概要
719系や701系では置き換えきれなかった国鉄型車両を置き換え輸送の改善を図るため、JR東日本が2007年より仙台近郊の路線に投入した交流一般形電車。のちに719系をも置き換えるため1000番台が増備された。
構造
営業最高速度 | 110km/h |
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設計最高速度 | 120km/h |
起動加速度 | 2.2km/h/s |
減速度 | 4.2km/h/s(常用最大、非常) |
歯車比 | 1:5.93 |
駆動方式 | 平行カルダン駆動・TD継手方式 |
主電動機 | かご形三相誘導電動機・1時間定格出力125kW MT76 |
制御方式 | IGBT素子VVVFインバータ制御 CI14形 |
制動方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ・直通予備ブレーキ・抑速ブレーキ・耐雪ブレーキ・純電気ブレーキ |
台車 | 軸梁式ボルスタレス台車 DT72形・TR256形 |
製造所 | 川崎重工業、東急車輛製造、総合車両製作所 |
車体
前面に貫通扉を持つ軽量ステンレス車体で、片側両開き3ドアでデッキ無車体なのは701系と同じだが拡幅車体を採用。前面は貫通路以外はFRP部材でカバーされる。行先表示器は貫通路上に3色LEDの物が設けられ、701系の物より大型になり見やすくなっている。前照灯(HID灯、ディスチャージランプとも)と尾灯(LED)は左右の前面窓内に収納。
他の新系列電車と同様、製造メーカーによる仕様の違いを許容しており、東急車両製と川崎重工製では車体の構造が異なる。東急車両製は従来の骨組み工法を改良したもの、川崎重工製は鉄板をプレスして骨組みを廃した「2シート工法」を引き続き採用した。また川崎重工製は東急製と比較し老朽化の進行が速い傾向があるものの、本系列では厳しい東北の環境に適応させるべく外板を厚くしている関係から他形式と比較して状態が良い。
大きな特徴は、低床ホーム対策として大胆にシャコタン化した車体であり、他に例の無い異型なシルエットを形作っている。
東北地方には客車向けの低床ホームが多く、そのような線区向けの車両は従来では電車・気動車問わず扉部分にステップを設けていたが、バリアフリーの観点から、E721系では床面高さを思いきり下げることでステップを廃した。そのため、701系と併結すると車体裾の高さがかなり異なるデコボコな編成が出来る。このシャコタン車体実現のため、後述の台車や床下機器、配線や配管にかなりの工夫がなされている。
しかし、他形式(主に701系)との併結運転のため貫通扉の高さは従来車両に合わせており、客室と貫通路の間に18cmの高低差がある。
後述する1000番台では4両編成化のため新たに中間車が設定されたが、先頭車の寸法に準じているため車端部の長さと窓の幅が前後で異なり、扉の配置が全体に偏っているのが分かる。
車内
片側3扉・デッキ無の客室にセミクロスシートを有し、扉間にボックスシートが片側2区画ある。後述する磐越西線の快速「あいづ」用の指定席車両は後の改造によりクハのトイレ寄りの区画にリクライニングシートを4列備える。
扉上の案内表示器はE233系のようなLCDモニタではなく1行の3色LEDである。
床面高さは思い切り下げられているが、屋根の高さは一般的な車両に合わせているため、結果として天井が11cm高くなった。
前述の通り、客室と貫通路の間に高低差があるため、客室と運転室の間にステップが設けられており、乗客が通る際につまづかないようLEDライトが付けられ注意喚起している。
仙台空港アクセス線で運行される500番台とSAT721系では空港利用客のためにクモハに荷物置き場が設けられており、その箇所の窓が無い。
台車
JR東日本の新系列車両に準じた軸梁式ボルスタレス台車だが、床面高さ低下のため側枠中央部を思いきり下げ、振り子式台車から振り子装置を取ったかのような曲がりの大きい凹型の台車枠を持つ。それに直径810mm径の小径車輪を装着する。
その他(機器等)
主変換装置はIGBT素子を用いたコンバータ+VVVFインバータで、1基で2つのモーター制御する1C2M方式。
パンタグラフはシングルアーム型で、折り畳み高さを低くし仙山線でも走れるようにした。
モニタ装置はE231系やE233系のTIMSではなくMONを採用し、MON16形を搭載。
番台区分・その他
JR E721系0番台
通常仕様で2両固定編成。44編成88両が製造された。
なお、東日本大震災において0番台のP1編成とP19編成が被災し、廃車除籍・解体となった。一部はJR東日本の社員研修施設に、新潟県中越地震で被災し脱線した200系(とき325号)などと共に保存されている(一般には非公開)。P1編成はトップナンバーであった。
また、磐越西線の快速列車「あいづ」に使われる特別仕様車(指定席設置)やワンマン運転用に新造された車両、ワンマン対応改造車、さらには後述する500番台に改造されたものなど、バリエーションに富む。
JR E721系500番台
仙台空港鉄道との直通運転用の装備を持つ。2両固定編成。
主に仙台空港アクセス線で運用される。4編成8両が製造され、のちに0番台から改造され編入した編成が1本追加された。
JR E721系1000番台
719系の置き換え用として2016年以降に導入されたグループで、19編成76両が製造された。4両固定編成へ変更されており新たに中間車が設定された。
0番台と同じく東北本線、常磐線、仙山線で運用されるが、車体の赤い帯が桜色になっている。
仙台空港鉄道 SAT721系
500番台とほぼ同じ仕様で仙台空港鉄道が保有する。2両固定編成。2両編成3本が仙台空港アクセス線などで運用される。
青い森鉄道 青い森703系
形式が「703」となっているが、E721系とほぼ同一仕様。青い森鉄道線の運用増で2両編成2本が2014年に新製された。
阿武隈急行 AB900系
阿武隈急行が8100系の代替用として2019年より導入している車両。細部が異なるもののE721系をベースとしている。形式の由来は「阿武急」の語呂合わせ。
2両編成10本が製造される予定で、車体色は赤・青・緑・黄・桃の5色。2022年現在このうち青・緑・黄が1本ずつ導入されている。