概要
通常、動力を持たず、主に機関車等により牽引される鉄道車両の事を指す。広義には電車、気動車等の主に人員輸送による営業を目的とした車両全般を含める。ここでは狭義の客車について説明する。
日本においては寝台列車である「ブルートレイン」が代表的だが、これも2015年3月14日に定期運行は廃止され、国内では客車列車は観光要素が強い路線・列車限定となっている。
これは日本の狭い土地、急な地形、短い駅間と高頻度運転傾向(海外で路面電車やライトレールなどが担うところを普通鉄道が担当している)においては、加減速性能が電車・気動車より悪い事、進行方向の転換時にデルタ線などのしかるべき設備を要する煩雑さ、重量の大きい機関車が走行することによる軌道・路盤への大きな負担等が嫌われた事、人件費がかかる事が主な要因とされる。また、バッファ無しの自動連結器方式が早い段階で主流になったことも遠因とされている。
一方でSLの牽引には欠かせない存在であり(こればかりは電車を牽引するわけにもいかない(※1)、ブルトレ全廃後ですら客車が新製された)。
現在の状況ではJR各社では団体列車、多客時の増発用、蒸気機関車用のイベント列車などでのみ利用されるのみであり、私鉄においては大井川鉄道、黒部峡谷鉄道(宇奈月駅-欅平駅、ナローゲージ、本来黒部渓谷沿いに存在するダムへの資材運搬用の鉄道)でのみ定期運行されている。観光用のトロッコ列車に関してはほかに数箇所が運営している。一方で、長らくなかった大手私鉄での客車運転(※2)も、東武鉄道がJRからSLを借受け、客車等を譲渡されることで実現している。ちなみに公園や遊園地等の遊具などを除いたSL列車で運用に付く客車は全て20m車を使用している。
観光用トロッコ列車などでも、最後部の客車に機関車用の運転設備を設けてプッシュプル運転を行うケースが増えている。
- ※1:(蒸気機関車に限らず)イベントなどで機関車を主役に出す場合、特に地方私鉄が自力で客車を保有したり貨車改造のトロッコ列車にすることもJR各社や大手私鉄などから借り受けることも困難な場合、電車や気動車がすっとぼけて客車の真似をしていることもある。ファンの方も大人の事情と割り切っている。また著名な大井川鉄道のSL用客車の一部は元西武鉄道の電車である。有名なスイテ82形展望車ももとは西武501系サハ1515。ただしこちらは電車としての電気品は完全におろし純粋な客車になっている。さらにはJR東日本はJR北海道の使用していた客車改造気動車を連結し補機および回送時の牽引車両として用いている。
- ※2:大手私鉄での平成以降の客車運転の実績は、東武の他には西武のE851のさよなら運転で12系をJRから借り受けた時のみである。
海外における運用
海外においては過去においては電車または気動車による運行は短距離路線に限られ、長距離輸送においては騒音および乗り心地の関係上不適切であるとして機関車+客車の編成が多数見られる。国際列車において周波数や電化方式が違うことがあるという事情もあった。
高速鉄道の時代に入ってもそれは続いた(フランスのTGVやドイツのICE、あるいはそれらをベースとした車両など)。しかし、日本における長距離高速路線(具体的には電車による動力分散式の高速車両である新幹線)の成功により徐々にだが動力式の車両が増加しているものの、近年機関車+客車形式を開発した国、あるいはそれら国から技術提供や車両の譲渡を受けた国、あるいは線路の利用が貨物輸送を主としている国や気動車や電車などを導入する資金のない国(客車のほうが導入費用や整備費用は安い)などでは、まだ機関車を用いる形式が主力の国が多い。
ピクシブ百科事典に存在する項目
国鉄:20系客車(20系) / 12系 / 14系 / 24系(24系25形) / 50系(50系客車)
貨車改造:ナハ29000
客車改造:キハ08系(キハ40) / キハ33 / キハ141系 事業用車:マヤ34