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概要

展望車(てんぼうしゃ)とは、鉄道車両の一種で、軌道上の風景を展望できる座席や大型の窓を特に設けた車両のこと。会社や車種、運行線区によりさまざまなコンセプトの展望車が存在する。

展望車の種類

開放型

(特急「つばめ」「はと」に使用されたスイテ37形)

オープンデッキ形とも呼ばれる。この方式の展望車はアメリカで誕生したもので、長距離を移動する際に一等旅客の憩いの場となるラウンジは、列車の最前部や最後部に設けられたが、この時、列車の最後部に設けられたラウンジに、旅客誘致の目玉設備として設けられたのが展望室である。開放型はその中でも最初期のタイプで、車両の一端をオープンデッキの構造としたのが同形式である。日本でも国鉄のマイテ39やマイテ49、九州鉄道の「或る列車」のうちの一両であるブトク1、東武鉄道日光線向けに使用したトク500など、採用例が多い。

最近では、JR西日本が運行しているクルーズトレイン「トワイライトエクスプレス瑞風」の展望室部分がオープン構造となっている。この車両は気動車で展望室の上に運転台が設けられていることから、営業運転中先頭を向く車両については乗客への安全を考慮しデッキは閉鎖、最後尾を向く車両のデッキが解放される方式をとる。

※イラスト同様、乗車した人物がこのデッキに立つことを想定してはいるが、オリジナルの転落防止手すり高さが日米共々低い(80~90cm)のは、走行中ずっとここに立って佇むことを想定していないため。日本では出発の際のお立ち台(≒外洋客船の出港式)、アメリカでは椅子を引っ張り出してカードゲームをするなどのフリースペース(ロビーカーの延長)で使われ、今の日本でよく行われるようなデッキ手すりに寄りかかって長時間立っている前提ではない。日米ともかつては特急や特別車といえどトイレが垂れ流し式であり、走行中に手すりが汚れることもあるのであまり触ることは良いこととされていなかったようである。JR移行直前に車籍復帰したマイテ49やそのほぼ忠実なレプリカである新35系客車の場合、手すりだけは安全上外観を度外視し、上方に増設したつくりに改められている。

密閉型

(イラスト下段、密閉型展望室を持つ寝台特急「カシオペア」E26系)

解放構造の展望デッキに代わり、車両の一端に大型のガラス窓を配置した形態のもの。日本ではジョイフルトレイン用客車などに採用されたほか、寝台特急「カシオペア」にも同様の設備がある。カシオペアの場合、編成一端の車両はラウンジであり、同列車の乗客であれば誰でも利用できるが、もう一端の車両は展望室を兼ねた寝台個室となっているためこの部分の寝台特急券が必要となる。アメリカでは流線型展望車などと呼ばれる形態のものが多い。また、同じJR東日本が開発した24系25形「夢空間」用オシ25-901では、この展望室部分が食堂であり、車窓風景を見ながら食事が楽しめた。

密閉型の変り種・南海クハ1900

なお、この方式の変り種として、南海電気鉄道のクハ1900形1900号(1形式1両)が存在した。この電車は、アメリカンスタイルの流線型展望席のラウンジ部分の片隅に運転室があるというものであった。戦前の賓客輸送および、戦後の特急「こうや」に使用されたが、20000系の登場によって一般車に格下げ改造されてしまった。

ドームカー

車両の屋根にガラス製のドームを設け、そこからの景色を楽しむための車両。アメリカやカナダなどでよく見られたほか、ドイツの特急列車「ラインゴルト」にも連結されていた。近畿日本鉄道が初代「ビスタカー」を設計する際の参考にもなったといわれ、その点では2階建て車両(⇒ダブルデッカー)も一種の展望車といえる。

トロッコ列車

(JR東日本「びゅうコースター風っこ」。キハ48形を改造したトロッコ気動車である)

車両の上半分の窓に当たる部分を取り払った形態の車体を持つ、解放式の列車のこと。通常は雨天時の運行に備えて、普通の客車(控車と呼ばれる)を連結して運行される場合が多い。各地で観光の目玉として運行されるケースが目立つ。

1980年代の登場当初はトラ90000のような無蓋車をベースに仮設の屋根とベンチシートをのせたような簡易な構造であったが、貨車ベースでは最高速度が低く運用に難があり、老朽化も進んだ事から、現代では通常の客車や気動車から改造したり、気動車として新造されることの方が多い。電車のトロッコ車は架線集電の性質上、安全面から存在しないが、余剰の電車のドンガラのみを利用し改造したトロッコ客車がわたらせ渓谷鉄道に在籍する。

トロッコ列車の記事も参照。

「セッテベッロ」形

(同方式を採用した小田急電鉄の「ロマンスカー」)

イタリアの特急電車「セッテベッロ」において初めて採用されたといわれる方式。日本ではこの方式を初めて採用した名古屋鉄道の特急電車にちなみ「パノラマカー形」、または小田急電鉄の特急電車にちなみロマンスカー形とも呼ばれる。このタイプは基本的に密閉式展望室。

JR各社では165系「パノラマエクスプレスアルプス」(のち富士急行「フジサン特急」で使用)や485系「シルフィード」(のち「NO.DO.KA.」へ改造)などで採用された。

海外では、スイスの「パノラマ急行」用客車が採用例の一つである。

ハイデッカー前面展望車

(名古屋鉄道の「パノラマSuper」)

イラストで挙げた名古屋鉄道の「パノラマSuper」に代表されるように、1階部分を運転室、2階部分を展望室とした形態のもの。衝突時の乗客に対するリスクがセッテベッロ形に比べ少ないうえ、運転席は最前部にあるため運転しやすく、また客席の視点が高いために、よりダイナミックな眺望を楽しむ事が出来る。名鉄のほかJR各社のジョイフルトレイン(とくに気動車改造)で数多く採用されている。

近畿日本鉄道の50000系「しまかぜ」もこれに準じたものとして挙げられる。

スタジアム形(シアター形)前面展望車

(シアター形展望室を持つ伊豆急行2100系。列車全体が展望車でもある)

先述のハイデッカー前面展望車の類例だが、運転台に近づくにつれて客席の高さが下がっていく、すなわちスタジアムの観客席や映画館の座席のような階段状の構造であるためこの名がある。

伊豆急行2100系や、JR東日本の251系などがこれにあたる。

その他の展望車

  • 叡山電鉄デオ900形「きらら」。車体の半分ほどがガラス張りの「ガラス電車」である。
  • 日本国有鉄道151系「こだま」。先頭に連結されている「パーラーカー」クロ151→クロ181形も展望車の一種であり、巨大な側窓が目を引く。展望客車同様東海道新幹線開業後は持てあまされ、山陽特急に転出後は特別料金を大幅値下げしてなお利用客減に悩まされたこともあって半室普通車→全室普通車に改造され1973年までに全車廃車となってしまった。

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