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概要編集

「きかんしゃやえもん」は、1959年に刊行された絵本である。

原作は鉄道ファンとしても知られる小説家・評論家の阿川弘之。絵は同じく鉄道ファンとして知られる漫画家の岡部冬彦

主人公である古い蒸気機関車のやえもんに起きたハプニングや大きな転機を描いている。


発行当時岩波書店は児童文学を多数発行していたが、大部分が海外文学の邦訳であった。

そのイメージを払拭するため日本の絵本が企画され、その1作として描かれたのが本作である。

当時の岩波書店の児童書は他社のそれと比べて高価だったため、コスト削減のために多色刷りと二色刷りを交互に使用したり、表紙の見返しにまで本文を記載するという特殊な造本が行われた。2001年の改版からは通常の造本に改められている。

過去には国語の教科書に掲載された実績があるロングセラー。


同じく蒸気機関車キャラクターが登場する「きかんしゃトーマス」とキャラクターの擬人化具合が近いため、本作を「和製トーマス」と呼ぶ者もいる。


物語の内容編集

田舎に住んでいる年寄りの蒸気機関車「やえもん」はいつも田舎の駅から町の大きな駅までの客車列車を引いていた。

ある時、大きな駅で意地悪な電気機関車に馬鹿にされ、それを見ていたレールバスの「いちろう」と「はるこ」にも笑われて怒ってしまう。

怒ったまま帰るやえもんは、煙突から火の粉を飛ばしてしまって…。



キャラクターとモデル機編集

キャラクター名原作モデル影絵D51の大冒険3D映画
やえもん国鉄7100形蒸気機関車(?)国鉄D51形蒸気機関車
  • 国鉄860形蒸気機関車
  • 国鉄2100形蒸気機関車
  • いちろう
  • はるこ
国鉄キハ02・03形気動車(?)国鉄キハ02・03形気動車(?)該当キャラ無し該当キャラ無し
新しい電気機関車国鉄EF58形電気機関車国鉄旧型電気機関車(?)該当キャラ無し該当キャラ無し
意地悪な電気機関車国鉄EH10形電気機関車国鉄旧型電気機関車(?)該当キャラ無し該当キャラ無し
特急淡緑5号塗装の国鉄EF58形電気機関車牽引特急「つばめ」・「はと」不明該当キャラ無し該当キャラ無し

他モブ機関車として、国鉄DD12形ディーゼル機関車等も登場する。


他媒体での展開編集

映像化編集

「きかんしゃやえもん」の映像化は数回行われている。

影絵版(NHK版)編集

NHK教育テレビ『こどもにんぎょう劇場』の枠で放送されていた。初公開は1970年とされている。

作中のキャラクター・ナレーションすべてを声優の熊倉一雄氏一人が担当している(ただし、歌パートで客車が歌うのだが、これは今作のコーラスを担当した日本合唱協会が歌っている)。

話の大まかな流れはやや差異(やえもんが町に向かう途中に踏切で待っていた手を振る子供達を見て機嫌を直すシーンが追加、いちろうとはるこが意地悪な電気機関車に挑発されたやえもんを見て笑ってしまった事を謝罪しに来るシーンがカットされている等)はある他、車両のモデルも変更が加えられているが、後発作品と比べて内容のアレンジは少なく一番原作に忠実な映像化とも評される。


1988年にVHSで販売されたことがあるが以降ソフト化はされていない。


脚本:若林一郎

音楽:宇野誠一郎

語り:熊倉一雄


なお、現在確認できる映像は、何回か映像化されたうちの一本らしい。

というのも当時のNHKで録画に使用していた2インチVTRテープは約100万円はする高価で大型のものだっため、放送終了後にテープを使い回して別の番組を上書きするといったことが常態化していたためである。

NHKは民放と比べて番組のアーカイブ化が始まるのが遅く、NHK連続テレビ人形劇では1982年から始まった『人形劇三国志』以前の作品は一部しか映像が残っていないものがほとんどである。


現存する映像では走行シーンの多くとそれ以外のシーンで画質が異なっており、おそらくは

  1. 録画される以前の残存映像を組み合わせた
  2. 該当シーンのみ別の撮影方法で撮った

と考えられる。


影絵版の制作に携わった劇団かかし座を紹介する記事があるのだが、その記事(URL)のやえもんの紹介画像のやえもんのモデルが現存する映像と異なり国鉄150形蒸気機関車ベースのモデルとなっている。

これについては初回上演時には150形蒸気機関車をもとにしたやえもんが使われたか、単純に記事側が混同した可能性が考えられる。


「きかんしゃやえもん D51の大冒険」版編集

SLブーム真っただ中の1974年3月16日に「東映まんがまつり」枠の1本として公開されたアニメ作品。

やえもんが当時の人気機種であるD51に変更されたほか、SL好きの少年正との交流、やえもんの運転を補佐するネズミのチュー兵衛一家、切符泥棒のギャング団との対決など大幅なアレンジが行われている。


