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類似作品→きかんしゃやえもん

概要

『きかんしゃトーマス』とは、イギリス牧師であるウィルバート・オードリーによる絵本『汽車のえほん』シリーズをベースとするテレビシリーズ作品。

1984年の第1シリーズから2008年の第12シリーズまでは鉄道模型を使った人形劇で、2009年の長編第4作から2020年の第24シリーズまでをCGアニメーションで映像化され、2021年の第25シリーズからは2Dアニメーションとして製作。最初に登場したトーマスキャラの総数は13台で、2024年1月時点でのキャラ総数は201台である。

また、2025年で生誕80周年を迎える予定である。

幼少時代、『ポンキッキ』で本作を観ていた方々(主に20代から30代のお方)なら、このOPを聞くだけで分かる方も多いはず。

歴史

『きかんしゃトーマス』誕生前史

『きかんしゃトーマス』の歴史を語る前にそれ以前に2つ計画された『汽車のえほん』の映像化計画について解説する。

BBC版

1953年、汽車のえほんの出版社であるEdmund Ward, Ltd. (以下、エドモンド・ウォード社)にBBCからの手紙が届いた。手紙には2日間で「3だいの機関車」2話分のテレビ放送を検討している節が書かれていた。その手紙には他にも放映権料に1分放送につき1ポンド支払う事、10分放送のために内容を脚色する事、イラストに描かれる機関車に近いOOゲージの模型を使用する(ただし完全に同じ物とは限らない)事が書かれていた。汽車のえほんの編集者のエリック・マリオットは、完璧主義のウィルバート・オードリーの反対を防ぐために使用する模型をエドモンド・ウォード社で改造することを伝えて映像化することになった。エドモンド・ウォード社が改造した模型はウィルバート・オードリーの納得できる姿にBBCで渡され、絵本の中の1話「なさけないヘンリー(原題:The Sad Story of Henry)」の映像化が行われた。しかし、撮影方法が生放送形式で、スタッフが意図しない脱線が発生してスタッフの大きな手が機関車を線路に戻したり、「3だいの機関車」には登場しないジェームスの登場・作品の大幅な着色と言った不手際を連続させてしまう。

この放送を見ていたウィルバート・オードリーは放送に対して不満を持ち、その事が新聞記事に掲載されたことで同情したファンから怒りの手紙がBBCに送られる事態となり、第2回の放送は中止となった。

ウィルバート・オードリーはその放送について次のように語っている。

「やがてナレーションがはじまり、機関車が画面に向かって走ってきた。すると、スタッフがポイントを切り替えるのを誤って、機関車は見事に脱線してしまったんだ。すると、なんと巨大な手が画面に現れて機関車を線路に戻したんだよ!」

BBCは代償としてエドモンド・ウォード社が撮影施設を用意するのであれば再度映像化するとエドモンド・ウォード社に伝えたが、エドモンド・ウォード社が申し出を断ったため再度映像化される事はなかった。

制作当時の記録は、ジェームスの模型の写真などが残されているのみで、その「なさけないヘンリー」の映像は既に現存しないものと見られる。

ミュージカル版

1973年、幼少期から『汽車のえほん』のファンだったアンドリュー・ロイド・ウェバーがミュージカル風のテレビアニメーション製作を提案。アンドリュー・ロイド・ウェバーはウィルバート・オードリーと出版社取締役のスタンリー・ピッカードを交流を深めたものの、アメリカ市場からの資金調達のために『汽車のえほん』の出版権の譲渡を迫ると対立し、ウィルバート・オードリーからアメリカに作品が流通して則られると作品が汚されるとして猛反発を食らうものの、契約は成立した。しかし、アンドリュー・ロイド・ウェバーはミュージカルの『エビータ』の成功でそちらに注力するため、最終的に計画は断念された。

ちなみにアンドリュー・ロイド・ウェバーは汽車のえほんをかなり心残りに思ったのか、『エビータ』成功の1年後にThe Really Useful Groupと言う会社を設立(「Really Useful Engine(役に立つ機関車)」からフレーズを取ったと予想される)したり、機関車をテーマにした『スターライト・エクスプレス』をミュージカルとして公開したりしている。

