを信じて心を通わせた筈のツルギと敵対し、自分が持っていた・造り上げた物を全て売り渡したクエルボは、結局最後の最後で裏切られる惨めな末路を迎えた。
しかしそこまでアルマゲが上手く立ち回れたのは、クエルボの精神構造が自身のルーツその物だったからだった。
そしてアルマゲはクエルボをダシとして、『(不死身の力を失って)生き続ける事が出来ない』と思っていたツルギの心の隙を広げる事に成功。精神状態をクエルボとほぼ同じに追い込んだ上で憑依、彼の不死身を宿せる身体を悪用して自身の最終目的を果たそうとした。
余談
漆黒の身体に頭頂部の脳髄が剥き出しになったドン・アルマゲの外見はハカイダーに似通った姿だが、このハカイダーは『白いカラス』と言う名のバイクを愛車としている。ドン・クエルボの外見が白いのは星座ネタ以外にも、ハカイダーにそっくりなアルマゲに長い間憑りつかれていた=乗り物扱いされていたと言うシャレを込めている為だろうか。
またバイク名の『白いカラス』は、“己の信念に従い群れからはぐれた一匹狼”と言うハカイダーのダークヒーロー的美学を象徴したネーミングなのだが、これは自分勝手な独善を全宇宙に押し付けようとしたら結局一人だけ孤立、惨めな最期を迎えたクエルボと真逆の物になっている。
公式サイトでは『ドン・アルマゲ(クエルボ)』と呼称されている。
このスーツはドン・クエルボが倒されてからはパーツを外す等して、ドン・アルマゲの終盤の姿(素体)として流用された。
因みに白と黒が混ざったカラーリングと翼が印象的な外見は堕天使のイメージであり、アルマゲが悪魔じみたかつての姿から、神を模した最終形態に変貌する過渡期の形態である事を表している。
創作物で“不幸体質だが優しくていい人”と言うキャラテンプレはよくあるが、それがクエルボの様に“自分自身を見下したのを合理化している=自分で自分の足を引っ張っている”と言う事実の裏返しである場合も多かったりする。
周りに振り回されがちだが優しくていい人、なのに嫌味や不自由さを感じさせる不幸体質(受難)キャラは概ね該当していると考えていい。
因みに本当の意味で“不幸体質だが優しくていい人”とは、周りに振り回されても自分と周りを等しく肯定しようとする人である(※彼などがその代表格で、あの特異点も同じ条件を満たしている)。そして、早い段階で心の傷を受け入れて自分のポジティブシンキングを完成させたラッキーは勿論の事、彼も含めた仲間同士で協力し各々の『自分を見下す態度』を克服して一つに結束したキュウレンジャーもまた、上の条件を自然と満たしていた。
関連タグ
宇宙戦隊キュウレンジャー 宇宙幕府ジャークマター クエルボ(キュウレンジャー)
ドン・アスラン:同じくアルマゲの影響を受け、『ドン』の二つ名を与えられた戦士。
絶対神ン・マ:戦隊シリーズで浪川氏が演じた悪役。こっちは完全なるラスボス。なおそのモチーフはクトゥルフ(一番の側近が『ダゴン』である事からも明らか)で、『宇宙からの侵略者』と言う点にドン・アルマゲとの共通点を見出せる。髑髏顔と縦長の頭頂部を持った頭部も類似する。
ミカエル(人造人間ハカイダー):ディストピア社会の支配者が造り出した、“建前の”正義を司る白き戦闘ロボット。その外見や偽善・独善ぶりに加え、一番近しい者から内心で裏切られている点が似通っている。因みに声を担当した井上和彦氏はこれが縁で、後述のジニスを演じる事になった。
ジニス:前年の戦隊首領であり、醜くて弱い元の自分を嫌って見下した末に他者をゲーム感覚で玩ぶ様になった救い様の無い外道。
結局、ドン・クエルボの精神構造はジニスと同じ代物でしかなかった(※歪んだ善意を周りに押し付ける分、性質の悪さでは上回っている)。
ウルトラマンキング(ウルトラマンジード):ウルトラマンベリアルによって破壊されそうになった宇宙に憑依して一体化、修復する御業をやってのけた。間違い無く、ドン・クエルボの思い描く宇宙救済のイメージは(宇宙の破壊も含めて)これである(※ご丁寧にも同じく、地球を中心として宇宙破壊が起こった)。
