「ならば聞こう…お前達は幸せか!? 久保田の科学でメガレンジャーとなり、挙句の果てに人間共に裏切られ、それでも幸せかぁッ!?」(最終話)
概要
久保田博士の旧友にして同僚であり、宇宙用のスーツの研究者だったが、その人体実験に失敗して被験者であった自分の愛娘・静香を喪った。
そのため世間から「殺人科学者」「悪魔の研究」と非難を浴びせられて全てを失い、人間を激しく憎悪している。
さらに、鮫島方式が失敗に終わった後に脚光を浴びた「装着者の意志で動く強力な鎧」といえる久保田方式のメガスーツ理論が成功したことから、友であったはずの久保田にも憎しみの矛先を向け、完全に袂を分かつ。そうして人間への一層の憎悪を抱いた末にネジレジアにたどり着き、邪電王ジャビウス1世のスカウトで「Dr.ヒネラー」として人間達に報復を決意するに至った。
序盤からの活躍
亡き娘に似せて作ったアンドロイド・シボレナや戦闘用ロボット・ユガンデ等を率いて人間界への侵略を開始し、地上にネジレ獣を送り込んだ。
特にシボレナとユガンデには我が子のような愛情を持っていたようで、それが終盤での行動に繋がっている。
更に物語中盤からは、ネジレ獣より強力なサイコネジラーを作り出すように。しかしギレールがユガンデを利用して傷つけた事件がきっかけでジャビウス1世への信頼が揺らぎ、不信を抱き始める。
物語の終盤、ジャビウス1世の細胞から悪の戦隊・ネジレンジャーを作り出し、メガレンジャーと戦わせる。
しかし、彼がネジレンジャーを作り出した真の目的は、「ジャビウスの分身ともいうべきネジレンジャーが戦うことによって(無自覚に)ジャビウスの生命エネルギーを奪わせて死に至らしめ、ネジレジアを乗っ取ること」であった。
ジャビウスの死により名実ともにネジレジアを掌握した後は、人間をデジタル化して支配しようと企んだが、メガレンジャーに阻止された。
恐るべき最終作戦と科学に狂った人間の末路
メガレンジャーに散々邪魔されたことで、報復手段として彼らのいる学校を攻撃して正体をあぶりだすことで、結果的に「メガレンジャーが世間から敵視され、孤立させる」ことに成功する。
尤もそれはメガレンジャーに『現代社会の歪み』と『人間の「悪」』を身をもって教えるためでもあった。
だが、ユガンデとシボレナをメガレンジャーに破壊され、全戦力を失った鮫島博士はDr.ヒネラー怪人態へと変貌し自ら前線に立つ。そしてメガレンジャーや近くにいた久保田博士を襲い、彼等の命を奪おうとするが、長い間ネジレ次元に居続けた副作用で自らの肉体が捻れ始めてしまい、倒そうとした直前で元の姿に戻ってしまう。
それでも諦めなかった鮫島博士は要塞デスネジロと融合し、「神の手が生み出した最高の生命体」である戦闘巨人グランネジロスへと変形。メガレンジャーが乗り込んだメガボイジャーと対峙する。元々の執念と戦闘力に加え、メガボイジャーは月面基地の崩壊に巻き込まれた影響で弱体化していたこともあって彼等を追い詰め、メガボイジャーの左腕を破壊、そしてメガレンジャーのメガスーツを解除させるほど、彼等を絶体絶命の窮地に追い込ませた。
「私にもかつて不完全だった時代があった!人間を信じ、人間のために科学を使おうとした青い時代が!宇宙開発のため、どんな環境にも耐えうるよう人間の体を強化しようとした私は、誰からも期待の目で見られた…!」
「だが!進んで実験台となった娘が命を落とすと人間共は途端に私を責め立てた!『殺人科学者』『悪魔』だと!それは久保田、お前が掲げたメガスーツ理論が、私の理論に代わって脚光を浴びたからだ!」
「人間の弱さ脆さに何の手も加えず、ただスーツで人間を守ろうとした浅はかな理論が!人間を神に近づけようとした私のどこが悪い!? 科学者として当然ではないか!! どこが悪い、どこが悪いというのだァ!!!」
