概要
クルーズトレインの一種。2015年度で運行を終了した「トワイライトエクスプレス」の名称を引き継ぐ形で2017年6月17日に運行を開始した。ファンの間では前者を「初代」とし、本項を『2代目』と通称される。正式名称は「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」。
1両あたり1室のみの最上級個室や、オープンデッキの展望スペース、食堂車、ラウンジカーなどを設ける豪華寝台列車。北海道へ向けて走行していた先代とは異なり、主にJR西日本管内である京阪神と山陰・山陽エリアを走行する。
「トワイライトエクスプレス」の後に、「瑞風」という文字があるが、JR西日本によれば、「みずみずしい風のことであり、また、吉兆をあらわすめでたい風であること。かつて日本は、稲穂が豊かに実る国ということから瑞穂の国と呼ばれ、新しいトワイライトエクスプレスという風が幸せを運んでくるイメージを込めた」ということである。
動力方式はななつ星in九州では機関車+客車、トランスイート四季島ではEDC方式(補足参照)を採用したが、このトワイライトエクスプレス瑞風ではディーゼルと電気モーターを活用したシリーズハイブリッド方式を採用している。(なお形式上は「気動車」に分類されている)
行先表示はJR九州が運行しているななつ星in九州の専用客車である77系客車の行先表示と同様に横長タイプのサボ受けがあり、そこに行先の書かれたサボを入れるようになっている。
補足
EDC方式・・・ディーゼル発電機とパンタグラフを装備して、電化区間ではパンタグラフ集電で、非電化区間ではエンジンとモーターによるハイブリッド動力で電化区間、非電化区間どちらでも効率の高い運転ができるようになっている。
87系気動車
展望車(キイテ87形、1・10号車)
編成の両端に位置する先頭車。前面開放デッキと側面展望スペースを備えた車両となり、初期イメージと比べてライトの位置と形状、側面の窓配置、スカート周辺、2階の運転台周辺のデザインが修正された。
また公式の車内見取り図によれば運転台設備は2階部分となって後部側は多目的室があり、1号車と10号車で一部の座席配置が異なっている。
なお前面開放デッキは走行時の安全の面から編成の最後尾のみ開放される。
寝台車(キサイネ86形、2・3・4・7・8・9号車)
寝台車には1両1室(7号車)の「ザ・スイート」、1両3室の「ロイヤルツイン」(2・3・8・9号車)、「ロイヤルツイン」(2室)と「ロイヤルシングル」(1室)の合造車(4号車)がある。
この内、4号車に1室のみ設置されている「ロイヤルシングル」は車椅子対応個室となる。
また「ザ・スイート」は通路配置の関係でダブルデッカー仕様(他の車両はハイデッカー仕様)となっている。
ちなみに気動車としては初の寝台車となった。また、寝台車は個室内の静粛性を保つため全車付随車となっている。
ダイニングカー「ダイナープレヤデス」(キシ86形、6号車)
食堂車は車両の役半分がオープンキッチンスペースとなっていて残りの部分に、1+1と1+2の食事スペースが20人分ある。
名称は牡牛座(おうし座)のプレアデス星団が由来であり、初代「トワイライトエクスプレス」の食堂車からそのまま引き継がれている。
ラウンジカー「サロン・ドゥ・ルゥエスト」(キラ86形、5号車)
食堂車の隣にはラウンジカーがあり、この車両ではバーカウンターや立礼の茶の卓、ブティックスペースが設けられている。なお用途記号「ラ」はこの87系で初めて採用されたもの。
名称はフランス語で「西のサロン」を意味する。初代「トワイライトエクスプレス」のサロンカーの愛称である「サロンデュノール」(フランス語で「北のサロン」の意味)を、運行区間に合わせて変更したものである。
編成内各種装置について
MT比について
展望スペースのある1・10号車、ダイニングカーとラウンジカーのある5・6号車が動力車、各個室のある2・3・4・7・8・9号車は付随車の4M6Tとなっている。
主発電機と蓄電池について
動力車には主発電機と主変換機、主電動機が搭載してあり、蓄電池は各動力車の隣の付随車となる2・4・7・9号車に搭載してある。
