医師とは、診療、手術など医療行為や保健指導を行う専門職。現在の日本においては医師法に規定された国家資格である。
日本の医師
6年間の大学医学部の医学科での修学及び医師国家試験の合格が必須である。
明治以前は免許制度が整備されておらず、先輩医師に弟子入りして修行を積むのが一般的であった。
現在の医師国家試験制度ができたのは1946年より。
医師試験合格後、約2年の研修を経て一人前となるが、技術職でもあるため実際にある程度の事ができるようになるのはさらに数年を要する。医師免許を取得した医師は、通常診療科に配属され臨床(診療)経験を積むが、基礎医学系の研究者や法医学・監察医のような研究者、厚生労働省などの官僚になる者など、臨床経験のほとんどないペーパー医師も少数ながらいる。また手塚治虫のように免許を持ちながら無関係の職業に就く者、臨床をほぼ行わず病院経営や政治家の活動に専念する者もいる。
医師に定年はない(但し個別の職場ごとの定年は存在し国立大学病院などは早い傾向にある)が、医学の進歩は早いので、ベテラン医師も日々勉強しなければ、その技術はあっという間に陳腐化してしまう。
また救急系、産婦人科系、外科系、 小児科系などは非常に体力もいるため、老齢になると現場を退く者も多い。特に三次救急と呼ばれる高度救命を受け付ける病院は勤務体系が非常にハードであるため、体力の落ちる中高年になると定年を待たず退職して老人病院、療養型病院などの比較的緩やかな職場に移る者も多い。
ちなみに医師免許をはじめとした医療系国家資格の免許証は未だに表彰状のようなでっかいサイズである。常時携帯の必要はなく、就職時に提出が必要で紛失した場合は届け出て再発行してもらう必要がある。
獣医師免許とは異なるため、医師が人間以外の動物の診断治療を行うことは不可能である。また、死亡診断書を作成できるのは医師および歯科医師のみである。
日本では、医師免許があれば事実上すべての診療科で医療行為を行うことができるため麻酔科以外は何科を標榜してもいいのだが(麻酔科のみ「麻酔科標榜医」と言う別の国家資格が必要)、実際問題大学出たてでは何もできないため、大学病院の志望する診療科の医局に入局したりして修行を積むことが一般的である。「医局」とは元々医師が集まってデスクワークをしたりカンファレンスを開いたり勉強をしたり論文を作成したりする部屋の意味だが、大学病院では各科の教授室の近くにもうけられることが多いため教授を中心とした人事組織をも意味するようになった。また必ずしも出身大学の医局に入らなければならないわけでなく、自身の出身地に戻ったり、自身の目指す方向性などに合った研究を行っている別大学の医局に入ったり、民間の病院で修行する若手医師も多い。
また、各診療科の学会では論文の提出数、こなした症例数などを条件として認定医・専門医・指導医などの認定を出している。
また、先に述べた麻酔科の「麻酔科標榜医」に加え、精神科の「精神保健指定医」、産婦人科の「母体保護法指定医」、産業医に関しては国家資格であり、取得は必須ではないが資格がない場合その診療科における業務が制限される。
免許は現在の日本では更新制度はなく一生ものであり、多くの医師はたとえ自分の意思で引退しても返納しない限り免許は有効なので法的には復職が一応可能である。
(現実には体調や年齢等の問題で戻らない者も多いが)
日本の医師免許は成人のみが取得可能であり、そのほかに「相対的欠格事項」として後述の例とも重なる「麻薬中毒者」「罰金刑以上の刑罰」などがあるが「相対的欠格事項」で試験に合格しているのに免許交付できなかった事例は滅多にないのが実情である、また過去に重大な犯罪を犯しても示談成立や改名などで過去をごまかして免許を取得した例が若干あり、1999年に集団強姦を行って当時在籍していた私大を退学になった者が改名した上で別の大学に入り直して免許を取得した例が報じられている。参照
刑事事件で検挙された医師については厚生労働省の医道審議会で免許の取り消しや三年以内の免許停(医業停止)、戒告が行われ、実名を公表される事もある。
医師免許取消し及び処分の要件は「心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」「金以上の刑に処せられた者」「号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者」と医師法第7条第2項、同条第4項に定められている。
これまでの主な処分実例としては、保険請求詐欺に関与した女医(タレント活動もしていた)が医業停止3年、免許取消に至った例は殺人・傷害致死・強制猥褻や違法薬物の使用などである。取消処分は永久的なものであり、再度取得は実質ほぼ不可能(昔人命に関わらない犯罪で若干再度取得の実例がある)である。
