概要
キカイダー02(ゼロツー) とは、石ノ森章太郎原作、MEIMU作画の漫画作品。「人造人間キカイダー」のリメイクである。
作品解説
萬画版キカイダーのリメイク(より正確には「リブート作品」)だが、物語の舞台は現代(2000年代)になっていて、登場人物などの設定は大幅にアレンジ(当時並行展開していたS.I.Cの影響も見受けられる)されている。
原作漫画同様公害や環境問題が根幹に関わる設定の他、神秘学、ホムンクルス、錬金術に関する要素が多く組み込まれ、ホラー的雰囲気が強い。
また光明寺博士の一郎への拘りなど、光明寺一郎が大きく取り上げられている。
掲載誌を転々とした後一応ストーリーは完結したが、終盤はかなり駆け足であった。
後日譚外伝として「イナズマンVSキカイダー」が存在する。
物語はヒロインである光明寺ミツコの視点から描かれている。
登場人物
光明寺ミツコ
ロボット工学を学ぶ女子大生。萬画板と異なりマサル相当の弟は居ない(マサル本人相当キャラは外伝話で無関係な一般人キャラとして登場している。)。
十数年前に思慕していた兄・一郎が事故(?)で死亡。一郎の死を謀殺と考えた父は失踪。母はその後心労で死亡。その後、一人で生きていた。父親からは愛されていないと思っている。
その父から突然メールが届く。
- 「お前には異母妹ヒナノがいる。ヒナノを守れ。ヒナノがDARKの手に渡ったら人類は滅亡する]
- 「ヒナノを守るロボット、ジローを開発したが失敗した。良心回路をお前の手で完全にできないのならジローは破壊しろ」
ヒナノの案内で父の研究所へ行き、ジローを発見。そこをDARKのロボットに襲われる所から物語が始まる。
イチローと行動していた頃はCODE01の自壊時に顔を侵食していたナノマシンを隠す為前髪にエクステを付けていた。
光明寺一郎
本作ではミツコと両親が同じ実の兄妹。物語が始まった時点で故人。ミツコは両親から愛されていないと思っており、唯一愛してくれたのは一郎兄さんのみであると思慕していた。
環境破壊などを糾弾するジャーナリストとして活動。国際的な環境保護団体に所属。その団体は反核・地球環境の保護を非暴力で抗議するとしていた。
だが実際には環境保護のためなら手段も選ばない「エコテロリスト」団体であり、一郎はコードネームKと呼ばれる第一級テロ工作要員として国際指名手配されていた。その団体は「SHADOW」と呼ばれていた。
十数年前にとある工場の公害問題の調査の直後に死亡。証拠が無いこともあって事故として処理された。
その後、ギルの手で脳髄が生きていると分かると、光明寺はその脳を納めるための新しい体としてサブロウ=ハカイダーを作成する。
光明寺ヒナノ
大学生のミツコの元へ突然現れた少女。原作漫画におけるルミにあたる。
光明寺博士はビデオレターで「ミツコの異母妹」「ヒナノがDARKの手に落ちたら人類が滅びる」と説明した。
だがその正体はロボットであり、アーマゲドン・ゴッドの中核となる存在だった。
坂本チグサ
ミツコの母の実家を守っていた少女型のロボット。母・千草の14歳の時の姿を模して光明寺博士によって作られた。その外見はヒナノに瓜二つである。光明寺博士からミツコを守ることを命令されている。
なぜか謎の組織SHADOWの存在を知っていた。ミツコがSHADOWから狙われるのは、最終兵器・アーマゲドン・ゴッドの制御装置の開発に必要だからと教えた。
襲撃されたミツコをかばって破壊される。ミツコはチグサの残骸に対して涙した。
ギル・ヘルバート
表向きは遺伝子工学の権威。その正体は闇の組織DARKのCEOである。
地球環境をこれ以上汚染しないために、最終兵器・アーマゲドン・ゴッドにより人類を含めて地球上の全生物を滅亡させ、その後に絶滅危惧種の遺伝子から新たに生物と自然環境を再生。その上で新世界の管理者(支配者)になるのが目的。「イナズマンVSキカイダー」の原因(新世界に適切な「新人類の創設」)を作った人物でもある。
数百年前に謎の遺跡から「神の智恵」を授かった。その知恵を活用してある村の疫病を治療するも、村人からは黒魔術師として迫害される。
その時からクローン技術によって生き長らえ続けているが肉体がクローニング回数の限界に近付いており、その制限から逃れる為に自身の脳をハカイダーのボディに移植しようと考え一郎の脳をハカイダーに搭載させ試験運用(恐らく頭部の脳の生命維持機能の試験でコントロール機能は作動させていない状態)させていた。
