魔女狩り
まじょがり
魔女と思しき人物を摘発・尋問し、場合によっては拷問や処刑などを行うことである。16世紀から17世紀のヨーロッパで流行した。「魔女」といっても対象は女性だけに留まっておらず、時には男性もその対象となった。
なお同時期にカトリック教会が行なった異端審問も魔女狩りと同様の手法をとったため、しばしば魔女狩りと混同される。さらに転じて、集団の中で異端的とされた思想を抱く人物への排除や糾弾、果ては思想とは無関係な単なるスケープゴートへのいじめなどを「魔女狩り」と称するようにもなった。
なお、魔女狩りは「大衆が」「魔女に」行うものであり、異端審問は「教会などの異端審問所が」「キリスト教徒の異端者に」行うものであり、前者は後者の影響で発生したものではあるが別物である。詳しくはWikipedia「魔女狩り」とWikipedia「異端審問」を参照のこと。
元来、魔女というものは西ヨーロッパの俗信(ペイガニズム)に由来するものである。魔女たちはまじないを用いて未来を予知したり悪魔を追い払ったりすることが出来る呪術師としての働きとともに、薬草の知識があり、人を癒すことができる医師としての側面もあった。中世のカトリック教会は、魔女や魔術を含む異教の風習に関しては妥協的関係にあり、キリスト教の教義とは関係のない古来の俗信に関しても寛容に扱った(そもそもカトリックの教義では魔術は迷信であり、教皇庁は魔女の存在を認めていない)。教会の聖職者もまじないを普通にしていたくらいである。したがって、俗説に反して、中世の魔女狩りは極めて稀であった。よく知られたジャンヌ・ダルクは異端審問を経て処刑されたのであり、魔女狩りではない。
中世末期になるとローマ教会に背く宗派や聖職者が多く登場し出した。カトリックは彼らを異端として弾圧した。拷問によって異端者を改宗させる、あるいはそのまま火あぶりにする、といった異端審問が広く行われるようになった。このメソッドが時を経て魔女狩りに転用される。
近世は激動の時代であった。華やかなルネサンスのイメージとは対照的に、地球全体の寒冷化によって飢饉が頻発し、戦乱が相次いだ。村は焼かれ、飢えた人々は都市に流入した。治安は悪化し、流行り病は相次ぎ、人々は不安におびえていた。
ちょうどそのころは、活版印刷の普及で大量の印刷物を製作できるようになった時期だった。そして人々の間にバラまかれたのは、他人の子どもを攫って殺す、悪魔などと交流する、といった魔女の恐怖を喧伝するビラやパンフレットであり、魔女狩りの方法を指南する手引書だった。『魔女の槌』に代表されるこれら指南書には、魔女の実在を疑うなかれ、と繰り返し書かれている。皮肉なことに、魔女を最も信じていたのは無学な平民ではなく、これらの著者である当代一流の医師や聖職者などの知識人だった。やがて魔女の存在は人々にとって自明のものとなり、魔女狩りが始まる。
当時の常識では、魔女とは魔法を使う者に限らず、悪魔と契約した者でもあった。どんな理不尽かつ不条理な理由であっても悪魔との契約にはこじつけられた。口汚い、目つきが悪い、どんなものでも「疑わしきは罰せよ」の精神によって、魔女として告発する理由になり得た。そして、いざ、告発されると拷問、尋問により有罪にもっていかれることは常であり、裸で手を後ろに縛った上で水に沈め、浮かんできたら魔女(当然沈んだらそのまま溺死する)という無茶な判別法まで用いられることさえあった。
クリトリスがあることが魔女であるという理由にさえなった。(悪魔の乳首)
この告発合戦はどんどんエスカレートしていき、魔女を告発した者がまた誰かに告発され、また告発された者も誰かを告発し返し、と際限なく続いていった。はては魔女狩りの裁判官が魔女として処刑されることさえあった。
一方で、魔女の告発人が商売として成り立ち、人々を火刑台に送っては財産を没収して私腹を肥やしていた。魔女の火刑は見物として人を集めたから、見物料や入場料を徴収する者もいた。明らかにおかしい、と当時の人たちも思っていた。どうにかしてやめる必要があった。
17世紀も終わり頃になると、魔女狩りの裁判官を務める知識階級の価値観の変化によって、被告に残酷な刑や拷問を課すことが避けられるようになり、告発されても無罪放免となることがほとんどとなった。最終的には魔女狩り自体も禁止された。「魔女であろうが何だろうが、一般人が勝手に裁判をしたり刑に処することはおかしい」という、しごく真っ当な意見によって。こうして18世紀に入ると魔女狩りは廃れていったが、魔女狩りによる死者は数万人に上ると言われている。
創作(特にファンタジー世界)では、魔法が大衆的である作品では魔女狩り(というか魔術師狩り)というものが起きる事はあまり無いが、魔術師が強圧的な支配者だった場合、その地位から転落すると魔女狩りが発生する事が多い。魔法が邪悪なものとみなされている世界なら、その邪悪視が慣習的なものなら魔女狩りが起こるが、公式なものなら異端審問や単なる迫害・弾圧になる。
魔法少女作品のように限られた人物のみが魔法を用いることが出来る世界であれば、魔女狩りというものが起きる場合もある。
SF世界でも、類似の現象として超能力者狩りがある。フィクションにおいては超能力は先天的能力で「学べば使える能力」の類ではないため、ミュータント狩りのような形で起こりうることがある。
創作としての魔女狩りのイメージを作り出したのは19世紀の小説家ラモト=ランゴンとされている(Wikipedia)。
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