概要
JRグループの1社で、主に九州に路線網を持つ鉄道会社。正式名称は「九州旅客鉄道株式会社」。コーポレートカラーは赤色。
後述の経緯から、売上に占める鉄道収入割合がJR旅客6社で最も低く、既に鉄道は副業といっても過言ではない。
いわゆる「三島会社(本州以外を継承した、当初より単独での存立が危ぶまれた3社の総称)」の中では最もマシといえる状況ではあり、2016年10月25日に東証一部、翌10月26日に福証への上場により、これらの中では初の完全民営化を達成している。
かつてはJRグループで唯一、国鉄由来路線がない沖縄にも支店を構えて営業活動を行っていた等、域外からの集客にも一際熱心である。
デザイン
JRグループは各社共にコーポレートカラーを意識した塗装を取入れる等、視覚的にもイメージアップを図ったが、その姿勢が群を抜いてアグレッシブであったことでも知られる。
大体メイン画像の様な調子で、とにかく赤を強調。そこをさらにアルファベットのレタリングなどで飾り立てるという、国鉄どころか、当時の日本鉄道全体常識に照らしても著しく外れたデザインを採用したのである。
流石に真っ赤にはしなかったが、車内・駅舎・看板・制服などもこれに通じるデザインに作り変えて行き、独特なブランドを創出した。
これを支えるのが「ドーンデザイン研究所水戸岡鋭治デザイン」であり、同社が手掛ける事業の多くはここが一括で引受けて統一感を維持している。
もっとも、赤の強調自体は数年で落ち着き、1992年の787系辺りからは一転してダーク系も取入れる様になる等、多様化が進んだ。
2000年代に入ると、日本の伝統色や伝統工芸、天然木などの素材を用いたデザインが増加し、2010年代には古典的な洋風デザインをリメイクした様なものが現れるなど、冷静に観察していると時代ごとに変化を付けてもいる。
ただしアルファベットのレタリングだけはアイデンティティのようなものらしく、和風デザインであっても一貫して散りばめている。
新規導入や大規模な改装の際にはほぼ確実にJR九州色に染め上げるものの、それ以外の車両や施設への適用状況はまちまちである。キハ40系などは収支状況が特に厳しい路線に多いということもあってか、国鉄からの継承時とさほど変わらない姿で残り、JR九州らしさは赤いJRマークだけという個体が寧ろ多数派となっている。
ちなみに、2001年に分社したJR九州バスはまた方針が異なるのか、JR発足当初の真っ赤な車体を標準色とし続けている。
駅名標に関しては意外な程シンプルであり、基本的にラインカラー等も入れない中小の私鉄の様なデザインをしている。所在地を併記する国鉄以来の伝統は守っている。
JRグループで唯一、国鉄時代から続く第3種縦型駅名標を廃止したことがある。だが、2018年の北部九州エリアの駅ナンバリング開始に伴い、新デザイン第3種縦型駅名標を復活させている。
特急
特急重視もまた、他追随を許さなかった。
特に地方では優等列車を優先したダイヤを組む鉄道は珍しくないが、
- 普通列車が1時間遅れていても特急は定時で運行。
- 普通列車減便が進み過ぎて、最早特急でないとまともに移動出来ない区間がある。
- 残った普通列車も間合い運用で、実質特急。
- 貨物列車が故障して立往生した際、後続特急で乗客を乗せたまま救援した。
- 救援完了後は何事もなかったかの様に客を取り、営業を続けた。
…と、冗談の様なエピソードが次々と出て来る。
この体質は、「赤字路線が多く客単価の高い特急で少しでも収入を稼ぐため」といわれがちだが、その理解は正確ではない。
JR九州の最優秀路線は運炭路線上がりで現在は通勤輸送主体の篠栗線なのである。
JR九州は鉄道単体で収益を上げる事を半ば放棄しており、鉄道によって人の移動を生み、不動産等の事業で儲けを出そうとしている。
つまり、特急すらそのためのステータスシンボルに過ぎず、意地でも運行を続けようとするのは、目の前の利用者よりも寧ろ未来の利用者候補に対するアピールの意味合いが強いのである。
実際、新幹線が運休した際には「需要の少ない定期特急を運休して新幹線代行輸送の特急を走らせる」という、一見本末転倒に思える行動にも出ている。
これも「既に乗っている少数の定期客<これから乗りに来るかもしれない多数の不定期客」という数の論理で考えれば合点が行くだろう。
ちなみに先、述の787系に国鉄のシンボル的存在であった「つばめ」の名を冠そうとした際には、他の旅客6社からの許可を取付けてまで確実に確保しようとしていた。
