少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ
概要
『「GUNSLINGER GIRL』(ガンスリンガー・ガール)は、相田裕の漫画作品である。略称はガンスリ。
「義体」と呼ばれる少女達をメインに据えたガンアクション漫画。
元々は氏のサークルで「GUN SLINGER GIRL」として発表されていたが、後に商業誌へと移った。
アスキー・メディアワークスの雑誌『月刊コミック電撃大王』で、2002年5月から2012年9月まで連載し、単行本は全15巻。
2003年と2008年の二回にわたりアニメ化された。
また第一期のアニメに合わせてゲーム化もしている。
ストーリー
架空の現代イタリアを中心としたヨーロッパが、物語の舞台である。
イタリア国内では、地域間や思想の対立で暴力と暗殺の連鎖が続いていた。
そんな折に、首相府は公益法人「社会福祉公社」を設立し、障害者の子供を保護と支援に乗り出す。
しかし、それは表向きの理由だった。公社の実体は身障者の子供を機械の体に改造し、「薬」による洗脳(条件付け)を施して政府の汚れた仕事をさせる諜報機関であった。
「義体」と名付けられた少女達は、担当官とのチームを組みイタリア政府を脅かす者達と戦っていく。「条件付け」によって過去の記憶を失い短命となった少女達は、偽物の感情と使命感を与えられ、公社による訓練と命令を忠実にこなし、殺戮に手を染めていく。しかし、銃を持ち担当官の命令に従って戦えるのが、彼女達にとって何より幸福なことなのである。
特徴
対テロ機関「社会福祉公社」と、テロリスト集団「五共和国派」との戦いを軸に、話が展開している。
作中に登場する「義体」は全て少女であり、公社の任務以外では至って普通の女の子として描かれている。また担当官が「義体」の少女をどう扱うかは、それぞれの思惑で大きく異なっている。彼らの関係は、本作の大きな見どころとなっている。
「義体」少女達の萌え要素が盛り込まれてはいるが、話の内容はかなりシリアスである。
「義体」達は任務中に殺されるか、「薬」の副作用でボロボロになって死ぬかという運命にあるため、絶えず死と向き合う展開になっている。
また、子供を殺人の道具として改造・洗脳するというテーマは賛否両論であり、人を選ぶという声もある。
現代イタリアが抱える社会問題が、フィクションを取り混ぜつつも深く掘り下げられていて、作品に奥行きを持たせている。
銃器は多数登場し、ヨーロッパ製のものが使用されている(SIG・ファブリックナショナルなど)。
用語
義体
戦闘用に改造された子供たちのこと。脳を除く肉体の八割が人工物。
異常な怪力と鋭い感覚を持っており、多少の被弾やケガではビクともしない。
薬の副作用により身体や記憶に障害を抱えていて短命である。
元は事件や病気で行き場をなくした子供が、素材として使用されている。
作中では全員少女である。
担当官
義体とパートナーを組み、共に任務をこなしたり、戦闘訓練、メンタルケアなど行う社会福祉公社の者。
作中では全て成人男性が務めている。
条件付け
「薬」による記憶の書き換え。
これにより義体達は担当官に盲目的に従うようになる。
フラテッロ
ラテン語で兄妹という意味。
義体と担当官のコンビを指す。
登場人物
アニメ
第1期
2003年10月から2004年2月まで全13話が放送された。
主題歌
オープニングテーマ
「THE LIGHT BEFORE WE LAND」
作曲 - デルガドス(The Delgados)
エンディングテーマ
「DOPO IL SOGNO 〜夢のあとに〜」
作詞 - うえのけいこ / 作曲 - 佐橋俊彦 / 編曲 - 佐橋俊彦、三村奈々恵 / 歌 - op.(オーパス)
挿入歌
「Woke From Dreaming」(第7話)
作曲 - デルガドス(The Delgados)
各話リスト
話数 | サブタイトル |
---|---|
第1話 | 兄妹- fratello - |
第2話 | 天体観測- orione - |
第3話 | 少年- ragazzo - |
第4話 | 人形- bambola - |
第5話 | 約束- promessa - |
第6話 | 報酬- gelato - |
第7話 | 守護- protezione - |
第8話 | 御伽噺- Il Principe del regno della pasta - |
第9話 | 彼岸花- Lycoris radiata Herb - |
第10話 | 熱病- amare - |
第11話 | 恋慕- febbre alta - |
第12話 | 共生- simbiosi - |
第13話 | 流星- stella cadente - |