光明寺博士
本作は萬画版をベースにしてる為フルネームは「光明寺伝」。ロボット工学の権威。死亡した長男・一郎の死と彼を甦らせる事に拘り、家族を捨てて出奔。ギルからの技術協力と資金援助を得て幾体ものロボット(絶滅に瀕した動植物を模している)を作成し、ハカイダーもオリジナルは彼の製作品である。
自分の作ったロボットが破壊活動に使われていると知ると、ヒナノを逃がし、ヒナノを守る存在として紆余曲折の末にジローを作成した。
最後はギルに代わってDARKをのっとり、アーマゲドン・ゴッドとヒナノにより人類を滅亡させようとする。
それは「人類滅亡後の世界をギルが牛耳る」点を除けば、ギルと同じ野望であった。父の真意を知ったミツコは拳銃を突きつけるが……。
CODE 01(コード ゼロワン)
光明寺博士が長男を甦らせる一環として作成したプロトタイプロボット。
環境に優しい太陽光線をエネルギー源とするが、また技術的に未成熟であった為人間の3倍はあろうかという巨体となってしまった。「サン・ライズ・ビーム」を持つが発射は口腔を開けて行う物の為怪獣の類の様に見える。さらにビームの威力が強過ぎる事から光明寺は悪用されることを恐れ、研究所のセキュリティを掛けた一室に封印。しかも再起動すると体を構成するナノマシンが崩壊し自壊する様にプログラムされていた(恐らく光明寺博士本人が再起動する際はこの自壊プログラムの不活性化処置などを行うと思われる)。
六体の01に追い詰められたミツコが反撃するために再起動したが、ビームを一発発射するだけで自壊し切ってしまった。
01(ゼロワン)
光明寺博士の師匠であった瘋癲和尚(ふうてんおしょう)が、先述のCODE01の設計図を元にして作った戦闘ロボット。大きさは CODE 01 と違って人間大になる。数は六体。マシンガンを腕部に内蔵しているが使用の際は手を射出排除しないと使えない。また人間態へのチェンジはしていない(おそらくチェンジ機能自体が無い)。
瘋癲和尚の命令でミツコとジローを攻撃。この戦闘に巻き込まれて製作者の和尚は死亡。
その後、何者か(SHADOW説が有力)の手によってパワーアップ(射撃装備や機動補助スラスターの増設)され、光明寺の研究所にいたミツコとジローを襲撃する。
この時点で既に多くの戦闘経験を積んでいたジローの手によって三体(内暴走時一体)、ハカイダーの手によって一体、ミツコが再起動したCODE 01の攻撃で二体が撃破された。
イチロー/キカイダー01
ミツコは六体の01の残骸と光明寺の研究所に有ったジローの予備パーツなどから一体を再生した。その際に人間態へのチェンジ機能や会話機能も追加され、戦闘形態はナノスキン部が増え、マシンガン使用時の手は再使用復帰を前提とした折り畳み式となった。「サン・ライズ・ビーム」は頭部クリアーパーツ部の額部から放つ萬画版や特撮版準拠の物になっている。特撮版で印象的な「ブラスト・エンド」はガッタイダー撃破時にジローの「デン・ジ・エンド」を模して習得した一回しか使う事は無かった。
行方不明になったジローの代わりとして作ったが、ジローと比べると融通が利かず対応も機械的で、どちらかと言えばシリーズ他作品で言う所のキカイダーダブルオーの性格に近く作中のミツコの製作経緯も萬画板のジローによる00の製作経緯に近い。ダブルマシーン相当のサイドカー(モデル車種はキカイダー/ジローと同じ)を有する。ミツコと共に旅をし、DARKやSHADOWのロボットと戦う。
光明寺博士のアーマゲドン・ゴッドとの対決ではサブロウと共にTYPE0を迎え撃ち、ジローとミツコを先に行かせる。だがアーマゲドン・ゴッドのナノマシンに浸食されて自意識を失い、サブロウに銃口を向ける……。
ダークロボット
光明寺博士の作った環境保全用ロボット。ギルが唆したことにより、DARKの戦闘兵器に改造される。原典に比べてよりモデルとなった生物に近い外見となっている。
13体が制作されたのだが、作中で判明しているのは以下の通り。
- グレイサイキング
- グリーンマンティス
- オレンジアント
- ブラックホース
- カーマインスパイダー
- レッドスネーク?(カブトガニエンジの可能性あり)
- イエロージャガー
- サソリブラウン
- ゴールデンバット(下記参照)
- シルバーカメーン
- ブルーバッファロー
- エイ型のロボット
- マサルの拾ったロボット(アカジライガマ?)
