概要
1988年に2610系に代わって長距離急行用として登場した近畿日本鉄道の一般形電車。運転距離の長い近鉄大阪線と近鉄名古屋線の急行や快速急行などの長距離列車および団体専用列車に使用するため、座席は転換クロスシートを採用している。電算記号は「VX」。
増備過程で細部の変更があったため、在籍する4両編成13本のうち、第9・10編成を「5209系」、第11編成以降を「5211系」と呼ぶことがある。
車体
本系列が登場した当時はアルミニウム製の量産車が存在していたが、車体側面に連続窓、前面には曲面ガラスを採用した関係上、車体強度を確保するため普通鋼製とされた。なお、車体断面そのものはアルミ製車体車両と概ね同様で、床材についてはステンレスを用いている。
塗装は近鉄標準のシルキーホワイトとマルーンレッドのツートンカラーで、製造当初は連結面まで帯が周りこみ、当時の特急車並みの塗り分けだったが、後年にはマルーンレッド1色に変更された。そのほかに、裾帯も後年は消されるなど変化した。
先頭部は、幌枠を目立たなくさせるために両サイドにわずかな膨らみを設け、その部分をマルーンレッド塗装として、中央をシルキーホワイトとした結果、1026系などの先頭デザインとは異なってスマートな顔立ちとなった。このふくらみと面一になるようにLED式種別標識灯兼尾灯を設けた。
乗降扉は片側3箇所で、両端2箇所は4扉の通勤形電車に合わせてあり、もう1箇所は車体の中央部にある。
機器類
制動装置は抑速ブレーキ・回生ブレーキ併用電磁直通ブレーキ方式を採用し、従来の界磁チョッパ制御車や抵抗制御車との併結も考慮している。制御方式はGTO素子を用いたVVVFインバータ制御。
車内設備
車内はそれまでの急行用一般車よりも特に快適性が重視されており、座席は各車連結部妻面の10列分を除いた全座席が転換可能で、京阪特急と同様の自動転換機構が付いている。シートピッチは910mmと余裕を持たせ、背もたれはプライベートな空間を出すために従来より高めに取っている。シートの材質は柔らかめのものとし、長距離の乗車でも楽な姿勢を保てるように配慮されている。カーテンはベージュ系のロールアップ式となり、大型の5連続窓と合いまって一般車両の中でもトップクラスの高級感と開放感を併せ持つ車内空間を演出している。先頭車の連結部側にはトイレが設置され、各車のトイレ寄り妻面にはトイレ使用表示灯が取り付けられた。
この車内の仕様は、のちにJR西日本およびJR東海などの近郊形電車群の標準仕様となった。
改造
登場以降の車内設備や外見に大きな変化はなかったが、初期車の製造から20年前後が経過し、後に投入された5800系やシリーズ21の車両と比べると内外装材の老朽化が目立ってきたことから、2007年12月より車体更新が行われた。
2007年12月から2011年4月にかけてVX01~VX08編成が、2012年10月から2013年3月にかけてVX09・10編成が、2013年11月から2014年12月にかけて残り編成が車体更新を完了している。施工所は全編成高安検修センター。
車体更新は以下の内容で行われたが、本系列では5連続窓部分の固定窓化や天井化粧板の交換は省略され、運転台配色の変更もない。
- 車体外装材の交換、雨樋の設置
- 内装材と座席モケットの交換
- 先頭車(制御車)に設けているトイレの洋式化、室内改修
- テーブル、補助いすの撤去
- 乗降扉横に手すり取り付け(2008年以降の更新車のみ)、仕切り壁を化粧板タイプに交換
他に、以下のようなバリアフリー改造
- ドアチャイム・LED式車内案内表示器、車内非常通報装置(通話機能つき)の標準装備
- 各車両のフリースペース(車いすスペース)整備
その他の改造
車体更新と並行して以下の改造も施工されている。
- 種別灯・尾灯をシリーズ21同一の2灯式に交換(VX01~VX05・VX09編成のみ)
- 車体連結部の転落防止幌(溶接式段違いタイプ・いわゆるイライラ棒)設置
- VVVFインバータ制御車のシンボルマーク撤去
- ク5100形正面連結部の連結部注意喚起スピーカー取付
2250系復刻塗装車
2014年に近鉄が創業100周年を記念し、同年9月より大阪線所属のVX05編成が近鉄エリアキャンペーン記念列車として、2250系復刻塗装となった。色は上半が黄褐色のベージュで、下半が紺色である。キャンペーン終了後も広告を外し、そのツートンカラーで運用されており、2015年5月に五位堂検修車庫を出場した際にもこの復刻塗装が維持され続けてきたが、2022年5月をもって一般塗装に戻り、この復刻塗装は見納めとなった。
各種撮影会にも起用されており、2014年10月19日には12200系・15200系・15400系と並んだラインナップ撮影会が青山町車庫で行われ、同年11月15日には5800系DH02編成「奈良線100周年ヒストリートレイン」と並んだラインナップ撮影会が同車庫で行われた関係で本系列のVX05編成が奈良線や橿原線を走行している。