概要
近畿日本鉄道の次世代型通勤車で、「人に優しい、地球に優しい」と「コストダウン」をコンセプトに2000年に登場。
奈良線を中心に、大阪線、南大阪線にも投入され、近鉄の旧型車置き換えに貢献した。しかし、阪神なんば線の難波延伸を控えた2008年を最後に製造が途絶え、以降近鉄による通勤車の新規導入は15年近く途絶えていた(2010年代に大手私鉄で同種の車両を導入しなかったのは近鉄のみである)。
…が、2024年秋の奈良線を皮切りに新型通勤車(8A系)を導入することが発表され、ようやく旧世代になることとなった。
なお、山田線には営業運転で入線した実績はあるが、名古屋線には白塚車庫に疎開した程度で、営業運転での入線実績はない。
デザイン
外観は従来のマルーンレッド・シルキーホワイトから一新され、上半はアースブラウン、下半はクリスタルホワイトの塗装で、サンフラワーイエローの帯を配したカラーリングに変更されている。
車体は従来車同様アルミニウム合金製であるが、押出型材によるダブルスキン構造を本格採用した。
前面はブラックフェイス化と灯具類を目立たない配置にした事で、スマートな印象を与えている。
行先表示器は種別表示が分離され、行先はLED式、種別は幕式の組み合わせとなった。
5820系を除く内装は、ロングシートには袖仕切を兼ねた大型の手すりを装備し、またドア横の席は幅を若干広げ、肘掛けを設けた「らくらくコーナー」としている。天井部は線路方向にキャラクターラインが多数入っている。
また、一部の吊り革を従来よりも低い位置に設け、高さを3段階とし、背の低い乗客にも持ちやすいように配慮した。この配置は後に大阪メトロ30000系や阪神5700系にも採用されている。
なお2006年以降製造の車両では、キャラクターラインと蛍光灯カバーが廃止されている。
システム
ブレーキ方式は従来の電磁直通ブレーキに変わり、電気指令式を採用。運転席からのブレーキノッチ指令を元にコンピュータによる電磁弁制御が行われ、圧縮空気がブレーキシリンダへと供給される。
ただし3220系を除く各形式は、恒常的に電磁直通ブレーキの従来車と併結運用を行うため、編成に直通管(SAP)とブレーキ管(BP)を引き通し、BP減圧で動作する非常用自動空気ブレーキ機構を備え、加えて編成内に1台空気圧指令と電気指令を相互変換するブレーキ指令読替装置を装備しており、空気ブレーキの完全な互換性と連結順序を問わない柔軟性を持たせている。
また、9020系・9820系・5820系は電動車に抑速発電ブレーキ用の抵抗器を装備する。
VVVFインバータは最新型となり、IGBT素子を使用した2レベル電圧形インバータで、ベクトル制御に初めて対応。各電動車に搭載され、2両単独での運用が想定される6820系のみフェイルセーフの観点から2群構成(1C2M×2)、それ以外の形式は1群のみ(1C4M)となっている。
編成ごとに三菱電機製か日立製作所製のどちらかを搭載する。
主電動機は三菱電機製のMB-5085形を搭載する。フレームレス構造と固定子鉄心背面通風構造を採用した事で従来形よりも軽量でありながら、1時間定格出力が185kWに強化されており、起動加速度の向上を実現している。
なお、狭軌線用の6820系のみ16400系と共通のMB-5071形(1時間定格出力160kW)を搭載している。
2両編成(9020系・6820系)では制御付随車に、6両編成(3220系・5820系・9820系)では両先頭車に補助電源装置と空気圧縮機を搭載する。
補助電源装置は6820系のみ日立製作所製で、そのほかは東芝製・三菱電機製が編成ごとに混在する。空気圧縮機も三菱製とナブテスコ製が混在。
該当車両
3220系
京都市営地下鉄烏丸線直通用。デビューに合わせて烏丸線の乗り入れ範囲が近鉄奈良まで拡大された。
ロングシートの6両編成で3本在籍。KL21〜23編成。
3200系と同じく、先頭車は非常時貫通形で6連単独運用にしか入らない。
5820系
20番台
近鉄奈良線系統で活躍するL/Cカーの6両編成で5本在籍。DH21〜25編成。
阪神電気鉄道乗り入れ対応。
50番台
近鉄大阪線系統で活躍するL/Cカーの6両編成で2本在籍。DF51・52編成。
3号車と6号車にトイレがある。
VVVFインバータは末尾51の編成が三菱電機製、末尾52の編成が日立製作所製。
9020系
20番台
近鉄奈良線系統で活躍するロングシートの2両編成で19本在籍。EE21〜39編成。
この形式のみで2両編成を複数つないでできる、「ブツ6」「ブツ8」「ブツ10」がたまに見られる。
50番台
近鉄大阪線系統で活躍するロングシートの2両編成で1本在籍。EW51編成。
VVVFインバータは日立製作所製。
9820系
近鉄奈良線系統で活躍するロングシートの6両編成で10本在籍。EH21〜30編成。
阪神電気鉄道乗り入れ対応。
6820系
南大阪線系統で活躍するロングシートの2両編成で2本在籍。AY21・22編成。
9020系の狭軌版にあたる。