概要
老朽化・陳腐化し始めた首都圏の201系や205系、211系の置き換え用として、2006年から投入されたE231系の改良型。
本形式では主要機器の二重化を行い、車両の信頼性を向上させて輸送障害の低減を図った。制作に際しては事前に利用者アンケートを行い、そこに寄せられた意見を反映させている。
一番分かりやすい所としては座席のクッションにばねが入り、座り心地が従来車よりも向上した点だろう。
車体構造はJR福知山線脱線事故を踏まえて、軽量ステンレスを使用しつつも強度を向上させている。また、JR東日本の車両では初めて行先表示にフルカラーLEDが採用された。
配備される線区が増える度に番台が増えているが、頭一桁の数字から投入路線が判別可能となっており、E231系よりはわかりやすい番台区分となっている。そしてこれまでの車両では、客用ドアの外側だけカラー帯を配していなかったが、このE233系では線区に合わせた色の帯がドアの所にも塗られ、編成の先頭車から最後尾車までラインカラーが丸一本繋がることとなった。
先述の通り、首都圏を走る国鉄形車両の多くを置き換えるために、かつての103系を彷彿とさせる勢いで様々な路線に増備が進み、総製造両数は3297両とJRグループの新規形式では最多両数を誇り、日本の鉄道車両全般でも103系に次いで2位となる(ただし事故廃車が10両存在するため、103系同様これらすべてが同時に在籍したことはない)。
蛇足だが、当初の計画では中央・総武緩行線や武蔵野線なども導入先として検討されていたが、リーマンショックの影響などでそれらの路線への導入には至らなかった。
0番台
201系を置き換えるため、中央線(中央快速線)に2006年12月から投入が開始された。帯は中央線の伝統であるオレンジバーミリオンを採用。豊田車両センターに10両貫通のT編成42本と4両+6両分割のH編成17本、青梅線・五日市線用の6両編成11本、4両編成8本(全688両)が製造された。他線区のE233系とは前面帯の配置が異なり、先に投入された常磐線向けE531系に近い。
中央快速線へのグリーン車の導入が決定したため、4号車にトイレが設置されることになり、T編成では車両の組み換えおよび補助電源装置の強化が行われている。グリーン車の第1陣は2022年7月に登場し、中央線の混雑に対応するため扉が両開きになっており、東京駅での折り返しをスムーズにするため座席の自動回転装置が設置されているのが最大の特徴。
製造された全688両のうち、青梅線・五日市線用の6両編成1本(ラストナンバーの青670編成)は、2017年に南武線へ転属。元の番号に「8500」を足して8500番台となった。
2020年6月には12年ぶりにT71編成が増備されたが、4号車にトイレが設置されていないことから、グリーン車組み込み後の動向がすでに注目されている。
1000番台
京浜東北・根岸線用に2007年12月より投入開始、酷使により老朽化していた209系を置き換えた。さいたま車両センター(旧・浦和電車区)所属、10両編成83本(全830両)を投入。なお、当初は6扉車も計画されていたが、拡幅車体による定員増加のため実現しなかった。結果的に京浜東北線のホームドア設置計画がスムーズに進んだ。
全83編成のうち、ウラ177編成は2014年に川崎駅で脱線横転事故を起こし、その後復旧不能と判断され廃車除籍となった。上野東京ライン開業で京浜東北線の車両本数に余剰が生じたこともあり、補充はされていない。事故で破損した先頭車と中間車は、JR東日本の研修施設にて展示されている。
2000番台
203系・207系を置き換えるため、常磐緩行線(東京メトロ千代田線直通)に2009年9月より投入開始。松戸車両センターに10両編成19本(全190両)が所属。
本系列でも特殊な形状ということもあり、別項目で詳説している。
3000番台
東海道本線、宇都宮線、高崎線およびその3線間直通運転で運用中。
東海道本線伝統の湘南色を身に纏い、2階建てグリーン車を2両連結。一部はクロスシートを採用し、大型トイレも備わる。E231系との併結も可能で、両車共通運用が可能となった。連結を行う関係から車内案内表示器は液晶モニターではなくE231系と同じ2段LED式となっている。
東海道線にいたE217系を横須賀・総武快速線に戻すための穴埋め及び上野東京ライン開業に伴う211系の置き換えを目的に増備され、合計基本(10両)33編成と付属(5両)39編成(全525両)が配置された。
これによって2012年に211系は東海道線から全車定期運用を離脱した。その後2015年までに宇都宮線及び高崎線からも離脱し、埼玉県内からは(大宮への検査入場を除いて)撤退した。