ウィルバート・オードリー存命時のブリット・オールクロフト社体制の『きかんしゃトーマス』

放送権獲得

1979年、ブリット・オールクロフトは鉄道文化のドキュメンタリー番組の制作の際、ウィルバート・オードリーとクリストファー・オードリーが執筆したイギリス蒸気機関車のガイドブックを見つけて読み、ウィルバート・オードリーにドキュメンタリー参加を呼び掛けて、インタビューする事になった。ブリット・オールクロフトはインタビューに際し、『汽車のえほん』を拝読すると絵本の世界に入れ込み、TVシリーズ化を考案。

後日、ブリット・オールクロフトはウィルバート・オードリーにその事を話すとウィルバート・オードリーは過去2回の映像化の失敗から釘を刺す形で反対された。

しかし諦めきれなかったブリット・オールクロフトはテレビ放送権購入を出版社に交渉し、条件付きで交渉を成立させた。

パイロット版と第1シリーズ

テレビ放送権を取得したブリット・オールクロフトは製作方法を検討した。

案としてはセル画方式ストップモーション方式が検討されたが、前者は制作費が高く後者は製作時間が多大に掛かるため没となった。その頃ブリット・オールクロフトはかつてイギリスで放送された人形劇である『サンダーバード』製作に関わったデビット・ミットンに出会い、鉄道模型で撮影する方式を提案。しかしブリット・オールクロフトの夫のアンガス・ライトは高度な技術を要すると考えこの案には否定的だった。そんな時、モデルメーカーのピーター・イーブズが鉄道模型に「目を動かす装置」「煙を出す装置」「車輪を動かす装置」を組み込むことに成功した事で機関車はこの方式で行くことになった。一方、人間に関してはストップモーション方式で動かすことが検討されたが、予算面と機関車に拘るべきという考えから人形をただ置くだけのものに落ち着いた。

こうして1983年にパイロット版としてエピソードの一つである「あなにおちたトーマス(原題:Down the Mine)」が製作されて成功すると、他のエピソードも撮影され、このエピソードについても撮り直しが行われた。その後、車体番号が1のトーマスがヒーローに相応しいと言う理由から正式タイトルに『Thomas the Tank Engine & Friends』が採用されることになった。

一方声に関しては、ナレーターによる読み聞かせ方式に決まるが、理想の人材がなかなか見つからなかった。そんな時、テレビに元ビートルズリンゴ・スターが出演していて、それを見たブリット・オールクロフトは理想の声はリンゴ・スターだと考え、ナレーターにリンゴ・スターを採用した。これに関して、テーマ曲も作曲担当のマイク・オドネルがリンゴ・スターによる歌唱を想定し、「ミーン・ミスター・マスタード」をオマージュしたものが作られた(概要に貼られているお馴染みのあの曲である)。

こうして1984年、同年に起業したばかりの「ブリット・オールクロフト社」が『Thomas the Tank Engine & Friends』の放送を開始した。当初はリバプール訛りのリンゴ・スターが受け入れられないのではないかと言う意見も存在したが、結果は逆で、イギリス中で人気となり、多くの賞を受賞するほどに受け入れられたのである。

第2シリーズ

第1シリーズの放送から2年後の1986年、放送の成功から第2シリーズの製作が決定した。

第2シリーズの映像化には、原作で「人気」「奇抜さ」「当時の技術的に映像化が可能」の3つの条件が揃う話が選ばれることになった。ところが条件を絞った結果、原作のストックが足らないことが判明。一見すると、オリジナルの話を作れば問題ないだろうと思われるが、実は原作のみ映像を許可するという契約のためオリジナルの作品が出せないのである。そこで2代目の原作者であるクリストファー・オードリーにテレビ用エピソードの執筆を依頼し、問題を解決した(「More About Thomas the Tank Engine」「Thomas and the Missing Christmas Tree」がその時に書き起こされた作品である)。他にも一冊の絵本である『Thomas the Tank Engine annuals』に掲載されていた「トーマスのあたらしいともだち(原題:Thomas and Trevor)」も映像化されることになった。

一旦は解決したものの、撮影中だった「The Missing Coach(日本で未放送の為、日本語タイトルはなし)」が子供には分かりづらいとの判断で撮影中止となり、代わりに「More About Thomas the Tank Engine」収録の「トーマスとパーシーとせきたん(原題:Thomas, Percy and the Coal)」を追加で映像化する事が決定した。

