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概要編集

財前五郎とは、山崎豊子の小説『白い巨塔』の主人公である外科医。本名は黒川五郎だが、浪速大学卒業後に財前産婦人科(2003年版では財前マタニティクリニック)令嬢の財前杏子と見合い結婚をしたことで婿養子となる。


人物編集

食道噴門癌を専攻し、食道・胃吻合術(2019年版では腹腔鏡手術)を得意とする外科医で、天才的な手術の腕前を誇る他、「財前式縫合」と呼ばれる胃の縫合法を考案して高い評価を得るなど、医学者としても高い能力を有している。それ故に野心を内に秘める自信家であり、一般の保険患者に対してぶっきらぼうな接し方をすることが多いため、同期の里見脩二や師である東貞蔵、病理学の大河内教授からはそう言った振る舞いをあまり良く思われていない。一方で、純粋な優しさを持ち合わせてもおり、実母の黒川きぬに毎月仕送りを送ったり、転勤する部下に料理を振舞ったり(2018年の漫画版)食事代を手術後におごるなど気遣いを見せ愛人のホステス・花森ケイコや佃をはじめとする医局員からの信頼は厚い。

自宅では良き家庭人としての一面を見せていたりもするがこれらの描写は映像作品では1978年版ドラマ以外では全く描かれておらず2003年版や2019年版に至っては子持ちですらない。


教授選への出馬以降は権力欲に取りつかれ、出世の為には手段を選ばない冷酷な面が強調されたが、後に自身がに倒れてからは本来の温かさを取り戻し、東や里見との関係も修復された。

大学内での役職では助教授(現在の准教授)、後に教授


経歴編集

岡山県出身。小学生の頃に父親を亡くしたことがきっかけで医師を志す。貧しい生活から猛勉強と努力を重ね、高等学校卒業後に浪速大学へ進学。メディアにも注目されるほどの技量と舅の財前又一の財力、自身を慕う医局員達の工作もあって、東と船尾教授が推す菊川昇准教授を始めとする対抗馬を抑え教授に就任する。


しかし里見の紹介で訪れた商店の経営者・佐々木傭平を自らの誤診で死なせてしまい、加えて彼の症状悪化時に学会を優先して外国へ渡るなどの不義理を働いたことで遺族から民事訴訟を起こされる。

一審に勝利後、医学部長(2003年版では大学長)である鵜飼の推薦で日本学術会議会員選挙に出馬に当選を果たすが、控訴審で部下の柳原に、里見や柳原の意見を聞き入れなかったばかりか自分を含めた医局員にカルテの改ざんを指示したことなどを明かされ、その証言がきっかけで敗訴した。判決後に激昂し最高裁への上告を告げた直後に倒れ、末期の癌であることが判明する。

2003年版では新設される浪速大学癌センター長推薦、2019年版では世界外科連盟の理事に立候補するが、いずれも敗訴したことで取りやめになった。

鵜飼によって病院内で箝口令が出され、東によって手術が行われたが、手術不能の範囲にまで転移したため胸を開いたのみにとどまる。

2003年版、2019年版では疑念を抱いた財前が、鵜飼の圧力で転職した里見が勤務する病院に診察に行き、彼から真の病名を告げられている。


最期は病気の悪化で危篤状態に陥り、里見、又一、杏子達に見守られ誇り高い医師としてその生涯を閉じた(2003年版では又一の気遣いによって里見のみが看取っている)。

死後は本人の遺言によって大河内教授によって遺体を病理解剖されることとなる。


手紙編集

財前は自らの死に際し、最高裁への上告理由書と大河内教授へ宛てた自身の意見書を綴っているが、1990年版を除くドラマでは前者を含めた里見宛ての遺書に置き換えられることが多い。

いずれの文面にも「自ら癌治療の第一線にある者が早期発見できず、手術不能の癌で死すことを恥じる」という自身の無念さを込めた文章が綴られている(原作では癌所見書の最後に記され、2003年版はこの文章で手紙が締めくくられている)。


1978年版はこれらに加え「それ以上に、医学者としての道を踏み外していた事が、恥ずかしくてならん」という書き出しから「里見の存在により自身の今までの行動を悔やみつつも最終的には省みる事が出来て感謝している」という趣旨の内容が綴られている。


2019年版は「里見と2人で膵臓癌の治療開発を成しえなかったのは痛恨」という趣旨で彼の無念さが綴られ、前述の「手術不能の癌で死す」の文章の後に「浪速大学病院第一外科の名誉を傷つけてしまった事を、深くお詫び申し上げます」と付け加えられており、最後には「里見への感謝」を述べる文章で締めくくられている。


財前の死因編集

作品内において「財前五郎は最後には必ず死ぬ」という展開は、原作において彼の死が描写された「続・白い巨塔」が「本編」の内容として原作に含まれ組み込まれて以降は、どんなにリメイクされても「絶対に改変してはいけない」不文律として定義されており、1966年の映画版(原作小説ではこの時点で「正編」とされていた裁判の第一審と里見の辞職で終わっている物語)以降に制作された映像作品では「財前生存エンド」は存在しない

さらに、時代を経るにつれ医療技術も進歩している事から、ここで原作通りに再現しようとすると「現代の医療技術では容易に生存率が向上しており、財前は生存してしまい物語が破綻してしまう」と懸念から、リメイクされる度に「放送時点の『現代』における『治療が困難で死亡率がより高い重篤な』症例」へと設定が改変されている


・胃癌(小説版・1978年版。小説版執筆当時の癌死亡率第1位)

・肺癌(2003年版。2003年当時の癌死亡率第1位。なお発病の伏線として財前のヘビースモーカーとしての面が強調されている)

・膵臓癌及びそれに起因する出血性脳梗塞(2019年版)


余談編集

  • 2003年版より前までは、原作含め自身が癌であることを告知されないまま死ぬ展開となっている。これは時代の変化を反映したものと言える(昔は癌を宣告しないのが一般的だった)。
  • 2003年版では里見との関係が強調されており、里見のみが最期を看取っている。また、財前がうわごとの中で最後に発した言葉は「里見と二人でもう一度やり直したい」と解釈できるものであった。
  • 教授に就任した財前が、「財前教授の、総回診です」の放送と共に、部下を引き連れて廊下を行進するシーンは、『白い巨塔』を象徴する名場面として有名で、漫画お笑いで頻繁にパロディにされるなど、強い影響を残した。


演じた俳優編集

田宮二郎(1966年映画、1978年フジテレビ版)

佐藤慶(1967年NET版)

村上弘明(1990年テレビ朝日版)

唐沢寿明(2003年フジテレビ版)

岡田准一(2019年テレビ朝日版)

関連タグ編集

白い巨塔

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