───諦めるな。
すべての命には助かる義務がある!
概要
『週刊少年マガジン』にて連載されていた山本航暉(旧筆名:山本晃)による医療漫画。2001年16号から2011年45号まで連載された。通称は「ゴッ輝(ごってる)」。全62巻。
「神々の座す処(ヴァルハラ)」と呼ばれる名医が集う安田記念病院を舞台に、外科医として新たに配属した真東 輝(まひがし てる)の成長を描かれている。
作中では様々な病気及び外傷の症状や、治療方法や手術方法などが細かく解説しており、日常的に起きやすい症状(寝違いやこむら返りなど)の処置方法も載せている。主に外科医を題材にしているが、麻酔科医や整形外科医などフィクションでは注目されにくい医療の分野にも焦点を当てている。
また、医師不足による医療崩壊、地域・地方・僻地医療、各科細分や専門特化による診療不全(患者がどの科に行けば良いのか迷ったり、見当違いの科に迷い込んでしまい初期の医療処置が遅れたりする初診過誤)問題、経済的な問題(病院の経営問題)などリアルな現状についても触れている。
2019年末から翌年まで世界中で大流行している新型コロナウイルス(COVID-19)を題材にした「ゴッドハンド輝 ~沈黙のコロナ2020~」が連載された。
作者いわく前作(「疾風伝説彦佐」シリーズ)にて「戦国時代を舞台にしたせいで人の死と嘆きとやるせない様をたくさん描きすぎたために鬱になってしまったので、全く正反対となる現代を舞台とした人が絶対に死なない、人の命を救う主人公を登場人物みんなが心から笑顔になる作品を描こうと思った」のが本作の執筆のきっかけだったとか。
ある意味で前作キャラたちの供養作品とも言えるかもしれない。
登場人物
- 真東 輝(まひがし てる)
主人公。前髪部分を金髪に染めているのが特徴。周囲からは「テル先生」と呼ばれている。
元気で明るく何事にも一生懸命な性格だが、ドジばかりでそそっかしいのが欠点。
物語当初は安田記念病院に配属されたばかりの新人医師で、当初は未熟でミスばかりで同僚はおろか患者からも心配されていた。
だが、人の命に関わる事態に直面すると、打って変わって天才的な腕前と直感で困難を克服していく。
患者のことを第一に考えており、患者との「二人三脚の医療」を目指している。そのため、患者からの人気は高い。さらには院長いわく研修医時代から一度も患者の死に直面していない「命への絶対的天運」を持つ。
実は日本生まれかつ初等科過程はアメリカ育ちの帰国子女なのだが、世界航空史上未曾有の被害者を出し、のちに救助に向かった救急隊員および山岳救助隊の人々に「この世の地獄」とまで言わしめた現状を生み出した「天下航空機墜落事故」の唯一の生存者でもある。その時のトラウマによって航空機(ヘリコプターを含む)に乗れず、無理に乗った時(ドクターヘリなどで乗らざるをえない状況になる時がある)には酷い「航空機酔い」を起こす(それでも患者への施術はきちんとこなすので流石とも言える)。また事故のショックでアメリカにいた時の事を忘れていた。
この時、一緒に乗っていた名医で父親の真東 光介(まひがし こうすけ)の心肺蘇生で奇跡的に生き残った(その代わり父は、輝の蘇生を確認した直後に亡くなった)経験から医者を目指すようになる。その胸には今もなお父の手形の跡がくっきりと残っている。
事故の後は叔母(父の妹)である蓑輪 朱鷺子(みのわ ときこ)に引き取られて育てられた。そのため朱鷺子を「叔母さん」と呼びながらも実質的な育ての母として慕っている。
- 佐倉 綾乃(さくら あやの)
ヒロイン。安田記念病院に勤める看護師。
穏やかで世話好きな性格。テルとは初対面の時から好意的で、後に恋仲へと発展する。
- 北見 柊一(きたみ しゅういち)
安田記念病院の外科部長でテルの指導医。
院長の安田に次ぐ天才的な腕の持ち主で、冷静沈着な様から「氷凍(こおり)のメス」という異名を持つ。
新人とはいえ未熟すぎるテルを厳しく指導しているものの、テルの秘めた潜在能力には一目置いており、成長に期待している。
日本最高峰の大学の医学部卒であり母校の付属病院に勤務していたが、病院内に蔓延る大学の学閥(学部閥、ゼミ閥、期生閥、医家閥)に由来する政治闘争に、ほとほと嫌気が差しつつ磨いてきた技術でそれを捩じ伏せていた時に安田院長と出会い、彼の技術に魅せられた上で「閥の柵などブチ壊し、ただ患者のために医療を極められる病院を創る」という志に大きく共鳴して大学病院の教授(≒権力の亡者)たちに絶縁状を叩きつけて安田記念病院に転じた過去を持つ。
冷静で厳格な反面、物事を全力で取り組む熱い一面も持つ。院内では個性の強い面々に振り回される(主に安田やテルなど)苦労人の一面も持つ。自身、サラリーマン家庭(しかも転勤族)の出身であるため大学病院時代はその事でも苦労してきた。
見た目は若々しくかなりの美形のため、女性からの人気は非常に高い。かなり身体は鍛えられており、腕っぷしも強くスタントマンさながらの身体能力を見せている。
- 安田 潤司(やすだ じゅんじ)
安田記念病院の創立者で院長。
普段はおちゃらけているが「黄金の左手」の異名を持つ天才外科医。自らの話術や集中力を以て患者や周囲に時間と負担を感じさせない施術を得意としており、その様は「時の魔術(タイム・マジック)」と称され讃えられる。ただし、勤務中にパチンコに行ったり漫画サイトを閲覧したりなど業務は不真面目。