第3シリーズ

1991年、第3シリーズの製作が決定したが、2点の問題が発生した。

  • ナレーターの交代

1980年代後半にアルコール依存症に悩まされていたリンゴ・スターは1989年にアルコール依存症から改善したことから音楽活動を専念することになった。

そのため、ブリット・オールクロフトは惜しみつつも降板させ、代わりのナレーターに後任候補だったマイケル・アンジェリスに任せることにした。

  • オリジナルストーリー

原作の枯渇と1988年にアメリカ進出した『Thomas the Tank Engine & Friends』市場浸透の観点から出版社にオリジナルストーリーの創作の許可をもらって草案が作られたが、それを見たウィルバート・オードリーは設定無視の物語に愕然とし、「ヘンリーのもり」を例に挙げ、森に近くを走ったり、独自の判断で路線上に止まったりする事は物語の舞台ではあり得ないし、製作者サイドが鉄道を知らずにリアリティーが無い作品を作ったことを自分に対する侮辱だと猛批判した。この意見はイギリスの新聞でも報道された。

それに対しブリット・オールクロフトは、視聴者第一に視聴者が楽しめる番組制作をしたと反論したとのことだが、『汽車のえほん』のファンの視聴者からは番組に対して非難が殺到する事態となった。

第4シリーズ

1994年初頭、第4シリーズの製作が決定。

従来のシリーズで培った技術で、従来では映像化が不可能だったノース・ウェスタン鉄道より規格が小さいスカーロイ鉄道の映像化が可能になった。そのお陰もあり第4シリーズでは、殆どの話が原作を元にした話となった。しかし、万人受けを狙ったステップニーを救助するオリジナル回の「ブルーベルれっしゃ(原題:Rusty to the Rescue)」は原作の現実味がない話だったため、現実さを作品の中で大事にしていたウィルバート・オードリーを幻滅させてしまった

ウィルバート・オードリー死去後のブリット・オールクロフト社体制の『きかんしゃトーマス』

第5シリーズ

1996年、当時の『汽車のえほん』の出版社であったHeinemann(ハイネマン)が児童書籍の販売権を売却し始め、『汽車のえほん』も対象になっていた。

1997年3月21日、『汽車のえほん』の初代原作者のウィルバート・オードリーが死去

これを機にブリット・オールクロフトは、所有権と著作権を取得し、出版権を「Egmont Publishing(エグモンド・ブックス)」へ移管させた。権利を取得したことによって原作を映像化する必要が無くなったブリット・オールクロフトは第5シリーズの製作を決定し、全話オリジナル回で放送を開始。

第5シリーズではストーリーコンサルタントとして慈善鉄道の「CHARITY RAILWAY CHILDREN(チャリティー・レイルウェイ・チルドレン)」の創設者のデビット・メイドメントを加え、彼は実話を元に物語を製作した。またブリット・オールクロフトは新奇さを求めて、従来の平凡な話を避け、アクションや急展開といった話を製作した。新キャラクターについては原作に登場しないオリジナルの登場車両を追加させるものの、人気が無かったキャラクターに関しては以降のシリーズでは出さない方針が採られた。

一方、『汽車のえほん』はテレビ版と設定が異なり、子供たちの混乱を招く恐れから「テレビ版の写真絵本の製作」「原作本の市場コントロールによる枯渇の実施」「大人向けに大判の全巻合本・高価な全巻BOXの流通の実施」「原作サイドが許可を取らないと原作を執筆できない処置」を実施した。

この処置は、原作『汽車のえほん』に対する冷遇であり、10年程『汽車のえほん』の新刊が発表されない事態を招いた。また大判の全巻合本・高価な全巻BOXも製作されたものの、新デザインの新装版はファンから不評を呼ぶ結果となった。

長編第1作

ブリット・オールクロフトは、『きかんしゃトーマス』の映画化を狙い本作の製作を実行した。

従来のナレーターによる読み聞かせから、キャラ別の声優起用・子供には難解なストーリーなどを盛り込んだ結果、興行的には失敗に終わり、2000年9月にはこの責任を負う形でブリット・オールクロフトは社長を退任した。

