概要
阪急8000系は1988年に登場した阪急電鉄の通勤車両である。GTO素子によるVVVFインバータ制御装置を本格的に搭載。
神戸線・宝塚線向けで、あわせて8両編成10本、2両編成9本が製造された。8000系デビュー時は半月間デビュー記念のヘッドマークが取り付けられる予定であったが、1989年1月7日に昭和天皇が崩御したため、デビュー記念ヘッドマークは同日の午前の運用をもって取り外された。また、8001Fは登場当初、車内に貼付された製造年を示すプレートに「昭和64年」と記載されていたが、現在は「平成元年」と記載されたプレートに交換されているため、見ることができない。
登場当初はメンテナンスが容易な背景があったことから、1995年に発生した阪神淡路大震災では、西宮北口~夙川間の高架橋崩落のために、車両基地と隔絶された神戸線に正雀工場から陸送され、神戸線全面開通まで40両(8両×5編成)の車両が走り続けた。
派生系列として神戸線大窓車の8200系が2両編成2本、京都線仕様の8300系が8両編成5本、6両編成6本、2両編成4本在籍する。
- 8200系は1995年の阪神・淡路大震災からの阪急神戸線全線復旧によるダイヤ改正(6月12日)に運行開始。8両とつないで10両で運用するときの増結用車両として活躍。折りたたみ式座席を関西の鉄道事業者としては初めて採用した。側面の行先表示器は、阪急唯一の三色LED式である。2007年から2008年にかけて、折りたたみ席座席は廃止されて9000系同様の仕切付きロングシート座席へと改造になった。床材とつり革の交換も実施。現在、試作要素の一つであった車内のLCD装置は撤去されている。
- 京都線向けの8300系は8000系をベースに、京都線車両の慣例から東洋電機製造製の機器類を採用しており、また車体幅や全長が異なる。8300系は2002年から2007年までケイマン諸島のリース会社であるS&H Railway Co.,Ltd.に売却されリースによって使用されていた(契約満了後、阪急に買い戻された)。
仕様
製造時期によって仕様が異なる。前面は前期型が額縁タイプ、後期型がくの字タイプとなり、日よけは『鎧戸』を採用した阪急最後の形式となり、終盤に作られた車両はロールカーテンに変更された。
2015年より前照灯を順次LEDに交換し、現在は全編成の交換が完了している。
また、デビュー当初は額縁の前面に飾り帯があった(現在は撤去)。
各編成の特徴
- 8両編成の(L)はロングシート編成、(C)は神戸・宝塚側の前2両がクロスシート車である。
- ※は集電装置がシングルアームパンタグラフである。
- 斜字は主回路機器更新済み、太字はリニューアル編成。
阪急8000系
8両編成(L) | 8両編成(C) | 2両編成 | |
---|---|---|---|
初期車 | 8000 8001 8007 | 8002 8004 8005 8006 | 8030 8032 |
車番移設工事を先行 | ※8008 8020 | 8003 | 8031 |
中期車 | 8033 8034 8035 | ||
8200系 | ※8200 ※8201 | ||
後期車(8040番台) | ※8040 ※8041 ※8042 |
- 8000F〜8005Fまでは前面の飾り帯が設置されていた(いずれも全編成撤去済み)
- 8002F・8034F以外はクーラーが出力を増強し、除湿機能を備えたもの(RPU-4017)に換装されており、同時にキセもステンレス製の物に交換されている。
- 8001Fは2012年以降、8001号車の主電動機を東芝製の永久磁石同期電動機(PMSM)、制御装置を同じく東芝のIGBT素子を使用した一体型個別制御インバータに換装し、1000系向けに実用試験をしていた。2016年に8001号車を除く8001F全車が1000系同等の装置に換装され、実用試験車であった8001号車に関しては、制御ソフト更新が実施され磁励音が変化した。その後、8004Fや8002F等も正雀に入場すると同時に主電動機と制御装置を換装している。
- 8004F〜8007Fは宝塚線所属で、特急「日生エクスプレス」の運用に対応している。先頭車のアンテナは2つ装備。
- 8040番台と8200系を除くと8008Fのみ集電装置がシングルアーム式パンタグラフである。これは阪神淡路大震災で下枠交差式のパンタグラフを下枠交差式パンタの破損した他車に供出したためである。
