車両概要
2000年より新製・投入が開始されたJR東日本の首都圏における電車の標準形式である。通勤形・近郊形を包括した「一般形電車」として設計されているが、より通勤形に近い形態である(グリーン車と6ドア車を除き4ドア、過半数がロングシート)。
開発当時首都圏には大量の103系・113系・115系が残されておりその置き換えに迫られ(実際、開発中には中央・総武緩行線で車両故障が相次ぎニュースで取り上げられる程問題視され、急遽209系500番台が先行投入されることにもなった)、209系とE217系で培ったノウハウを生かし、更なる省エネルギー化とコストダウンを目指したのが本形式である。
本形式のコンセプトは関東地区の他鉄道事業者にも影響を与え、同一あるいは一部機器を共通化させた新車を大量導入し、旧型車の一斉置き換えを実現させた事業者も少なくない。
また、本形式の登場がきっかけで日本鉄道車輌工業会が新たに「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」を制定し、以降私鉄・JR問わず一般型電車はこのガイドラインに沿った設計がなされて登場するなど、影響力の高さは計り知れないものがある。
2001年鉄道友の会ローレル賞受賞。
最大の特徴は「TIMS」の採用。
いわゆる車両制御伝送システムであり、従来運転台から機器毎に一本ずつ指令線を引き通していたのを、4本の基幹伝送ケーブル(通信線)に集約して、ネットワーク通信のようにドア開閉・案内表示・空調制御・加速/ブレーキといった指令情報を個別にパケット化してシリアル伝送する仕組みに移行したものである。また、統一的な機器管理が可能であることを活かして、機器毎の動作回数の記録・編成統括電空協調制御(編成全体で回生ブレーキと空気ブレーキの負担割合を配分できる)の採用・各種検査(ブレーキ試験など)の自動化といった機能も実装された。
209系でもこうした取り組みは行っていたが、E231系からは保安ブレーキの指令線を除きほぼ全てTIMSからの車両制御に移行し、引き通し線の本数を大幅に削減して配線重量・製造/保守コストの低減を実現している。運用面においてもモニタリングした車両情報の活用や書き換えの容易さ(転属にも容易に対応できる)など、非常にメリットが大きい。
ドアエンジンについては新たにリニアモーター式も本格採用されている。
近年は電装品の半導体が寿命であることもあり機器更新が進められている。
路線に応じて多数のバリエーションが存在する。
0番台
中央・総武緩行線用、常磐快速線用、武蔵野線用がある。(中央・総武緩行線の中間車は4M6Tから6M4Tに変更するため八高線用の編成短縮で発生した4扉車Mユニットを10連6本に組み込み継続使用し、6扉T車は全廃されている。)
現在の運用範囲
中央・総武線用
常磐快速線用
武蔵野線用
※むさしの号
※むさしの号・しもうさ号(別所信号場〜与野)
- 武蔵野線(西浦和支線):武蔵浦和〜別所信号場
※しもうさ号
※むさしの号
※しもうさ号・むさしの号
過去の運用範囲
中央・総武線用
- 中央快速線:三鷹〜立川
※早朝・深夜のみ
500番台
山手線用として登場、中央・総武緩行線へ転用。量産車として編成単位で室内ディスプレイモニタが設置された。
現在の運用範囲
- 中央・総武緩行線:三鷹〜御茶ノ水〜千葉
過去の運用範囲
- 山手線:品川〜田端〜品川
- 中央快速線:三鷹〜立川
※早朝・深夜のみ
800番台
東京メトロ東西線直通用。東葉高速鉄道東葉高速線には乗り入れない。
現在の運用範囲
900番台
先行試作車で、製造当初は209系950番台を名乗っていた。過去には中央・総武緩行線で運用されていたが、機器更新などをして、武蔵野線に転属し運用。6扉T車は転用時に廃車となっている。
現在の運用範囲
- 武蔵野線・京葉線:府中本町〜西船橋〜東京/海浜幕張
- 武蔵野線(国立支線):新小平〜国立
※むさしの号
- 武蔵野線(大宮支線):西浦和〜別所信号場〜与野
※むさしの号・しもうさ号(別所信号場〜与野)
- 武蔵野線(西浦和支線):武蔵浦和〜別所信号場
※しもうさ号
- 中央快速線:国立〜八王子
※むさしの号
- 東北貨物線:与野〜大宮
※しもうさ号・むさしの号
過去の運用範囲
- 中央・総武緩行線:三鷹〜御茶ノ水〜千葉
- 中央快速線:三鷹〜立川
※早朝・深夜のみ
3000番台
八高線・川越線用の4両編成で、0番台の転用改造車。抜き取ったM車2両は三鷹に残留する編成に転用し、T車は廃車としたうえで2M2Tに組成変更したうえで半自動扉スイッチを装備し転用。
現在の運用範囲
※南古谷〜川越間は川越車両センターの出庫便のみ。
近郊タイプ
1000番台ほか。寒冷地対策が施されているほか、先頭車の衝撃吸収構造強化、セミクロスシート車及び2階建てグリーン車が投入される等の特徴がある。車両構造により番台が多岐にわたっており、なかには8500番台というとんでもないインフレナンバーまで存在する。初期車は仕様が固まっていなかったのか編成や室内設備に見劣りする部分がある。
東海道・東北本線系統の列車線にて運用し、一部はJR東海に直通する。
現在の運用範囲
- 東海道本線:東京〜熱海〜沼津
- 伊東線:熱海〜伊東
- 東北本線(上野東京ライン・宇都宮線):東京〜上野〜宇都宮
- 高崎線:東京〜大宮〜高崎
- 上越線・両毛線:高崎〜新前橋〜前橋
- 湘南新宿ライン:大宮〜新宿〜大船
- 横須賀線:西大井〜大船〜逗子
※湘南新宿ライン系統のみ
過去の運用範囲
性能
編成 | 11両(6M5T) 10両(4M6Tまたは6M4T) 5両(2M3T) 4両(2M2T) |
---|---|
営業最高速度 | 120km/h |
設計最高速度 | 120km/h |
起動加速度 |
|
減速度 | 4.2km/h/s(常用最大)・4.5km/h/s(非常) |
全長 | 20,000mm |
全幅 | 2,950mm(800番台は2,800mm) |
全高 | 3,980mm |
車体材質 | ステンレス |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V(架空電車線方式) |
主電動機 | 三相かご形交流誘導電動機(出力95kw) |
駆動装置 | TD平行カルダン駆動 |
歯車比 | 99:14=7.07 |
制御装置 | IGBT素子VVVFインバータ制御(1C4M 2バンク・ベクトル制御) |
台車 | 軸梁式ボルスタレス台車 |
制動方式 |
|
保安装置 | ATS-Sn、ATS-P、D-ATC(山手線)、ATC-10(東西線) |
製造メーカー | 東急車輛製造・川崎重工業・新津車両製作所 |
関連イラスト
0番台
500番台
800番台(地下鉄タイプ)
3000番台
近郊タイプ
E231系をベースとした私鉄車両
関連タグ
209系 E217系 E233系 E331系 E531系 E235系