長編第1作の詳細については『きかんしゃトーマス魔法の線路』を参照。

第6シリーズ

2001年、第6シリーズの製作が決定。本シリーズでは道徳的な話に重点が置かれた。

この頃、「ブリット・オールクロフト社」改め「Gullane Entertainment(ガレイン社)」は、『きかんしゃトーマス』のノウハウを生かした、本作と関連性が無い建設車両の物語として『Jack & the Pack』の制作を計画していた。しかし2002年、「HiT Entertainment Limited(ヒット・エンターテインメント社)」がガレイン社と『きかんしゃトーマス』の権利を購入したことで、『Jack & the Pack』を本作のスピンオフシリーズとすることを決定。そのため、パイロット版と言える2話が第6シリーズの話として製作された。

2003年、ガレイン社の権限を失ったブリット・オールクロフトは退社し、『きかんしゃトーマス』の製作から身を退いたが、以降もオープニングにはテレビシリーズ原案として彼女の名前がクレジットされ続けている。

ヒット・エンターテインメント社体制の『きかんしゃトーマス』

第7シリーズ

2003年、第7シリーズの製作が決定。

グローバル展開を目指すヒット・エンターテインメント社の方針で機関車の仲間にそれまで少なかった女性の機関車のエミリーを追加。人間に関しても、従来は白人のみだったが、他の人種も描かれるようになった。

一方、物語の面では、この時期のイギリス国内の悲惨な鉄道事故を考慮して、大きな事故の描写は制限された。

その後、日本でも2005年にJR福知山線脱線事故を始め日本国内でも鉄道事故が相次いだ為か、当面の間、事故シーンがあるエピソードのBSフジでの放送を自粛していた。

本シリーズからはヒット・エンターテインメント社のスタッフが制作総指揮に加わったが、代わりにデビット・ミットンと言った従来のスタッフは第7シリーズを持って退陣した。

第8シリーズ

第8シリーズからは大幅に作品にテコ入れが行われることになった。

変更は以下の通り。

  • 尺を4分半から7分に変更。
  • 教養を従来より強化する方針に転換。
  • 極力、主人公であるトーマスを登場させる。
  • 撮影記録媒体を35mmフィルムからHDCAMに変更された。
  • ミニコーナーの追加。
  • 雨や雪と言った部分はCGの採用。
  • 主要キャラクターや一部キャラクターを除くキャラクターの登場の見送り。

以上のテコ入れは作品の雰囲気を良くも悪くも大きく変化させた。第8シリーズではその変化の違和感を減らすため、新キャラが登場せず、既存のスチーム・チームメンバーのみで話が作られた。

Jack & the Pack

第6シリーズでパイロット版と言える話が2話製作された『Jack & the Pack』の本格的な放送作品である。

全13話が製作された。

長編第2作~長編第3作

  • 2005年:長編第2作となる『みんなあつまれ!しゅっぱつしんこう』が公開される。
  • 同年:第8シリーズから取り入れた新フォーマットが定着したと判断したヒット・エンターテインメント社は第9シリーズの放送を開始。前シリーズと異なり、新キャラが登場している。
  • 2006年:従来の全26話から28話に増やした第10シリーズの放送が始まる。
  • 2007年:第11シリーズの放送が始まる。
  • 2008年:長編第3作にして最後の模型による長編作品となる『トーマスをすくえ!!ミステリーマウンテン』が公開される。

第12シリーズ

2008年5月、本作をCG制作に体制変更する事が新聞で発表された。

理由は制作費用や模型による表現方法の限界などが挙げられる。

それに先駆け、第12シリーズでは機関車の顔・人間・動物がCGで表現されるようになった。ただし、技術上合成が難しい部分は、従来の模型が使用された。

CGの制作はカナダのCG会社「Nitrogen Studios Canada, Inc.(ナイトロジェン・スタジオ)」が請け負った。第17シリーズにて別のCG会社に交代するまで担当することになる。