最初の基本・付属各2編成は国府津車両センター所属のE編成(E-01、E-02、E-51、E-52)であるが、2011年以後の増備編成各14本づつは田町車両センター所属のNT編成(NT1〜NT14、NT51〜NT64)である。
これ以降の増備編成は基本編成の編成形態が異なり、6号車にもトイレが備わるようになった関係上モハユニット間の100の位の数字が揃っていない。
2013年に田町車両センターが廃止されたことにより国府津車両センターへ移籍し、E編成に統合された(NT1〜NT14→E-03〜E-16、NT51〜NT64→E-53〜E-66)。
その後高崎車両センター所属の211系を置き換えるべく基本17本(L01〜L17)と付属16本(D01〜D16)が製造され、宇都宮線の上野口運用と高崎線の運用を置き換えた。
なお国府津車両センター所属のE233系の走行範囲は当初東京から熱海までの区間で、分割併合がある運用やJR東海乗り入れ運用には使われなかったが、2014年3月のダイヤ改正でJR東海区間に乗り入れるようになった。
2015年3月14日のダイヤ改正から、上野東京ラインと湘南新宿ラインでも運用を開始した。これにより、群馬県・栃木県から静岡県までと、運用が非常に広範囲に及ぶ事となった。
また高崎車両センターからは配置が無くなり基本・付属各1本が国府津車両センターに転属し(L01→E-17、D01→E-67)、その他は小山車両センターに転属した(L02〜L17→U618〜U633、D02〜D16→U218〜U232)。
このため最初の基本・付属各2編成(E-01、E-02、E-51、E-52)と2014年12月以降に増備された付属編成(U233〜U235、E-71〜E-74)以外はなんと製造されてから5年も経たないうちに転属歴を一度は持っているという、わけわからんことになっている。
5000番台
京葉線において2010年7月1日から運用を開始。同線の201系や205系を置き換えた。
0番台同様10両貫通編成20本と4両+6両分割編成4本の合計24本240両が所属し、編成記号501から520までが10両貫通編成、551とF51から554とF54までが4両+6両分割編成となる。
7000番台
埼京線・川越線と乗り入れ先の東京臨海高速鉄道りんかい線向けに2013年から2014年までに31編成を投入、同線で運用されている205系を順次置き換えた。川越車両センターに配置。拡幅車体で定員が205系より約1割増加するため、6扉車は連結しない。
ATACS改造が予定されていたことから、その関係で205系1本が2016年末頃まで当面の予備として残されていた。
相模鉄道への直通運転が決まったことから、2019年に7編成が追加新造されている。この増備編成は内装が初期製造車と少し違うところがある(カメラの位置や車掌モニターなど)。10両38編成380両。
6000番台
2014年2月から導入された横浜線向け車両。こちらも同線の205系の置き換え用。当初より投入が前倒しされ、8両28編成224両が投入された。
この番台では、先頭車正面と側面帯に「YOKOHAMA LINE」のロゴが、編成毎に横浜線・根岸線各駅の駅スタンプが先頭車側面に貼り付けられた(後に撤去)。
拡幅車体による定員増加のため、京浜東北線や埼京線と同じく6扉車は連結されていない。
8000番台
南武線向け205・209系の置き換え用として2014年10月4日に運用開始。6両35編成(N1~35編成)210両が投入された。この番台では6000番台に続き先頭車側面帯に「NAMBU LINE」のロゴが、先頭車側面にシンボルマークが貼り付けられた。この番台のドアエンジンは、それまでのリニアモーター式から0番台と同様に電気スクリュー式に変更されており、ドア開閉時の騒音が軽減されている。
8500番台
先述の通り、青梅・五日市線用0番台6両編成1本を南武線向けに転用させて生まれた派生番台。2017年3月より南武線での運行を開始。N36編成。
「NAMBU LINE」のロゴ・シンボルマークを貼り付けている点は8000番台と同じだが、再度他線区へ転用される可能性を見越して、改造内容は最小限にした。このため8000番台との相違点がいくつか見られ、番号も元の番号に「8500」を足したもの。
スペック
共通事項
編成 |
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営業最高速度 | 番台別を参照 |
設計最高速度 | 120km/h |
起動加速度 | 番台別を参照 |
減速度 | 番台別を参照 |
全長 | 20,000mm |