- 8020Fは6両編成で登場し、山陽電車乗り入れや今津北線を運用していた。阪神淡路大震災に伴う事故廃車車両の補充のため、1996年に梅田方から2両目と6両目に新製車8620・8790号車を組み込んで8両編成となり、神戸線メインで活躍するようになった。2009年には8020Fの両先頭車の前面額縁高さを20mmに低減する工事が行われ、車番の位置が前面貫通扉下部から左側運転席の窓下に変更された(8031F、8003Fと同様)。その後、8000Fに施工された額縁高さ40mmの改造が決定版となり、額縁の改造は神戸線所属の額縁タイプ全編成に施工された(中間封じ込めの車両を除く)。
- 8200系および8040番台は設計変更が行われた。集電装置がシングルアーム式に変更された他、日除けはアルミ製の鎧戸からロールカーテンに変更され、LED表示器を装備する。また、前面の車番は電照式となっている。
- 製造時期によって歯車比が異なり、8000F〜8003Fは16:85(5.31)、8004F〜8008F・8020Fと8030F〜8035Fは18:96(5.33)、8200系と8040番台は16:98(6.13)であり、走行音に違いが見られる。
−8000Fは登場30周年を記念し、「Classic 8000」に特別装飾された。Hマークの設置、前面の飾り帯設置、旧社章が追加されている。その後、8004Fにも同様の装飾がされた。
−8000Fが検査を受ける影響で2020年より8002Fに装飾車両が変更された。現在も原型クーラー、神戸線最後のクロスシート車両として活躍している。
- 8008Fからリニューアルが行われているが、座席および化粧板・床材の変更、ロールカーテンへの変更、LCDの設置が行われている程度であり7000系以前のように天井・荷棚・乗降扉は現形のまま、ドアエンジンに関してもそのまま。一方でクロスシートで竣工した車両についてはリニューアルに際しロングシート化改造が行われた。しかし、8004FのみLCD設置なし。
- 8000Fはリニューアル完了後の2021年10月に「Memorial 8000」として特別装飾が行われ、前面にも「H」マークが追加された(側面の社紋は現行デザインのまま)。この前面の「H」マークはボツ案となったものの一つ。
−8004Fも同様にリニューアル後の2023年9月に「Memorial 8000」になった。8000Fと違い、ロゴの左下、右上の三角形の色がラインカラーのオレンジに変更されている。
8300系
8両編成 | 6両編成 | 2両編成 | |
---|---|---|---|
初期車 | 8300 8301 8302 | 8310 8311 8312 | 8330 8331 |
中期車 | 8303 | 8313 8314 | 8332 8333 |
後期車 | 8304 ※8315 |
- 歯車比は全車両が16:84(5.25)。駆動装置はTD継手であり、WN継手の8000系とは異なるが、2018年ごろよりボルスタレス台車装備車を対象にWN継手への換装(Mc8300-5・Mc8400-5・M8900-5・M8800-5。IGBT-VVVF更新車はハイフンの後は4となる)が行われている。
- 8300F・8301F・8310F・8330Fは東洋初期GTO-VVVFで登場した。磁励音は広島電鉄3800形・3900形・3950形に似ている。
- 8300Fと8301Fは更新前、構造の都合で自動放送装置の設置が不可能だったため、堺筋線乗り入れ時も車掌による肉声放送を行なっていた。
- 8302F・8311F・8331F以降の編成のVVVFは東洋後期GTO-VVVFで登場し、磁励音が京阪7000系に近くなった。また、前面の飾り帯が廃止され、既存の編成も撤去。
- 1993年に増備された8303Fからは前面が後部にくの字に折れたスタイルとなった。また、前面の表示幕が縦に大きくなった。
- 1994年以降増備の8304F・8313F・8314F・8315F・8332F・8333Fの台車はモノリンク式ボルスタレス台車である。
- 8304F・8315Fは前面の車番が電照式となっている。
- 8304Fは8両編成で登場し、後に8904・8984号車を抜かれた上で7326Fと組んで8連で活躍している。8315FとはLED表示器を装備しないことと、日除けがアルミ鎧戸である点で異なる。
- 8315Fは1995年に6両編成で落成。集電装置はシングルアーム式に変更され、扉上部にLED式の車内案内表示器を設置し、日除けもアルミ製の鎧戸から巻き上げ式カーテンに変更された。後に先述の8304Fの8904・8984号車を組み込んで8連化されている。このため、現在も中間の2両のみ日除けが鎧戸になっている。
