概要
関東の大手私鉄で唯一東京都内に路線を持たない相模鉄道(相鉄)が、東京都内・都心へのアクセス向上・乗り入れを目的として建設した鉄道路線である。路線は全線が神奈川県横浜市に所在。会社名を冠した「相鉄新横浜線」が正式名称である。
2019年(令和元年)11月30日に西谷駅〜羽沢横浜国大駅間が開通。JR東日本東海道本線貨物支線と繋がる線路と接続してJR東日本埼京線新宿方面への相互直通運転を開始した。この時点では直通先の区間ともども「相鉄・JR直通線」というストレートな名前の愛称のみが案内されていた。
2023年(令和5年)3月18日には残りの羽沢横浜国大駅〜新横浜駅間も開通。同時に開通した東急電鉄(東急)の東急新横浜線(新横浜駅〜日吉駅間)を介して東急電鉄(目黒線・東横線)、東京メトロ(南北線・副都心線)、東京都交通局(都営三田線)、東武鉄道(東上本線)、埼玉高速鉄道との直通運転を開始した。
本路線と東急新横浜線は、地下鉄事業者の東京メトロを除いた大手私鉄同士の異なる会社の路線を地下鉄を介さずに直接結ぶ路線で、関東では初めてのケースとなる。関西も含めれば、阪神電気鉄道(阪神)の阪神なんば線と近畿日本鉄道(近鉄)の難波線が同様のケースとなる。
西谷駅~羽沢横浜国大駅間の加算運賃は一律+30円。また羽沢横浜国大駅〜新横浜駅間は+40円になる。その為、西谷駅〜新横浜駅間は合計で+70円も取られる事になる。これに加えてバリアフリー設備投入のための加算運賃として10円分上乗せしている。
利用状況の推移
全通した3月18日から31日までの14日間で新横浜駅の1日平均乗降人員が38,147人(横浜市統計書より)となり更に、23年度では約53,409人(こちらも横浜市統計書より)と東急新横浜線に比べると利用者増加が著しい。
それに影響してなのか羽沢横浜国大駅の方も22年度の1日平均乗降人員が29,339人から23年度では約31,610人と増加し、通勤客も増加している。
更に24年4月~6月までの新横浜駅の1日平均乗降人員は約66,012人とかなりの利用者になっている。
因みに東急新横浜駅の22年度の1日平均は61,011人に対し、23年度では約71,471人に比べると増加率が顕著となっている。
内訳は、海老名駅~新横浜駅間が運賃片道切符400円で従来の町田駅経由だと切符550円と値下げの恩恵が大きい。
海老名以西だと小田急の運賃が加算される為に差は少なくなるが、ラッシュ時は優等列車もあり時間面で有利な側面が大きい。
大和駅からなら猶更、相鉄利用の方が有利になり、JRは切符片道550円に対し、新横浜線は切符片道350円と200円も値下げされた影響が大きい。
一方、藤沢駅はJR経由、中央林間駅なら東急経由の方が安く、そちらの方の客が取れていない課題も残る問題も潜む。
定期券(特に通勤)に関しても相鉄線完結利用なら町田駅経由より安くなるものの、小田急利用だと相鉄の加算運賃やJRの通勤定期割引率の高さで町田駅経由より高くなる問題も抱えている。
相鉄経由、町田経由、第3経路などは以下の表の通り(いずれも切符利用の場合)。
始発駅 | 目的駅 | 相鉄経由 | 町田経由 | 第3経路 | 主な経由先 |
---|---|---|---|---|---|
新横浜駅 | 大和駅 | 350円 | 550円 | 450円 | 第3経由は横浜駅経由のJR横浜線利用。 |
新横浜駅 | 海老名駅 | 400円 | 550円 | 510円 | 第3経由は横浜駅経由のJR横浜線利用。 |
新横浜駅 | 湘南台駅 | 440円 | 620円 | 430円 | 相鉄経由はいずみ野線利用。第3経由はブルーライン。 |
新横浜駅 | 湘南台駅 | 550円 | 620円 | 430円 | 相鉄経由は大和乗換江ノ島線利用。第3経由はブルーライン。 |
新横浜駅 | 本厚木駅 | 530円 | 590円 | なし | |
新横浜駅 | 中央林間駅 | 530円 | 490円 | 410円 | 第3経由は長津田乗換横浜線経由。 |
新横浜駅 | 藤沢駅 | 620円 | 710円 | 590円 | 相鉄経由は大和乗換。第3経由は横浜乗換東海道線経由。 |
加算運賃回収率
年度 | 回収率 |
---|---|
2019年(令和元年)度 | 1.2% |