その時、メガレンジャーは自分達に手のひら返しを行った市民達の姿が現在の鮫島博士の姿と重なってしまい、一瞬押し黙ってしまう。しかしそれでも自分達を支え続けてくれる久保田博士達の姿が過ぎったことで思い直し、改めて人間を信じることを選んだメガレンジャーは気持ちについては理解を示せど(現に自分達も市民達の身勝手な振る舞いに失望して戦いを一度は放棄しようとした為)、その行いまでは断固として認められないと彼の理屈を否定(上述の台詞はその際に放った返しの言葉である)、クラスメイト達からの応援で勇気づけられた彼等の反撃を受け、大ダメージを受けてしまう。自身の身体も最早完全に捻れつつあり、死期を悟った鮫島博士は最後の手段としてメガボイジャーを道連れにグランネジロスもろとも自爆する。
「久保田! 俺はお前に勝つ!今それがわかる!ハッハッハッハ!見ろ、ユガンデ!シボレナ!!メガレンジャーの最期だあァァ!ハッハッハッハッハッ……!」
その際、シボレナやユガンデの名を叫びながらグランネジロスやメガボイジャーもろとも爆発し果てた。
一方この後、メガレンジャーはあわや爆発寸前の所で間一髪、脱出。最後まで自分を信じてくれた同級生・恵理奈と怪我を押して立ち上がった担任の大岩厳を通じてクラスメイトからの信頼を取り戻し、無事に卒業証書を受け取ることが出来た。
人物像の総括
彼の有り様は「自身が見下し、忌み嫌った人間達と何ら変わりない」ものだった。
動機がエゴに満ちていたとはいえ、科学技術を人間のために使おうとした結果、世間から迫害される身となったという点に関して言えば同情の余地もあり、「鮫島博士とメガレンジャーは似た立場」であったと言える。
事実、最終回の前半まで全てをメガレンジャーのせいにしていた市民達の姿はかつて自分たちが非難した相手の行いと何ら変わらず、「罪や過ちを犯した相手には何をしてもいいという心理の下節度をわきまえず正義感や価値観を振りかざす」という彼を始めネジレジアのしてきたことをもはや言えないと断じざるを得ないような愚行に走った一般市民達と鮫島博士との関係は、人間という存在の「表と裏を象徴するコインのような存在」と言えるのかもしれない。
それと同時に、かたや人間を見限り狂気に走ったDr.ヒネラーこと鮫島博士、かたや最後まで人間を信じ希望をつかんだメガレンジャー……両者の関係性もまた、人間の科学、その「光と闇を象徴する鏡合わせの存在」だったと言えよう。
- 独り善がり
久保田は最後まで鮫島を気遣っていたが、対する鮫島は彼の研究が採用されるや一方的な私怨で人類を見限り、自分を非難した世間や散々邪魔してきたメガレンジャーに対しても恨み節を並べるばかりで、娘の死に関しては何にも触れずに棚上げし、自分の研究の正当性を主張し続けた。
※世間に対する憎しみに対しては上記であげられているように相手側の行いにも大きな非があったことから、全てが筋違いというわけではないが。
しかし、その一方でユガンデとシボレナに対する愛情や信頼は本物であり、シボレナに至っては同型のヒズミナを開発しているし、「お前達を傷つける者は誰であろうと許しはしない!」とも言っている。
ましてギレールへの制裁とジャビウス一世へのクーデターを画策したのは息子同然の存在であるユガンデの受けた理不尽な仕打ちが切っ掛けであり、グランネジロスの完成にかまけすぎて二人を失ってしまった(彼らの独断専行を見過ごした)結果、全てを擲ってまで彼等の弔い合戦に挑んだ姿勢からもその絆の強さは窺える。
※そもそもグランネジロスについてはヒネラーシティの計画失敗や、余命が残り少なかったことの焦りもあった。
彼がユガンデとシボレナに我が子のごとく愛情を注いでいたのは確かだが、一方で自らの野望と私怨のために二人を悪の道に進ませたのも事実であり、"父親"の在り方としては手放しで褒められるところばかりでない所もあった。
- ネジレジア
元々余所者の鮫島を好待遇で迎え入れてくれたが、一方で理不尽極まりない仕打ちもしている。
1.ギレールのユガンデに対する扱い
鮫島博士を慕う彼の心につけ込む形で騙し、駒としていいように使っていた。挙句、作戦の失敗の全責任を不当に押し付けるという暴挙まで働いている。それ以前にも協調性の乏しい彼の独断専行のせいで作戦が混乱して、メガレンジャーを倒すチャンスを逃す原因にもなっていた。
2.ジャビウス一世
上記のギレールの暴挙を不問にしたことを始め、既に立場と権限を逸脱していた彼の現場に対する横暴の数々を咎めようとせず、現場の不和と混迷を加速させた。
加えて侵略活動の度重なる催促も恫喝同然のパワハラの域に達している。