主回路
本形式がハイブリッド気動車であることは上記にもあるが、艤装スペースの都合上補助電源と主回路電源を共用するため、主発電機は三相440V60Hzで発電しており、補助回路へはそのまま、主回路側は主変換機内で直流600Vへ昇圧・整流して供給しVVVFインバータや走行用蓄電池に接続している。このため、本形式は補助電源用に使われるSIVを装備していない。
また、主変換器⇔蓄電池の系統を法規上の低圧になる600Vとすることで絶縁距離の縮小を図り、主変換器などの半導体素子をコスト面で優位性のある自動車用の汎用品を採用可能としている。
主電動機
近年の電気車や電気式内燃車と同様にかご形三相誘導電動機であるが、これもまた艤装スペースの都合上固定子巻線の巻数を減らして小さくしてあり、その分を固定子の極数を6極に増やすことで、要求される性能を確保している。
補助電源母線の冗長化
補助電源の故障対策として母線は2系統に分かれており、1号車と10号車から供給される補助1系と5号車と6号車から供給される補助2系に分かれている。もし仮に発電機が故障した場合、補助1系と補助2系を短絡させ電源を誘導するようになっている。
モニタ装置の冗長化
こちらも、補助電源母線と同様じく2系統あり、1系が現用系、2系が待機系となっていいる。1系が故障した際には自動的に2系に切り替わるようになっており、また運転台のほかに一部の中間車には車内の天井に格納式のモニタ装置があり極力車内から不具合調査などが行えるようになっている。
構体
ディーゼル発電機と主変換機の搭載で重量がどうしても重くなる動力車(1・5・6・10号車)とダブルデッカー車である7号車は鋼製構体を、それ以外(2・3・4・8・9号車)はアルミニウム合金構体を採用している。
鋼製構体車では、軽量化のためステンレス鋼や耐候性鋼材も使用しており、アルミニウム合金構体車では最近の技術であるアルミニウム合金車同様板材断面がトラス構造のダブルスキン構造となっている。
台車
台車は227系電車のものを基として動揺対策を施したものとなっており左右方向の搖動に対してはフルアクティブ動揺防止装置を、上下方向の動揺に対してはセミアクティブ動揺防止装置を採用し徹底して乗り心地の向上を図っている。
ブレーキ装置
近年の鉄道車両ではおなじみの電気指令式空気ブレーキを採用しており、回生ブレーキ併用も行われる。また、回生ブレーキの利かない低速度~停止寸前でも電制の利く全電気ブレーキも採用しており、滑走抑制や耐雪ブレーキ、応荷重制御、遅れ込め制御、抑速ブレーキといった機能も有している。
テーマ曲『瑞風 ~MIZUKAZE~』
世界的に有名なバイオリン奏者の葉加瀬太郎氏がこの列車のためにテーマ曲を作曲している。曲名は『瑞風~MIZUKAZE~』である。
CDでは2017年にアレンジバージョンがリリースされ、原曲バージョンは2018年の『ALL TIME BEST』に収録された。
以下、PVとともにお楽しみいただきたい。
余談
字面がこの子に似ているので初お披露目時にはそちら方面でちょっとした話題になった。
運行開始の出発式にはJR西日本の社長は出席しなかった。その理由は、JR福知山線脱線事故の最高裁判決が6月13日だった為とされている。実際、本列車に対し、「(観光列車を一切運行しない)JR東海を見習い、観光列車の運行費用を安全対策に回せ」という批判も根強い。
(もっとも、東海は新幹線に依存してるが故に新幹線の安全対策の完備、災害の多さや来たる震災に備えた設備投資の重要さ、そもそも観光列車を走らせる理由が(主に新幹線の影響で)ないことも追記しておく。また本州三社の中で運行エリアが最も狭く、回遊型クルーズトレインの運行は難しいという事情もある。)
本形式も内燃車であるが故なのか、試運転や検査時の回送などでハイブリッドシステムを組める最短編成となる4両編成や中間車が一部抜けた編成、編成両端の先頭車2両のみという珍編成がたまに見られるそうだ。
公式サイト(外部)
http://twilightexpress-mizukaze.jp/