全幅 | 2,950mm(2000番台は2,800mm) |
全高 | 3,980mm |
車体材質 | ステンレス |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V(架空電車線方式) |
主電動機 | 三相かご形交流誘導電動機(出力140kw) |
駆動装置 | TD平行カルダン駆動 |
歯車比 | 97:16=6.06 |
制御装置 | IGBT素子VVVFインバータ制御 |
台車 | 軸梁式ボルスタレス台車 |
制動方式 |
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保安装置 |
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製造メーカー |
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番台別
番台 | 主な投入線区 | 営業最高速度 | 加速度 | 減速度 | ドアエンジン | VVVFのメーカー | 車内案内表示装置 | 車内照明(製造当時) |
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0番台 | 中央快速線 | 100km/h | 3km/h/s | 5km/h/s | 電気スクリュー | 三菱 | LCD15インチ2画面(三菱) | 蛍光灯 |
1000番台 | 京浜東北線 | 95km/h | 2.5km/h/s | 5km/h/s | 電気スクリュー | 三菱 | LCD17インチワイド 2画面(三菱) | 蛍光灯 |
2000番台 | 常磐緩行線 | 90km/h(常磐緩行線)・100㎞/h(小田急線) | 3.3km/h/s | 4.7km/h/s | リニアモーター駆動 | 三菱 | LCD17インチワイド 2画面(日立) | 蛍光灯 |
3000番台 | 東海道線 | 120km/h | 2.3km/h/s | 4.2km/h/s | リニアモーター駆動 | 日立 | LEDスクロール | 蛍光灯 |
5000番台 | 京葉線 | 110km/h(外房・内房線)100㎞/h(京葉線) | 2.5km/h/s | 4.2km/h/s | リニアモーター駆動 | 三菱 | LCD17インチワイド 2画面(日立) | 蛍光灯 |
7000番台 | 埼京線 | 120km/h | 2.5km/h/s | 5km/h/s | リニアモーター駆動 | 三菱 | LCD17インチワイド 2画面(三菱) | LED |
6000番台 | 横浜線 | 95km/h | 2.5km/h/s | 5km/h/s | リニアモーター駆動 | 三菱 | LCD17インチワイド 2画面(日立) | LED |
8000番台 | 南武線 | 95km/h | 3km/h/s | 4.2km/h/s | 電気スクリュー | 三菱 | LCD17インチワイド 2画面(日立) | LED |
8500番台 | 南武線 | 95km/h | 3km/h/s | 4.2km/h/s | 電気スクリュー | 三菱 | LCD17インチワイド 2画面(日立) | 蛍光灯 |
E233系をベースとしたJR以外の車両
小田急電鉄4000形(2代)
東京メトロ千代田線直通に対応するため裾絞りはない。また、表面はすべてダルフィニッシュ(梨地)仕上げ(ステンレス光沢を抑えた仕上げ)としている。
相模鉄道11000系
相鉄新横浜線を経由しJR埼京線方面への直通運転を見越して製造されたが、編成の向きが埼京線用E233系と反転しているため実際には直通運転に使用されることはなく、新型の相鉄12000系の投入で運用本数を賄っている。
前面など細かい点を除けば通常のE233系とほぼ同一。
東京都交通局10-300形(3次車以降)
都営新宿線向けに10-000形・10-300R形の置き換え用として新造。
裾絞りはない。レールの幅が異なる点を除けばE233系2000番台とほぼ同一。
(ただし、台車と主電動機については従来の10-300形同様E231系と同型のものを使用している。歯車比も同様に7.07である。)
相模鉄道12000系
相鉄新横浜線を経由しJR埼京線方面へ直通運転する目的で製造。相鉄線内のみの運用に就く編成もいる。
車体はE235系に準してはいたり前面が大きく異なるものの、走行機器、制御器、車内装備はほぼ全て7000番台と共通仕様。これは、非常時に埼京線での走行を可能にするためであり、もちろんATACSも全編成搭載されてID番号も90番台が付与されている。