基本データ
事業者
起点
終点
距離
:78.8km
路線記号
: E
概要
この線の歴史は複雑な経緯をたどっている。桑名-江戸橋は伊勢鉄道(後の伊勢電気鉄道,今の3セク伊勢鉄道とは無関係)が建設した。江戸橋-伊勢中川は参宮急行電鉄(後の近鉄大阪線桜井以東,近鉄山田線の前身)が中勢鉄道を買収し,中勢鉄道の免許で参急電鉄が建設した。なお免許は桑名まであった。
一方伊勢電気鉄道は,養老電気鉄道(現養老鉄道)を買収する一方で参急とは同年同月に別ルートで大神宮前へ直通したが,名古屋延伸に際し関西本線の木曽三川橋梁の払い下げで疑獄事件が起こり経営のめどが立たなくなった。
伊勢電気鉄道の支援には名岐鉄道(名鉄の名古屋以西の前身),愛知電気鉄道(名鉄の名古屋以東の前身),参宮急行が争奪した結果,参急電鉄が伊勢電気鉄道を合併した。
参急は桑名-名古屋延伸に関西急行電鉄を設立し,伊勢電気鉄道同様に旧橋梁の払い下げで木曽三川から関急名古屋に直通した。
これにより,関西急行電鉄-参宮急行電鉄-大阪電気軌道(近鉄の直系祖先で参宮急行電鉄の親会社)の3会社で名阪直通が行われた。但し当時は伊勢中川以北では狭軌で建設され,参急本線(大阪線桜井-伊勢中川-山田線宇治山田)の標準軌と乗り換えを必要とした。
この3会社は合併し近畿日本鉄道となり(詳しくは大阪電気軌道を参照)1950年代も後半となった。名阪ノンストップ特急の実現のためにはレールの幅を統一する必要があった。関西鉄道時代からの木曽三川橋梁も老朽化したことと単線なので掛け替えられることとなった。揖斐長良川橋梁は1959年9月19日木曽川橋梁は同月26日に完成した。なお両橋梁とも当時は狭軌だったが,翌年2月の標準軌改軌を考慮した設計となっていた。
その夜台風15号は上陸した。後の伊勢湾台風である。近鉄名古屋線は壊滅的な被害を受けたが幸い新橋梁は流されず,復旧とともに改軌も前倒しされることとなった。後に中川短絡線の完成で名阪特急のルートが完全なものとなった。
運行本数はJR東海の関西本線より圧倒している影響からか運賃が高くてもあえて近鉄を利用する人が多く存在する。
但し、桑名駅以北に関しては安いJRに流れる場合も多く、こちらはJRに比べて長距離利用者が多い特徴がある。
冒頭のとおり、起点は伊勢中川で終点が名古屋であり、狭軌時代はこれに従って名古屋方面が奇数の列車番号を与えられていた。しかし標準軌化され、名古屋線から列車が直通しだすと山田線内で混乱をきたすようになった。大阪線に揃えてある山田線の列車とは上下の関係が狂うためである。これを解消するため、列車番号の上下を入れ替え、さらに名阪特急に関しては上下が奇数偶数と関係ない番号体系を持つように改められた。
現在、駅番号は名古屋駅を基準として付番され、E44〜E60は連続で欠番になっている。連続欠番の理由については近鉄京都線、および賢島駅の記事を参照されたし。
停車駅一覧
●:停車、レ:通過、○:「しまかぜ」のみ通過、▲:一部列車が停車
駅番号 | 駅名 | 読み | 準急 | 急行 | 名阪特急 | 名伊特急 | 接続路線 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
E01 | 近鉄名古屋 | なごや | ● | ● | ● | ● | ||
E02 | 米野 | こめの | レ | レ | レ | レ | ||
E03 | 黄金 | こがね | レ | レ | レ | レ | ||
E04 | 鳥森 | かすもり | レ | レ | レ | レ | ||
E05 | 近鉄八田 | はった | レ | レ | レ | レ | ||
E06 | 伏屋 | ふしや | レ | レ | レ | レ | ||
E07 | 戸田 | とだ | レ | レ | レ | レ | ||
E08 | 近鉄蟹江 | かにえ | ● | ● | レ | レ | ||
E09 | 富吉 | とみよし | ● | レ | レ | レ | ||
E10 | 佐古木 | さこぎ | ● | レ | レ | レ | ||
E11 | 近鉄弥富 | やとみ | ● | ● | レ | レ | ||
E12 | 近鉄長島 | ながしま | ● | ▲ | レ | レ | ※なばなの里イルミネーション開催時の15~18時台と20~21時台には急行が臨時停車。(土・休日ダイヤのみ) | |
E13 | 桑名 | くわな | ● | ● | ▲ | ▲ | ||
