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概要

1983年(昭和58年)に旧国鉄東京南鉄道管理局が製作した欧風列車「サロンエクスプレス東京」から使用の始まった単語とされ、それ以前に製作した同種の車両も含めて一つのカテゴリーを形成した。


和製英語かつ厳密な内規が作られたわけでもないが、概ね

  • 展望室やサロンなどの豪華設備(多くは定員外のフリースペース)
  • 窓側を向いた座席など、一般車両と著しく異なる乗車方法
  • カーペットなど、土足で入れない区画(お座敷列車

といった構造を有した団体向け車両は「ジョイフルトレイン」として扱われた。

なお大半がグリーン車扱いであった。


確かに「団体向けサービスの向上」という目的もあったが、国鉄ならではの事情として、電車化・気動車化の進展で余剰となった客車および人員の有効活用を図ったという側面もあり、初期には12系14系といった汎用の座席車を魔改造した車両が多くを占めた事も特徴である。


6両程度の編成が多かったものの客車の特性上フレキシブルな運用が可能であり、数両を抜いてコンパクトな団体向けに運用することもあれば、同種の車両を何両も繋げた特別編成を仕立て、最低興業人数が3ケタという企画まで当たり前に売り出されていた(そして売れていた)。


JR化後は気動車や電車のジョイフルトレインも見られるようになったが、逆に編成の自由度は低下することになった。


2000年代にはそのほとんどが老朽化、陳腐化などの理由で廃車・解体されたが、わずかに生き残ったジョイフルトレインも存在するほか、後継者的存在としてクルーズトレインが多く登場している。


主なジョイフルトレイン

※お座敷列車、特に「サロンエクスプレス東京」以前に作られた客車には特定の愛称が付けられていない車両も多かった(それらを区別する時には「所属車両基地の電報略号+座」という通称が便宜的に使われていた)。

欧風客車

和風客車

  • ふれあいみちのく
  • ふれあい
  • やすらぎ
  • くつろぎ
  • 江戸
  • なごやか
  • ゆとり(「サロンエクスプレス東京」の再改造車)
  • 白樺
  • 浪漫
  • いこい
  • わくわく団らん
  • ふれあい愛
  • いきいきサロンきのくに
  • あすか
  • みやび
  • 旅路

その他客車

気動車

電車


衰退の原因

需要の急減と余剰化

おりしも国鉄解体に前後してバブル景気が訪れ、最盛期は各都道府県に2編成またはそれ以上が常駐する体制となっていた。ところがバブル崩壊による不況で大口の団体客は激減し、小口の移動もツアーバス等に取って代わられていった。ジョイフルトレインの大半を占めたお座敷列車や欧風客車は一般旅客用の臨時列車には使いづらく、余剰車を活用したはずが活用先も余剰になるという状況が生まれてしまった。


大規模な改造による老朽化

多くのジョイフルトレインは照明器具や窓枠といった内装の他にも展望室ラウンジなどの豪奢な構造を備えていたが、数々の特殊機構は維持費用がバカにならなかった。さらには改造箇所の劣化で雨漏り等の異常をきたす事さえしばしばであったといい、ソフト・ハード両面で原形で残った車両よりむしろ寿命を縮めた例が続出した。


もちろん国鉄→JRも何も考えていなかったわけではなく、民営化前後からは電車や気動車を用いた短いジョイフルトレインを主流にし始めてはいた(急行の衰退によって、それ用の車両も余るようになってきたという事情もあった)が、頑丈な国鉄型車両ゆえに一度手を加えた後の劣化は早かったようで、長持ちしなかった。


グリーン車扱いだったこと

上記と一部被るがこのタイプの車両は大半がグリーン車であり、長距離移動ともなれば料金はバカにならなかった。それゆえバブル崩壊後も安定した需要が保たれていた宗教関係の臨時列車や甲子園臨に充当されることがなく、利用層が非常に限られたものになってしまった。


先駆けとしてお座敷客車が改造された当初(1965年頃)は普通車扱いだったのだが、規定や定員を改定してグリーン車にしてしまったのが後年にアダとなった。需要実態に合わせようとしたのか、JR東日本のジョイフルトレインの多くが再度普通車へ格下げ・改番されている。


定時運行の困難性

車両そのものの性能には全く問題がないのだが、特にお座敷車両は必然的に遅れる性質があり、ダイヤの詰まっている区間だと運転がしづらい。というのは、客室が土足禁止でデッキが一般家屋の玄関の役割を有している一方、大勢出入りする玄関としてはかなり狭いからである。どんなに運転士氏が頑張って途中駅着を定時に戻しても、途中乗降があればそれで分単位で遅れてしまっていた。