メガネを掛けたスキンヘッドの容貌からたまにヤクザと勘違いされる(初対面の時のテルなど)。
かつては集団(人間関係)で人を縛ろうとする母国の狭さに辟易して日本を飛び出し世界中を回り知見と見識を深め、その最中にアメリカでも勤務していたが、そこで幼少期のテルとその父の光介と出会い(テル本人は憶えていない)彼の神懸かりの手術の腕を見て尊敬するようになる。
実は光介は同じ大学の先輩(期は違うので同時期の在籍者ではない)で、そのため光介の事は常に「真東先輩」と呼ぶ。そして日本の病院で働けない事情を持っていた光介と「多くの命を救う病院」という夢と理想論を交わして「あなたが全力で働ける病院を日本に作ってみせる! 俺が病院を作ったら一緒に働いてください!」と約束した(光介も快諾していた)。しかし新病院設立の目処が立った矢先に天下航空機墜落事故の報が入り、自らが認める才能、唯一敬愛する先輩が喪われた(自らの夢の半分が運命に奪われた)事に深く嘆き絶望する事となった。自らが認める才の粋を集めた安田記念病院は設立でき多くの命を救ってきたものの光介の持っていた「一手」に足るものを得られず懊悩していた。そんな中、研修医採用のための視察に各地の大学へ訪れていた時、医大に入り研修医となっていたテルを見つけ、彼が知らずのうちに父や自分の背を追っていた事に涙する。そして改めてテルの所属大学から彼の資料を見せてもらい、彼に宿る「絶対的天運」の可能性を感じて採用する。
「沈黙のコロナ2020」では、院長職を北見に引き継がせて辞職し、引退記念世界旅行に出ている最中に新型コロナによって帰れなくなり、ケニアにて新型コロナウイルスの治療を手伝っている時に感染してしまい、そのまま死去する。
- 四宮 慧(しのみや けい)
テルのライバル。テルの後に配属された若手外科医。
関西及び西日本に勢力を築く医療法人「四瑛会」を経営する四宮家の四男。技術至上主義者で「北見の再来」と呼ばれるほどの腕前を持つ。なお米国留学経験者でもあり、この時に「ドクター・イースト」の伝説を聞き及んでいた。
大学の先輩にもあたる北見を篤く尊敬しており(大学時代、母校の付属病院にいた北見の手術を見学しており、その技術に魅せられた)そもそもが北見に指導してもらいたくてヴァルハラに来たため当初は北見に指導されているテルを快く思わず、何とか指導医を外させようと画策していた。
しかし、北見や院長からは、その「技術至上主義」を「人格の歪み」として危険視されている。実際、患者の治療を賭けの対象にしようとするなど、患者を「自分の技術や能力を誇示するための道具」として見る傾向が強く、その部分で北見や院長に苦言を挺されテルとも対立を深めていく。
また四瑛会・四宮家は、いわゆる苛烈な「血統主義(同族経営)」を強いており、その悪影響から「医家の血筋」「(医家の)血の宿命」というものに過剰な執着を見せ、一般家庭出身の医師を、ただそれだけで下に見る傾向も持ち合わせていた(自身に圧倒的技術を見せてくれた北見だけは別)。そのためテルの出自を知らなかった時は、彼の事を「一般家庭出身のくせに医家の領分に無遠慮に踏み込んできた不心得者」とみなして時代錯誤な差別意識すら見せている。が、テルに対しては彼が米国で名を知られた「ドクター・イースト」の息子である事を院長から知らされた事、またヴァルハラの医師(特に医局部長)たちの圧倒的スキルと指導を目の当たりにした事で認識を改めていくようになる。
さらに過去の自分によく似た育ち方をしている少年の主治医となった事をきっかけに、自身の過ちと足りなかったものに気付き、立派な医師として成長していく。連載中期以降はテルとは互いにライバルとして認識している。本人は知らないが、親同士も因縁が存在している。
余談
2009年4月からTBS系土曜20時ドラマ枠でドラマ化された。しかしマガジン(講談社)作品のドラマ化作品の例に漏れず、連載中期と後期の物語設定をごちゃ混ぜにしたストーリーラインを取られた(KZ病院編と四瑛会編を同時進行。四瑛会をKZの黒幕に設定した)上で、そのために様々なドラマオリジナル設定が盛られて別作品化した(特に四宮のポジションに妹の梢が居座った上、ツンデレを盛られてダブルヒロイン制がとられた)。その挙句、何と全5回で放送終了となってしまった。
どうも木村拓哉主演の「Mr.brain」の前座穴埋め番組(広告枠を繋ぎ止めるための捨て番組)扱いだった様で、一部視聴者や関係者を怒らせただけでなく後のこち亀実写版と共にTBS土曜20時ドラマ枠の致命傷となった。
関連タグ
最上の命医…本作とほぼ同時期(2008年~2010年)に他誌で連載されていた医療漫画。主人公である西條命が低身長で童顔と輝と共通点が多い。だが、命はアメリカで優秀な実績を残した医師である為、輝本人よりも父親である真東光介に実力も性格面も似ている。ちなみに光介のアメリカ時代の異名は「ドクターイースト」であり、もしも命に異名があったら「ドクターウェスト」だろうか…
トッキュー!!…同じ週刊少年マガジンで連載されていた久保ミツロウの海上保安庁特殊救難隊を題材とした漫画作品。同じ世界線という設定で一度だけ共演したことがある。
浪川大輔…本作のファンであり、ツバサクロニクルのインタビュー企画でアニメ化したら出演したいと述べていた。