なお、本シリーズからシリーズの総話数が全20話に縮小された。

長編第4作~長編第7作

2009年からフルCGによる制作が開始された。

CG制作は第12シリーズと同様、カナダのCG会社「ナイトロジェン・スタジオ」が引き続き請け負っている。

  • 2009年:長編第4作にしてフルCGでは最初の作品となる『伝説の英雄(ヒロ)』が公開された。
  • 2010年:フルCG初のテレビシリーズの第13シリーズの放送が始まる。尺は7分から8分45秒になった。
  • 同年:長編第5作として『ミスティアイランドレスキュー大作戦!!』が公開された。
  • 同年:第14シリーズの放送される。
  • 2011年:第15シリーズが放送される。
  • 同年:長編第6作として『ディーゼル10の逆襲』が公開された。
  • 2012年:第16シリーズが放送される。
  • 同年:長編第7作として『ブルーマウンテンの謎』が公開。「ナイトロジェン・スタジオ」が携わった最後のトーマス作品。

長編第8作~第20シリーズ

2013年、制作体制の見直しが行われた。

まず、CG制作会社をカナダ・トロントの「Arc Productions(アーク・プロダクション)」に変更し、制作話数を20話から26話に増加、シリーズ構成にマガジンストーリーの執筆をしていたアンドリュー・ブレナーの採用、他の製作陣の一新、鉄道アドバイザーの復活が行われた。

そのため、作風がブリット・オールクロフト社時代に近づき、原作を尊重している部分が多く見られる。

mattel体制の『きかんしゃトーマス』

長編第12作~第24シリーズ

時は2011年4月に遡る。

2005年にエイペックス社に買収されていたヒット・エンターテインメント社だが、エイペックス社がヒット・エンターテインメント社の売却を開始した。その結果、アメリカの大手玩具メーカーのマテル社に買収されることになった。とはいえ、以前と変わらず、ヒット・エンターテインメント社による体制で本作の制作は続けられていた。

しかし、事態が変わったのは2016年3月の事であった。ヒット・エンターテインメント社を含むマテル傘下の子会社が統合される形で「マテル・クリエイションズ」が設立される。それにより、作品の制作はマテル・クリエイションズに移行されることになった。

一方、CG制作会社のアーク・プロダクションが破産したことで、破産と同時期に3D制作会社の「Jam Filled Entertainment(ジャム・フィルド・エンターテインメント)」をマテル社が買収し、「Jam Filled Toronto(ジャム・フィルド・トロント)」として支社化させ、CG制作はそちらに移行された。

制作途中、マテル社が国際連合との共同制作とするため主要キャラクターの男女バランスの調整やグローバル展開の強化を行うことを発表。そのため、第21シリーズでエドワードヘンリートビーがティドマス機関庫から独立する話が作られた。第22シリーズからは、新レギュラーの女性キャラの追加と舞台を世界に拡大・ナレーターの廃止など路線変更が行われた。

All Engines Go第1シリーズ以降〜現在

2020年10月、マテル社が本作の第25シリーズ制作および、カナダのアニメーション制作会社「nelvana(ネルバナ)」が制作を担当する形で2Dアニメーションに変更されることが発表された。また、2021年1月にはその新シリーズが『Thomas & Friends: All Engines Go』のシリーズ名(以下:AEGシリーズ)になることが発表。2021年9月からアメリカで放送開始された。

作品内容としては、『きかんしゃトーマス』をリブートしたものであり、原作『汽車のえほん』や過去シリーズの舞台設定である20世紀から大きく進んだ現代が舞台となっている。そのため、作中にタブレット端末など現代のアイテムが登場することがある。

また、従来の『きかんしゃトーマス』シリーズから、キャラクターのデザインが大幅にデフォルメされているのも大きな特徴で、登場する機関車が車体を激しく動かすほかに、ジャンプや走行中に方向転換する、煙突からの煙を利用してコミュニケーション行うという、これまでのシリーズでは見られなかった描写が多い。

また、2話毎に1曲、ミュージカル調の歌唱シーンが挿入されてる点も特徴の1つ。

再び担当声優が一新され、英米版ではトーマスなどのメインキャラクター(作中における子どもの機関車)役に、子役が起用されることとなった。

制作話数はAEG第1~2シリーズが52話ずつ、AEG第3~4シリーズが26話ずつとなっている。

  • 2021年:AEGシリーズ初のテレビシリーズとなるAEG第1シリーズが放送される。1話辺りの尺は歴代最長の10分半。
  • 同年:AEGシリーズ初の長編『めざせ!夢のチャンピオンカップ』が公開。
  • 2022年:AEG第2シリーズが放送される。
  • 同年、AEGシリーズ長編第2作『大冒険!ルックアウトマウンテンとひみつのトンネル』が公開。
  • 2024年:AEG第3シリーズが放送される。
  • 同年、AEGシリーズ長編第3作『The Christmas Letter Express』が公開。
  • 2025年:AEG第4シリーズが放送予定。