JR各社の動向

JR化後は各社でその顛末が大きく異なることとなった。

JR北海道の動向

JR北海道は「くつろぎ」数両を改造した程度でお座敷客車からは手を引き、「リゾート列車」としてハイグレードな特急形車両をデビューさせる方針に至った。土地そのものが観光といっても過言でない北海道では車内設備よりもパノラマビューを優先させ、目的地までの移動手段としての役割を強めたのである。

何よりJR北海道の手法は

  • 座席車としたことで、観光シーズンに一般向け特急列車に充当することができるようになった
  • 特急形から改造したため乗り心地が快適&波動用編成として一般型の代走にも充当可能
  • ホテル(アルファコンチネンタルエクスプレス)や航空会社(ANAビッグスニーカー)と契約することで安定した輸送需要を確保
  • 「ニセコエクスプレス」以降は車両を新造

といった点でたいへん優れており、バブル崩壊後も長きにわたり活躍できた車両が多かった。

流石に老朽化で漸減してきてはいるが、2020代に入ってからはキハ261系「はまなす編成」「ラベンダー編成」という「在来特急とほぼ共通仕様なので併結可能な特別編成」を新製するなど、JR唯一の成功例といえる会社となった。


なお、お座敷「客車」からは早期に手を引いたが、お座敷「列車」自体はむしろ力を入れていたことも特筆される。

というのも、JR北海道は急行「はなます」や快速「ミッドナイト」といった安価な夜行列車において、フェリーの2等船室をヒントにしたカーペットカーというものを並行して運用していたのだが、これらの車両の「靴を脱いで乗車する車両」というコンセプトはお座敷列車にかなり近い。

というわけで、JR北海道のお座敷列車はキハ400キハ183系をお座敷改造する方向へ方針を転換し、団体列車のみならず繁忙期の夜行列車に増結車として連結し、なんちゃって2等船室運用という、他JR各社とはまた違った進化を遂げることとなった。

急行時代の宗谷・利尻においては、座席車(キハ400・480およびキハ182のリクライニングシート車メインだがたまに非冷房ボックスシートが入る+寝台車(14系、2段寝台)+カーペットカー(元「ミッドナイト」のキハ57・27)+お座敷車(キハ400)、といった混沌としか言えない運用をされたケースも……。


JR東日本の動向

JR東日本は旧来のジョイフルトレインを積極的に排除したわけではなく、老朽化したものから緩やかに置き換えていく方針をとった。特に485系はほとんどの電化区間で運用できることから客車の置き換え用として重宝され、多くの車両が生まれた。その置き換えもお座敷列車にこだわらず、ミーティングスペースを備えた洋風車両に取り替えるなど時代にあった移行をする例もあった。


そんな中異彩を放ったのが「ノスタルジックビュートレイン」である。

これはいわゆる「観光列車」であり、

  • 市販の時刻表に載る臨時列車として運行したこと
  • 全車普通車の普通列車で、乗車券+αで安価で楽しめたこと(ノスタルジックビュートレインには自由席さえあった)
  • 座席車であり、個人旅行で使いやすかったこと

が幸いし、盛況を見せていた。これを見たJR東日本は全国各地にこれでもかと観光列車を投入。具体的には以下の通り。


客車

気動車

電車(新幹線含む)


まさに打てば響くといった状態で、バブル崩壊後もローカル線に安定した需要を保つことに成功している。

また旧来のジョイフルトレインはその奇抜な外観とは裏腹に車内は他の編成と大差ないものも多かったが、上記の車両は編成ごとに決まったテーマを持つものがほとんどで、紹介サイトを見るだけでそのバリエーションに驚かされるだろう。車内で現代アートやら利き酒やらポケモングッズやらを楽しめる列車は全国でも唯一の存在と言って間違いあるまい。

さらに「リゾートビューふるさと」を皮切りにHB-E300系による新造車も登場するようになり、人気のものは継続的に運行していこうとする姿勢が窺える。

ただこれらの車両は「団体向けサービス」を前提とした本来のジョイフルトレインの範疇から外れるとする見解も多く、JR東日本側も2016年以降「のってたのしい列車」という名称を使うようになっているので注意が必要である。


閑話休題。上述した通りバブル崩壊後も最大勢力を保っていたJR東日本であるが、485系やキハ40系など第2世代も老朽化してくると代替車両を用意しなくなった。また「のってたのしい列車」もキハ40系を使用した初期のものは淘汰されているが、こちらでも「みのり」「リゾートうみねこ」のように代替車が製造されないものも出てきている。いくらJR最大の路線網を持つといえど、厳しい現状には逆らえないようだ。


