概要
鉄道の軌間(線路/レールの幅、ゲージ)のうち、標準軌(4フィート8.5インチ=1,435mm)よりも狭いゲージのもの。一般には3フィート6インチ軌間(1,067mm)のこと。これよりも狭い軌間は特殊狭軌と呼ぶ事もある。
3フィート6インチ軌間(サブロクゲージ)
軌間が3フィート6インチ(1,067mm)のゲージのこと。一般的に「狭軌」と言えばこれを指す。
日本で最も多く採用された軌間で、ドイツではこの軌間を最初に用いたノルウェー人(カール・アブラハム・ピル)のイニシャルにちなみ、Kapspurと呼ばれ、英語ではケープ植民地で用いられたことから「Cape gauge」と呼ばれるほか、カール・アブラハム・ピルのあだ名にちなんで「CAP gauge」とも呼ばれる。かつては「イギリス帝国軌間」とも呼ばれた。これはイギリスの植民地で広く用いられたからである。
一次産品を低速で運ぶ場合には、軌間縮小に伴う高速性の低下が無視できたケースが有り、そういう特性の鉄道でいい植民地鉄道ではその中で比較的車体の大きい1mまたは3’6”軌間が用いられた。
変わり種は南アフリカで、当初は輸送品目の量の多さから標準軌で敷設したが、山岳地帯の急カーブを当時の標準軌蒸気機関車では通過できず、3’6”の狭軌に縮小した。そのため蒸気機関車時代の超大型機も最小通過半径が80m台が基準となっている。ただ所要輸送力が大きいことは変わらず、それゆえ機関車出力や機関車・貨車の軸重は相変わらず標準軌並が必要とされ、現在では機関車は最大28t、貨車は26tとしている。
日本ではJRグループの在来線のほぼ全て、架線集電を行うリニアモーター駆動でない地下鉄や、京成電鉄、京浜急行電鉄、阪神電鉄、京阪電気鉄道、阪急電鉄を除く大手私鉄、多くの中小私鉄で用いられている。
というか南アフリカのことをとやかく言えた立場か。日本は一度国鉄路線を標準軌に一斉改軌しようとしたがコストが捻出できず断念、その後新規開業する区間は狭軌でありながら先発の標準軌の欧州各国よりよほど頑強に作られた(古い路線も幹線は後々強化されていった)。その結果、幹線用機関車は100t超えは当たり前、日本では低規格とされる丙線規格用のそれですら65t(DE10形)。
また日本の鉄道車両の規格に「国鉄20m車規格」というのがあるが……
- 連結面間全長20m乃至21.5m
- 全幅最大3,000mm、ただし車体裾はホーム限界のため最大2,850mm
- 突起物等を含めた全高3,880mm
…………これより問答無用ででかいのは北米大陸ぐらいという有様であり、一般的な日本人が思い込んでいる「日本の鉄道は狭軌だから車両も小さい」という認識とトンデモナイ勢いで乖離している。日本人の誤認は軌間と車両限界は必ずしも比例しないという一般には浸透していない知識の欠如が原因で、当初から全線高規格で建設された新幹線の存在がそれを助長している。
要するに日本の鉄道の大半が1,067mm軌間を採用しているのは歴史的経緯からくる互換性の確保であって、世界的には車両はでかい方なのである。
4フィート6インチ軌間(馬車軌間)
軌間が4フィート6インチ(1,372mm)のゲージのこと。
通称の「馬車軌間」は馬車鉄道で用いられたことに由来する。過去に日本の東京近辺で大々的に普及したため「東京ゲージ」とも呼ばれるが、後述の通り最初の敷設がスコットランドであるため、海外では「スコッチゲージ」の方が通じる。
元々はスコットランドで若干の敷設例があったが、これらは標準軌に改築されるか廃線になるかで消滅。海外では全く廃れた。
日本のものは東京馬車鉄道(東京都電の前身)に起源を持つ。現在、この軌間を採用している路線は京王電鉄の本線系統、東急世田谷線、都電荒川線、都営新宿線、函館市電のみ。