日本での歴史

フジテレビ時代

ひらけ!ポンキッキ』のコーナーを検討していた1980年代後半、フジテレビの関係者がイギリスに渡った時に本作の紹介される事があった。

この事をキッカケに交渉が行われ、その結果日本で放送が決まり、キャラ数や日本の状況からナレーターによる一人語りから各キャラ別に声優を起用する方針を取った。

日本での初放送は1990年10月4日(判明したのは2017年頃で、それまでは1990年4月6日が初回放送されていたというのが定説であった)から放送が始まり、番組が方針転換でリニューアルを何度か行っても引き続き、2007年10月の海外番組の放送版権返上で本作の権利を返上するまで放送が行われた。

シリーズは第1シリーズから第8シリーズまでが放送された。

なお、フジテレビ時代に放送されていた声優の多く(主に青二プロダクション所属、内海賢二滝知史のみ賢プロダクション)が『ウルトラシリーズ』、『ゲゲゲの鬼太郎』、ドラゴンボールシリーズ、『それいけ!アンパンマン』、『ちびまる子ちゃん』、『キテレツ大百科』、『ウルトラマンキッズ』、『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『プリキュアシリーズ』『ポプテピピック』『ONEPIECE』『仮面ライダーシリーズ』『スーパー戦隊シリーズ』等でも共演している。ちなみにフジテレビ版『きかんしゃトーマス』の声優陣はテレビ東京NHK Eテレ版(初代)の声優陣と他のアニメ作品と共演している。

またフジテレビ版放映中、戸田恵子堀川りょう森功至を始め一部の声優陣は独立して個人事務所を設立、中尾みち雄永澤菜教は他の声優事務所へ移籍(前者はフジテレビ撤退後で、後者は放送途中。ただし、永澤氏は2002年12月発売のゲーム『キッズステーション おしゃべりおえかき きかんしゃトーマスととなかまたち』でメイビスを10年ぶりに担当している)している。また、宮内幸平が1995年6月に死去したことにより、トップハム・ハット卿役は第5シリーズから青野武へと交代となった。

テレビ東京時代

2008年から『のりスタ』のコーナーとして放送されることが決定した。

引き続き各キャラ別に声優を起用する方針となったが声優と日本語版スタッフが一新されている。ゲスト声優を除き、青二プロダクションから81プロデュース所属声優へと変更された。但し納谷六朗のみ唯一81プロデュース以外のキャスティング(マウスプロモーション)である。『のりスタ』のリニューアルに従い、2011年で放送が終了した。

シリーズは第12シリーズを除く第9シリーズから第13シリーズまでが放送された。

NHK Eテレ時代

2012年4月8日より単独番組として放送が開始された。

シリーズは第14シリーズから第24シリーズまで放送された後、2022年4月にはこれまでに上映した長編作品やYouTubeチャンネルで公開されていた短編アニメーションをまとめたものが長編第17作『オールスター☆パレード』として劇場公開された。

声優に関しては基本的にテレビ東京時代の声優が引き続き担当することになったが、第16~24シリーズのサー・ハンデルピーター・サムなど一部変更されたキャラクターもいる。(サー・ハンデルは緒方文興樫井笙人に、ピーター・サムは加藤木賢志佐々木啓夫に交代)

第18シリーズの放送中に納谷六朗が死去し、トップハム・ハット卿役はその後田中完に引き継がれた。

また、81プロデュースに所属していた江原正士が青二プロダクションへ移籍と同時に、一部の声優が移籍やフリーランスとして独立して個人事務所を設立している。

『オールスター☆パレード』の上映後、2022年12月からはAll Engines Goが放送。AEGシリーズでは再び声優が一新されている。AEGシリーズは若手の声優が中心に起用されているが、長編のゲスト声優を除いて81プロデュース所属の声優で多く固められている点は今までと同じ。中には過去のシリーズで参加していた声優が役を変えて出演している例もある。

