同じ会社で「1000形」を名乗る車両が複数あった場合、新しい方を指す事があるが、本項目では京浜急行電鉄の1000形(2代)について説明する。
概要
京浜急行電鉄(京急)が2002年4月15日より営業運転に投入した通勤形電車。都営地下鉄浅草線への直通運転や羽田空港アクセスのための優等列車(エアポート快特等)などに運用されている。デビューから20年ほどたった今でも製造が続いている。
京急では1959年より運用されている初代1000形(旧1000形)があり、両者が並行して運用された時期があった。
次車別の大まかな特徴
1・2次車
1次車と2次車は実質2100形の3ドアバージョンであり、仕様はほぼ同じ。塗装は2100形と同じで、8両編成と4両編成が製造された。搭載されたドイツ・シーメンス社製のVVVFインバータ(素子はGTO)を搭載。MT比は2100形と同じく4M4T&2M2Tとなっている。
8両編成は1000番台、4両編成は1400番台を使用(当時は旧1000形も存続していたが、廃車の進行によって1000番台と1100番台が空いており、1400番台はそもそも未使用だったので、車番の重複は起きていない)。6両編成は空き番がなかったため、2011年の1300番台まで新規増備は行われず、1500形の編成組み換えで対応していた。
内装は、車端部にボックスシート、それ以外はロングシートというセミクロスシート仕様になった。
なお、1次車では8両と4両を組み替えて6両2本にできるような機器配置になっていたが、2次車では変更され、組み換えは不可能になった。
3~5次車
シーメンス社製インバータ素子がIGBTとなり、歌うことはなくなってしまったが、国産とは異なるハイテンションな起動音となっており、「叫ぶ電車」という愛称がついた。
4次車からは行き先表示がフルカラーLEDとなり、後に3次車もフルカラーLEDへ改造されたため、幕式=歌う・LED=叫ぶといった感じに区別ができるようになった。
MT比が変更され、6M2T&3M1Tとなった。なお、主電動機の出力は190kWのままとなっており、定格一杯まで使用すると集電装置の電流容量を超過するため、出力を抑えて使用している。これによって雨天時の空転が以前よりも減った。
6~9次車
6次車以降は仕様が大幅に変更され、京急初のステンレス鋼車となった。俗に言う銀1000である。なお、前面は踏切事故対策として普通鋼の塗装仕上げ。それに伴いワイパーカバーを廃止。スリット入りの『1000』は印刷文字となった。
外装は全面塗装をやめ、一部の部分にカラーフィルムを貼っている。内装も変更され、車端部のロングシート化と展望席の廃止、そして運転席後部に非常用脱出はしごが設置された。
主電動機は国産インバータ(8両固定編成は三菱電機製、4両・6両固定編成は東洋電機製)が採用され、ただ単に高音を響かせるようになった。ただ、意外といい音なので一回聞く価値はある。
7次車から誕生した4両編成は、将来的に中間に付随車2両を挟むことで6両編成が組成出来るよう設計されているため、定格155kWの全電動車とされた。一応出力を抑えて運用されているものの、ステンレス4両を3本繋げたオールM編成での運用が存在するため、もはや怪物である。
しかし外見はJRや他社と大差ないほか、車番表示がただのステッカーになってしまう、無塗装故にステンレス表面の歪みが見えてしまっているなど、従来のファンからの評判は芳しくなかった。
ここでは「ステンレス・初代」とする。
10~14次車
10次車からは、成田スカイアクセス開業に伴い仕様変更が行われた。
ドア上部への液晶モニタ方式の車内案内表示器を2つ設置(1つは路線図や種別用、もう1つは広告用)、運転台では停車予告機能を有する列車モニタ装置の搭載など。
11次車からは新たに6両固定編成が誕生。車番は1300番台。これは、密着連結器の電気接点がないので連結営業運転が不可能となった。
2012年製の12次車より全客室にLED照明が標準装備。
2013年製の13次車からは屋根上に空間波列車無線アンテナの設置準備工事が製造時からなされた(後に本設、それ以前に製造された車両も追設)。
また、座席間にあった仕切り板とドア上部の広告用液晶モニタが無くなった。
ここでは「ステンレス・第二世代」とする。
15次車
15次車では、編成ごとに異なる仕様変更が行われた。
6両編成では屋根上では空間波列車無線アンテナの取り付けを実施し、1367編成は主電動機をPMSMに変更。それ以外は以前と同じ仕様となっている。
4両編成では、浅草線直通用の8両編成が不足した際に2編成を連結して直通運用に使用できるよう先頭車前面の貫通扉が車体中央に移設され、貫通路として使用できるように仕様変更が行われた。車体側面はほぼ全面を赤色と白色のカラーフィルムが貼られており、銀色の部分はほとんど見えなくなった(ここでは「フルフィルム」とする)。
また、車番が1800番台に変更となった。
16次車
16次車では6両・8両編成のマイナーチェンジが行われた。
車体側面の外装は1800番台と同じフルフィルムとなっている。内装は、車端部の片側のみボックスシートが復活し、新たにコンセントが設置された。
主電動機は、6両は東洋IGBTに戻され、8両は新たに三菱SiCが採用された。
今回から6両編成は1600番台を使用。
なお、4両編成は屋根上の空間波列車無線アンテナが2本に増えた(これは6両・8両も同様)こと以外は15次車と同じ仕様となっている。
17~19次車
17次車(2017年製)以降は、同5次車以来約11年ぶりの全面塗装車となった。ステンレス車への全面塗装は関東大手私鉄としては初の試みである。(中小私鉄を含めば他に江ノ電500形(2代)などが該当)。
2画面一体型のLCDを搭載する事により、さらなる情報提供の充実を図っている。
