はじめに
まず「動力分散方式」について簡単に説明する。通勤電車などの旅客列車は動力を持つ「動力車」と、動力を持たない「付随車」で構成されている。この方式を「動力分散方式」という。「動力分散方式」は動力車が比較的多く編成されているため、加減速度の向上などが図れ、これにより過密なダイヤでの運行ができる。一方「動力分散方式」の対義語は「動力集中方式」といい、主に機関車を使用する貨物列車などに多くみられる。
MT比について
MT比は「動力分散方式」において動力車(motor)と付随車(trailer)の比率を示したものである。動力車が多いほど加速度及び減速度の性能が上がり、性能が上がるほど「MT比が大きい」という。 MT比が高いとより高速な運行が可能になるが、コストも上がる。
具体例
例1・先頭車1両のみが動力車、ほか2両は付随車の3両編成の電車があったとする。この場合、MT比は「1M2T」である。
例2・先頭車1両、その後ろの2両目を動力車とし、ほか2両は付随車とした4両編成の電車があるとする。この場合MT比は「2M2T」であり、MT比=1:1である。
特殊なMT比
JR西日本の223系電車のように、1両当たり4つある車軸のうち3つのみに主電動機(モーター)を搭載した車両も存在する。通常、動力車1両にある4つの車軸のうち4つ全てに主電動機を取りつけて1Mとして数えるため、少しややこしくなる。223系電車の場合は4つの車軸のうち3つの車軸に主電動機が取り付けられているため、3/4Mとなる。従って223系電車4両編成のうち2両を動力車、2両を付随車とした場合、全体のMT比はほぼ1:2となる。(223系電車以外にもこのような特殊な例は存在する)。
気動車の場合
気動車は電車に比べて1両あたりの力が弱いため、気動車を複数編成する場合は、基本的には「全て動力車」としている。しかし、気動車の床下には機器がたくさんあるため十分なスペースが確保できず、仕方なく付随車をつけることがある。
MT比表記場所
主にMT比は運転士が運行時に使用する運転時刻表の「牽引定数欄」に記載されていることが多い。
余談
MT比が高い鉄道と言えば、ハマの赤いあんちくしょうや阪神の5000系などがあげられる。いずれも加速度及び減速度は半端じゃないほどの性能を有している。