概要
主電動機側の小歯車と被駆動大歯車の比率を表すもの。歯の数の比であると同時に径の比でもある。歯数比。
電車の走行音に大きく影響する要素の1つとされる。
計算はA:B=B/Aである。一般に「歯数比4.82(113系など)」という呼び名は、このB÷Aの商で、歯車の設計方針としてAとBは互いに素になるものを選んでいることから実際には殆どが循環小数になるものを小数点第2位までで切ったものである(国鉄特急型の3.5や名鉄7000系の4.875など、小数点以下ながら循環しないで割り切れるものも多少はある)。
下の一覧のとおり、A+B=99か113になるものが多く、またそれ以外の数を取る場合でも同一事業者・同一世代であればある程度の幅の中に収斂する。
吊掛式はモータ筐体の端に車軸受けが付くのでA+Bは否応なく固定されるのだが、カルダン駆動であっても歯車はギアボックス内に密封されるため、無闇矢鱈に異なるA+Bをベースとする歯数比を設定するのはギアボックスの種類を徒に増やすことになり望ましくないためである。
同じトルク、回転数の条件で、
- 歯車の比率が小さいと車輪の回転数が高くなり、回転数あたりのトルクは減少するが、定トルク領域を高い速度まで取ることができる。よって加速度は上げにくくなるものの代わりに落ちにくくなり、高速性能が確保し易くなる。
- 逆に歯車の比率が大きいと回転数あたりのトルクが増大し、引っ張り力を強くすることができる反面、高速域ではトルクが急激に細くなってしまうため、最高速度が落ちる。
- 在来線誘導モーターでは一時期最高回転数を上げることで小さめのモーターを使いながら高加速・高速性能を両立しようとした。しかし本州以南の在来線はほぼ全て自己通風型であるため高回転時の冷却ファンの騒音がひどくなることが判明し現在は比を少し下げ、モーターの出力でカバーしている。
前者が新幹線や特急形電車などに適し、後者が一般形電車などに適する。
とはいえN700系のように大出力に物を言わせて加速性能が在来線の一般型電車とほとんど同じ車両すらある。
音程
小歯車の数により基本周波数と低音または磁励音の関係が変化し、走行音に影響する。歯車の音とモータ音による和音とみなすことができ、雰囲気が大きく変化する。
小歯車が大きくなるにつれて基本周波数の音が半音ずつ高くなる。また、歯数が増えていくと音程変化が小さくなっていく。
ここでは概ね小歯車14~17系統の音程を紹介する。
※代表例の追加は記事の冗長化を防ぐため、今後追加する際はなるべく個別記事があるものをお願いいたします。
下の法則に当てはまらない車両もある。主な原因は以下の通り。
- 誘導電動機・同期電動機の固定子磁極数が4極よりも多く、回転数あたりのインバータ出力周波数が高い。よってモータの磁励音が高くなり、和音が変化する。
歯車比14:x
交流モーター(VVVFインバータ制御)車においては最も多く存在する音程。基音と低音の関係が短7度になる。VVVF車でははじめに基音と最高音が長6度関係となる。変調後、基音の短3度下の音が鳴る。
国鉄・JR車両
(14:99=1:7.07)207系900番台、JR四国7000系、207系、209系、701系、E127系、JR四国6000系、E231系、キハE200形、HB-E300系、HB-E210系、E235系、GV-E400系、H100形、E131系、DEC700形
(14:91=1:6.50)813系、815系、303系、817系、305系、BEC819系、EV-E801系、821系、YC1系
(14:85=1:6.07) 713系、203系、205系、719系、JR四国7200系
私鉄・地下鉄その他
(14:111=1:7.93)箱根登山鉄道3000形
(14:109=1:7.79)東京メトロ9000系・06系・07系・03系:03-126編成以降・05系:6〜10次車・15000系・16000系・1000系・05系:05-114〜118編成大規模修繕車・13000系・2000系、東武70000系
(14:103=1:7.36)OsakaMetro20系・新20系、北大阪急行電鉄8000形・9000形、近鉄7000系・7020系、大阪市交通局30系
