データ
概要
劇場版『ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』に登場する怪獣。
ウルトラマントレギアがその身に宿す、「名前を口にしただけで呪われる」とされている邪悪な怪獣。
巨大な一つ目に、頭部や体から禍々しい形状の角や無数の刺を生やし、胴体に第二の顔を持つ。
宇宙遺跡ボルヘスの墓場に封じられており、トレギアに封印を解かれ彼の体内で彼に力を与え続けていたが、ウルトラマンタイガとの戦いがきっかけで封印が緩んだことで体外へと飛び出した。しかし、ウルトラマンギンガを始めとしたニュージェネレーションヒーローズの力で、彼らの変身能力と引き換えに結界の中へと封印されていた。
「トレギアが宿し、力を得ていた」と言う点から見て、もしかしてグリムドはトレギアが闇に墜ちたことと関係があるのでは?と推察されていた。(実際のところは、グリムドを求め旅をしていた頃には既にトレギアの心は壊れていた上に光の国を見限っていた)
実際、胸部のデザインはトレギアの仮面に似ている他、一つ目がウルトラマンのシンボルであるカラータイマーを連想させる。トレギアは拘束具でカラータイマーを覆っていたが、それが外れたならばこのグリムドが顔より出てくるイメージだろうか…?
『タイガ』超全集収録の過去編『トレギア物語/青い影』では、宇宙が誕生する以前の光も闇もない混沌が形を成した邪神をトレギアが取り込んでいるのだが、その数なんと数百体。グリムドがその内の一体なのか融合体なのかは不明。
宇宙遺跡ボルヘスは生き物の無意識の海と同義であり、その深淵に封じられてなお悪夢や創作家のインスピレーションとして干渉していたらしい。
トレギアは光を極めると同時に闇を極めるためのパワーソースにするべく、邪神を探す旅で深淵を覗き続けた結果、正気を失い現在の虚無主義に陥った。ボルヘスでグリムドを見つけたその時点で、彼の心は既に闇に堕ちていた、つまりグリムド自身は彼の闇落ちとは無関係だった。
『大いなる陰謀』では、トレギアがグリムドを取り込んだ時の場面が描写された。グリムドを内包した後、グリムドが勝手に抜け出たり他者に奪われないようにするためか、トレギアはトレギアアイを使用して自らの全身を拘束具で纏い、アーリースタイルから闇のウルトラマンとしての姿=よく知られている仮面をつけた姿へと変貌した。
能力
伸縮自在の体と圧倒的なパワー、スピードもさることながら、強力な電撃を放つグリムボルト、単眼から発射する光線グリムレイ、衝撃波を伴った咆哮グリムハウリングを放つ。
自らをエネルギー化して他者に憑依する能力も有しており、憑りついた対象の有する能力・技も自在に使いこなす知性も有する。この憑依能力を利用してウルトラマンタロウに憑りついた。
トレギアの悪辣さを支える数多の能力のパワーソースであるが、トレギアはグリムドを分離させても体内に力の一部を残しているのでこれまで通りの活動が可能。
また、グリムドにとって力を分け与えているトレギアは自らの分身のような扱いらしく、彼の策略の手駒として従順に動く。
そして、トレギアが我が身と共に力を返還することで、身体のサイズを更に膨張させて完全体となる。
更に自らの無数の目が浮かぶ暗雲に包まれた亜空間を生じさせ、虚空より巨大な自らの腕と足を出現させての物理攻撃も行えるようになる。
なお、腹部にも第二の顔を持つなど一見すると喋りそうな感じにも見えるが、彼らの様に明確な会話は行わない。
あるいは生けるものが衰退して滅んだ先に行き着く境地=虚無の化身であるが故に、生けるものが当たり前として持ち合わせている“情動”を有していないとも考えられ、明確な活動をするには虚無の感情を持った生けるものに憑りつきその情動に従う形で動く生態(?)なのだと推測される。
実際グリムドの力を得たトレギアが行ったことは迷っている他者を策謀で絶望に突き落としそれへ憎い自分を投影する自己蔑視と言う余りに最低な物だったが、それへグリムドは何の反応を見せずトレギアの体内に宿り淡々と力を与え続け、更にはタロウをトレギアの傀儡とする道具同然の扱いを受けても大人しくその命令に従っていた。
総じて、グリムド単体ならただ存在し続けるだけなのだが、何らかの形で虚無に魅入られた者と一体化してしまえば宿主の歪んだ意思と情動に従うままその力を使い宇宙を脅かす存在と化す危険性を持っていると言える。