- 2014年に8315Fが、主電動機と制御装置を1300系と同等のものに換装され、2015年に運用復帰。その後、8302Fが同様の改造を施工され、2017年に運用復帰した。この換装は他編成にも逐次行われている。
−8300Fは登場30周年を記念し、「Classic 8300」として特別装飾がされた。
- 2022年、8300F・8301Fが上記の機器換装に加え、ワイド液晶式車内案内表示器と自動放送装置の新設、種別・行先表示機の幕式からフルカラーLEDへのリニューアルを施され、2023年に運用復帰した。2023年には8311Fも同様の工事を施行している。
−8300Fも8000F、8004Fと同様に2023年4月、「Memorial 8000」の特別装飾がされた。
運用
阪急8000系
8両固定編成は単独で使われることがほとんど。まれに2両編成とつないで10両で運用される(神戸本線の通勤特急運用のみ)。2両固定編成は7000系の6両編成とつないで、8両編成として他の8両と共通運用を組んでいる。検査などで2両編成が車両不足の時は、通勤特急の増結運用や神戸本線の特急の増結運用に入ることもある。
神戸本線の特急運用から普通運用、宝塚本線の日生エクスプレスから普通運用に使われ、西宮車庫所属編成は今津北線から神戸本線へ乗り入れる準急・臨時急行運用にも使われる。平井車庫所属編成の2両固定編成は、2組を繋いでの箕面線運用も多い。
8040番台は長らくの間宝塚線の10両運用に使われていたが、8040F+8041Fは2015年より箕面線の普通列車に充当されるようになっていたが、その後、7024Fと連結し8連を組むようになる。また8042Fは2019年に神戸線へ転属し、7000系7001Fと8両編成を組んでいる。
阪急8200系
登場時から10両編成の増結用である。そのため、運用が平日朝ラッシュ時に限られる。過去には通勤急行や特急の増結に使われていたが、現在は通勤特急のみ。稀に乗務員訓練で使われることも。
阪急8300系
8両固定編成は単独で使われることがほとんど。2022年12月16日までは、朝方ラッシュ時の快速急行(現在の準特急)に2両編成の7300系とつないで10両で運用されることもあった。2両固定編成は8300系の6両編成とつないで、8連で運用している。6両固定編成は同じ8300系2両、または他形式の7300系2両とつないで8両編成として他の8両と共通運用を組む。
特急運用は9300系メインであるが、特急運用から普通運用まできちんとこなしている。OsakaMetro堺筋線にも入線可能。嵐山線は行楽期や臨時、6300系の代走で入線することがある(6両編成での運用)。
編成表
8000系主体の8両基本編成
←大阪梅田 |
| |||||||||
8000番台 | ||||||||||
MT構成 | Mc1 | M1 | T1 | T2 | T2 | T1 | M1 | Mc2 | 所属路線 | 備考 |
8000F | 8000 | 8600 | 8550 | 8750 | 8780 | 8650 | 8500 | 8100 | 神戸線 | |
8001F | 8001 | 8601 | 8551 | 8751 | 8781 | 8651 | 8501 | 8101 | 神戸線 | |
8002F | 8002 | 8602 | 8552 | 8752 | 8782 | 8652 | 8502 | 8102 | 神戸線 | |
8003F | 8003 | 8603 | 8553 | 8753 | 8783 | 8653 | 8503 | 8103 | 神戸線 | |
8004F | 8004 | 8604 | 8554 | 8754 | 8784 | 8654 | 8504 | 8104 | 宝塚線 | |
8005F | 8005 | 8605 | 8555 | 8755 | 8785 | 8655 | 8505 | 8105 | 宝塚線 | |
8006F | 8006 | 8606 | 8556 | 8756 | 8786 | 8656 | 8506 | 8106 | 宝塚線 | |
8007F | 8007 | 8607 | 8557 | 8757 | 8787 | 8657 | 8507 | 8107 | 宝塚線 | |
