曖昧さ回避
- 『人造人間キカイダー』に登場するライバルキャラクター。この記事にて解説。
- 『サンダーマスク』に登場する魔獣。→砂地獄魔獣ハカイダー。
概要
石ノ森章太郎原作の特撮ドラマ『人造人間キカイダー』に登場する、キカイダーのライバルキャラクター。
ハカイダー(人造人間キカイダー、及び01版)
キカイダーをハカイせよ、ハカイせよ!
CV:飯塚昭三(氏にとっては初めての二枚目役であったので思い入れがあるという)
キカイダーを倒すために作られた人造人間、通称「サブロー」。その戦闘力はキカイダーを遙かに凌駕している。光明寺博士によって作られたキカイダーの弟に当たる存在。悪役でありながら誇り高く、正々堂々とした勝負を好む。
その頭部にはプロフェッサー・ギルによって生みの親である光明寺博士の脳が埋め込まれており、キカイダーを牽制するための盾となっている。
脳が頭部に納められているためサイボーグ(改造人間)として扱われることが多いが、実際に脳が自意識を持ったままの「サイボーグ」は、後述(リンク先)のギルハカイダー(萬画版設定)と戦極ハカイダーのみである。
俗に言う光明寺ハカイダーは、頭部に人間の脳が詰まっただけのロボットであり、ハカイダー本人の意思や個性は光明寺博士とは別であった。
しかしこの脳がハカイダーの弱点ともなっている。
特撮版では定期的に脳の血液交換を必要とするため、ウルトラマンのような活動限界時間が存在する。
萬画版やアニメ版ではジローやミツコを守ろうとする光明寺博士の意思が、ハカイダーのボディを乗っ取ることがあった。
人間態サブロー(特撮「人造人間キカイダー」版)
ライダースーツを纏う青年。投げナイフを得意とする。
作中では光明寺博士に作られた人造人間と称して光明寺ミツコ・マサル姉弟に接近し、誤解からキカイダーを父の仇と思い込んだマサルを利用するといった狡猾な一面も見せた。
登場時は口笛と共に現れ、変身時には短剣を顔の前にかざすといったポーズを取る。
キカイダー01ではこの姿で現れることはなく、様々な姿の人間に変装していた。
総じてヒーロー番組におけるアンチヒーローの完成形であり、「ダークヒーローの頂点」と呼ばれている、世代を超えた屈指の人気キャラクター。登場時には専用BGM「ハカイダーのうた」が流れる。
胸部に内蔵された悪魔回路は良心回路の対に当たる。
愛用しているバイクの名は「白いカラス」で、群れからはずれた一匹狼という意味があるらしい。サイドマシーン同様、飛行能力やロケット弾の武装などが仕込まれている。
小説版でも「ホワイトクロウ」なるバイクに乗っていた。
高周波弾を発射する特殊銃で、反動の大きさからか、利き手である左手の下に右腕を添えて使用する独特のポーズを取る。「敵に後ろを見せるのが嫌いな性分」のため、飛び道具を持たない相手には威嚇射撃程度にしか使用しない。
なお光明寺博士は右利きであり、左利きなのは搭載されたAIの癖(バイクを操縦しながら銃撃できるようにプログラミングされているため)である。
格闘戦では、「月面飛行蹴り」「地獄五段返し」「ギロチン落とし」などの得意技を持つ。アニメではショルダータックルやラリアットを得意技としている。
対キカイダー用の切り札として製作された存在ではあるが、キカイダーとの真剣勝負を優先するあまりダークの作戦さえ無視するようになったため、プロフェッサー・ギルからは裏切り者と見なされることになってしまう。
そして自分を差し置いてキカイダーを倒したアカ地雷ガマを激情のまま破壊したことで、名実ともにダークの裏切り者となってしまう。
「俺は・・・俺はなんだ! アカ地雷ガマは倒した! キカイダーは死んだ! これから俺はなんのために生きていくんだ!」
「俺の目的はなんだ。こんな姿でどうやって生きていくんだ!!」
「憎い! 俺を作り出したプロフェッサー・ギルが憎い!」「殺す! ギルを殺す!」
生きる目的を見失ったことで、その激情は自身を生んだプロフェッサー・ギルへと向けられる。しかし苦し紛れにギルが言い放った「お前を作ったのは光明寺博士だ」という言葉に唆され、脳を奪われた光明寺博士の殺害に向かう(機能維持に光明寺博士の血液を必要とするハカイダーにとって、自殺行為と言えるものである)。
だがそこで不完全ながらも修理されたキカイダーと出会い、「その体で力を出し切れんだろう」とサブローの姿に戻り、ジローと決着をつけるために戦う。