2020年(令和2年)度 | 3.3% |
2021年(令和3年)度 | 5.0% |
2022年(令和4年)度 | 3.2% |
2023年(令和5年)度 | 8.2% |
補足
- 新宿駅~大和駅・海老名駅間で小田急電鉄(小田原線・江ノ島線)と競合関係となったが、運行本数・運賃の面で小田急側が勝っており、相鉄の都心乗り入れはどちらかと言えば相鉄線沿線からの都心アクセスルートとしての性格が強い。
- 大和駅・海老名駅から渋谷駅へのアクセス。主に宮益坂方面に関してはこちらの方が近く、大崎駅や品川駅に出る際にもこちらの方が楽になっている(京王井の頭線は宮益坂方面からは遠い)。特に小田原線沿線からなら井の頭線経由に比べて相鉄線経由の方が始発特権で座れる可能性が高い。
- 一方で江ノ島線沿線の場合は逆に始発特権で座れる上に本数の多い東急田園都市線というライバルの存在がある。大和駅からJR直通列車を利用する場合は運賃が+150円となるものの所要時間がほぼ同じな上に地上ホーム到着のためまだ選択される余地はあるが、湘南台駅から東急東横線直通列車を使用する場合は運賃・所要時間・ホームの深さのいずれを見ても不利となる。
- 当初、相鉄は西谷駅~羽沢横浜国大駅間のみを建設し「相鉄・JR直通線」のみ営業する予定であったが、JR線経由での客の流動を阻止すべく横浜市が東京急行電鉄(当時)と共に動いて羽沢横浜国大駅~新横浜駅間も建設する事になった。JR線経由では本数ギリギリのダイヤ調整が行われており、東急線経由の列車を増やして本数を分散させ、多方面へ行ける利便性を向上させる事にしたため結果オーライかも知れない。
- 羽沢横浜国大駅~新横浜駅間の開通で、湘南台駅~新横浜駅間で横浜市営地下鉄ブルーラインと競合するようになる。運賃はブルーライン経由の方が微妙に安くなるが、所要時間は相鉄線経由の方が10分以上短い。
- 利用者数全体では東急直通線の方が多いが、定期客はJR直通線の方が多い。対東京都心は東急直通だと加算運賃が最低140円取られる他、JR東日本の方が通勤定期の割引率が高い為。
ダイヤ
運行間隔
日中は3種類の系統が30分間隔、毎時合わせて6本の列車が設定される。
- JR埼京線方面:JR埼京線新宿〜相鉄本線海老名間の特急・各駅停車(羽沢横浜国大にて各駅停車に種別変更)
- 東急東横線方面:東武川越市もしくは東京メトロ和光市〜相鉄いずみ野線湘南台間の各駅停車(新横浜にて急行に種別変更)
- 東急目黒線方面:都営三田線西高島平〜相鉄本線海老名間の特急・各駅停車(新横浜にて急行に種別変更)
朝夕時間帯には運行系統の縛りは無くなり、一部列車は相鉄線内「通勤特急」(平日朝ラッシュのみ)もしくは「特急」として運行。また、西谷止まりで同駅にて相鉄本線の列車と接続する区間列車や、JR池袋駅以北や東武霞ケ関駅以西、東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道線への直通列車も設定される。
現行ダイヤで東横線内を特急として運行する列車は存在しない。
上り列車については列車種別の文字の色を直通運転先の路線のカラーに合わせており(埼京線方面=緑色、東横線方面=桃色、目黒線方面=水色、それぞれ文字で色分け)、本線横浜方面や別系統の列車との誤乗防止を図っている。
当区間内は全定期列車が各駅に止まる。
都営、メトロ、東武などは直通列車は設定されてはいるものの、各社保有の車両が相鉄直通に対応していないこともあって実質的な使用制限がされ、新横浜駅方面の増便が厳しい問題も抱えている。
使用車両(JR線方面)
10両編成。羽沢横浜国大〜新横浜間については、JR線方面の車両についても入線可能な設計になっている。
使用車両(東急線方面)
東横線方面は10両編成、目黒線方面は8両編成に限られ、使用車両も相鉄と東急の車両に限定される。東横線や目黒線へ乗り入れている他の鉄道事業者の車両については、保安装置がないため新横浜折り返しで相鉄線内へは入線しない。
使用車両(その他)
- 相鉄が保有する全系列:トラブル発生・ダイヤ乱れ時などに、羽沢横浜国大や新横浜までの区間列車の運用に入ることがある。
駅一覧
関連項目
一般
JR東日本:東海道本線(東海道線・湘南新宿ライン)・埼京線、川越線
埼玉高速鉄道:埼玉高速鉄道線(埼玉スタジアム線)