そもそも全盛期「つばめ」の運行区間と九州は本来無関係であり、色々な意味でこの会社の体質を象徴するエピソードと言える。
なお、後にJR東日本が「はやぶさ」で似た様なことを行い、それによって九州新幹線ブランド戦略が若干狂った節があるが、それはまた別のお話。
観光特急
1989年の「ゆふいんの森」を始め、各地のローカル線にも観光列車を兼ねた特急を運転している。中には国鉄時代ですら碌な優等列車が無かった路線に入ってゆくものもあり、やはり他の追随を許さない。
これらには普段にも増して凝ったデザインを取り入れており、同社では「D&S列車」と呼んで目玉の1つにしている。D&Sは「デザイン&ストーリー」の略であり、物語性、すなわち乗車体験を含む旅全体を演出するという点で、上記の営業方針を体現した存在である。
他方で、ただ豪華なだけで物語性の無いジョイフルトレインへの見切りは速く、JRグループ最速で全廃している。「D&S列車」に編入したごく一部を除いて容赦無く解体処分しており、最も短命なもので改造から1年であったという点からも、列車や車両そのものに価値を感じているわけではないという事が窺えるだろう。
さらに2013年10月からは、「ななつ星in九州」というクルーズトレインも登場させている。一応寝台列車の一種ではあるが、パッケージツアースタイルで公共交通機関としての利用はできず、料金は最大で100万円以上に達しドレスコードもあると、まさに「鉄道版クルーズ船」といった運行体系を取る。
もっとも、提供するサービスも相応であるため、これでも単体では赤字になりかねないレベルなのだという。
あくまで走る広告塔であって、本命の収入は別に取りに行くという姿勢は徹頭徹尾変わらない。
経営
JRグループとしては中古車の購入が多く、
あたりが有名である。
これらも詰まるところは「鉄道の経営が苦しい」という一点に由来している。
JR北海道やJR四国よりマシとは言え、所詮は脆弱な三島会社である。鉄道事業は負けず劣らずのお寒い状況で、九州新幹線ですら赤字になる年があるほどである。
鉄道事業の赤字は非鉄道事業への投資として納得してもらっている状態で、半ば義務的に極力支出を抑える必要があるわけである。
ちなみに同郷で同業の西日本鉄道も似たような構造をしているが、同社の鉄道事業は黒字であり、最大の赤字は花形部門とされるバス事業だったりする。
にもかかわらず、2016年の平成28年熊本地震や翌2017年の九州北部豪雨を始めとして自然災害は増加傾向で、復旧費用が嵩んでいる。
当初復旧まで3年かかるとされた久大本線を1年で全線復旧させるなど、公共交通機関としての使命感も見せてはいるものの、2018年のダイヤ改正ではついに在来線を1日約3.7%、九州新幹線も6本を削減するなど、全面的な減便・減車を始めるまでに至った。日田彦山線についても鉄道での復旧を断念しBRTに移行する区間を出している。
2020年代となると新型コロナウイルス流行も手伝い、より大規模且つ形振り構わない形でのコスト削減に踏み切るようになっており、数十駅単位での無人駅化、みどりの窓口の統廃合や営業時間短縮、電灯削減や点灯時間短縮、駅名標の撤去やステッカー化、時刻表の配布中止などが相次いだ。
中でも座席を撤去してまでの詰込みの強行はソーシャルディスタンスに逆行するということもあって明らかな違和感を抱かれた様で、地元の西日本新聞も取材と意見収集に乗出している(外部リンク)。
それによると「座席撤去で1車両当たりの輸送能力が増加するため、今後は所有車両削減や改良などを検討する考えです」との回答で、寧ろ一層の減便・減車の加速を示唆する厳しい内容となっている。
窓口についても、単純な削減が多く券売機等の代替手段が不足しているため、地元民のみならず、観光客等も営業場所・時間を把握しておかないと「ネットで購入したチケットの受け取りが出来ない」といった事態が起きかねないので要注意。
管轄する路線
新幹線
在来線
- 指宿枕崎線(鹿児島中央 - 指宿 - 枕崎間)
- 大村線(早岐 - 諫早間)
- 香椎線(西戸崎 - 宇美間)
- 鹿児島本線(門司港 - 小倉 - 博多 - 久留米 - -大牟田 - 熊本 - 八代間・川内 - 鹿児島間)
- 唐津線(久保田 - 唐津 - [[西唐津>西唐津駅]間])
- 吉都線(吉松 - 都城間)
- 久大本線(久留米 - 日田 - 由布院 - 大分間)
- 後藤寺線(新飯塚 - 田川後藤寺間)
- 篠栗線(桂川 - 吉塚間)