これらの仕打ちが故に鮫島博士は下克上を決意したわけで、現場の状況や部下及び同僚の身命と心情を全く顧みなかった彼らの驕りが招いたことである。
現に鮫島がトップに君臨した後は、メガレンジャーの打倒を逃す一番の原因だった上層部の横槍による組織内の足の引っ張り合いは是正され、鮫島の指揮下の元に組織が一丸となってメガレンジャーに立ち向かえたことで遂に悲願の完勝を収めてみせた。ジャビウス一世が組織の輪の大切さをもう少し鑑みていれば、ネジレジアに勝利をもたらせていたのである。
なおこの勝利はクーデター成就の生贄にされたネジレンジャーの予期せぬ復活と報復により頓挫してしまったが、まさか魂だけでネジレンジャーが現世をさまよっているなど誰が想像しただろうか。
- 悪の科学者
過去の戦隊シリーズにおいても、様々な理由から悪へ堕ちた科学者(チェンジマンの熊沢博士やライブマンの三博士、オーレンジャーのジニアス黒田など)は存在したが、彼等と比較しても鮫島はまさしく第1話のタイトルの文言にもある「ねじれた侵略者」そのもの。
逆恨みと八つ当たりで悪へと堕ち、最終的には自分の野望が何一つ叶うことなく孤独に散った鮫島。どこまでもひねくれた一人の人間であった。
余談
- Dr.ヒネラーこと鮫島博士が悪に手を貸した理由と最期は勿論、劇中の一般市民の行った私利私欲や自己保身を始めとする自分だけの都合と独善で他人を平気で蹴落としたり、あまつさえ身の危険を始め都合が悪くなれば恩を平然と仇で返すという『現代社会の歪み』・『人間の「悪」』をリアルに描いた事は視聴者にとっては大きなトラウマになってしまい、後年の『スーパー戦隊シリーズ』作品にも大きな影響を与えたらしい。
- この鮫島博士を最後に“地球を裏切った現代の科学者”が『スーパー戦隊シリーズ』に登場しなくなった。
理由は定かではないが、メガレンジャーの放送終了から13年後に放送された『海賊戦隊ゴーカイジャー』の第30話『友の魂だけでも』は、ある意味その事情を物語っていると言える。
- 詳しく言えば、ゴーカイジャーの第30話にゲストとして登場した大原丈は『超獣戦隊ライブマン』のイエローライオンだった人物。鮫島博士の事を知っていたかは不明だが、自身もかつて彼と同じ過ちを犯した元学友を救えなかった経緯から、二度と悲劇を繰り返さないために、現在では母校である科学アカデミアに職員として戻り、若き科学者たちが道を踏み外さないよう見届けているとのこと。
- 鮫島博士の劇中での行動があまりにも残酷すぎたのか、シリーズにおける素面タイプの男性幹部は約8年後の『轟轟戦隊ボウケンジャー』の大神官ガジャまで途絶えることになる。加えて、ガジャは悪役でこそあれど、コミカルな面も持ち憎み切れない悪役というキャラ付けになっている点からもこの影響が窺える。
- 一般市民の描写についても尺の都合もあってか直接和解したクラスメイト達以外を除いて彼らがメガレンジャーに行った暴挙についてへの謝罪などがされずに有耶無耶にされてしまうという(特に校長を務めていた高寅成紀に至ってはメガレンジャーはもちろんのこと遂には他の教員や生徒達すら見捨てて保身を図るという完全に学校指導者として失格という行動に出ておきながら卒業式に出席していたことがそれを際立たせていた)後味の悪さを残してしまったことの反省からか、14年半後の海賊戦隊ゴーカイジャーでは彼らの後輩であるデジタル研究会生徒達は危険を承知の上で協力し、20年半後の宇宙戦隊キュウレンジャーでは既に悪の組織に宇宙が支配されている体制で暮らしてきた故に事無かれ主義に陥った一般人に非難されるも戦いを通じてやがて信頼を勝ち取り、一般人からかつての非礼の謝罪を受けて和解して共に悪に立ち向かうという描写がなされている。
- 『メガレンジャー』の放送終了から3年後、日曜朝8時の時間帯に『平成ライダーシリーズ』の第1作である『仮面ライダークウガ』が放送開始。対象年齢をやや高めに、その分重厚な人間ドラマを展開している事から、平成ライダーシリーズとの差別化の一環として、必ずしもスーパー戦隊シリーズで重厚な人間ドラマを展開する必要はない模様(事実、本作同様悪の戦士が登場する6年後の作品ではその所業から視聴者の苦情が殺到する事態に陥った。なお、その作品のメインライターは奇しくもメガレンジャー最終回の脚本を執筆した荒川稔久)。