AEG第1シリーズは全52話のうち6話が日本では長らく未放送だったが、2025年3月28日にはその未放送だった6話が詰め込まれたものがAEG映画『ぼくのたいせつなともだち』として上映される。

登場キャラクター

汽車のえほんにも登場・のみ登場するキャラクターは汽車のえほんのキャラクター一覧

きかんしゃトーマスのみのオリジナルキャラクターはきかんしゃトーマスのキャラクター一覧

評価と批判

さて、『きかんしゃトーマス』の評価についてはどうなっているのだろうか?

簡潔に言うと、新作になる程評価が下がる傾向にある。

作品

各シリーズの評価について載せていく。

  • 第1・2シリーズ

評価が高く好評であった。

  • 第3・4シリーズ

一定の評価を得ているが、一方でオリジナル回(特に第3シリーズ『ヘンリーのもり』など)の影響で原作者のウィルバート・オードリーや『汽車のえほん』のファンからは批判が出ている。

  • 第5・6・7シリーズ

第1シリーズから製作に携わったデビット・ミットンらスタッフがオリジナル作品のみで手掛けたシリーズ。ある程度作風を維持したため、悪い評価はあまり聞かれない。

  • 長編第1作

後述の通り一部の国では高い評価を得ている長編だが、現地では突如1人語りから各キャラ別に声優起用へ変更したり、ストーリーが難解になった結果、興行収入で失敗しており酷評も受けている。

  • 第8シリーズ以降の模型時代(第8~12シリーズ、長編第2~3作)

作品のテコ入れで簡潔なストーリーになった事で賛否が分かれ、特に第8シリーズ以前からの視聴者からは作風の違いから否定的な声もある。

その中にはキャラクター描写の一部が不自然だったり露骨にキャラ崩壊している話も多く、特に第10シリーズ『エドワードのしっぱい』は「模型時代最悪のエピソード」と言われたこともある。

  • ナイトロジェン・スタジオ時代(第13~16シリーズ、長編第4~7作)

話の内容に関しては第8シリーズ以降の模型時代とおおむね同じ評価だが、模型からCG体制に移管した事でCG化に対する賛否が分かれている。

  • アーク・プロダクション時代(第17~20シリーズ、長編第8~12作)

第8シリーズ以降の模型時代とナイトロジェン・スタジオ時代の評価を引きずってきたが、第17~20シリーズは原作を尊重したり、模型時代では映像化が困難だったアールズデール鉄道の登場で高い評価を得ている。

  • ジャム・フィルド・トロント時代(第21~24シリーズ、長編第13~15作)

第21シリーズではアーク・プロダクション時代とほぼ同等の評価を得ていたが、このシリーズから機関車が車体を揺らし始める描写に対しては賛否が分かれていた。

そして第22シリーズから突如メインキャラクターの降格、ソドー島以外の舞台の登場、ナレーターの廃止などが行われており、結果として従来のファンから批判を多く集めてしまう事になった。

  • ネルバナ時代(AEG第1~4シリーズ、AEG長編第1~3作)

2020年10月のマテル社の発表がされた時点で、2Dアニメーションに変更され、キャラデザや作風自体も大幅に刷新されたことに対し、以前からマテル社やHIT社(第8シリーズ以降)の製作したシリーズに不満を持っていたファンは元より、現行のシリーズを寛容に見ていたファンからも批判が殺到。ジャム・フィルド・トロント時代と同じかそれ以上の批判を呼ぶ事に。

ここでフォローをすると、ネルバナ時代の長編作品の一つである『めざせ!夢のチャンピオンカップ』は、2023年のキッズスクリーンアワードプレスクール番組部門のベストテレビ長編賞に『ミッキーミニー クリスマスにねがいを』等と共にノミネートされている(参考)。

日本での評価

基本的には上記の評価と変わらないが、日本版は他国版と異なり、第1シリーズの頃からナレーションの1人語りではなく各キャラ別に声優を起用しているため、以下のように少し異なる。

  • フジテレビ時代(第1~8シリーズ、長編第1作)

