概要
宮城県内を走り、多賀城市と仙台市宮城野区とを結ぶ、単線非電化の貨物鉄道路線。
1970年に会社が設立され、翌年10月に陸前山王駅〜仙台北港貨物駅の区間が開業した。仙台港周辺はこの当時塩釜港からその機能が移転しつつあり、増大する輸送量に対応する必要が出たためである。その後1975年と1983年にはそれぞれ支線も開業した。
本来貨物専用線だが場合によっては旅客輸送も実施しており、1987年と1997年には沿線で行われた博覧会への観客輸送のため臨時で旅客営業を実施した(ちゃんと切符も配る気合の入れようである)。1987年の旅客営業では蒸気機関車も入線している。
2018年7月26日、3度目となる旅客営業を行うことがJR東日本仙台支社より発表された。同年9月に仙台港に寄港する豪華客船『飛鳥Ⅱ』のツアー客を乗せて運行したもので、『リゾートみのり』用のディーゼル車両が使用された。
会社としてはこの他、陸前山王駅・仙台貨物ターミナル駅・岩沼駅の貨物事業を委託されている。また、子会社は通運を行っている。
駅一覧
起点からの距離はすべてkm表記である。特に表記のない駅はすべて貨物駅。
臨海本線
距離 | 駅名 | 開業年 | 備考 |
---|---|---|---|
0 | 陸前山王 | 1971年 | 東北本線との接続駅。広大な操車場がある。 |
4.2 | 仙台港 | 1971年 | 仙台西港線、仙台埠頭線の分岐駅。 |
5.4 | 仙台北港 | 1971年 | 石油類の発送を担う。駅構内の一部は多賀城市内。 |
仙台西港線
距離 | 駅名 | 開業年 | 備考 |
---|---|---|---|
0 | 仙台港 | 1983年 | |
2.2 | 東北博覧会前 | 1987年 | 開業年の7/18〜9/23のみ営業した臨時旅客駅。 |
(不明) | ゆめ交流博前 | 1997年 | 開業年の7/19〜9/30のみ営業した臨時旅客駅。 |
2.5 | 仙台西港 | 1983年 | キリンビール仙台工場からの飲料発送を担う。 |
仙台埠頭線
距離 | 駅名 | 開業年 | 備考 |
---|---|---|---|
0 | 仙台港 | 1975年 | |
1.6 | 仙台埠頭 | 1975年 | 鉄道用のレールの発送を担う。旅客営業の実績あり。 |
東日本大震災の影響
2011年3月11日に発生した東日本大震災により、この路線も被災。全線の7割以上が損傷、運転司令室も浸水したうえ、所有していた機関車3両全てが脱線・転覆するという甚大な被害を被った。4月に復旧作業を開始したが、機関車のうち2両は手の施しようがなく解体を余儀なくされ、残った1両は部品一つ一つを職員が手作業で磨くなどしてどうにか修復に成功。不足した機関車については、やむなく京葉臨海鉄道から1両譲渡、および秋田臨海鉄道から1両借用(2017年に購入し正式に転属)という形で震災前と同じ数を確保。11月に暫定復旧し、翌年9月に完全復旧を果たした。
車両
保有する車両は全てディーゼル機関車であり、車両の整備は福島臨海鉄道に、車輪の整備はJR貨物に委託している。また、DE10・DD13系列の保有数がやたらと多い。
- SD55:全て国鉄DD13型の発展型または自社発注車両である。101・102号機は被災し廃車、105(104を改造)号機は2021年に引退、103号機が現役である。うち105号機は京葉臨海鉄道から譲渡された。なお、ヘッドライトは大半が丸型だが、101号機のみ角型の独特のものだったようだ。
- DE65:いずれもDE10型およびその派生型の転入車両。なお、後述の通り、どれも異色の経歴を持つ。
- 1号機は元々、DE10をベースとしたラッセル除雪車・DE15形の1538号機。JR東日本の長岡車両センターに所属していた最後の除雪用機関車であり、2021年10月より運用開始。
- 2号機は、DE10型の入換作業用派生型・DE11の新潟臨海鉄道(廃線)による自社発注車の一両。唯一、転属前から車番が変更されていない。津波被害に伴い、転属先の秋田臨海鉄道から本鉄道に貸しだされ、その後2017年に正式に移籍した。正式転属からわずか二年後の2019年に一時運用を離脱。長期に渡ったため廃車も危惧されたが、同年暮れに運用に復帰した。
- 3号機は元・DE10形1536号機(後述)。2020年に運用を開始している。かつては寝台特急「あけぼの」や急行「はまなす」の客車回送等に従事していた。
- 5号機は元・DE15形1525号機。十勝鉄道への移籍時にDE10形1250号機と名を変え、秋田臨海鉄道を経て転入した。2021年3月より運用開始。ちなみに、所属先の廃止に伴い他の鉄道会社に譲渡される出来事に2度も遭遇している車両だったりする。
- DD55:DD13型の自社発注車と国鉄からの転属車が1両ずつ存在した。SD55と比べ出力が低く、どちらかというと入れ替え向きである。2両とも廃車済み。
- DE10:元・国鉄DE10型。DD55の置き換えを目的に1986〜87年に0番台4両が導入されたものの、何故か一度も使用されず、SD55登場で余剰となり廃車された。なお、2018年以降複数回に渡りJR東日本のDE10型(後期型)が仙台港駅に搬入されているものの、いずれも使われることなく解体されている。なお、JR東日本青森車両センターで入れ替えに使用されていた同1536号機が本鉄道に譲渡され、DE65となった(先述)。
- DD35:常磐共同火力より譲渡されたロッド式機関車。DD55型導入で余剰になり、衣浦臨海鉄道に譲渡され、その後7年ほどで廃車されている。
余談
- 開業当初の陸前山王駅はこの駅から塩釜線も分岐していた。塩釜線廃止後も広大な操車場はそのまま使われているが余剰気味であり、時折廃車予定の車両が大量に留置されている。なお、側線への入れ替えには本鉄道の機関車が使用されることも珍しくない。
- この鉄道の本線建設に際して、計画段階では、陸前山王駅ではなく宮城野貨物駅(仙台貨物センター)を起点とする案もあったが、海軍工廠(現:陸上自衛隊多賀城駐屯地)への専用線の跡地をほぼそのまま転用でき用地買収に手間のかからない陸前山王案が結果的に採用された。ちなみに専用線の跡だった橋は釣りスポットとして知る人ぞ知る穴場だったそうだが、1990年代の護岸工事で撤去されている。