ゴールデンバット
光明寺博士によって作られたロボット。人間態の素顔はジローと同じであり、本来は彼がジローになる筈であり、実質的に「プロトタイプ・ジロー」。しかし運用中の動作観察で良心回路が不完全で有る事が判明。ギルの甘言もあり、戦闘形態を「鳥と獣の合いの子の半端物」と形容される「コウモリロボット」の姿に作り換えられた。
ジローとどちらが能力が上かを証明するために戦闘、破壊される。
だが彼の良心回路からジローの良心回路へと経験データがインストールされ、ジローを成長させる。つまりは、ジローの中で生きているとも言える。
ジロー/キカイダー(CODE 02/コード・ゼロツー)
光明寺博士によって長男・一郎を模して(ただし死の直前の頃ではなく作中時間内のミツコより若い頃を模している様な部分が見られる)作られたロボット。「ヒナノを守る」事を最優先に命令されている。
そのためか当初は人間味が無く融通が利かなかった。ミツコがDARKに襲われても救おうとせず、ヒナノに頼まれて救出に赴いたり。ただしイチローとは異なり怯えや哲学的視点寄りの発言が多い「不完全な心を持つロボット」としての面が強調されている。やがて「ミツコさんに生きていて欲しい」と語るまでに成長する。
原作と異なり、最初期の時点で眼部から放射する破壊光線(プラズマ・ブラスター)を使用したが、ミツコとの触れ合いを経て良心回路が成長したため、「武器」の危険性を理解し、アーマゲドン・ゴッドでの最終決戦時まで使用しなくなっていった。
「CODE 02」(コード・ゼロツー)とも呼ばれる。
肉体はナノマシン(特に外装は「ナノスキン」によって覆われている)で構成され、時間さえあれば自己修復が可能(もちろん予備部品に交換する方が早く修理できるが)。不完全な良心回路を内蔵する。
初回起動時は青と黄色のラインの対称形状態だったがすぐに良心回路の不完全さが身体に影響し左半身がクリアーパーツと赤いナノスキンかつフレーム露出度が右半身より多い「不完全な非対称状態のハーフボディ」となる。「デン・ジ・エンド」はこれまでの作品と異なり腕部から展開する高周波切断武装「電磁ソード」を両腕で交差させて行う技となっている。サイドマシーンを乗り回すが本作ではモデル車種は「クラウザー・ドマニssi」となっている。
六体の01との戦いに乱入したハカイダーによって良心回路を抜き取られた時は、左右両方が赤い姿になった。その後、ミツコと離れ離れになって記憶をも無くして放浪した。
サブロウによって一度は破壊される。だが一郎の自我が覚醒しつつあったサブロウの手によって「完全な良心回路」を与えられて復活(サブロウは「お前をただ破壊するのではつまらん。兄より過酷な運命を与えてやる」と発言。)。左右両方が青色かつ対称形の「本来の姿」であるパーフェクトボディーを有する、『真キカイダー』となった。
これにより、戦闘能力が格段に向上。後述のSHADOW製TYPE0を含め、あらゆるロボットを圧倒する程の強さを手に入れる。またこの状態での「デン・ジ・エンド」は既存作品と同じ両腕のみを交差する物となっている。
しかしそれは同時に、『光明寺の完全なる創造物』に堕ちた事を意味し、“最上位機種”であるアーマゲドン・ゴッドを前に膝を突く事になる……。
ジローの姿の時にアーマゲドン・ゴッドのナノマシンに左半身を浸食される。おそらくはそれが原因で青と赤のハーフボディに戻り、全てをゼロへと戻さんとするヒナノとアーマゲドン・ゴッドへ立ち向かって行った。
後日談(遥か未来)である「イナズマンVSキカイダー」においてもこのハーフボディで登場。相対したミュータントには「このロボットには心がある」と驚愕された後に精神攻撃を受け、一時敗れる事となる。
本作で語られる断片的な過去から、このハーフボディのジローは“自分の意志で決断を下した”事で創造物を超えて心ある生命となった、言うなれば『真に真なるキカイダー』なのだと推察できる。
真に真なるキカイダー
ジローが『プログラムのバグによる誤作動』という理由では、“自らを許せない”程の罪を犯し、トラウマを負ったことによって至った、“完成”の更に先に在るキカイダー。
『完成されたロボット』が、状況に遭遇した後に予め決められた行動パターンから行動を選択するのに対して、『心あるジロー』は自ら推論を組み立て、生じ得る未来を仮定して動くため、初動が桁違いに速い。更に「武器」の危険性を理解した上で、必要ならば破壊光線(プラズマ・ブラスター)を使用する勇気を備えた。
サブロウ/ハカイダー