そして虚無に魅入られる可能性は生けるものなら誰でも等しく抱えているので、そうした者達が安易に触れない様、虚無の化身である邪神は封じられ呪いを齎す存在として恐れられているのだろう。
活躍
本編でトレギアがトライストリウムに完全敗北した際に封印が緩み、抜け出した後力の一部がトレギアの体内に残っていて、それにグリムドが引きつけられる習性からトレギアが滞在する場所へグリムドが引き寄せられる状態となっていた。
やがてタイガの居る地球に結界を破って出現。大暴れをしてタイガ・ロッソ・ブルを苦戦させるも、タロウがタイガ達を援護すべく地球に降り立ち激闘を繰り広げた後ウルトラダイナマイトで撃破した。…かと思いきや、それこそがトレギアの狙いであり、身体を再構築するところにグリムドを潜り込ませ、爆発のエネルギーを逆流させる形で体を乗っ取られてしまう。そしてタイガ達に襲い掛かってしまい、ロッソ・ブルを蹴散らし攻撃を止めるよう呼びかけるタイガを変身解除に追い込み、一通り暴れるとトレギアと共に一時姿を消した。
数日後、トレギアと怪獣リングから召喚された怪獣と共にニュージェネレーションヒーローズとの総力戦となり、闇に堕ちたタロウはタイガを相手取る。攻撃を躊躇するタイガを苦戦させるも、僅かにタロウの自我が残っていたのか攻撃の手を止め隙が出来、トライストリウムに変身したタイガは見様見真似のウルトラダイナマイトを発動し闇堕ちタロウに突撃。再びグリムドが肉体の主導権を握った闇堕ちタロウも闇の力が混じったダイナマイトで迎撃しタイガを圧し初め、タイガの肉体もグリムドに蝕まれるが、「僕達も燃えるぞ」とヒロユキもウルトラダイナマイトを発動。タイタスとフーマも後に続き、四人分のダイナマイトには敵わずタロウの体から追い出されてしまう。
だがそんな事実を認めないトレギアが自分が吸収されるのを承知でグリムドに力を返還、完全体へと変化させる。 ここまで強大な力を振るっていたグリムドだったが本来の力の半分しか見せておらず、半身はトレギアの体内に封じ込められたままだった。
傷を負ったボロボロの体では逆に取り込まれるというタロウの言葉を無視して実行し、危惧した通りトレギアの体は限界を迎え粉々となり(彼自身はそのことを承知の上で)逆にグリムドへ吸収されてしまう。そのためか、トレギアの声で「タロウ」や「タイガ」と喋るようになり、真っ先にタロウを捕縛するなどトレギアの意思がグリムドに反映されているかのように戦っている。
トレギアごと半身を飲み込んだことで遂にグリムドは真の力を取り戻し更に巨大化すると共に、無数の単眼が瞬く煙を全身から放出し、日本を中心に周囲をボルヘスのような領域に造り変えると、最強形態となったニュージェネレーションヒーローズと交戦。
虚空から自身の身体の一部を生やす力を使い、無数の単眼からの「グリムレイ」の一斉放射や、巨大化した手足を生やして凪ぎ払う攻撃で最強形態集団に手も足も出させずに圧倒。
しかし一歩も引かない決意を固めたタイガがタロウを救出し、タロウはニュージェネレーション全ての力をタイガのウルトラホーンに集めるように指示を出し一人でグリムドを正面から抑え込み時間を稼ぐ。タイガがパワーアップしたニュージェネレーション全ての力を取り込み誕生したウルトラマンレイガには全ての攻撃を軽く弾かれ、レイガが発射した「レイガ・アルティメットブラスター」を「グリムレイ」で応戦するも威力を上げて押し返され、正面から単眼を貫かれると爆発四散した。
爆発する直前、胴体の顔の前にトレギアの顔が浮かび上がり「タロウ…!」と悲しげに呼び、タロウは「トレギア…!」と哀しみの混じった声で呼び返した。
ウルトラヒーローズEXPO2021ニューイヤーフェスティバル
『ウルトラマンZ』の後日談である本作ではアブソリュートタルタロス陣営のウルトラマントレギアが召喚した怪獣として登場。どこから調達したかは定かではないが、並行同位体と考えるのが自然か。
圧倒的なパワーとトレギア&ベリアルの援護でウルトラ戦士達を苦しめるが、子供達の「ウルトラチャージ」によりウルトラ6兄弟が参上。互角の戦いに持ち込まれ、最期はエースの号令で放たれた合体光線でようやく撃破された。
2021とほぼ同じ内容のウルトラヒーローズEXPO2024では、その出番と役目をデストルドスに譲っている。