E14 | 益生 | ますお | ● | レ | レ | レ | ||
E15 | 伊勢朝日 | いせあさひ | ● | レ | レ | レ | ||
E16 | 川越富州原 | かわごえとみすはら | ● | レ | レ | レ | ||
E17 | 近鉄富田 | とみだ | ● | ● | レ | レ | 三岐鉄道三岐線 | |
E18 | 霞ヶ浦 | かすみがうら | ● | レ | レ | レ | ||
E19 | 阿倉川 | あくらがわ | ● | レ | レ | レ | ||
E20 | 川原町 | かわらまち | ● | レ | レ | レ | ||
E21 | 近鉄四日市 | よっかいち | ● | ● | ▲ | ▲ |
| |
E22 | 新正 | しんしょう | レ | レ | レ | |||
E23 | 海山道 | みやまど | レ | レ | レ | |||
E24 | 塩浜 | しおはま | ● | レ | レ | |||
E25 | 北楠 | きたくす | レ | レ | レ | |||
E26 | 楠 | くす | レ | レ | レ | |||
E27 | 長太ノ浦 | なごのうら | レ | レ | レ | |||
E28 | 箕田 | みだ | レ | レ | レ | |||
E29 | 伊勢若松 | いせわかまつ | ● | レ | レ | 鈴鹿線平田町方面 | (一部直通運転) | |
E30 | 千代崎 | ちよざき | レ | レ | レ | |||
E31 | 白子 | しろこ | ● | ▲ | ▲ | |||
E32 | 鼓ヶ浦 | つづみがうら | レ | レ | レ | |||
E33 | 磯山 | いそやま | レ | レ | レ | |||
E34 | 千里 | ちさと | レ | レ | レ | |||
E35 | 豊津上野 | とよつうえの | レ | レ | レ | |||
E36 | 白塚 | しらつか | レ | レ | レ | |||
E37 | 高田本山 | たかだほんざん | レ | レ | レ | |||
E38 | 江戸橋 | えどばし | ● | レ | レ | |||
E39 | 津 | つ | ● | ● | ○ | |||
E40 | 津新町 | つしんまち | ● | レ | レ | |||
E41 | 南が丘 | みなみがおか | ● | レ | レ | |||
E42 | 久居 | ひさい | ● | レ | ▲ | |||
E43 | 桃園 | ももぞの | ● | レ | レ | |||
E61 | 伊勢中川 | いせなかがわ | ● | ▲ | 大阪線大阪難波方面/山田線伊勢志摩(宇治山田・鳥羽・賢島)方面 | (一部直通運転) |
運行形態
近鉄特急は大阪方面へ直通する名阪特急が毎時2本、伊勢志摩方面へ直通する名伊特急が毎時2本運行されているのが基本。
名阪特急のうち名古屋と大阪側の大阪難波を0分台に出発する列車は「甲特急」と呼ばれ停車駅が少ない。名古屋線内では津のみに停車し、線内では全時間帯で停車駅は変わらない。かつては昼間時間帯は津も通過し「名阪ノンストップ特急」として運行されていた。土休日は20分台にも増便される。
30分台発の全便は名古屋線内で津・白子・四日市・桑名に停車する「乙特急」として運行される。これも名古屋線内は全便停車駅が同じ。なお大阪難波21:00発の便のみ大阪線内が鶴橋以遠ノンストップの甲特急同様の停車駅・名古屋線内は乙特急同様の停車駅となるため、甲特急と見做されている。
名伊特急のうち、現在は土休日1往復のみの「名伊甲特急」は、名古屋線内の停車駅は名阪甲特急と同じ津のみ。木曜運休の「観光特急しまかぜ」は逆に四日市のみ停車する。乙特急は便によって久居に停車するものとしないものがある(名阪乙は全便が通過する)。
急行は日中は毎時3本、夕方以降は毎時4本運行。クロスシート車4両+ロングシート車2両の6両編成がほとんど。一部列車は近鉄山田線へ直通。
準急は日中は毎時2本運行。名古屋~四日市間で運用され2,3,4,5両編成。名古屋~富吉間の列車には6両編成もある。蟹江~四日市間は各駅に停車。
普通は日中は1時間あたり名古屋~津新町間が毎時1本、名古屋~富吉間、四日市~津新町間が毎時2本ずつ運転される(四日市~津新町間の列車は準急の種別変更によるもの)。ホームの長さの都合から、一部列車を除き2,3両編成で運行される。
現役車両
特急
