※『ウルトラマンタイガ』最終回に関する重大なネタバレを含みます。読む際は自己責任でお願いします。
データ
別名 | 宇宙爆蝕怪獣 |
---|---|
英表記 | WOOLA |
身長 | 68m |
体重 | 50万t |
出身地 | 宇宙 |
概要
第24話「私はピリカ」、第25話「バディ ステディ ゴー!」に登場する怪獣。
全て貪らんとする大きな口、申し訳程度の小さな腕、腕と対照的に力強い脚と、(変温動物と思われていた時期の)ティラノサウルスやカルノタウルスを思わせる体型をしている。
しかし、その見た目を詳細に記すと、種々雑多の肉片と金属片を継ぎ合わせたような、サイケデリックな色合いをした左右非対称の悍ましい肉塊の姿をしている。
その正体はとある惑星の発展した文明が宇宙に捨て続けた、多数の廃棄物の澱みから偶然誕生した疑似生命=意志を持ったゴミの集合体である。
見た目通りの「食べ尽くす」のに特化した存在である為か、身体能力はトライストリウムすら翻弄する程に高いが、後述する能力以外に目立った特性は認められず、知性めいたものを感じさせる描写も無い為、酷評すると身体能力以外の武器がない存在(尤も、後述の単純ながら極限の域に達する行動原理と、それを可能とする身体能力が合わさっただけでも充分過ぎる脅威ではあるが)。
後述する生態から数多くの星々を滅ぼしてきた為、その存在は宇宙中に伝説として語り継がれ恐れられている。タイガとタイタスもその存在は知っており、その襲来を悟るや戦慄していた。
生態
有機物・無機物を問わず、エネルギーを持つ物ならなんでも食べる上、エネルギーそのものすら食べるのが可能。食べた物は高圧で圧縮され、体内に一種のブラックホールが形成される。そこで食べたものが全て消滅する構造上、決して満腹にならず、その食欲は留まる所を知らない。
惑星に降り立つとまずは地殻を食い尽くし、最後はその星のコアエネルギーをも食い尽くして星を跡形もなく破壊する。
皮肉にも、その最初の犠牲になったのは、他ならぬ自らを生み出した星であった。
その後も宇宙を彷徨い、食欲のままに星を食べ続けており、その経緯からかサイズこそ一般的な怪獣とさほど変わらないが、体重は50万tとかなりの重量を誇る(参考に近い全長で重量級の怪獣であるグランドキングの体重が21万5千t、元祖重量級怪獣で有名なスカイドンの体重が20万t)。
歴代のウルトラ怪獣の中にも、全てを呑み込み消し去ってしまう能力を持つものはいくらか存在するが、ウーラーの食欲は「全てを吸収し消し去る『無』そのものがもたらす災害」「子孫を残す為の生命活動としての食事」「歪められた自らの存在意義に起因する暴走」のいずれとも異なる「自然の営みを為そうにも決して遂げられない、生命になり切れない存在の生存本能が引き起こす悲劇」である。
更に、最終回において明かされたウーラーの実態、それは「果ての無い飢餓に苦しむと同時に、自身が食らった被害者の負の感情までも取り込み、それに振り回されている」と、半ば狂気に侵されていると断言しても過言ではない、悪意のない自らの心と害をもたらす自らの本能との間で板挟みになっている状態であった(事実、回想シーンでは、生まれた直後ウーラーは巨大な光球であったが、負の感情の影響を受けて今の姿に至ったように描かれている)。
そうした意味では、歴代のウルトラシリーズにおけるラスボスの中でも、類を見ない程に異質で悲惨な存在であるとも評せる(地球に降り立ったきっかけも、トレギアが自らの策略の手駒として誘導した為であり、広義で見ればウーラーもトレギアの被害者である)。