激戦の末、ハカイダーの姿に戻り戦うも、邪魔に入ったアンドロイドマンと戦ううちに白骨ムササビの奇襲を受け重傷を負ってしまう。キカイダーに白骨ムササビの驚異的な強さを告げた後、
「どうせやられるなら俺はお前に・・・お前にやられたかったぜ、キカイダー・・・」
と言い残し機能を停止した。
そしてその脳は無事、光明寺博士の肉体へ戻されることになった。
ギルハカイダー及びハカイダー四人衆
「人造人間キカイダー」において一度は倒されたが、続編「キカイダー01」にてシルバー・レッド・ブルーの三色ハカイダーを配下にハカイダー軍団を結成し復活。その際プロフェッサー・ギルの脳を移植されたため、ファンからはギルハカイダー(関連書籍や当時の雑誌などでは、ボスハカイダーやブラックハカイダー)と呼ばれている。ブラックドラゴンへの変身機能、ハカイダー四人衆による「ガッタイダー」への合体機能を持つ。
『キカイダー』の頃との違いは、顔の稲妻の鋭角さや、胸に刻まれた十字傷など。またギルが右利きのため、利き手が右手になっていることも特徴として挙げられる。
シャドウ在籍の頃にはレッド・ブルー・シルバーの傷も胸に刻まれるようになった。また、ジローを苦しめるべくギルの笛を吹くときもあり、その時にのみマントを着用する。
しかし使った脳が悪かったのか(ギルは最後、発狂していた)、性格は先代とは打って変わって小物臭く卑劣。美的感覚が真逆で美人を見ると苦しみ、不細工なロボットに欲情する。番組途中でギルの幽霊のパワーで設定上は10倍に強化されたにもかかわらず、トラックを襲ってミカンを強奪したり、ワルダーのために犬を殺して回ったり、ビジンダーレザーで死亡したり、半ばギャグキャラになってしまったことでハカイダーファンを嘆かせた(1987年、今は亡きケイブンシャから発刊された「怪獣怪人ベスト600大百科」内の「ハカイダ―ものがたり」によると彼の性格は組み込まれた脳の持ち主に左右されると書かれている)。
それから月日が経ち、キカイダー01 THE ANIMATIONで再びその姿を現した。ギルハカイダーだが設定は特撮版ではなく石ノ森章太郎の萬画版をベースにしているため、ギルの声かつ堂々とした悪の親玉ぶりを披露した。
なお原作萬画ではビーム・ショット・ガンと十字剣という武装を用い、また口笛でジローの良心回路を狂わせる機能を有する。その機能でミツコを殺させようとするなど、特撮版で見られた美学は窺えない。また、萬画版では右利きである。
キカイダーの前に現れ堂々と宣戦布告したのち、光明寺博士の脳を傷つけることを避けようとするキカイダーを口笛で操って暴走させる。
挙句、分別を失ったキカイダーを純粋に実力で破ってダーク基地に連れ帰るが、その内部に光明寺博士の意思が芽生えていることに気付いたギルの差し金で、全身からエネルギーを抜き取られた末、光明寺博士の意志でキカイダーを再起動させて倒れた。
光明寺博士の脳移植手術が完了した後、そのボディはプロフェッサー・ギルが「未来永劫生きるため」に使用される。
派生作品
MEIMU作の漫画『キカイダー02』では、光明寺博士の息子である一郎の脳を頭部に収容して登場。
ジローの抹殺を表向きの使命としているが、ギルの目的は、地球環境を悪化させて人類を絶滅させた後、その荒涼たる大地から新たに地球を再生させる際に、自分の脳のキャリアーとしてそのボディを用いるという、最初からギルハカイダーを前提としたものだった。
なお、この作品では「ハカイダー」と呼ばれず、あくまでも「サブロウ」が正式名称(ただし、ギルの口から「ハカイダータイプの人造人間」というセリフが吐かれている)。
ジローを付け狙うが、その最中、瘋癲和尚製の六体の「01」との戦いの中で、ミツコが覚醒させたプロトタイプ01のサンライズビームを直撃され、胸部に深い創を負う。
それがきっかけとなり、光明寺一郎の自我が完全にサブロウのボディを制御し、良心回路を完全にしたジローを覚醒させ、ダークを裏切る。
その後、ミツコやジローと共闘し、ダークの本拠地に至るが、血液交換の不備で活動限界を迎え、かつ最終兵器「アーマゲドンゴッド」によるナノマシン攻撃の影響で機能が低下したところを、同じくナノマシンで操られるイチロー01やタイプ0達の襲撃によって破壊される。
『人造人間キカイダー THE ANIMATION』、漫画『イナズマンVSキカイダー』では量産型のハカイダーが登場している。
