郵便車
ゆうびんしゃ
自動車の方は一般的なトラックやバンがベースで、せいぜい荷室が集配をしやすい形に造られている程度であるが、鉄道の方は郵便局員が乗り込んで走りながら仕分け等の業務を行う場合があり、さながら「小さな郵便局」といった構造になっている。
日本の鉄道では、該当する車両には形式名に「ユ」が入っていた。由来はもちろん「ユウビン」の「ユ」である。1両まるごと郵便車の場合は郵政省の保有とされたが、国鉄が保有する荷物車(ユニ)や客車(ハユ)との合造車も造られた。
外見的には、郵便物を入れる棚を設置するため窓が極端に上に偏った区画があり、それによる通気性の悪さを補うため早くから空調が整備されたという特徴がある。自動車のように真っ赤に塗られる事こそ無かったが、基本的には同じように「〒」マークを掲示したので判別は容易であった。
「ユ」の車両による輸送は1986年に廃止されており、現在は当時の車両が少数保存されているのを見られるのみである。
国鉄保有車には改造の上で他の用途に転用された車両も存在したが、郵政省保有車については原則そのまま廃車処分とされており、中には新造からわずか4年で解体された車両さえあった。このエピソードは「お役所仕事」や「縦割り行政」の象徴として語られる事がある。
鉄道による輸送自体はその後も残ったが、コンテナを貨物列車に積む方式となっており、一目で分かる存在では無くなっている。時折ゆうパック柄のコンテナなども見られるが、広告目的の「ラッピング電車」に近い存在のようで、必ずこれに納められるというわけではないらしい。
郵便車が全国をくまなく走る点に着目し、旅客を便乗させてバスの役割を兼ねさせる事がある。
「貨客混載」と呼ばれる輸送方法の一種で、上記の合造車や、旅客機を間借りするエアメールでは日常的に行われているものであったが、こと自動車においては「小回りが利く」という特性と矛盾しかねないので珍しい。
よって採用例は、輸送量が少なく別々に走らせた方が効率が悪くなる過疎地になりがちである。
スイスではスイス郵政グループが直接運営しており、狭義の「ポストバス」はこの方式である。
イギリスでも近年普及が進むが、これは同国では郵便も公共交通機関も民営化が進んで不採算路線の先行きが怪しく、「サービスが維持されるなら車両も運営主体も問わない」という合理主義ともヤケクソともつかない発想によるもの。
一方オーストリアでは国鉄バスが郵便輸送を請け負う形であり、バスの方が主体になっている。
日本でもバスのワンマン運転が進むまでは広く見られており、現在でも少数が残っている(参考)。
近年の日本では人手不足問題とも絡んでクロネコヤマトの宅急便が同様の運行を始める(参考)など再評価の機運があるものの、それだけ単独運行が成り立たない路線が増えたという事でもあって手放しで喜べる状況でもない。