今回から8両編成は1200番台を使用。
20次車~
20次車以降は総合車両製作所開発のsustinaブランドのステンレス車体、もしくは川崎車両開発のefACEブランドのステンレス車体を採用。このグループからは車両番号の付番方式が変更され、600形以来のハイフン付きの番号とした。
4両編成は、座席指定列車や貸切イベント列車などの運用が可能な汎用車・1890番台として内装が大きく変更され、座席はデュアルシートを搭載、車内トイレ(2両目にバリアフリー対応の洋式トイレ、3両目に男性用小便器を1カ所ずつ)の設置などが行われた。車体重量超過を防ぐため機器構成が変更され、定格190kWの2M2T構成へ改められている。
1890番台はフランス語で空を意味する「Le Ciel」(ル・シエル)の車両愛称が与えられた。2021年に運行を開始し、2022年にブルーリボン賞を受賞。受賞自体は1983年の2000形以来で、39年ぶりとなる。
なお、22次車(1501-1編成および1701-1編成)からは誘導無線アンテナの搭載を省略している(それ以前に製造された車両の誘導無線アンテナは順次撤去)。
編成内訳
- 4両編成の「4L」はデュアルシート車。
- 車両の増備が進むにつれて車番に空きが無くなっていき、そのままでは枯渇してしまうという問題が発生した。そこで京急は、空きを作るため「1500形で使用していた1600番台を全て1500番台に編入させることで1600番台を解放し、1600番台を6両編成に割り当てる」「廃車がスタートして車番重複が起きない1500形の空き番号を、ハイフン車に割り当てる」などの方法で無理矢理解決している。
8両編成(8V) | 6両編成(6V) | 4両編成(4V) | 4両編成(4L) | |
---|---|---|---|---|
アルミ・半更新 | 1049 1057(黄) 1065 | 1417 1421 1425 1433 1437 1441 1445 | ||
アルミ・更新 | 1001 1009 1017 1025 1033 1041 | 1401 1405 1409 1413 1429 | ||
ステンレス・初代 | 1073 1081 1089 1097 1105 1113 | 1449 1453 1457 1461 1465 1469 1473 1477 1481 1485 | ||
ステンレス・第二世代 | 1121 1129 (1137) 1145 1153 1161 1169 | 1301 1307 1313 1319 1325 1331 1337 1343 1349 1355 1361 | 1489 | |
ステンレス・PMSM-IGBT | 1367 | |||
ステンレス・フルフィルム | 1177 1185 | 1601 1607 | 1801 1805 1809 | |
ステンレス・全面塗装 | 1201 1209 1217 1225 | 1613 1619 1625 1631 1637 1643 1649 1655 1661 1667 | ||
ステンレス・ハイフン | 1701-1 | 1501-1 | 1891-1 1892-1 1893-1 1894-1 1895-1 |
運用
- 8両編成は都営浅草線・京成線・北総線への乗り入れ運用を中心としたエアポート快特・快特・特急がメインな他、線内運用のエアポート急行にも使用されている。
- 成田スカイアクセスや京成本線への運用にも使用されており、以前は10次車以降限定だったが、現在は全ての編成が使用されている。
- 6両編成は主に普通・エアポート急行を中心に使用されている。電気連結器を装備していないため単独運転限定。
- 4両編成は普通列車や優等列車の増結運用がメインだが、4+4両編成でエアポート急行に使用されたり京急大師線の普通列車にも使用されている。
- 1800番台・1890番台は先頭車間の幌を繋いだ時に限り、4+4両編成で乗り入れ運用に入ることができる。
- 1890番台は座席指定制の「モーニング・ウィング号」「イブニング・ウィング号」の増結車にも充当。
損傷・廃車
- 18次車で最初に新造されたデハ1625は、製造工場である川崎重工業での構内移動の際に他の車両に衝突して車体が大きく歪んでしまい廃棄。新たに造り直された。そのため、1625編成の竣工時期は2018年10月と当初の予定からかなり遅れている。
- 10次車の1137編成は2019年9月に踏切事故に遭遇し大破。当該編成は復旧不能と判断され2020年3月15日付で廃車除籍となっている。
余談
かつて1800番台は京成から出禁を喰らったという噂が流れていた。
1800番台は登場してから間も無い頃に直通運転に使用さてたが、1ヶ月程度で元の4両編成にバラされ、以降は自社線運用に戻った。これにより、「京成の変電所は京急よりも古いため、編成出力の高い1800番台に耐え切れず壊れかけた」という噂が広まった。また、2017年の初日号運用では幌ありの状態で使用されたが、折り返しの直通運転には使用されず、京急久里浜駅で車両交換された。これが原因で、京成出禁説が濃厚になった。
…真面目に考えてみれば1800番台は直通運転に使える以外は他の4両編成と同じなので、検査や事故等で8両編成が不足しない限り直通運転に使用されることはない。
また、変電所の件に関しても、同じくオール電動車かつ高出力の3500形や最高速度160km/hのAE形が大丈夫なのに、1800番台だけダメだというのも不可解な点である。
この噂に関しては、後に京急職員から否定された。皆さんも噂を広める際には真偽の確認を徹底してほしい。
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