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概要編集

広軌は、狭く言えば国際標準軌(1,435mm)を上回る線路幅である。ただし直通に差し支えない程度の差異の場合は標準軌に含めてしまうため、国際的には台車交換などが必要な5ft/1,520mm軌間(旧ソ連圏)より広い軌間を指す場合が一般である。概ね5ft(上述)、1,600mm(5'3"・アイリッシュゲージ)、1,665~1,676mm(イベリア/インドゲージ)の3種に収斂する。それ以上の線路幅も19世紀には存在したが、鉄道用線路としてはいずれも改築され消滅している。

広軌を採用した理由としては、後述のように動輪直径を大きくするには軌間は広いほうが有利なのと、軍事的に侵攻されにくくするためであった。


解説編集

初期の蒸気機関車の場合、動輪直径を大きくできるため軌間は広いほうが有利であったが、時代が下ると標準軌でもシリンダを外側に配置することでこの問題を解決することができるようになった。現代では、後述の製鉄所のように極端な大型・大重量の貨物を運搬する場合を除けば、むしろコスト増のデメリットだけが目立つ。


1930年代にナチス・ドイツがブルネルゲージ(7’ 1/4"=2,140mm)を上回る3,000mm軌間の高速鉄道を計画した事がある。しかし現代の高速鉄道では、広すぎる軌間はバネ下重量をいたずらに大きくし、特に250km/h以上の実績が全く無い点が不利である。ロシアが既存広軌線と共通で、標準軌との差もあまりない1,520mmを採用した以外に、それ以上広い軌間の高速鉄道は計画すらない。在来線の幹線軌間がそれより広いスペイン・ポルトガル・インドでも、高速鉄道は全て標準軌で敷設・計画されている。


かつての日本においては、1,067mm(3’6”・三六軌間)が私設鉄道法で標準と定められていたため、国際標準軌どころか馬車軌間(1,372mm・東京ゲージ)も広軌に含めてしまうことがあった。


かつての地方鉄道法では、軌間の規定が1,435mm、1,067mm、762mmの三択であったため営業線としてこれを上回る軌間(つまり国際的にいう広軌)は採用事例がない(京王線都営新宿線の1,372mmは「改築が事実上不可能」で特別に現状を追認する形で許可をとったものである)。海外の広軌鉄道への出荷をする鉄道車両メーカーの構内線路や、1,000℃超の高温の銑鉄を扱うため安定性を特に要求する製鉄所では、距離は短いながらも敷設例がある。また普通鉄道ではなくゴムタイヤ式の交通機関では札幌市営地下鉄アストラムラインなど標準軌を超える軌間の採用例がある。


日本の鉄道メーカーではインド・スペイン向け(1665~1676mm)、アイルランド・ブラジル向け(1600mm)両方とも車両を作っているが、線路は4線式で広軌は1676mmで敷かれている。微速の構内移動であれば7cm程度の軌間の拡大は一応問題なく走行可能なため、メーカー内の線路はこれで広軌2種・標準軌(及び京王線系統の馬車軌間)・日本狭軌とメーターゲージに対応している。

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