概要
線路に対して直角(クロス)するよう配置された座席であることからこの名がついた。
乗り心地のいい車両の場合、着席乗車を念頭に置いたため、座席自体に様々なバリエーションが存在するのも特徴の一つ。
逆に言えば収容力ではロングシートより効率が悪いため、混雑率の高い日本の首都圏ではグリーン車や通勤ライナーを除いてあまり使われておらず、鉄道のサービスという観点から首都圏の人口密度の多さを実感することになるだろう。
また首都圏以外の地域では横2+1列配置設計としてラッシュ時にも運行している例がある。この配置にすることでロングシート車に近い収容力を確保することも出来るが、その反面座席数がかなり少なくなってしまうという欠点がある。
座席の形式にもよるが、若干閉鎖的な空間が出来上がることになるため、長距離の乗車などに適している。その分、頻繁な乗降にはあまり向かず、日本国内では、隣の乗客との接触を嫌う・見知らぬ他人と狭い空間で同席したくないなどの理由で、2人がけの席ですでに片方に誰かが座っている場合に空いている座席を敬遠するケースも多々見られる。
1980年代以降の車両は日本国内の普通車でも従来よりシートピッチを大きめに取るようになっており、戦前の1,300~1,455mmは1,500~1,700mm程度まで拡大している。しかしその際、背もたれの傾斜を極端に稼いでしまい、結局向かいの席との空間はピッチ1,300mmのオハ31系(450mm)より狭い(430mm程度)こともある。
そうした車両では足を急角度に曲げたままの長時間乗車を強いられることもあり、血流に不安のある場合はエコノミークラス症候群にくれぐれも注意が必要である(ただし鉄道のクロスシートは航空機のそれよりシートピッチは広いため、大半の人にとって問題は起こらないだろう)。
シート自体が仕切りのような役割を果たしているため、酔っぱらいなどが熟睡していても、ロングシートのように寝転がることで広範囲に迷惑がかかることは少ないのも利点。ただし、閉鎖空間ゆえに、こっそりと喫煙したり、窓が開閉する場合はカバンなどを投げ込んで乗車前に座席を占拠するなどのトラブルもあった。
夕刻以降だと、「酒盛り電車」なる迷惑行為がある線区もあった。クロスシートのボックス席を複数組顔見知り同士で(当然ながら人数は少なくとも5人以上、多ければ20人ほど)占拠し、公共の場である電車車内を私的な酒盛り場にしてしまうのである。そこが朝ラッシュの激しい重通勤路線でもあったことからロングシートへ移行した。これで根絶するかと思いきや、彼らは今度はロングシートの立ち席部分の広い床に車座になり宴会をするという暴挙を成し遂げたのである。
近年では多目的スペースやドア前で立飲みする連中も(家で飲ろう)。
ターミナル駅に着くたびに方向がコロコロ変わるため、上位種別でも回転クロスが導入しにくい一部の海外鉄道(主にヨーロッパ)においては、進行方向向けに半数・逆方向向けに半数が固まって配置される「集団見合い」「集団離反」などの固定式クロスシートが導入されている。現代日本の鉄道では進行方向転換を嫌うため採用例が極めて少ない(快特時代の京急2000形など)。
クロスシートの配列
- 2+2配列
- 日本においてはクロスシートのほとんどがこの配列。1列あたり中央の通路をはさみ2人掛けの座席を並べる。
- 2+3配列
- 新幹線の車内で見ることができる配列。東海道新幹線を走る車両の車内では、海側の座席が3人掛け、山側の座席が2人掛け。
- 3+3配列
- 1+2配列
- 1列に1人掛けと2人掛けの座席が通路をはさんで並ぶ。JR化後の在来線特急のグリーン車で採用される例が多く、その場合は幅の広い座席を用意する。普通列車にも見かけられ、こちらは通路を広げて車両定員を増やすため、1座席の幅が2+2配列のものと同じ座席を用いる。
- 1+1配列
- 1列に1人掛けの座席が通路をはさんで並ぶ。