概要
混雑の激しい近郊区間の輸送と、閑散時間帯の観光輸送という相反する需要を両立させるために、近畿日本鉄道にて「L/Cカー」という名称で導入したのが始まり。座席を90度回転させることにより、「ロングシート」モードと「クロスシート」モードの両方に転換可能な構造とした。その後21世紀に入り、快適な車内環境を確保するための「着席保証」目的で、クロスシートモードによる座席指定列車が関東大手私鉄にて導入されている。
クロスシートモードでは概ね特急普通車のような座席になるが、基本的にリクライニングしない回転クロスシートにとどまる。但しクッションを厚くするなど、特別料金を取れるレベルは確保している(近鉄のようにデュアルシート車では特別料金を取っていない例もある)。ただし、2022年に京王電鉄がリクライニングできるデュアルシート車を新造。
歴史
このような車両そのものは1970年代の日本国有鉄道(国鉄)でも試行されている。旧形国電の72系クハ79929号車が1972年に当時の吹田工場で改造され、国鉄片町線にて1977年まで運用された。
当時の特急車両である581系・583系は、「昼は座席特急、夜は寝台特急」の兼務可能にして車両運用の効率化を図ろうという発想で開発された。
同様の発想でクロスシート車とロングシート車の両方使いできるようにしたのが、デュアルシートであるが、現在のデュアルシート車のシートが「クロスシートの座席をロングシートにも用いる」デザインなのと異なり「ロングシートの座席をクロスシートにも用いる」ものであったため背もたれが低く不評を投じられ、量産化はされなかった。先述の1両も転換して使用されることは無かったという。
今日のデュアルシート車は、ロングシートモードでは背摺りが窓をかなり覆ってしまう点には目を瞑り、クロスシートモードの快適性を優先した作りとなっている。
デュアルシート搭載車両
営業開始年 | 営業事業者 | 形式・系列 | 備考 |
---|---|---|---|
1996年 | 近畿日本鉄道 | 2610系 | 4両編成3本を対象に改造。2621編成はL/Cカーの試作車。 |
1997年 | 同上 | 2800系 | 4両編成3本を対象に改造。 |
1997年 | 同上 | 5800系 | 基本6両編成、名古屋線所属の5812編成のみ4両編成 |
2000年 | 同上 | 5820系 | シリーズ21・6両編成 |
2002年 | JR東日本 | 205系3100番台 | 仙石線向けの一部編成を対象に改造。2WAYシート。 |
2008年 | 東武鉄道 | 50090型 | 座席指定列車「TJライナー」向け。「川越特急」運用では追加料金不要ながらクロスシートモードとなる。 |
2017年 | 西武鉄道 | 40000系 | 座席指定列車「S-TRAIN」「拝島ライナー」向け。0番台のみ |
2017年 | 京王電鉄 | 5000系(2代) | 座席指定列車「京王ライナー」向け。 |
2018年 | 東急電鉄 | 6020系 | 有料座席指定サービス『QSEAT』のデハ6320形 |
2019年 | 同上 | 6000系 | 有料座席指定サービス『QSEAT』のデハ6300形のうちの一部 |
2020年 | 東武鉄道 | 70090型 | 座席指定列車「THライナー」向け。 |
2020年 | しなの鉄道 | SR1系 | 1次車の2両編成3本のみ |
2021年 | 京浜急行電鉄 | 1000形(2代)1890番台 | 4両固定編成のうちの一部。車両愛称「Le Ciel」 |
2022年 | 東急電鉄 | 5050系4000番台 | 有料座席指定サービス『QSEAT』を一部編成中の2両に設定 |