(14:99=1:7.07)神戸電鉄1000系・1300系・3000系・5000系・6000系・6500系、小田急2000形・3000形:1・2次車、東急2000系・2020系・6020系・3020系、南海1000系、阪神5500系、東武30000系、京王1000系(2代)、都営6300形・10-300形・6500形、相鉄10000系、北越急行HK100形、遠州鉄道2000形、静岡鉄道A3000形、名鉄100系:5次車(増結車)・200系、東京メトロ17000系・18000系
(14:87=1:6.21)東急3000系(2代)・5000系(2代)・6000系(2代)・7000系(2代)、横浜高速鉄道Y000系・Y500系、東京メトロ05系:11〜13次車・08系・10000系、東武10080系:登場時・20050系・20070系・9050系、西武30000系・40000系・001系、西鉄9000形
(14:85=1:6.07)京阪7000系・7200系・9000系・10000系・3000系(2代)・13000系、南海2000系・2300系・8300系・50000系、京成3700形・3000形(2代)・3100形(2代)・3600形:3668編成、新京成80000形、名鉄6000系・6600系・100系:1〜4次車・1700系、東急9000系・7600系・7700系・1000系、京急800形、京王6000系:1次車・8000系・9000系・5000系(2代)・3000系、阪急3100系、能勢電鉄1500系
(14:83=1:5.93)京急1500形:1700番台・600形・2100形・新1000形、都営5500形
(14:81=1:5.77)阪神8000系
(14:77=1:5.50)京急1000形(初代):東洋電機製造モータ
(14:74=1:5.29)京都市交通局50系
(14:71=1:5.07)京阪800系
歯車比15:x
国鉄通勤形車両およびJR西日本、JR東海のVVVF車などに多く存在する音程。基音と低音の関係が長7度になる。VVVF車でははじめに基音と最高音が完全5度となる。変調後、基音の長3度下の音が鳴る。
国鉄・JR車両
(15:98=1:6.53)223系、373系、313系、125系、JR四国5000系、321系、521系、225系、227系、323系、811系:大規模修繕車、315系
(15:91=1:6.07)103系、105系、119系、121系
(15:89=1:5.93)E721系
(15:84=1:5.60)101系、123系、201系、419系・715系、107系、811系
私鉄・地下鉄その他
(15:101=1:6.73)東京メトロ01系・02系、北神急行7000形、新京成電鉄8800形・8900形
(15:100=1:6.67)神戸市交通局6000形
(15:98=1:6.53)長野電鉄3500系・3600系、東京メトロ6000系・7000系、東武50000系・60000系・10030系:機器更新車、神戸市交通局1000形・2000形・3000形、横浜市交通局3000形、福岡市交通局2000系、小田急30000形、つくばエクスプレスTX-2000系・TX-1000系・TX-3000系、南海8000系・12000系、愛知環状鉄道2000系、名古屋臨海高速鉄道あおなみ線1000形、一畑電車7000系、仙台市交通局3000系
(15:93=1:6.20)近鉄6600系
(15:92=1:6.13)近鉄6020系・6200系・16000系・16010系、小田急2400形・2600形
(15:86=1:5.73)近鉄3200系:1次車・5200系:5105〜5113編成・5800系・1420系・1430系・1230系他、西武101系・新101系・301系・4000系・9000系・10000系、東京メトロ8000系・03系:03-101〜125編成・05系:1〜5次車(05-114編成除く)、東急7200系、仙台市交通局1000系
(15:84=1:5.60)名鉄6500系・6800系、京阪2200系・2400系、福岡市交通局1000系、静岡鉄道1000形
(15:82=1:5.47)山陽電鉄2300系・3000系・5000系・5030系・6000系、京急1500形:1500番台、近鉄1000系・1010系・2000系・2680系・1470系・2480系、新京成電鉄800形
(15:74=1:4.93)名鉄7500系
歯車比16:x
近郊型電車などに多く存在する音程。基音と低音の関係が完全8度(オクターブ)になる。VVVF車でははじめに基音と最高音が増4度となる。変調後、基音の完全4度下の音が鳴る。
