概要
1982年より、2代目600形の置き換えを目的に登場した快速特急専用電車で、2扉クロスシート。8両編成と4両編成が6本ずつの計72両が製造された。
京急では初採用となる両開き扉と、2つの前照灯を採用しており、それまでの京急伝統を破る挑戦的な車両でもあった。
車体塗装は、800形と同じ赤をベースに窓周り全体を広くアイボリーとするタイプが採用され、この塗装は「優等列車塗装」とされた。これに伴い800形は他形式と同じ白帯塗装へ変更された。
特徴
座席はクロスシート。当形式の登場当初は転換クロスシートは既に誕生していたが、当時はまだまだ重量などの課題が多かったため、固定クロスシートとなった。座席配置は日本国内ではあまり例のない「集団見合い式」となった。
なお、展望席はロングシートとなっている。関係者によると「ここもクロスシートにすると車掌とお見合いになる」との理由だったらしいが、後に誕生した3代目600形では展望席もクロスシートになった。
車両前面は、非貫通式で左右非対称の大型の窓ガラスを採用し、腰部で「く」の字型に折れたスピード感あふれる先頭部デザインを採用した。
ちなみにこのデザインは800形開発時にも東急車輛製造から提案されていた。しかし、国鉄201系が非対称のデザインを採用されることになり、国鉄は斬新さを求めるため他社に同様のデザインがないことを強制したため、800形は左右対称の前面デザインとなった。そして本形式の構想が出た際に、当時の副社長が800形の没デザインを取り出し、「今度はこれで行こう」と発言したため、すぐに前面形状が決まったという。
高速性能を重視するため、歯車比が80:19となり、起動加速度を犠牲にしつつも設計最高速度130km/hを実現した。
京急初の自動連結装置が採用された。引退直前までは当たり前のように他形式と連結していたが、本形式の電気連結器配列は1500形以降の形式と異なっていため他形式との連結ができなかった。
このため2000年に配列を変更する改造を行い、他形式との連結が可能になった。3扉化改造完了の直前だったため、2扉2000形+他形式の営業運転は実現しなかったが、試運転は行われた。
3扉化改造
1998年に、後継のクロスシート車両である2100形が誕生した。
本形式は2100形によって置き換えられることになったが、廃車は1両も出なかった。置き換えられた車両は久里浜工場に入場し、車体を加工する方法で3扉ロングシートへ改造され、玉突きで旧1000形や2代目700形を置き換えた。
塗装は他形式と同じ標準塗装に変更された。
先頭車には車椅子スペースが設置されるなど、バリアフリー対応も行われた。ロングシートは京急で初となる片持ち式座席が採用され、以降京急の標準ロングシートとなった。
なお、4両編成は単独運転の増加が想定され故障時の冗長性を少しでも高めるため、廃車発生品のロータリ式空気圧縮機(AR-2形)を搭載した。
2000年までに全ての車両が改造された。
車端部のクロスシート+補助座席や横引のカーテン、カバー付き照明や床下機器などはそのまま残された。
運用
2扉時代
8両編成は主に快特に使用され、ラッシュ時は特急や京急ウィング号にも使用された。末期は急行にも使用された。
4両編成はラッシュ時の増結運用がメインだが、日中にも4×2の8両編成で快特運用に入っていた。末期には急行や逗子ローカルにも使用されたが、急行廃止後は殆ど運用がなくなった。
3扉化後
8両編成は主にラッシュ時の快特・特急に使用された。改造されて間もない頃は日中の自社線完結の快特の代走にも使用されたが、後に泉岳寺駅発着に変更されたため、品川駅までしか入線できない本形式は代走にも入れなくなり、一時期日中の運用を全て失った。2010年にエアポート急行が誕生すると、本形式が優先的に使用されるようになり、日中の定期運用が復活した。
4両編成は快特・特急の増結と普通列車に使用された。2010年以降は京急大師線での運用も開始された。
リバイバル塗装
2013年にトップナンバーである2011編成が登場当初の優等列車塗装に戻された。
当時は2年程度の運行とアナウンスされており、多くのファンは余命宣告かと危惧していたが、実際は2015年を過ぎても運行継続され、2018年の形式消滅まで運行された。
廃車
2012年より本形式の廃車が開始された。
2018年3月28日に全ての編成が営業を終了し、型式消滅となった。最終編成はリバイバル塗装(窓周りアイボリー)を纏ったトップナンバー・2011編成(1982-2018)。最終運用では品川始発快特・京急久里浜行として運転され、快特専用車両としての有終の美を飾った。