満たされない欲望を追い求める本能に抗えず、上辺だけの生態を模倣した紛い物の肉体を以て、宇宙のあらゆる存在を貪り喰らい続けるしかないその姿は「自らの本質を理解しながらも、止めるのも抗うのも出来ないままに、数多の命を奪い続けている厄災」としか酷評できず、自然の摂理から明らかに逸脱したものである。無論だが全宇宙の他の生命から見れば、害悪そのものでしかない存在なのも事実であり「この宇宙に存在してはならなかったもの」としての一面が強調されている。
エオマック星の科学者が対抗措置として作り宇宙中に放った、怪獣の生命活動を止める装置を搭載したアンドロイドが、「自らとウーラーのコアをリンクして自らの稼動を停止して、リンクしているウーラーの活動を止められる」とされている。
活動記録
第19話「雷撃を跳ね返せ!」で霧崎がピリカと接触した際に、この存在をビジョンで見たのがきっかけで存在が示唆され、第21話「地球の友人」において霧崎がゴース星人の地底ミサイルを使って地球のエーテルを刺激し、地球へ呼び寄せる。
第22話「タッコングは謎だ」では、タッコングと共に現れたシンジに、その接近を察知されていた。
そして第24話「私はピリカ」において、遂に隕石の姿で東京・湾岸地区に落下。
しばらくは落下地点で休眠状態であったようだが、タイガとギャラクトロンMK2との戦闘中に行動を開始して地中から出現、ギャラクトロンMK2を地中に引きずり込み、魔法陣による離脱の暇を与えずに捕食する。直後にタイガにも襲い掛かり、トライストリウムで応戦するタイガをその巨体に似合わぬ身軽な動きで翻弄。タイガはトライストリウムバーストで一気に片を付けようとしたが、それをウーラーは口から飲み込んで無効化しエネルギーとして吸収、更にタイガの腕に噛み付いて残ったエネルギーを全て吸い取って撃退する(エネルギー切れに伴って変身解除された為、タイガとヒロユキの命に別状は無かった。少し前に来ていたこの人だったら逆にヤバかったかもしれない)。
その後は再び地底に潜り、地上の建造物を巻き込みながら地球の地殻を食べ始める。
第25話(最終回)「バディ ステディ ゴー!」でも、再び現れたタイガのエネルギーをやはり吸い尽くして再び退け、それだけのエネルギーを吸収して尚も進撃を続けたが、ウーラーと一体化してその心に接触したピリカによって、その内面が明かされた。
ピリカは「ウーラーはお腹が空いて苦しんでいる。『お腹を満たしたい』とひたすら食べている内に、ウーラーの被害者の負の感情まで取り込んでより苦しんでいる」と、口の利けないウーラーに代わってヒロユキ達に告げる。
そこで彼女は「ウーラーのお腹を満たしてあげたい」と伝え、それを聞いたカナ社長は外事X課、更にヒロユキの手引きで協力する流れになったヴィラン・ギルドの2人と結束し、ピリカの望みに応えるべく一大作戦『バディ ステディ ゴー!』を発動。
その作戦の内容とは、
①マグマ星人の宇宙船で宇宙からマグマウェーブ(指向性の特殊な波動)を照射し、ウーラーを誘き寄せる。
②疑似ホワイトホール発生弾頭・ヴァイスストライクをウーラーに捕食させ、体内の疑似ブラックホールを一時的に無力化する。
③タイガが光線を放ち、光線の吸収が出来なくなったウーラーにそのエネルギーを「食べさせる」。
ものである。
作戦は首尾よく進み、後はタイガの光線技を食べさせるだけ……の段階に差し掛かったところでトレギアが乱入。ヴァイスストライクの効果の時間切れが迫り、一時は作戦失敗かと思われた。
が、トレギアがタイガにトドメを刺そうとした瞬間、なんとウーラーがトレギアの腕に噛み付いて妨害し、間一髪でタイガを救う。
「怪獣がウルトラマンを助ける」事態に驚くトレギアだった(しかし、それを見た社長は「分かるのよ……『自分を救ってくれるのが誰なのか』って事が」と、逆に納得していた)が、ウーラーの思いに応えるべく、タイガは渾身の力を振り絞って立ち上がる。