国鉄・JR車両
(16:97=1:6.06)255系、E217系、E501系、M250系、E531系、E233系、EV-E301系、E129系
(16:89=1:5.56)JR四国8000系、JR四国8600系、E351系:量産化以降
(16:83=1:5.19)211系、213系、221系、311系、215系、721系:6〜8次車
私鉄・地下鉄その他
(16:103=1:6.44)名古屋市交通局5050形・2000形・N1000形
(16:101=1:6.31)近鉄3200系:2〜4次車・5200系:5101〜5104編成・1422系・1220系・6400系他・シリーズ21・16400系・16600系、西武6000系・20000系、西鉄6050形・7000形・7050形・3000形、小田急1000形・5000形(2代)
(16:99=1:6.19)名古屋市交通局6000形・3050形・6050形・N3000形、神戸電鉄1100系・1150系・1500系・2000系・OsakaMetro10系・30000系・400系、京都市交通局10系・20系、営団5000系、横浜市交通局1000形
(16:98=1:6.13)阪急8200系・8000系:8040番台
(16:97=1:6.06)阪神9000系・9300系・1000系・5550系・5700系、泉北高速鉄道5000系・7000系・7020系、小田急3000形:3次車以降・8000形:機器更新車、都営5300形、京成3500形、相鉄11000系・12000系・20000系、京成3500形、上信電鉄7000形
(16:87=1:5.44)東武10000系・10080系:機器更新後・20000系・9000系
(16:85=1:5.31)能勢電鉄1700系、阪急3000系・5000系・5100系・5200系・2200系・6000系・7000系・8000系:8000〜8003編成、近鉄900系・8000系・8400系・8600系、東武8000系・6000系・6050系・100系スペーシア、東急8000系・8500系・8090系・8590系、小田急8000形:未更新車、西武2000系・3000系・新2000系、京王6000系:2次車以降・7000系、都営10-000形、南海6000系・6200系・6300系・7000系・7100系・9000系、泉北高速鉄道3000系、伊豆急行2100系
(16:84=1:5.25)阪急2300系・3300系・5300系・6300系・7300系・8300系・9300系、京阪3000系(初代)・1000系・5000系・8000系、京成3400形・3600形・AE100形
(16:78=1:4.875)名鉄5000系(初代)・5200系・5500系・7000系パノラマカー・7700系・8800系・5300系:金属ばね車
歯車比17:x
基音と低音の関係が短9度になる。この音程は数少なく、主に特急型車両や名鉄車両に多く使われている。
国鉄・JR車両
(17:96=1:5.65)281系、E653系、285系、E257系、E751系、E259系、287系、E657系、E353系、271系、E261系、HC85系
(17:88=1:5.18)JR四国8000系:試作車、E351系:量産先行車
(17:82=1:4.82)401系・421系、111系、113系、115系、403系・423系、117系、185系、411系、415系、711系、417系、721系:1〜5次車、251系、253系、E991系:クモヤE991-1
私鉄・地下鉄その他
(17:98=1:5.76)OsakaMetro66系
(17:96=1:5.65)名鉄3500系・3700系・3100系・300系・3300系(3代)・3150系・2000系・2200系・4000系・9500系・9100系、名古屋市交通局7000形、小田急4000形
(17:90=1:5.29)小田急5000形(初代)・5200形
(17:84=1:4.94)近鉄3000系・21020系・22600系・50000系・80000系、南海30000系、京急700形(2代):東洋電機製造モータ
(17:82=1:4.82)名鉄5700系・1000系・1200系・1030系・1230系・1800系・1850系・1380系・5000系(2代)
小歯車が18以上の車両