- 最近のスーパー戦隊シリーズでも、時たま強盗等の悪人や敵組織に手を貸すといった一般人が登場するが、鮫島博士の一件があったのか、まだ善の心が残っていたら戦隊メンバーに説得されて改心するパターン(たまに鉄拳制裁も含まれている)、そうでなければ戦隊メンバーに糾弾されたり、デコピン制裁で死なない程度に懲らしめられたり、戦隊を肯定する一般人に殴られたり、警察に突き出される等で、従来の作品でよく見られた「結果的に与していた敵組織に見限られて始末されたり、第三的な展開で報いを受ける等で死亡する」といった展開が極力抑えられている。また、戦隊メンバー側も「相手が人間であれば、やむを得ない場合を除いてむやみに変身するわけにはいかない」というポリシーを持っている模様。その一方で「人間にもいろんな人がいる」という現実を視聴者に教えるためか、決定的な制裁を受けずに終わったり問題のある人格面が改善されないまま勝ち逃げする人もいる。
- 意外なことに鮫島博士役を演じた森下哲夫は、特撮系出演が少なく(轟轟戦隊ボウケンジャー(2006年)- 丹原敏郎、侍戦隊シンケンジャー(2009年)- 榊原藤次)、いずれも鮫島の様な悪人ではないが一筋縄ではいかない(気分屋、頑固、偏屈など)性格の持ち主を演じている。
- なお、本放送(1997年)当時に開催されたメガレンジャーショーでは、顔まで着ぐるみのDr.ヒネラーが登場していた。
パワーレンジャーでの登場
『電磁戦隊メガレンジャー』の海外版にあたる『パワーレンジャー・イン・スペース』においては、首領格を海外版のオリジナルヴィラン「ダークスペクター」と「アストロネマ」が、ダーコンダ(ギレール)を謀殺する役回りはエクリプター(ユガンデ)がそれぞれ務めており、ヒネラー自身は登場しなかった(ちなみに終盤では原作『メガレンジャー』同様に敵組織がパワーレンジャーの正体をいぶりだす目的で街全体を攻撃する作戦に出るが、こちらは何と原作とは真逆に民間人がパワーレンジャーを擁護するという展開となっている。「自分がパワーレンジャーだ」と民間人が相次いで名乗りを上げた事に敵組織は大混乱。最終的にパワーレンジャーは宇宙を救うことができた)。
しかし、『星獣戦隊ギンガマン』の海外版『パワーレンジャー・ロスト・ギャラクシー』にてまさかの参戦を果たす。本作では「フリオ」という名称であり、敵組織「宇宙昆虫軍団」の最初の幹部として登場しており、原作『ギンガマン』でのサンバッシュのポジションを担っている。尚、人間態は存在しない。
劇中ではギャラクシーサーベル(星獣剣)を狙いミリノイ星を襲撃したが、レンジャー達に引き抜かれてしまい、ミリノイ星を石化させている。
その後もレンジャー達からサーベルを奪おうとするも、失敗が続いて組織に見限られそうになり、オリオンの光(ギンガの光)を手に入れる事で汚名返上を果たそうとするが、それも失敗に終わり完全に組織からの信用を失うこととなった。その事で組織から逃亡し、レオと戦い自爆で道連れにしようとするが、彼には逃げられてしまい自分だけが果てる事となった。
余談とはなるが、彼の退場劇はAパートのみで済ませられるという、可哀想な扱いを受けている。
関連タグ
熊沢博士:12年前のスーパー戦隊シリーズにおける、自身の理論を学会に否定されたことで侵略者に魂を売ったマッドサイエンティストの先輩。こちらは同情の余地が皆無で、自らの研究の副産物によって命を絶たれるという、より因果応報と言える末路を迎えた。
ポッペン星人ハイマル:自身の才能が旧知の人物より優れていることを証明すべく、悪に堕ちた戦隊怪人。こちらは最終的にその知人の説得によって改心し、逮捕されつつも生き残った。
リュウオーン:鮫島博士同様、過去の不遇によって人間を裏切った元人間の9年後のスーパー戦隊シリーズの敵レギュラー。
10サイのロボゴーグ:鮫島博士と同じく、過去の不遇が原因で悪の道へと走った元人間の科学者。しかしそうなる経緯や人物像等、鮫島博士とは色々な面で真逆であった。