第2期
2008年1月より『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』(ガンスリンガー・ガール イル・テアトリーノ)のタイトルで全13話+OVA2話が制作された。
主題歌
オープニングテーマ
「たった1つの想い」
作詞・作曲 - KOKIA / 編曲 - KOKIAn'S / 歌 - KOKIA
エンディングテーマ
「doll」
作詞・作曲 - 麻枝准 / 編曲 - ANANT-GARDE EYES / 歌 - Lia、多田葵
挿入歌
「スカボロー・フェア」(第8話)
作詞・作曲 - イングランド民謡 / 編曲 - 冬野竜彦 / 歌 - 多田葵
「human」(第13話)
作詞・作曲 - 麻枝准 / 編曲 - ANANT-GARDE EYES / 歌 - Lia
各話リスト
話数 | サブタイトル |
---|---|
第1話 | 二人の距離 兄妹 |
第2話 | ピノッキオ |
第3話 | シミュラクラ |
第4話 | アンジェリカの復帰 |
第5話 | 泡沫と追憶 |
第6話 | チベタンテリアの引退 |
第7話 | カテリーナ 復讐の円環 |
第8話 | クラエスの一日 |
第9話 | 賢い蛇 純真な鳩 |
第10話 | 善意の花 |
第11話 | 芽生える感情 |
第12話 | 戦う人形 |
第13話 | そしてピノッキオは人間に |
OVA 1 | ヴェネツィアの光、心の闇 |
OVA 2 | ファンタズマ |
アニメ版の評価
第1期のアニメは、重厚な世界観や悲劇性の中で懸命に生きる少女達の物語などが当時のアニメファンに高い評価を得て、大人気を博した。
その人気によって第2期が製作されたのだが……この第2期は逆に非常に出来が悪く、ファンからは「第2期などなかった」と言われてしまっている。
第2期では原作者である相田の全面監修が入ったのだが、その結果がこの体たらくだったため、原作者は原作読めなどと批判の声が上がることになった。
原因は、2期放送当時は悲劇性の強い1期生(ヘンリエッタ・リコなど)の話よりも2期生のペトルーシュカの様な元気で前向きな作風に代わっていたことである。
第1期で評価された悲劇的な雰囲気は、原作初期の雰囲気であるが、この陰湿な雰囲気に耐えられなくなったのか、ペトラが出てくるには原作はカラリと明るい雰囲気で話が進んでいた。
よって原作者が介入した第2期では原作通りの明るい雰囲気となった……のだが、そもそも第1期ファンの求めていたのは当然、第1期で描かれた悲劇的な雰囲気だった訳で、そのミスマッチによる不幸が、第2期が低評価を受けた最大の原因である。
また、雰囲気云々以前に第2期はあまり出来が良くないのも事実ではある。
第2期では原作者が脚本を全話担当(3話までは共同名義)したのだが、そもそも原作者はアニメの専門家ではなく、このせいで話のテンポがかなり悪化するなど、随所に質の低下が見られる。
加えて、これも監修の結果か、はたまた製作がマッドハウスからアートランドに変更されたためか、演出面なども出来が良くない(制作会社の変更に原作者がどこまで絡んでいたかは不明だが)。
そのため、第二期のみを単独で見た視聴者からの評価も、残念ながら決して高いとは言えない。
そもそも、本作のアニメ化は第1期が2003~2004年、第2期が2008年と、かなり昔の作品である。そして当時は「原作はあくまで原案。アニメはアニメで好き勝手作る」と言う作品が多く、「原作と全く違うが出来の良いアニメ」をファンが当然であると考える土壌があった。
それはそれで少なくない名作も生まれはしたものの、原作となる作品が尊重されず軽視されていたと言うのは否めず、その風潮に憤りを抱いていた原作者も少なくない。
そうした憤りと怒りから生まれた不幸な事故が、アニメ第2期であったと言えるかもしれない。
※本作の境遇と相通じる所があるアニメ
- 魔法騎士レイアース(1994~1995年):「原作者がアニメの出来に激怒して制作現場に介入するようになり、第2期から脚本を担当した」と言う作品の先達。こちらは原作者の素質ゆえかアニメ会社側の尽力ゆえか、最後まで好評のまま完走した。
- 鋼の錬金術師(2003年~2004年、2009年~2010年):本作第一期の頃に「ダークな雰囲気に原作改変されたアニメ」が好評を博し、本作第二期のすぐ後に「原作通りに描かれたアニメ」が放送されたと言う、極めて境遇の近い作品。だがこちらは、原作者は協力までに留まっており、やはり好評のまま完走した。
関連イラスト
評価タグ
ガンスリ50users入り ガンスリ100users入り ガンスリ500users入り ガンスリ1000users入り