8008F | 8008 | 8608 | 8558 | 8758 | 8788 | 8658 | 8508 | 8108 | 神戸線 | |
8020番台 | ||||||||||
MT構成 | Mc1 | M1 | T1 | T2 | T1 | T2 | M1 | Mc2 | 所属路線 | 備考 |
8020F | 8020 | 8620 | 8570 | 8770 | 8730 | 8670 | 8520 | 8120 | 神戸線 | |
8030番台 | ||||||||||
MT構成 | Mc1 | Tc | Mc | M' | T | T | M1 | Mc2 | 所属路線 | 備考 |
8032F | 8032 | 8152c | c7003 | 7503 | 7563 | 7573 | 7603 | 7103 | 神戸線 | |
8040番台 | ||||||||||
MT構成 | Mc1 | Tc | Mc1 | Tc | Mc | T | T | Mc2 | 所属路線 | 備考 |
8040F | 8040 | 8190c | c8041 | 8091c | c7024 | 7654 | 7684 | 7124 | 宝塚線 | |
Mc1 | Tc | Mc | M' | T | T | M1 | Mc2 | |||
8042F | 8042 | 8192c | c7001 | 7501 | 7561 | 7571 | 7601 | 7101 | 神戸線 |
8000系・8200系2両増結編成
←大阪梅田 |
| |||
8030番台 | ||||
MT構成 | Mc1 | Tc | 所属路線 | 備考 |
8030F | 8030 | 8150 | 宝塚線 | |
8031F | 8031 | 8032 | 神戸線 | |
8033F | 8033 | 8153 | 神戸線 | |
8034F | 8034 | 8154 | 宝塚線 | |
8035F | 8035 | 8155 | 神戸線 | |
8200番台 | ||||
MT構成 | Mc1 | Tc | 所属路線 | 備考 |
8200F | 8200 | 8250 | 神戸線 | |
8201F | 8201 | 8251 | 神戸線 |
8300系主体の8両基本編成
※全線京都線所属
|
| ||||||||
8000番台 | |||||||||
MT構成 | Mc1 | M1 | T1 | T2 | T2 | T1 | M1 | Mc2 | 備考 |
8300F | 8300 | 8900 | 8850 | 8950 | 8980 | 8870 | 8800 | 8400 | |
8301F | 8301 | 8901 | 8851 | 8951 | 8981 | 8871 | 8801 | 8401 | |
8302F | 8302 | 8902 | 8852 | 8952 | 8982 | 8872 | 8802 | 8402 | |
8303F | 8303 | 8903 | 8853 | 8953 | 8983 | 8873 | 8803 | 8403 | |
8315F | 8315 | 8904 | 8865 | 8965 | 8984 | 8885 | 8815 | 8415 | |
8330番台 | |||||||||
MT構成 | Mc1 | Tc | Mc1 | T1 | T2 | T1 | M1 | Mc2 | 備考 |
8330F | 8330 | 8450c | c8310 | 8860 | 8960 | 8880 | 8810 | 8410 | |
8331F | 8331 | 8451c | c8312 | 8862 | 8962 | 8882 | 8812 | 8412 | |
8332F | 8332 | 8452c | c8313 | 8863 | 8963 | 8883 | 8813 | 8413 | |
8333F | 8333 | 8453c | c8314 | 8864 | 8964 | 8884 | 8814 | 8414 | |
7320番台 | |||||||||
MT構成 | Mc1 | Tc | Mc1 | T1 | T2 | T1 | M1 | Mc2 | 備考 |
7326F | 7326 | 7456c | c8304 | 8854 | 8954 | 8874 | 8804 | 8404 | |
7325F | 7325 | 7955c | c8311 | 8861 | 8961 | 8881 | 8811 | 8411 |