しかしこれは、ウルトラマンにとってのウルトラマンであるキングだからこそ出来たのであって、アルマゲから借りた力に酔っているだけのドン・クエルボ=クエルボでは絶対再現出来ないのは明らかである。
ウルトラマントレギア:クエルボと同じ精神性を持ち、借り物の力で数々の悪行を尽くした怪物。
カギ爪の男:同じく今ある世界を滅ぼした(こちらは惑星一つと小規模)後、自分自身を一体化させた物に作り替えようとしたラスボス。だが、肝心の世界を作り替える方法は成功する確率が全く無い代物であり、それを当人のカルト的なカリスマによって強引に実行しようとしていた。
しかも本人の本質は衝動的に人を殺めても身勝手な理屈へ逃げる(本人自身はその理屈を本気で信じている)善人の皮を被った狂人であり、仮に計画が成功しても世界中の人間にこの思想が植えつけられるというとんでもない生き地獄が出来るのが確定していた。
アナキン・スカイウォーカー:映画『STARWARS』にて浪川氏が吹き替えを担当したキャラクター。彼もまた師匠への劣等感や大切な人を守る為に巨悪と取引して闇堕ちし、ダース・ベイダーとなった。但し、クエルボは自身で墓穴を掘った結果堕ちたのに対し、こっちの原因は自身に対する扱いや、弟子が受けた理不尽な仕打ちなどの所属組織に対する不満も遠からず関係している。
RD:ゲーム『ACV』にて同じく浪川氏が担当したキャラクター。自身が死の恐怖を感じた存在を容易く片付けていく主人公に畏怖し、それを越えるべく敵の口車に乗って離反するも、最後は敵わず同様に焼き尽くされた。ちなみに搭乗機は元々アルマゲと同じく谷氏が演じていたレジスタンスリーダーのジャック・バッティが搭乗していたヴェンデッタであり、更にその頃から残っていた左肩のエンブレムは破壊された際に黒く焼き焦げた他、シリーズ初期の作品においてプレイヤーを始めとする傭兵達はワタリガラスを意味する「レイヴン」と呼ばれている等、意外に共通点や連想させる要素もある(蛇足だがついでに言うと、彼をそそのかした人物は担当者が同作発売の前年作品にてレギュラーキャラを演じていた為、こちらも見様次第では悪落ちといえるかもしれない)。
五河士道:「世界がお前を否定しても、俺はお前を否定しない!」と言う信念の元でヒロイン達を救って来たのだが、その一方で“義妹の価値観を使って自分の妄想を『恥ずかしい』とバカにする(※)”“『取り柄や共感される所の無い自分が女の子複数人と付き合っているから学校の連中に嫌われる』と心の何処かで思い込む”等、自らのトラブルを自分を見下す形で済まそうとする傲慢さを見せており、それを『どうでもいい』と言い張って合理化する目的でもヒロイン達を救っている節がある。
※Space.4におけるラプターとスパーダのやり取りの様に、元々自己満足(=一人遊び)目的の妄想へ他人の価値観が入る隙は無く、そのイメージは価値観元の相手へダイレクトに跳ね返る。したがって、そこで他人からのマイナス方向の価値観を信じてしまえば、その相手は“自分の妄想を否定する自分”を投影されてイメージが悪く歪んでしまう。
その為か、上の信念は「自分が彼女達の唯一の理解者兼世界の嫌われ者になってやる」と言うニュアンスが強く、捻くれた価値観を窺わせている(※大切な人の為なら“汚れ役”へなろうと安易に考える点はこの兄弟と同じ。『大切な人“だけ”を助けようとする高校生』のポジションが弟とほぼ一致するが、他人を優先する人の好さがブレない点は兄の方に通じる)。また、合理化の“対価”として学校等、世間体での肩身が狭くなっている。
ただし、こうした内面のズレへ付け込もうとする者は彼の周りに現れなかった。しかしズレに気付くチャンスも悉く見逃しており、その結果“万人と心を繋げる術”を喪失。それ故に物語終盤、ヒロイン達を失って途方に暮れる状態から抜け出す手段を見付けられず、癒えない喪失感を抱えたまま一年間燻る事になった。