概要
1966年より製造された中型ディーゼル機関車。
当時進められていた動力近代化に対応すべく、主に亜幹線や地方交通線における客貨列車の牽引や、駅・操車場・車両基地等での入換業務を目的とした、いわゆる万能型として設計・開発された形式である。
牽引・制動力の確保と軸重制限(13t)を両立させるため動軸は5軸となっており、そのため1エンド側(フードが長い側)の台車は3軸台車となっている。3軸台車は曲線区間で横圧が大きくなることを避けるために各軸が独立して首を振るように工夫がなされている。そのため軸配置はC-Bではなく、AAA-Bと記される。
エンジンはV型12気筒ディーゼル機関のDML61ZA(1000番台以降はDML61ZB)を1基搭載。
901号機以外は重連総括制御装置を持ち、重連運転可能である。
DD51形とも総括制御により重連運転が可能だが、最高速度は75km/hに制限される。また2エンド側のフード内には、冬季の客車暖房用として蒸気発生装置(SG)が収められている。(SGが省略された500番台・1500番台は、同重量のコンクリート製の死重を搭載)
派生形式として貨物ヤードにおける重入換業務に特化したDE11、除雪用機関車としての機能を付加したDE15がある。
バリエーション
0番台(基本番台)
1970年までに158両が製造された基本仕様車である。
1~4号機は試作車である。
500番台
貨物列車・入換用にSGを省略して、死重を搭載したグループである。
1970年までに74両が製造されている。
900番台(901)
大規模操車場での入換に特化したDE11の試作機である。
数多いDE10の中でも特異な車であり、SGはもちろん重連総括制御も省略、さらに死重を積み増して自重を70t(軸重14t)に引き上げるなど、DE10の特徴である万能性が排除されている。
外観上も2エンド側のフードの幅が狭くなり、見た目の印象が異なる。
1000番台
エンジン出力を1250HP→1350HPに出力を増強した改良型であり、SGを搭載するグループである。
1973年までに210両が製造された。1973年製の1153以降は3軸側の台車構造が変更されており、外観も異なっている。
1500番台
500番台をベースに、1000番台相当の改良を加えたグループである。
1978年までに265両が製造され、1000番台同様に1550以降は台車が変更され、その後も細部の改良が加えられている。
3000・3500番台
2009年にDE15を改造編入したグループ。
JR東日本で余剰廃車になったラッセル除雪車のDE15を、JR貨物が購入・改造した。
不要のラッセルヘッドを外し、同時にジャンパ連結器や空気管の撤去を行った。
運用
本線運用や入換業務に手頃な車両であったことから、(主に8620・9600・C11・C58などの)蒸気機関車や初期のディーゼル機関車(DD13初期車・DF50など)の置き換え用として、北海道から四国・九州に至る各地に1978年までに708両が製造された。また運用範囲の広さから、都内都心部から地方末端まで大抵の地域で普通に目にできる存在でもあった。
しかし、1980年代になると客車列車・貨物列車の削減や、貨物扱い廃止による入換作業の激減、さらに地方交通線の廃止・第三セクターへの転換により、(特に1984年2月のダイヤ改正で)多数が失職した。
そのため国鉄の民営化が決定した1985年度末になると大量の除籍車が出始め、1987年の国鉄分割民営化に際してはJRグループ全7社に半数強の361両が承継されたに過ぎなかった。
中には1757号機など、新製後僅か9年で余剰廃車になった短命車も存在した。
どちらかといえば目立たない運用が多かったが、国鉄時代には寝台特急「あかつき」や「日本海」の一部区間の牽引機を務めた時期があった。
JR化後は1990年から1997年まで陸羽東線を経由して運行された寝台特急「あけぼの」の同線内での牽引機を務めた。JR九州では変わった運用が組まれた事もあり、特急「有明」を豊肥本線(当時は非電化路線)に乗り入れさせるために控えの電源車を介して485系・783系を牽引・推進で運転するという前代未聞の運用を行った(この際、牽引する車両に合わせて2両が塗装変更を行っている。なお、この2両は後述の塗装変更を経て今も現役で活躍中)。
また、各地で観光列車・イベント列車の牽引機としても運用されている(地方の第3セクターでも譲渡機で同様な例が見られ、また専用鉄道では同型機が運用されていることもある)。
現状
JR
- JR北海道:23両が承継された。10両が現役で検測列車牽引や、くしろ湿原ノロッコ号の牽引などに使用されている。
- JR東日本:68両が承継された。26両が現役で工臨列車の牽引などに使用されている。