2013年7月に発売された「人造人間キカイダーTHENOVEL」ではキカイダーの左半身となった戦闘用ロボット「”フュージティブ・フロム・ヘル”」の強化量産型のプロトタイプとして登場。この作品では用途の都合上、悪魔回路が頭脳となっているため頭部は文字通りのがらんどうである(スカールのオマージュとも考えられる)。起動後はキカイダーに対する盾としての役割として、光明寺博士の脳を埋め込まれることになるが、それによる人格への影響はない模様(ただし、脳の影響かは不明だが、後半に人間味を匂わせる)。
ギルはハカイダーを大量生産し、戦車や戦艦の乗組員も全員ハカイダー化した機械だけの軍隊をつくろうと目論んでいた。
人間態はやはりサブロー。作中の描写ではジローより年上に見える模様。
テストで対戦相手(ダークロボット)を全て完全破壊し、ギルへの忠誠をまるで持ち合わせないどころか容赦なく罵倒し、挙句の果てにミツコに対して平気で瀕死の重傷を負わせるなど、ギルハカイダー顔負けの唯我独尊で残忍極まりないロボットとなっている。
その一方で特撮版と遜色ない正々堂々としたプライドの高い性格をしており、それ故に光明寺博士の脳が内蔵されていることを良しとしない潔さと「キカイダーを倒した後はどうするのか?」という問いかけにも揺らがない芯の強さも備えている。
特撮版同様の固有技、及び種々の格闘技をマスターしており、キカイダーとの戦闘で「月面飛行蹴り」「地獄五段返し」、ダーク破壊部隊のブルスコング、ブルーバッファロー、アオタガメとの戦いで「ギロチン落とし」を使用した。
最終決戦の前には、自らの意思で光明寺博士の脳を取り除いてキカイダーと同レベルの電子頭脳を頭部に搭載(光明寺博士の脳は元の肉体に返還された)。
ダーク破壊部隊のデータを元にキカイダーを圧倒するが、光明寺博士の家族を亡き者にしたギルの卑劣さと、生命を顧みないハカイダーの態度に怒るキカイダーの反撃で追い詰められ倒される。そして、キカイダーと全力で戦えたことを喜びながら爆炎の中に消えて逝くという、アンチヒーロー冥利に尽きる最期を遂げた。
また、ダーク本社で生産されていたハカイダータイプの量産システムがキカイダーによって破壊されるものの、最初に生産された黒・赤・青・銀の1セットの詳細が知れなくなるというハカイダー四人衆結成を連想させる描写がある(作者は機会があれば『01 THE NOVEL』も書く気なのか、作中では他にも『シャドウ』の名前と関係者が出てきたりと明らかに続ける気満々な描写が散見される)。
映画『キカイダーREBOOT』及び『仮面ライダー鎧武』に登場したハカイダーについては、ハカイダー(REBOOT)を参照。
人造人間ハカイダー
俺は誰だ… 俺はいったい、誰なんだ…
貴様が正義なら・・・俺は悪だ!!
監督:雨宮慶太、脚本:井上敏樹という布陣で製作された劇場作。セガサターンのコンピューターゲームで続編も制作された。
本作でのハカイダーは(展開上善玉で、ディレクターズカット版では更に強調されるシーンもあるが)原作とは完全にパラレルであり、為政者によってゆがめられた「正義」と「秩序」を破壊するアンチヒーローとして描かれている。デザインや設定は違うが、ハカイダーの正々堂々としたプライドの高いキャラクターはそのままであり、劇中での活躍も相まって非常にカッコイイため、初代ハカイダーと同じく愛されている存在である。
武器はやはり「ハカイダーショット」であるが、拳銃ではなくレミントンM870をモデルにしたショットガンである。また、隠し兵装として右腕にアームショットを、胸部に切り札である破壊砲を内蔵しており、ミカエル戦での切り札として活躍(後者はディレクターズカット版で存在が判明)。また、掴んだ相手に電撃を浴びせる事もできる他、怒りが頂点に達すれば周囲のものが超自然発火現象を起こす(トンファー・カッターという武装もプロット段階では存在していたが、未使用)。更に人間に対しては素手のパンチさえあれば簡単に殺害できるレベルであり、防御力と再生力も格段に高い為、並の攻撃は意味を成さない(とはいえ、重武装兵の攻撃を受けて負傷する描写があり、全くの無敵というわけではない)。
マシンの名前は白いカラスではなく、「ギルティ」という。
雨宮慶太によってデザインし直されたこのハカイダーは非常に人気があり、新しいファン層を生み出したため後のバンダイのフィギュアブランドS.I.Cの原点になっている。