余談
名前の由来は、グリム童話もしくはグリムロ(グレモリー)、あるいは単純に英語の「グリム(=Grim、厳格、無慈悲を意味する)」を捩ったものと思われる。
教訓物の怖い話が多いグリム童話を語源とした怪獣に、『狂おしい好奇心』を意味する名を持つウルトラマンが共生関係になったのは悪い意味で運命的と言えよう。
身長は70メートルと設定されているが実際は伸縮自在とされており、完全体となった際は数百メートル級にまで巨大化が可能。
またドーム上に展開した混沌の領域「グリムド空間」はグリムドの肉体そのものとされており、実際は更に巨大だったことが窺える。
そのため新世代ヒーローズ及び令和ウルトラシリーズの劇場版では初となる超巨大怪獣のラスボスでもある。
劇中において、『ギンガ』~『R/B』の間における歴代ニュージェネヒーローズの最強タイプの姿が束になっても歯が立たず、一撃でカラータイマーを点滅状態に追いやった実力から、ニュージェネ世代は愚か、歴代ウルトラシリーズ中の怪獣たちの中でもほぼ最強かそれに親しい部類に位置してもおかしくないことが考えられる(実際グリムドに匹敵すると言えるのはガタノゾーアとグリーザぐらいと言えるぐらいの恐るべき強さである)。
腹部に顔があり突起物が多くあるデザインは、如何にもウルトラ怪獣らしいとの評価もある。
グリムドのスーツはそのデザイン上、普通に立っているだけで倒れると言われるほどの重量があるが、スーツアクターを担当する桑原義樹氏はパーツを吊るなどの手段を採らず、自らの体力だけで軽やかなアクションを演じ切った。当初、スーツは背面に大きな羽のようなパーツが付いているため、そのパーツを吊って操作する案もあったが、前傾姿勢で動くことで吊らずに撮影するものとなった。
初期の段階ではトレギアとは元々無関係の怪獣と想定されており、単にトレギアが力を利用するために呼び寄せる予定だった。
ソフビはウルトラ怪獣シリーズ500で商品化されており、かなりこぢんまりとしつつも実物を意識した造形となっている。
なお、新世代ヒーローズの映画のラスボスで最初から500シリーズで商品化されるのは初(TVシリーズを含めばダークルギエル以来2度目)である。
トレギアが体内に封印していたというコンセプトから、ベースをトレギアと同様、青のカラーリングにしている。人型、スタンダードの怪獣型、怪獣と人が合体した魔獣型の3案が検討されたが、人型はトレギア、怪獣型は前作劇場版『ウルトラマンR/Bセレクト!絆のクリスタル』に登場したスネークダークネスと被るため、魔獣型となった。当初は、メインが胴体の顔になっており、上の目はかなり小さかったが、上の目をメインにすることで一つ目の魔獣とするため、上の目をアレンジしている。
イギリスの国民的SF特撮シリーズ ドクター・フー の Series2 に登場する強敵 ビーストの設定にかなり酷似している為、ビーストが元ネタではないか?との声もある。
関連項目
スネークダークネス - 前作の新怪獣。これもトレギア関連の怪獣である。
Uキラーザウルス - 14年前の劇場版に登場した怪獣。これも複数のウルトラ戦士の変身能力と引き換えに封印されていた。
発泡怪獣ダンカン - かつてタロウの兄貴分を操って街を破壊させた怪獣繋がり。
ババルウ星人- こちらは上記の1人以外のタロウの兄貴分を騙し、自分の意思で味方を攻撃させた宇宙人。
ウルトラマンベリアル - 同じようにウルトラ戦士に憑りついて操った悪役繋がりにしてトレギア以前の光の国の裏切り者。
ガーゴルゴン - 目、腹の模様、二股の尻尾など似ているところがある。
レイブラッド星人:グリムドがトレギアに力を与えたようにベリアルに力を与えた張本人。
ガタノゾーア - 「邪神」の名を冠するウルトラシリーズのボス怪獣。そして、グリムドに並ぶウルトラシリーズ最強の怪獣の1匹。
セレブロ(ウルトラマンZ) - 次作にて暗躍した寄生生物。こちらも後にウルトラ戦士に取りついて操った。
グリーザ - 「虚空=無」の化身である怪獣。こちらは有を消し去ろうとする「欲望」とそれを達成した「喜び」の情動に突き動かされて活動する。グリムドが滅ぶだけで生むものが無い「-0」の存在に対して、こちらは有が生まれる前の状態に戻す「0」の存在と言える。