名阪甲特急は原則全便「ひのとり」もしくは「アーバンライナー」での運用となる(2000年代の一時期一本だけ「伊勢志摩ライナー」によるものが存在)。甲特急に準ずる難波21:00発の特急も同じ。その他乙特急の一部も「アーバンライナー」運用となる場合があるが、一般型とされるACE・スナックカー・サニーカー運用が殆ど。
名伊甲特急も「伊勢志摩ライナー」の指定運用。他に名伊間速達運用は「しまかぜ」による専属運用。この他名伊特急の何便かに「伊勢志摩ライナー」が使用される他、前述の一般型がランダムに使用される。2020年3月14日ダイヤ改正後は「アーバンライナー」による名伊乙特急が増加している。
特急は一番の花形とも言える名阪特急を抱えている上、一般車も全線で使用車両が概ね平準化されているためか、通勤車と比べると他線との差は少ない。
携帯チケットレスサービスなどの座席指定でシートマップを見ることで、アーバン・伊勢志摩・しまかぜ以外の特急でもどの編成が充当されるか事前に調べることが可能である。
通勤形
はっきり言って一部を除いて旧型車ばかりである。シリーズ21はまだ運用されていない。
ここでは特記すべき車両を取りあげる。
- 5200系 →3ドアのクロスシート車。4両固定編成。
- L/Cカー →名古屋線のL/Cカーは4両固定編成。2610系改造車と2800系改造車が3編成ずつ、5800系が1編成。
- 1200系・2430系 →車両組み換えで余った2430系2両に新造の1200系2両を繋いで4両固定編成を作った。編成前後で正面形状、制御方式、車体断面が大きく異なる。2編成在籍。当初は近鉄大阪線にいた。ロングシート車ではあるが、L/Cカーと共通運用。
- 1810系・1000系・1010系 →何れも名古屋線系統のみで運行。抑速ブレーキを装備しないために青山峠を越えて大阪線で運用することが出来ないため。この制限からか2400系列と同世代ながら大量の廃車が発生し、数えるほどしか残っていない。なお1000系は機器流用車、1010系は元奈良線系の920系である。
- 2000系 →二代目ビスタカーの機器を流用した車両であり、旧式スタイルの車両かつ名古屋線向けの専用車両では最後の系列である。地味に抑速ブレーキを装備している関係で一時期大阪線の運用にも継いでいたが、現在は名古屋線系統の運用に徹している(所属車庫も他の3両編成の1000系や1010系、2410系や2050系が在籍する明星検車区と異なり、こちらは富吉検車区所属)。
2018年現在に至って、最新鋭の車両が1998年製の5800系僅か1編成という有様であり、近鉄の五大幹線(大阪・名古屋・奈良・京都・南大阪)でも特に一般車の更新が遅れている印象は否めない。
しかしながら、近鉄では2008年を最後に通勤車の製造が16年に渡ってストップしており、車齢50年に達しようという老朽車は名古屋線は元よりシリーズ21の数の少ない大阪線や南大阪線系統でも多く、果ては最も多くの新車が投入された奈良・京都線系ですら存在する(8000系の一部)。
近鉄はこうした「超高齢」車両に対して2度目の更新工事となるB更新工事を現在も施行しており、更に2010年代からは内装の大幅な模様替えまで行っている。
近畿地方の各私鉄でも漸く資本関係の健全化の目途が立ち、大量のリプレースが行われている中で近鉄のこの動きは謎そのものであるが、まあ中の人が大丈夫と感じたなら大丈夫なんだろうと思うしかない。
一方で2020年頃を目途におよそ70両の省エネ車を導入する計画を明らかにしている。詳細がわからなかった時点では、ようやく近鉄も重い腰をあげたと思われていたが、詳細判明後、省エネ車の両数と新製特急車の両数がピッタリ一致するので、省エネ車=特急車という構図が成り立ってしまった。
名古屋線は大阪線や奈良線と異なり、急勾配が少ないために線形が良く、競合相手のJR関西本線や伊勢鉄道線がインフラ面で脆弱(名古屋線と異なり、単線区間が多い上に貨物列車も多数走っているため増発が難しい)のために大して脅威ではないという面から旧型車が未だに勢力を張っていると考えることもできるため、その辺については未知数である(早い話が武蔵野線と似たような状況である)。しかしJRは315系の大量導入を控え、また気動車に至っては既にキハ25が大量導入されているため、近鉄でも通勤形電車の置き換えが喫緊の課題になるのは間違いない。
結局、既存車の更新工事を行いつつ2025年以降に名古屋線にも新車を導入して一般車の置き換えに取りかかる予定。導入されれば28年ぶりの新製車となる。