- 佐世保線(江北 - 武雄温泉 - 早岐 - 佐世保間)
- 山陽本線(下関 - 門司間のみ)
- 筑肥線(姪浜 - 唐津間・山本 - 伊万里間)
- 筑豊本線(若松 - 折尾 - 新飯塚 - 桂川 - 原田間)
- 長崎本線(鳥栖 - 佐賀 - 江北 - 諫早 - 長崎間)
- 日南線(南宮崎 - 油津 - 志布志間)
- 日豊本線(小倉 - 大分 - 宮崎 - 鹿児島間)
- 肥薩線(八代 - 人吉 - 吉松 - 隼人間)
- 日田彦山線(城野 - 田川後藤寺 - 添田間)※
- 豊肥本線(熊本 - 宮地 - 豊後竹田 - 大分間)
- 三角線(宇土 - 三角間)
- 宮崎空港線(田吉 - 宮崎空港間)
保有車両
国鉄から継承
国鉄車であるが、直接継承されていないもの
8620(58654号。静態保存機をJR化後に本線復帰。「SLあそBOY」→「SL人吉」用)
- ただし静態保存時の所有側としてはJR九州を国鉄の継承組織として返還と位置づけている
民営化後の新製車
在来線車両
- 783系 787系 883系 885系
- 303系 305系
- 811系 813系 815系 817系 BEC819系 821系
- キハ125 キハ200系 YC1系
- キハ71系 キハ72系 キハ183系(1000番台)
- DF200(7000番台) DD200(700番台)
- 77系
新幹線車両
他社からの移籍
引退・廃車済
鉄道以外の事業
JR九州は早くから幅広くサイドビジネスを展開してきたことで知られる。
運輸事業以外からの収入は60%に上っている。
駅ビル・不動産
博多等、主要駅ビルの商業施設・オフィスを運営。合わせて黒崎や佐賀等では「えきマチ一丁目」というショッピングゾーンを展開している。また、マンション開発やゴルフ場管理なども行っている。
最早鉄道事業と肩を並べられる程の基幹事業といっても過言ではない。
ホテル
「JR九州ホテルズ」として、九州・沖縄及び東京でホテルを運営している。
飲食事業
「JR九州フードサービス」が居酒屋「うまや」を九州・東京・上海で経営。同社は他にもうどん屋12店舗・ラーメン店8店舗・吉野家3店舗・華都飯店3店舗等々…を運営しており、とにかく幅広く飲食店を展開している。
農業
「JR九州ファーム」では九州各地に自社農場を建設、農産物の生産から食料品製造・加工・販売までを一手に担っている(いわゆる「農業の6次産業化」)。
現在の生産品目は卵、キャベツ、レタス、大根、人参、ミニトマト、ニラ、ピーマン、さつまいも、柑橘類、アスパラガス、ブロッコリーと多岐にわたる。将来的な目標として自社の農産物のみによるカレーライスづくりを掲げており、玉ねぎ、じゃがいも、米なども生産対象の候補に入れている。
また、千早等には同社の生産物を扱う「八百屋の九ちゃん」が出店している。全国的に見ても鉄道事業者直営はかなり珍しい。他にも自社製卵を用いた洋菓子店「うちのたまごEGG&SWEETS」もある。
コンビニ等
「JR九州リテール」がキヨスク、am/pmから転換したファミマを運営。また、傘下・ドラッグイレブンでは医薬品・化粧品・健康食品販売をしている。
ベーカリー
パン生地提供を受ける等、タカキベーカリーとの関係が深く、2023年に同社完全子会社となってJR九州は手を引いた。
発電
都城横の車両基地跡に太陽光発電所を建設、約210万kW/時を発電している。
老人ホーム
「JR九州シニアライフサポート」が住宅型有料老人ホーム「SJR」を運営している。
海運
「JR九州高速船」が博多 - 釜山間国際航路を手掛けており、世界一速い高速船「ビートル」を運行している。
…等々。
九州を活性化させるため、そして鉄道の不振を補うため、これからも増えることが予想される。
公認キャラ
アプリゲーム『ステーションメモリーズ!』より、公認化されたでんこが2名登場している。
883系がモデル。
885系がモデル。
関連タグ
九州地方 福岡県 佐賀県 長崎県 大分県 熊本県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県
JR九州駅長シリーズ 浪漫鉄道 SUGOCA ドーンデザイン研究所水戸岡鋭治デザイン 九州旅客鉄道沖縄支店
みずほ(列車名) さくら(列車名) つばめ(列車名) かもめ(列車名)
JRグループ
JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR貨物