第1シリーズ~第7シリーズは一貫して高い評価を維持しており、第8シリーズは多少賛否が分かれているが放送当時は大きな批判は無かった。

  • テレビ東京時代(第9~11シリーズ、長編第2~4作、第13シリーズ)

主に声優の変更や第8シリーズからされていた作品のテコ入れで当時はとくに賛否が分かれていた。

  • NHK Eテレ時代(第14~24シリーズ、長編第5~17作、AEG第1シリーズ以降)

テレビ東京時代とおおむね変わらない評価だったが、第17~20シリーズで原作を尊重した作風になってからは声優の変更に対する賛否はあまり見られなくなった。ただし第22シリーズのリブートに対しては現地と同じような賛否がある。

AEGシリーズでは作風の大幅な変化で再び賛否両論を招いている。SNSでは突然の作風の変化に伴い、久しぶりに見た視聴者が困惑する例も多い。

なお、AEGシリーズは現地では尺が10分半あるが、日本では全体の放送時間が20分であるため1話ごとに1分前後のカットが施されており、各話おおよそ9分半~9分45秒となっている。

制作会社

本作の製作はブリット・オールクロフト社、ヒット・エンターテインメント社、マテル社と変化していっている。

ブリット・オールクロフト社、ヒット・エンターテインメント社に対する評価は特に強く言われないので省略するが、一方でマテル社に関してはファンからの賛否が大きく分かれていて、ブリット・オールクロフト社時代のシリーズが好きなファンからは批判が多い。

マテル社とはアメリカに本拠を置く大手の玩具メーカーで、バービー人形の販売元でもある。

本作の作風に関してはジャム・フィルド・トロント時代やネルバナ時代に記した通り、従来のファンから批判が殺到する事態を複数回引き起こしている。

だが、マテル社の評価が従来のファンから良くないのは作風の変化にとどまっておらず、以下にマテル社の企業問題点が見られる。

  • 製作関係者

本作に対する否定的な意見に対し、マテル社の制作関係者は「本作が嫌なら旅番組を観ればいい」と作品を軽視するような発言をしたため、マテル社制作の本作に否定的な意見を持つファンの怒りをさらに買ってしまう結果となった。

  • 玩具

本作の玩具製作はマテル社の子会社であるフィッシャー・プライス社が担当しているが、2017年に『Wooden Railway』(日本での名称は『木製レールシリーズ』)を終了させ、代わりに『Wood』と言う後継商品を販売開始する。しかし、その『Wood』では木目を所々に大きく残す中途半端とも言える姿で販売されたためファンからは批判が。後に完全な塗装を施したリニューアル版を販売することになった。

留意すべき点

このようにシリーズを重ねる度に作品の方針転換によってファンからの批判が強く、作品評価が下がりつつある『きかんしゃトーマス』であるが、作品が第1シリーズの開始から約40年にも及ぶ長期コンテンツとなったからには、大小問わず時代や情勢に応じた作風の変化(制作コスト削減のためにCG制作へ変更、キャラクターの男女比率の均等化による新キャラクターの投入および一部メインキャラクターの降格など)はほぼ避けられないのは致し方ないこととも言えるだろう。

また、上述したマテル社の作品軽視とも取れる企業態度など、真っ当に批判すべき点がある一方で、どのシリーズ、特に評価が低いとされているジャム・フィルド・トロント時代やネルバナ時代のシリーズも全部が全部悪いという訳ではなく、そのシリーズならではの光る点も何かしら存在している。(第22シリーズ『かしゃをさがせゲーム』など)

加えて、ファンからの批判が強い中でも純粋にその作風のシリーズを好み、楽しんでいる視聴者も一定数いることは念頭に置くべきである。実際、『魔法の線路』は現地では評価が低く興行不振だった事に対し、日本国内では『トーマス』初の映画化で公開前から大きく話題になっていたことが手伝ってか、公開期間を延長する程の大ヒットを収めている。

そのため、「評価の高い特定のシリーズだけしか認めず、それ以外のシリーズやそのファンを否定する」や「実際に視聴もせずに、他者の意見や世間の風評だけでシリーズの評価を決定する」などは当然ながら言語道断であり、それらは制作に携わったスタッフの方々や、そのシリーズに愛着を持つファンに対して失礼に当たる行為であることを忘れてはならない。

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