そんなタイガに今度こそトドメを刺そうとトレギアは光線を放つが、タイガはそれをバリアで受け止めると、更にそれを自身のワイドタイガショットと重ね合わせる形でウーラーに放ち、遂に「食べさせる」のに成功。
生まれて初めて満腹になったウーラーは、まるで赤子の笑い声のような歓喜の鳴き声を上げて爆散。炎の中から現れたそのコアは空高く上がり、オーロラのような光を放ちつつ粒子となって地球全体に広がっていった。
今まで貪ってきたエネルギーを、あるべき場所へと還すかのように。
以降の作品での活躍
ウルトラヒーローズEXPO2020
トレギアの差し金で復活させられる。最期はトライストリウムによって宥められ、ニュージェネレーションヒーローズ達の合体光線によって介錯された。
尚、浄化技や非殺傷技を持つウルトラマン達は「ギンガコンフォート」「ザナディウム光線」を使っているのが芸コマ(ジードはスーツの関係で浄化技は使用しておらず、ビクトリーナイトもナイトティンバーの演奏ではなく、ナイトビクトリウムシュートを使用している)。これらの技は、死にゆく際の苦痛を和らげる為に使用していると思われる。
ウルトラマントリガー
本人は登場しないが、第16話「嗤う滅亡」にてウーラーとよく似たメツオーガが登場。恐らく着ぐるみのリペイントと思われる。
余談
- 第24話の監督を務める市野龍一監督曰く「最後に出てくるすごい強い怪獣」としているが、同時に「ちょっとニュアンスが違うかもしれない」とも発言している。
- 実際に上記した通り設定や劇中における行動等、これまでのラスボスと比べ、やや異質とも取れる部分が多く見られた。
- 尚、姿形こそ悍ましいものの、二頭身めいた体系のせいか、エネルギーを「見つけた!」とばかりにドタドタと走り回る姿は意外に可愛いとの声も多数存在する。
- 本作の脚本家を務めた中野貴雄氏によると、命名は同じく本作脚本家の林壮太郎氏によるもので、中国語で「お腹が空いた」を意味する「我饿了(ウォーラー)」から付けられているとの事。
- 別名である「宇宙爆蝕怪獣」の「爆蝕」とは、恐らく「爆食」と「蝕む」の言葉からなる造語であると思われる。
- 因みに『ギンガ』以降のラスボスは、物語開始の時点で存在が示唆されている状況が多い中、ウーラーの場合は上記の通り物語が終盤に差し掛かる時期と伏線にしても結構遅く(変身者を含めても)、他のウルトラ戦士との然したる因縁も持っていない(他にはショウ=ウルトラマンビクトリーや湊兄弟もラスボスとは因縁がない)。尤も、昔のウルトラシリーズはゼットンを筆頭に、ぽっと出のラスボスの方が多い。『タイガ』は伏線を少なくし、過去のウルトラシリーズのような「1話完結の面白さを追求している」との公式サイドの発言もある為、ある意味での原点回帰とも捉えられる。
- ※但し、直接示唆するようなシーンこそないものの、伏線(と思わしき物)は割と最初期から張られている。例えば第3話「星の復讐者」終盤でのスペースデブリ問題の話や、サラサ星が滅んだ原因等。
- また、近年のラスボス怪獣は、本編登場前の時期に『ウルトラ怪獣DX』としてソフビ人形が発売される流れが半ば定番だったが、ウーラーはその造形とカラーリングもあってか発売されなかった。これは『マックス』のラスボスである超巨大ロボットギガバーサーク以来の事態である。
- 一方で、劇場版の怪獣であるグリムドが、500シリーズながらもソフビ化された事実から「最初からソフビ化する予定はなかったんじゃないか?」とする意見(邪推?)もある。その後、2021年に500シリーズから派生怪獣であるメツオーガのソフビ化が発表された為、間接的にではあるがウーラー族(?)のソフビ化がようやく実現に至った。
- 中には、メツオーガのソフビを改造して、ウーラーソフビを自作する猛者も存在していた。