(18:97=1:5.39)小田急9000形
(18:96=1:5.33)阪急8000系:8004・8030編成以降・9000系・1000系・1300系・2300系(2代)
(18:95=1:5.28)東武250系・500系・N100系
(18:85=1:4.72)近鉄1400系・1200系・2050系・8810系・9000系・9200系
(18:83=1:4.61)近鉄2400系・2410系・2430系・2600系・2610系・2800系、西鉄700形・5000形・8000形・6000形、南海10000系
(18:81=1:4.50)名鉄5300系:空気ばね改造車
(19:118=1:6.21)東急5050系:5177・5178編成・7000系(2代):7108編成以降
(19:93=1:4.89)731系・735系・733系、京成AE形(2代)
(19:88=1:4.63)京急1000形(初代):三菱電機モータ
(19:82=1:4.32)近鉄22000系・23000系、京急700形(2代):三菱電機モータ
(19:80=1:4.21)165系・169系、455系・475系・457系、381系、781系、413系・717系、785系、371系、小田急3000形(初代):編成短縮後・7000形・10000形・20000形、京急2000形
(19:79=1:4.16)小田急50000形・60000形
(19:75=1:3.95)小田急3100形
(19:69=1:3.63)E1系新幹線
(21:93=1:4.43)789系1000番台
(21:80=1:3.81)近鉄12200系・12400系・12410系・12600系・21000系・26000系・20000系・18200系・18400系他多数
(21:78=1:3.71)小田急3000形(初代):登場時
(22:77=1:3.50)181系、485系、583系、183系、787系
(23:96=1:4.17)小田急70000形
(23:91=1:3.96)789系基本番台
(23:68=1:2.96)300系新幹線、700系新幹線:C編成
(25:121=1:4.84)E991系:クモヤE990-1
(26:94=1:3.615)E4系新幹線
(27:73=1:2.70)400系新幹線
(27:65=1:2.41)100系新幹線:X・G編成
(28:85=1:3.04)E2系新幹線、E3系新幹線、E7系・W7系新幹線
(28:78=1:2.79)500系新幹線、700系新幹線:B・E編成、800系新幹線
(29:81=1:2.79)N700系新幹線、N700S新幹線
(29:63=1:2.17)0系新幹線、200系新幹線、100系新幹線:V・K・P編成
(31:82=1:2.645)E5系・H5系新幹線、E6系新幹線、E8系新幹線
平行カルダン以外
直角カルダン
(6:41=1:6.83)阪神5101形・5201形
(9:52=1:5.78)東急5000系(初代)・5200系
(10:45=1:4.50)相鉄7000系
(9:49=1:5.44)相鉄9000系
吊り掛け駆動(電車のみ)
(23:66=1:2.87)京阪600系(2代)
(22:67=1:3.045)京阪600系(2代):631〜640号車、京阪700系(2代)
(26:53=1:2.04)近鉄18000系
(27:56=1:2.07)近鉄1000系:登場時
(17:63=1:3.71)名鉄6750系
(19:61=1:3.21)名鉄3300系(2代)
その他
小歯車が13以下の車両
(12:83=1:6.92)南海21000系・2200系・2230系、和歌山電鐵2270系
(13:85=1:6.54)東急7000系(初代)
(13:82=1:6.31)東武2000系
(13:74=1:5.69)阪神5001形(2代)・5131形・5331形・2000系・3000系・7861形・7961形ほか多数
機関車
(16:71=1.4.44)EF63、ED75、ED76、EF67、EF210:901号機(量産化改造前)
(18:69=1:3.83)EF64、EF65、EF81、ED79
(20:71=1:3.55)EF66
(16:82=1:5.13)EF210、EH500、EF510、EH200、EH800
(16:75=1:4.69)EF200、ED500、EF500
(19:81=1:4.26)DD200