TGV
てぃーじーゔい
略称のTGV※は"Train à Grande Vitesse"(訳:高速列車)の頭文字をとったもの。
ただし、基本的に在来線とは物理的に隔離されている(車両が大きく、営業用の線路が繋がっていない)新幹線とは違い、TGVは車両の大きさがSNCFの一般の路線と同じで、大都市ではTGV専用線であるLGVを出て一般の路線に入り、既存のターミナル駅を利用している場合が多い。
路線(というか運行系統)は、パリとそれ以外の都市を結ぶのが中心で、LGVから一般の路線へ直通する列車も多い。
また、一時は非電化区間への直通運転も存在した。勿論電気車両であるTGVの自走は不可能なので、牽引用に連結器を交換したディーゼル機関車を用意、これに牽かれて走るというものである。
最初のTGV路線は、パリ-リヨン間を結ぶ南東線。列車はオレンジ色だった。
続いて、銀色のTGV「アトランティック」がデビューし、以後、路線を拡大している。
「ユーロスター」や「タリス」など、フランス以外の国へ運行される国際列車もある。
開業前の試作編成は、動力車にガスタービンエンジンで発電機を回しモーターを駆動する電気式ガスタービン車方式を採用していたが、オイルショックにより石油価格が高騰。
それにより燃料費が跳ね上がってしまい、運行にかかる費用が実用に適さない額になってしまったため、架線からパンタグラフで集電し、モーターを回す電気車方式に変更となった。
その後に製造された試作編成の動力車、営業編成の動力車ともに製造時から電気車方式となっている。
※…フランス語読みで「テージェーヴェー」と読む。
電車のように見えるが、両端の車両は機関車で、中間の客車を押し引きしている。(ただし最初に営業開始した南東線は、未だ直流モーターの時代であったため主電動機1基あたりの出力が足りず(537.5kw)、機関車次位の客車の連結部は電装されていた。交流モーターになったTGV-A以降は通常の長さであれば電動機出力が1基1100kW取れたため、機関車本体のみの電装に変わっている。また当初は客車は200km/hを大幅に超過する速度で走るにもかかわらずコイルばね台車で、振動が問題になり後に空気ばねに改められた)
「プッシュプル方式」と呼ばれ、海外では多い列車のスタイルである。
ユーロスター・KTXでは長編成のため、再度出力不足が問題になり、南東線同様に客車の端の台車を電装したが、それでもなお新幹線のような電車に比べるとどうしようもないほどに加速が鈍い。
電動車率を上げた、いわばTGVの電車版もあり、こちらは「AGV」という名前が付いている。
しかし低床化が難しくてバリアフリーに対応できないことと、二階建てTGVと比べて輸送力が小さいことから、当のフランスでは採用されていない。
鉄輪走行で574.8km/hという速度記録はTGVの特別編成を用いたが、勿論ギア比を改めた程度の小改造の編成などではなく、中間客車を連接車3車体まで減らしに減らし、合計8台車中6台車が駆動軸という、動力集中方式で元から1台車あたりの出力が高かったことを逆手に取った増強策で重量あたり出力を稼いだもので、あれで営業運転できるというわけではない。意図的に架線電圧を引き上げたりもしている(公称25kVの電化の場合、フランス標準では1割増の27.5kVで加圧するところ、31kVまで引き上げている。日本の場合新幹線については常時2割増しの30kV印加が標準である)。