光明寺博士は長男・一郎の死後も、その死を受け入れられない妄執から息子の脳髄だけは保存していた。その脳がギルの遺伝子生命工学の手腕によって微かながら反応を示したため、脳を生かし生き返らせる為に新たな不滅の体を作ろうとした結果誕生したロボット。一方ギル自身はあくまで自分用の脳髄を搭載するボディとして開発させ一郎の脳髄は試験運用用途の補助システムとして搭載させており後々除去する予定だった。
一郎の脳は単なる部品で、サブロウ自身の個性・人格は別(恐らく特撮版の「悪魔回路」に相当する制御システムによる物)であった。
だが六体の01とジローの戦いに乱入した際胸部に十字型の修復不能な損傷を受け、それ以来一郎の頭脳の意識が覚醒しサブロウの体を徐々に乗っ取っていった(これは先述の通りギルの脳を搭載した場合、ハカイダーはギルの脳で操作する仕様の為でもある)。
しかし結果誕生した人格は一郎とサブロウが融合したものであり、決して一郎本人ではなかった。そのためにジローを「俺の紛い物」と憎む。またその発言からは父親光明寺伝に対する「自身の本来の姿を見ておらず父親の中の『理想の息子』一郎を復元した事に対する失望」が感じられなくもない。その後
ミツコとキカイダー達の前に現れアーマゲドン・ゴッドの撃破の為の共闘を申し入れハカイダー軍団及びガッタイダーをキカイダー等と共に共同撃破する。
原作と同様、頭部の脳に定期的な血液交換が必要。本作ではそれに加えてボディの調整も必要である。だがサブロウはDARK離脱後自身の意思で一度も調整を受けなかった。そのためアーマゲドン・ゴッド(光明寺版)との決戦ではボディに不調が発生した。
武装は人間態ではスローイングナイフの投擲、戦闘態では専用拳銃「ハカイダーショット」を用いる。ハカイダーショットは腿に収納されており、また弾はナノマシンの再生を阻害するコンピュータウィルス弾などを使用可能。
単行本のラストシーンでは、幼少時のミツコの思い出の木の根元に一体のハカイダーが座り込んでおり、それにミツコが安らかな表情で寄り添っている。
だがこのハカイダーがサブロウなのか、後述する量産型なのか、壊れているのかまだ稼働しているのかの判別はつかない。
量産型ハカイダー
ギルがサブロウを元にして開発した量産型。頭部は人間と同じ有機タイプの脳と、機械の電子頭脳のどちらかを選んで納める事が可能。また武装はハカイダーショットではなくビーム・ガンを携行する。原典で存在したハカイダー部隊の三体は本作ではこの量産型タイプをベース機としている。
ハカイダー部隊の三体と生体脳を搭載した通常型と四体一組で合体しガッタイダーになる機能もある。
サブロウの叛意を知ったギルがサブロウを破壊するために大量にけしかける。
だがパーフェクト・ボディーとなって復活したキカイダー、01、ハカイダーの連携攻撃にあっけなくやられてしまう。ギルが「やはり量産型ではこの程度」と言っている辺り光明寺のオリジナルのハカイダーより性能は劣る模様。
ザダム
SHADOWの等身大ロボット。背中にコウモリの様な羽根を持ち飛行が可能。雄型と雌型の2体一組で行動する。また二体が一体に合体して原作版のような姿になることも可能。アーマゲドン・ゴッドに合体して制御装置の役割をはたすが……。
最終兵器・アーマゲドン・ゴッド(SHADOW版)
原作と同じ巨大な遮光器土偶の形をしている。ザダムが制御装置として頭部に合体。破壊光線を発射するも、自爆してしまった。チグサはミツコに制御装置が不安定なためと説明した。
最終兵器・アーマゲドン・ゴッド(光明寺版)
原作と異なり、巨大な半球ドーム状をしている。ナノマシンを放出してあらゆる文明を崩壊させる。制御装置のヒナノはドームに合体しておらず、ドーム上空や周囲の空中に浮遊している。
量産型キカイダーTYPE0
元々はSHADOWの攻撃部隊用ロボットだがアーマゲドン・ゴッド(光明寺版)のナノマシンハッキングによって乗っ取られ管制を掌握されその護衛部隊として大量に登場。右腕に光線銃を内蔵するなど、イチローとジローの両方のデータを参考にしている模様。戦闘専用の為人間態にチェンジする機能は無い。
シャドウナイト
SHADOWの幹部ロボット。ギルを一度は仕留めるも、脳は無事だったため取り逃がしてしまう。
ミエコ/ビジンダー
SHADOWの幹部。女教師に扮してヒナノを捕えようとした。私服はボディコン派。
機械を狂わせるクレイジー・アイが通用しなかったことでジローを意識し始める。
外伝的な一話に出てきたのみでその後は不明。