- 今のところは『アバレンボウル』で出たメダルが、ウーラー唯一のグッズ化となっている。
- ウーラーがテレビで登場したのと同じ時期に、宇宙から数百個の星がまとめて消滅すると言う事件が現実で本当に発生しており、ネット上では「ウーラーが出たんじゃないか?」と騒がれていた。
- スーツは『帰ってきたアイゼンボーグ』で新造された恐竜帝王ウルルの改造。スーツアクターが中から口を開閉する、首を振り向かせる等のアクションが可能となっている。監督の市野龍一のイメージを元に、丸い目玉など可愛らしさを意図している。体表は「捕食したものが露出している」とのイメージで、造形段階でデザイン画よりもディテールアップしている。
- また『タイガ』では新怪獣を作りすぎてしまった影響で、終盤の予算が不足気味になってしまい「既存の怪獣を改造」する必要が出てきた為、ウルルを改造する流れを前提にデザインされたという。
- 本作ではギンガ以降の上記のルールに則るとトレギアを最後の敵とする為、従来のラスボス怪獣とは異なる立ち位置となった。本能のまま食べ続ける設定は、プロデューサーの村山和之の案による。前半では怖いイメージを持たせる為、ギャラクトロンMK2を食べる場面はサメ映画の定番演出を取り入れている。
- 市野は、ウーラーの体内でピリカが抱いている球体は、ウーラーの本来の姿である赤ん坊のようなピュアな存在であると解釈している。
- 後の令和のTVシリーズでのラスボス怪獣達は何らかの形態変化でパワーアップするのが定番(※ウルトロイドゼロ→デストルドス、カルミラ→メガロゾーア第1・2形態、マザースフィア→マザースフィアザウルス、ヴァラロン第1形態→第2形態)となっているのだが、現時点でこのウーラーだけが何の変化もしていない唯一の存在だったりする。
関連項目
ウルトラシリーズ
ルーゴサイト:前作のラスボスで同じく星の捕食者。こいつもトレギア被害者の会の一員である。
バキューモン、マガオロチ/マガタノオロチ、メツオロチ:星を食らうウルトラ怪獣。
グリーザ:強いエネルギーを求め取り込み、結果的に幾つもの星を滅ぼした災害。
ユメノカタマリ、マザーディーンツ、カオスバグ、デブリタウロス、デブリファルド:過去にウルトラシリーズに登場した、ゴミから生まれた怪獣たち。
バルンガ:「エネルギーを貪る怪獣」の始祖的な存在。
ボガール/ボガールモンス、レッサーボガール、アークボガール:大食いのウルトラ怪獣。後々々者に至ってはウーラーと同様に星ごと捕食する。
ゴロサンダー:本作に登場した怪獣でウーラーと同様、宇宙中にその危険性が知れ渡っている。
ヤメタランス:過去にウルトラシリーズに登場した、ウーラーと同様に第三者に連れて来られ、自らも抗えず破壊活動を強いられた怪獣。
スナーク:トレギアが完全に闇堕ちする前にゴミ山で可愛がっていた怪獣。奇しくもラスボスとして登場したウーラーも、ゴミから生まれた存在である。
メツオーガ:スーツの改造後。設定や能力も近似している。
他作品
ヘドラ:ゴジラシリーズに登場する、人間たちの化学の発展が呼び寄せた悪魔。
イビルジョー…モンスターハンターシリーズに登場するモンスター。被害規模に差はあるが、大型肉食恐竜に類似する体形、生態系に与える影響、満たされることの無い食欲といった共通点がある。
トガリネズミ:実在の哺乳類。「常に食べ続けなければ生きられない哀しい生物に進化してしまった」として複数書籍で紹介された。理由は異なるが常に空腹の点でウーラーに似ている
夏色まつり:一日に食べる食事の量がえげつなさすぎることをとある配信で明かしたことがある。ある意味ではウーラーを擬人化した存在といえるのかもしれない。
カービィ:なんでも常に食べ続けないと気がすまない。ある意味ウーラーの先駆者。
ルーゴサイト→ウルトラマントレギア/ウーラー→デストルドス