SL人吉
えすえるひとよし
JR九州が鹿児島本線・肥薩線で運行していた臨時快速列車。8620形が、専用車両の50系客車を牽引する、動態保存の蒸気機関車牽引列車である。
元々は、牽引機である8620形58654号機が『SLあそBOY』用として復活した際に、里帰り(58654号機は廃車後、肥薩線の矢岳駅前にてD51形170号機と共に静態保存されていた)を兼ねて『SL人吉号』の名で年に数日程度運転されていたが、58654号機が阿蘇の急勾配で台枠を損傷したこともあり2005年(平成17年)に運転を一旦終了する形となった。
その後、九州新幹線の延伸開業時に観光資源として活用できると判断された上、8620型の図面が奇跡的に日立製作所で見つかったため、小倉工場(現:小倉総合車両センター)で4億円をかけて台枠を新製するなど58654号機を修復、専用車両の50系客車もリニューアルし、2009年4月25日より運行を開始(列車としては再開)した(この時に列車名から号が省かれている)。
- 牽引機不調時には熊本車両センター常駐のDE10が後補機及び代走を務める。
- SLに対して添え物扱いになりがちではあるが、50系客車もここと真岡鐡道、JR北海道のノロッコ号くらいにしか存在しない希少車両である。水戸岡鋭治のデザインによる徹底したリニューアル工事を受けてはいるが。
運行区間は熊本駅~人吉駅であり、「かわせみ やませみ」「いさぶろう・しんぺい」と共に赤字線である肥薩線を支える観光列車として知られていたが、後述する災害の影響で2020年7月4日に運行を休止。2021年5月以降暫定的に熊本駅~鳥栖駅の運転となった。
牽引機である8620形58654号機が製造から100年を超え、同機の部品の調達及びメンテナンスを担う技術者の確保の問題があり、2024年3月23日の鳥栖駅~博多駅の往復運転(往路はDE10 1206が先頭、復路が58654による牽引)を持って運行を終了した。
令和2年7月豪雨
2020年(令和2年)7月4日に発生した「令和2年7月豪雨」の影響で肥薩線が不通になり、以来通常の経路での運行は休止されている(余談だがCOVID-19対策として2020年4月24日から長期運休を行っており、6月14日に運行が再開されたばかりであった)。
2021年(令和3年)5月1日、「肥薩線沿線応援企画」と称して週末を中心に鹿児島本線・熊本駅~鳥栖駅で運転を開始。かつて同区間を走っていた在来線特急が九州新幹線に移行して廃止されダイヤが空いた為このような運行が可能となった。なおあくまでも公式においてはメインは肥薩線であり本運用は暫定運行的な扱いとされている。
熊本発鳥栖行での運転時はSLが先頭となって客車をけん引。鳥栖発熊本行ではディーゼル機関車(DL)がけん引し、SLは最後部に連結されての運転となる。
「SL人吉」は全車指定席のため、乗車券のほかにSL指定席券(大人1,680円・小児半額。2021年時点)が必要。蒸気機関車牽引列車として全国で最も高額な料金になってしまったが、車籍を有し本線走行する動態保存のSLとしては日本最古参なので仕方ない
なおにSL指定席料金が改定されてまだ間もないので、ネットの案内サイトによっては肥薩線運行時の旧料金(820円)で案内が出ている事もあるので注意が必要。
SLムーンライト人吉(?)
2013年8月5日、熊本地方は集中豪雨に見舞われ、この日運用されたSL人吉は約11時間かけて人吉駅に到着した。
この際、翌日の運用のために熊本駅まで戻らなくてはいけない上、DE10を救援のために走らせることができなかったため、救済列車として折り返しの運用を行うことになった(無論、救済列車なので乗車券のみで利用可能)。
結局、21時26分に人吉駅を発車し、熊本駅にたどり着いたのは日付を跨いだ0時6分。まさかハチロク爺さんも、この歳になってから夜行列車として走る事になるとは思わなかっただろう……
…と思っていたら2019年4月29日、今度はハチロク爺さん自身が下り列車運行中に不調をおこし、救援のDE10の後押しを受けて実に3時間遅れで上り運用を続行することに。御年97歳、無茶のやりすぎである。
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