当初はテレビシリーズとしてハカイダーの復活が計画されていたが、断念されたという経緯がある。
また、オリジナル版の声を担当した飯塚昭三氏をハカイダー役としてキャスティングする案もあったのだが白紙になった。
作中での活躍
元はジーザスタウンの治安維持用のロボであり、制御が効かない為に孤島の監獄に封印されていたが、トレジャーハンターたちが侵入した影響で復活し、銃を向けてきたトレジャーハンターを殺害した。
ジーザスタウンでの重武装兵との戦いで負傷したところを 反政府ゲリラに保護され、自由を心から欲する少女カオルと心を通わせるが、彼女がミカエルに殺害された事で激昂、ミカエルとジーザスタウンの元締めであるグルジェフを討ち取り、カオルの形見である鈴を片手に何処かへ去っていった。
人物像
信念のないもの、誰かに服従することを良しとするもの、他人の自由を奪うもの、自分に牙を剥くものに対しては全くの容赦がなく、それがいかなる理由であっても攻撃の対象となる。
一方で、自分の意思で生きたいと強く願う者に対しては思いやりを見せたり、玩具に興味を示すといった一面も見せる。「自分の意志を持たぬのなら、生きていても仕方あるまい!」というセリフが彼の在り方を物語っている(ただし、反政府ゲリラに対しては支配者に成り代わろうとするその本質を「醜い」と評している)。
自我を有していたとはいえ、キカイダーを破壊するという使命から逃れられなかった原典とは対照的である。
加えて、グルジェフはハカイダーを破壊の権化のように語っているが、彼なりの信念で動いているためか、無作為な殺生を行ってはいない。
検問所の職員に許可証を求められた際には素通りし、グルジェフに成り代わろうとするアンディに対しても電気ショックを与えるに留め、銃を向けられても特に反撃していない。
グルジェフに屈した一般市民に対しても特に殺戮は起こしてはおらず、DC版では少年(演:柴田翔平)の瞳に何か感じるものがあったのか、囚われた市民を解放している。
ゲーム「ラストジャッジメント」ではよりこの点が掘り下げられており、敵ではないと見なした人間を助けたり、戦いでしか生きる道を見出せなかったワルダーから「友」と呼ばれた事を否定せず、彼のビジンダーを人間に戻してほしいという頼みを聞き届けたりと単なる破壊ロボットに収まらない存在として描かれている。
人間体であるリョウの姿では全く話す事はなく、本来の姿を表した時にのみ、言葉を話す。
食事をするシーンがあるが、あくまでもエネルギーは酸素と反物質を対消滅させて賄っている。
また、原作で光明寺博士の頭脳があった場所には「ハカイダーブレイン」という電子頭脳が内蔵されていて、胴体にも「破壊回路」という闘争心を刺激する電子頭脳が存在する。『人造人間キカイダーThe Novel』版の設定はこちらに近い。
スーツアクターは岡元次郎が担当。
ハカイダーの影響を受けたキャラ
ハカイダーは特撮番組における代表的なライバル悪役キャラであり、その後の様々なアンチヒーローに影響を与えている。
- 超電子バイオマン:敵キャラクターのバイオハンター・シルバのデザインがハカイダーを基にしている。
- 機界戦隊ゼンカイジャー:敵キャラクターのハカイザーは敵組織の技術者が科学者の脳を使い生み出され刃物(ハカイダーは投げナイフだが、こちらはブーメラン)、更に大型銃器を使い、更に規定時間内でしか戦えないなど東映の純正オマージュキャラと思われる(ただし、彼のネタ元は東映のヒーロー)。なお、これに対して無関係と言っていたが、後々間接的に認めており、また持っていた大型銃器は味方専用装備になり、軽い発言を見せるなどむしろ本家ハカイダーよりギルハカイダー(ギャグキャラポジション)の方が近い。そして話が進むと正体は主人公の父親だった事実が判明する。
- 仮面ライダー龍騎:主人公の強化フォーム・龍騎サバイブのデザインが一部ハカイダーを基にしている。
- 仮面ライダー555:強力怪人集団・ラッキークローバーのモチーフがハカイダー四人衆の怪人態であり、それを束ねるローズオルフェノクはハカイダーが基。
- 仮面ライダー鎧武:第30話の特別編に登場。肝心のオツムの方はやっぱりマッドサイエンティストである。詳細は戦極ハカイダーの項で。
- アナザーキカイ:ハカイダーモチーフのアナザーライダー
- ゼロ:同じく悪の科学者に作られたロボット。『人造人間』版での立ち位置はこの作品での彼の在り方に近い。