JR東海の動向

国鉄からの継承車も含め、JR東海が保有したジョイフルトレインは「どう見ても12系原色車のままの『いこい』」「故障頻発の『ゆうゆう東海』」「キャパ不足の『リゾートライナー』」などやる気に乏しい作例が続いた。「ユーロライナー」のような傑作も無いわけではなかったが…

ゆうゆう東海をホームライナーに用いるなど画期的な取り組みも見られたが、かねてよりのコスト削減傾向には逆らえず、「ユーロライナー」が2004年に引退したのを最後にジョイフルトレインは全廃。国内2例目の絶滅となった。

またこれ以降の、自社企画分のかつてこの手の車両を使っていたようなイベント列車はキハ85系373系を臨時の急行列車扱いで走らせることで代替されている。

隣接する西・東の両社からは2004年以降もたまにジョイフルトレインは入線していたが、JR東海の機関車全廃後は車種が電車か気動車に限定されている。


JR西日本の動向

初期に登場したジョイフルトレインは圧倒的にキハ58系またはキハ65形が多く、西日本各地で見ることができた。「ビバ・ウエスト」や「リゾートサルーン・フェスタ」といった例外を除いて車体は原型を留めたものが多かったのも特徴的。

しかしキハ58の老朽化は凄まじかったようで、2000年代にはほとんどの車両がこの世を去ることになった。結局は客車の方が長持ちするという状態になっており、2021年現在でJR西日本最後のジョイフルトレインである「サロンカーなにわ」も14系客車である。


ちなみにJR唯一と思われる寝台車のジョイフルトレインホリデーパル」を有していたことも特筆される。


JR四国の動向

JR四国は初期のJTブームの中でも、規模の小ささからか修学旅行用車を除けば「アイランドエクスプレス四国」のみの導入にとどまった。これは当時余りまくっていた50系からの改造車だったが、なかなかの傑作で人気が高かった。

その後老朽化によりキハ185系「アイランドエクスプレス四国II」に置き換えられた。しかしIIは何故か''中間車2両しか改造されなかった''ため、妙に扱いにくい車両になってしまった(それでも最盛期は専用塗装の未改造先頭車を使うなどして上手く誤魔化していた)。しかし2020年までに「四国まんなか千年ものがたり」「伊予灘ものがたり」に再々改造されることになり引退し、JR四国は3例目のJT全廃となった。ジョイフルトレインから観光列車への移行を象徴する出来事である。


JR九州の動向

発足と同時に大作「パノラマライナーサザンクロス」をデビューさせたJR九州。加えて国鉄時代に登場したジョイフルトレイン「らくだ」6両を一斉に引退させ、他のジョイフルトレインに更新するなど早くもやる気満々な姿勢を見せていた。

ところがこの元「らくだ」車の改造は定着せず。6両のうち3両改造されたが、経過は以下の通り(独立記事がないため便宜上ここで示す)。

  • キハ58 190…1987年に「吉四六」に再改造、1989年に「ジョイフルトレイン大分」に再々改造、1993年に「しらぬい」に再々々改造、1994年廃車
    • ※「吉四六」「JT大分」では新たに改造したキハ28 2487と組んだ
  • キハ58 140…1987年に「ゆ〜とぴあ」に再改造、1993年廃車
  • キハ58 2436…1987年に「ゆ〜とぴあ」に再改造、1993年に「しらぬい」に再々改造、1994年廃車

「らくだ」の登場は1983年であるから、190号などは約10年の間に4つものジョイフルトレインを経験したことになる。またよく見ると「しらぬい」はわずか1年で廃車されているが、実はJR九州は「サザンクロス」も含めて1994年にジョイフルトレインを全廃したのである。理由は「787系に目が向くようにするため」「赤字部門だったため」など諸説あるが公式な言及は見つかっていない。かくしてJR九州はJRで初めてジョイフルトレインを全廃した会社となった。


ちなみにその後ちゃっかり「きじ馬列車」というジョイフルトレインが登場したりしているが、大きな動きのないまま数年で廃車となっている。


余談

「ジョイフルトレイン」は日本でも国鉄~JR特有の存在と言え、路線長が限られ大量の余剰車が出る事も無かった民営やその他公営系の事業者には基本的に無縁であった。中には「イベント車両」のような特殊構造の車両を保有した例もあるが、当初より一般車との共通運行を想定しており、そのために豪華さも追求しなかった。

一部の第三セクターのみは例外で、不適切な運行ノウハウを継承してしまった結果、場合によっては新造してまでジョイフルトレイン然とした車両を保有しようとする動きが発生していた。これらに関しては当然の事ながらJR各社以上に悲惨な結果に終わっている。

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