概要
回転クロスシートは、広義には座席中央部に回転機構を組み込み、列車の進行方向または乗客の嗜好により座席を転向できる座席のことである。したがって、通常はいわゆるリクライニングシートも殆どは回転により転向可能なためこの範疇に入るのであるが、殊更「回転クロスシート」と称した場合、座席の傾斜は変更できないもののことをさす場合が殆どである。
座席の背面はモケット張りの場合を含めて底に板が入っていることが普通で、そのため後ろの客が行儀の悪い客であったとしても、転換クロスシートと異なりクッション越しに背中を押されることはない。
反面、回転の都合上、壁側にも若干隙間を空けて座席を配さなければならず(中心から一番遠い座布団の隅までの寸法<回転中心と壁との間隔 である必要がある)、元より車体幅が狭い日本の鉄道では、通路幅が大幅に狭くなってしまうことを避けるため、戦前の2等車でも殆どが固定または転換クロスシートであり、回転式ではなかった。
一般化したのは戦後リクライニングシートが米軍の要求で入ってからと推測される。勿論この場合もそのままでは従来の2等車が通路幅を60cm程度確保出来るのに対し、座席幅が広がったことも相まって幅40cm台と大変狭い通路となるため、それぞれの空間の捻出は様々な工夫が凝らされている。
特急・急行列車用にはリクライニングシートの2等車(特別2等車、特2とか特ロと通称)を入れるものの、準急以下の列車にはそこまでの要望はなく、転換式とリクライニングシートの中間として導入されたのであろう。レトロニムとして転換式・固定式共々従来程度の定員の2等車は「並ロ」と通称される。普通・準急列車用2等車(後のグリーン車)及び電車化されたのちの特急3等車(普通車)の標準として15年ほど採用された。
座席の転向には、国鉄で標準的に使われていたものの場合、(通常のリクライニングシート同様足元のペダルで外す方法も考えられるが)背もたれを起こすとロックが外れ転向するように作られていた。
単純な回転クロスシートの後継は、リクライニングの角度を浅くし傾斜角の選択肢を減らした簡易リクライニングシートから、のち特急グリーン車用よりは最大傾斜角の浅いだけのリクライニングシートへと推移した。
新幹線
新幹線0系電車普通車は、当初転換クロスシートで登場しているが、これは車体を幅広にした結果座席が3+2の5列席となり、2列側は問題ないものの3列側が当初のシートピッチ940mmでは回転できないためであった(壁と通路に干渉した在来線優等車と異なり前後列の中央席と干渉する)。
のちに簡易リクライニングシートに変わるが、4cm拡大した980mmピッチでも当時の構造では回転スペースを捻出できず転向不能となり、後の転向可能なリクライニングシート導入に際しては大改造でシートピッチを拡大するとか、肘掛けを回転部分から外したり、中央席の前縁中心部をかるく抉ったりしている。
導入車両
1958(昭和33年)前後~1972年(昭和47年)の国鉄在来線特急電車・気動車の普通車、準急・近郊形車両のグリーン車
E1系・E4系新幹線電車の普通車自由席の2階部分(3+3の6列席。閑散時3人がけを2人で使うためかリクライニングを一切省略。1階席は通常の回転リクライニングシートだが5列席):用法を考えると0系初期と同様の転換クロスシートが適当だったかもしれない。