一方でアニメ作品でありながらD51を始めとする鉄道車両の実写映像が多く挿入されるため、鉄道ファンの間では貴重映像として評価が高い。


脚本:山本英明松本功

演出:田宮武

音楽:渡辺岳夫

作画監督:大工原章

美術監督:辻忠直

実写撮影:杉山君弘


やえもん:熊倉一雄

正:里見京子

リンリン(ネズミの女の子):平井道子

タンタン(ネズミの男の子):丸山裕子

キング(犬):滝口順平

チュー兵衛(ネズミの父):富田耕生

ゴン太(EF58形電気機関車):柴田秀勝

ジャンボ(ギャングの親玉):八奈見乗児

エントツ(ギャングの子分):山田俊司

キッド(ギャングの子分):田の中勇

チュー子(ネズミの母):高橋和枝

ハイハイ(DD51形ディーゼル機関車):山下啓介

マッハ(0系新幹線):千々松幸子

イサム(ガキ大将):山本圭子

ドラ(ドラ猫):峰恵研

ハナウタ(通勤形電車):つかせのりこ


主題歌「きかんしゃやえもん」

作詞:浦川しのぶ

作曲:渡辺岳夫

編曲:松山祐士

歌:水木一郎、ロイヤルナイツ


3D映画版編集

2009年10月3日「とびだす!3D東映アニメまつり」で公開された3Dアニメ作品。

主題歌はアニメ映画版の挿入歌「頑張のうた」を再録。やえもんのキャラクターデザインが860形あるいは2100形に似た原作に近い造形になるなど原作とアニメ版を組み合わせたような作風になっている。

ネズミの兄弟がオンボロ機関車のやえもんを動かそうと奮闘する原作・アニメ映画版とも異なるオリジナルストーリーとなっている。

やえもんの仲間として登場する鉄道車両も現代風になっており、通勤電車は209系500番台とE231系500番台を、新幹線はN700系を模した姿になっている。


監督:貝澤幸男

脚本:小山真/小山高生

音楽:高木洋

CG監督:新井啓介


やえもん:地井武男

マウ(ネズミの兄):竹内順子

スー(ネズミの妹):菊池こころ

カー助(カラス):二又一成

サマ(ドラ猫):松井菜桜子

ノソ(ネズミの長兄):菊池正美

チョビ(ネズミの末っ子):金田朋子

ディム(DE10形ディーゼル機関車):石井康嗣

フック(操重車):前田剛

通勤電車():埴岡由紀子

通勤電車(黄緑):一色まゆ

通勤電車(黄色):道添愛美

新幹線:大林洋平小嶋一成

ナレーション:土井美加


主題歌「頑張のうた」

作詞:浦川しのぶ

作曲:渡辺岳夫

編曲:松山祐士

主題歌アレンジ:高木洋

歌:ヤングフレッシュ


紙芝居編集

1960年ごろに紙芝居として作られたものが存在するようだ。


Web上で確認できる情報だとやえもんのモデルが国鉄5形蒸気機関車で、いちろうとはるこのモデルが国鉄キハ01形気動車(キハ02・03形と準同型だが前面窓の枚数が異なる)となっているが、展開としては原作と変わらないと思われる。


なお、影絵版との関連性は不明だが、カウキャッチャーが付いたやえもんは紙芝居版と影絵版の共通した所で、もしかすると影絵版の参考資料として紙芝居版が入っていたのかもしれない。


童話レコード編集

詳しい情報は不明だが、ネットにてきかんしゃやえもんの録音レコードと思われる動画が存在することが確認できる。


内容から声優に影絵版で声を担当した熊倉一雄氏がやえもんとナレーションを担当した他、他のキャラクターは別声優が行った様子である。

おおよそ原作に忠実なストーリーになっている。


余談編集

やえもんのモデルは国鉄150形蒸気機関車だが、作中では400形蒸気機関車に近い形で描かれている。作画を担当した岡部は「鹿島参宮鉄道で使用されていた機関車をデフォルメして描いた」と語っている。厳密には鹿島参宮鉄道で使用されていたのは派生形式の870形。

「やえもん」という名前は阿川がアメリカに行った際にカリフォルニア州で出会った日本人移民の名前から取ったとされる。


関連動画編集

一個人がきかんしゃトーマスに似せて制作した作品編集

解説動画編集


関連タグ編集

きかんしゃトーマス:本作と似た作風の鉄道擬人化作品。

超兄貴:ボスの1体にヤエモンというSL風のキャラが登場する。続編の愛・超兄貴では強化され、キクモンに改名して再登場。

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