- JR東海:13両が承継された。同社の機関車全廃の方針により、2008年までに引退した。他の所属車両同様、床下をライトグレーに塗り替えていたのが特徴だった。
- JR西日本:49両が承継された。現在でも18両を所有し、工臨列車はもちろんのこと嵯峨野観光鉄道トロッコ列車や奥出雲おろち号の牽引など観光列車に専用塗装機が充当されている。
- JR四国:37両が承継された。気動車化や宇高連絡船の廃止などで数を減らし、最後は1748号機1両が高松運転所に配置され工臨列車の牽引に使用されていた。2023年3月に引退し消滅。運転台側面にJRマークが貼られていたのが特徴だった。
- JR九州:19両が承継された。現在は8両が現役。同社が電気機関車を全廃したため、電化区間を含む全土で運用されている。2010年にNHK企画の特別列車「BSデジタル号」を運行して以降、所属車の塗装を黒ベースに切り替えており、ななつ星in九州の回送やSL人吉不調時の後補機・代走、工臨列車など幅広く活躍中。
- JR貨物:151両が承継された。入換はもちろん非電化路線での貨物列車牽引など幅広く運用されていたが、2010年から入換用ハイブリッド機関車HD300が投入されたことから入換運用はほとんど消滅。甲種輸送等の本線走行運用も2017年から本線用ディーゼル機関車DD200が投入され、現役で稼働するDE10は指折り数えられる程に減っている。
なお、一部の車は検査周期の延長を目的に、入換作業に不要な機能の停止・本線自力走行の禁止措置などを行った上で、「入換動車」として扱った例も存在する。
その他私鉄
- 八戸臨海鉄道:1761号機
- 秋田臨海鉄道:1543号機
- 仙台臨海鉄道:DE65 3号機→元DE10 1536
- わたらせ渓谷鐵道:1537号機、1678号機(部品取りの1682号機あり)
- 真岡鐵道:1535号機
- 樽見鉄道:DE10タイプ(一部は国鉄の中古)のTDE10形、TDE11形が在籍した。退役済み。
- 衣浦臨海鉄道:KE65 2→元DE10 563、KE65 5→元DE10 573
- 西濃鉄道:1251号機(秋田臨海鉄道からの譲渡機。かつてはDE10 501号機→元DE10 148号機とDE10 502号機→DE10 545号機も保有していた)
- 東武鉄道:1099号機、1109号機
- 嵯峨野観光鉄道:1104号機
近年は国内の1067mm軌間中古車両の海外譲渡が目立つようになっているが、同系列の設計であるDD51やDD16が軌間を変えて譲渡されるケースがあるのと異なり、当形式はそのような譲渡実績が全くない。
譲渡先は現在全て日本国内の1067mm軌間の鉄道事業者等のみであり、かつその数も少ない。
内側軸受の駆動台車部分が2軸側・3軸側共に複雑な構造をしており、改軌どころかバックゲージ修正のための調整すらJRの機関区でも出来ない(工場送りになる)ことが、余剰になろうとも譲渡先を探しにくい一因とされる。このため第三セクター鉄道では、故障した際に部品取り車と本体を丸ごとすり替えて番号を元の機体のへ変更して使用するという、あの朝倉軌道に匹敵するようなことを行った例がいくつかある(わかる人が見ればナンバーと車体の形態が一致しないので、丸ごとすり替えたことがすぐバレるという)。
また仙台臨海鉄道や衣浦臨海鉄道、樽見鉄道、西濃鉄道など、運行のために大量の部品取り車を抱えていた例もあるほか、京葉臨海鉄道に至っては国鉄の中古車を試しに導入したものの、入籍・運用入りすることなく解体している(仙台臨海鉄道も国鉄から0番代車を4両購入していたが、使用することなく解体した過去がある)。
派生形式であるDE15からミニ新幹線用ラッセル車(DD18)を作る際も、転用された部分はラッセルヘッド部分のみである。
保存車
現存
DE10 1:愛媛県四国鉄道文化館南館
DE10 30:千葉県ポッポの丘
DE10 88:宮城県角田中央公園交通公園
DE10 95:栃木県真岡鉄道真岡駅
DE10 503:北海道小樽市総合博物館
DE10 1014:栃木県SLキューロク館
DE10 1511:東京都JR貨物中央研修センター(非公開)
DE10 1677:北海道佐呂間町交通公園
DE10 1702:北海道三笠鉄道記念館
保存後解体
DE10 11:埼玉県吹上小学校
DE10 26:福岡県歴史民俗資料館
KMDE10 1:岐阜県旧奥飛騨温泉口駅前
関連イラスト
関連タグ
HD300:入換業務の後継機関車
DD200:汎用用途の後継機関車
きかんしゃやえもん:3D映画版ではこの車両(但し車軸配置がBo-Boになっていたり、ヘッドライトが無くなっているなど多少実機と異なっている部分がある)をモデルにした「ディム」というキャラクターが登場する。