免許の自主返納は滅多にないが、例外的にオウム真理教幹部信者で教団の殺人事件に関与した医師複数(1人はのちに死刑を執行された中川智正)が逮捕後免許を自主返納した例がある。
たまに医師と間違えられる職業
たまに「皮膚科」「眼科」などの診療科と並んで「歯科」があると思っている人がいるが、日本の制度では歯科医師は医師ではない。歯科医師は業務独占資格および名称独占資格なので、医師は歯科医業を行なうことができない。
負傷兵への応急措置、部隊の感染症予防などを行う兵士。戦闘では国際法上の保護を受けられる。軍医ではないので応急処置以上の医療行為は出来ない。
いわゆる学校の保健室の先生。養護教諭免許を持つ。医療専門職ではなく医療行為は行なわない。(フィクションの世界では養護教諭が「学校医」などと呼ばれ、学校に常駐しているかのような作品があるが、通常は近隣の開業医に委託しており、学校に医師が常駐しているケースはごく稀である)。創作などで「保健医」と表記されるのは誤用(「保険医」は健康保険の診療に従事する医師または歯科医師のこと)。
医介輔
太平洋戦争後の一時期には、沖縄県で沖縄戦による医師不足に対応するため衛生兵などの経験のある者に一定の条件下で「医介輔」という診療は出来るが手術や投薬などに限定を設けた代用医師資格が設けられた。これは1代限りのものであり新規参入者も無く、介輔達の高齢化により年々その数は減り、2008年に最後の医介輔が引退し完全に姿を消した。
医師を描いた作品または医師であるキャラクター
『ER緊急救命室』
『ドクター秩父山』
『医龍』
『救命病棟24時』
『ER』
『麻酔科医ハナ』
『Doctors』
『Doctor-X』
『超執刀カドゥケウス』シリーズ
『コウノドリ』
医師や病院を描いた作品に対しての意識の変化
ある時期までは『閉鎖的な病院内で自称エリートや裕福な家の出身者が患者そっちのけで権力闘争に明け暮れている中、孤独な天才医師が患者を救って颯爽と去っていく』という言わば『現代における腐敗貴族及びその温床』として描かれている事が多かった。
しかしある世界的な感染症が日本で流行した際、医療事業者達の決死の努力や奮闘が次々とネットやメディアに流れる事となり、人々が描いていた負のイメージは払拭されていく事となった。
いくら天才的な腕前を持っていたとしても1人では診察や手術出来る患者の人数には限度が有りそもそも医師本人が感染してしまったらそれすら行えないのである。
医療もの以外の作品で医師設定のキャラクター
※但し、現実の制度と異なる方法で医師になっている者も多数いる。
- 玉藻京介
- 草摩はとり
- 小乃東風
- 風切景幸
- コンバット越前
- 泉博
- 伊達明
- トキ
- ヒルルク
- Dr.くれは
- トニートニー・チョッパー
- ドクトル・ホグバック
- トラファルガー・ロー
- マルコ
- 仲代壬琴
- アンドロメダ瞬(Ω、GAの設定)
- 佐渡酒造
- 八意永琳
- Dr.カゲムラ
- 与謝野晶子(文豪ストレイドッグス)
- 森鴎外(文豪ストレイドッグス)
- 沢越止
- 冥土帰し
- 神敬介(仮面ライダー大戦の設定)
- ジョルジュ・ディードリッヒ・ヘルガ
- イクノ
- 高荷恵
- 神宮寺寂雷
- エリス・フローラリア
- 赤屍蔵人
- 神谷実
- 羽伴毅
- ヒメノ・ラン
- 明負悟
- ロイド・フォージャー(表面上での職業)
- レオリオ=パラディナイト
- リップ=トリスタン
- ヤブイ
実在の著名な医師•医師免許保持者
- 森鴎外(作家、故人)
- 山中伸弥(整形外科医→研究者)
- 北里柴三郎(研究者、教育者、実業家、故人)
- 野口英世(研究者、故人)
- 徳田虎雄(政治家、故人)
- 西川史子(タレント医師)
- 香山リカ(活動家)
- 宋美玄(コメンテーター)
- 木下博勝(ジャガー横田の夫)
- 高須克弥(美容外科チェーン経営、タレント)
- 西浦博(医学者)
- 尾身茂(医学者)
- 手塚治虫(漫画家、故人)
- 日野原重明(故人)
- 市原真(ヤンデル先生)
- 鴨下一郎(政治家)
- 小池晃(政治家)
- 自見英子(政治家)
- 阿部知子(政治家)
- 吉田統彦(政治家)
- 桜井充(政治家)
- 浜田聡(政治家)
- 海堂尊(作家)
- 斎藤茂吉(歌人、故人)
- 北杜夫(作家、故人)※斎藤茂吉の次男。
- 知念実希人(作家)
- 鎌田實(作家、左翼運動家)
- 渡辺淳一(作家、故人)
- 久坂部羊(推理小説家)
- 米山隆一(弁護士、政治家)
- 古川俊治(弁護士、政治家)
- しゅんしゅんクリニックP(ピン芸人)
- チェ・ゲバラ(ゲリラ指導者)娘のアレイダも医師。
- バッシャール・アル=アサド(シリア5代目大統領)