概要
大阪環状線改造プロジェクトの一環として、老朽化が進んでいる201系・103系の代替を目的に開発され、2016年度より運行を開始している通勤形車両。編成記号はLS。
鉄道ピクトリアルでの特集によると正真正銘大阪環状線のために作られた車両と言え、同線では前述の4扉車系列のほか、大和路線から221系、阪和線から223系・225系といった3扉車系列が直通していることから、ラッシュ時の運用に担当する車両を一定期間3扉車に統一して影響が無いか実験し、その実験で得られたデータを元に3扉車が投入されることとなった。
三大都市圏のうち、20m3扉車が投入されたのは中京圏を除くと戦前・戦中が最後であり、戦後は輸送力増強のため一貫して72系・101系といった20m4扉車が投入されたため、JR西日本が慎重になるのも当然であろう。
車両自体は225系・227系と極力共通化しつつロングシートとしたうえで、新機軸も採用したものになっている。
特徴
外見
車体はステンレス製(先頭部のみ鋼製)で、形状としては227系や225系2次車とほぼ同一。カラーリングは在来車両のイメージを踏襲したオレンジ色主体のデザインとなっており、女性専用車両となる4号車は戸袋部分が濃いピンク色になっている。8両固定編成で増解結運用には入らないため、電気連結器や先頭部転落防止幌、貫通幌は搭載していない。
車外表示機は225系2次車や227系と同じタイプのフルカラーLEDのものが設置されている。行き先に応じ、種別部分の路線記号とラインカラーを変えられる。
車内
車内はロングシートであり、混雑が激しい8号車(外回り方向先頭車両。大阪駅基準で京橋方向)は戸袋部分の座席を無くして乗降口付近スペースを拡大し、壁部分にクッション材を備えている。
車内表示機は液晶式のものが採用されているが、321系・225系とは配置が変わり全乗降扉上と、車両連結部分に2面ずつ(片方はWESTビジョン)、合計16面が1両に搭載され、4か国語表示に対応する。
自動放送装置も搭載。日本語と英語の2か国語で放送する。
バリアフリーに関しては、これまで1編成あたり2ヶ所だった車椅子やベビーカー向けの多目的スペースが各車両に付くようになった。
主要機器・性能
制御装置はWPC16と呼称され、主回路部はJR西日本初となるフルSiC素子VVVFインバータを搭載。
補助電源部はIGBT素子2レベルPWMインバータ(三相交流440V・75kVA)。他車の補助電源部と並列運転を行うことで、故障時に編成全体での冗長性を確保する設計となっている。
主電動機はこれまたJR西日本初採用となる全閉式かご形三相誘導電動機のWMT107(1時間定格出力220kW)で、駆動方式はWNドライブ。
225系や321系等と同様、0.5M方式の全車電動車構成となっている。
集電装置はWPS28E(シングルアーム型。バネ上昇式・空気下降式で、大容量集電カーボン摺板、上昇検知装置、電磁カギ外し装置を備える)を搭載。
クモハ323・モハ323(2・5・8号車)に集電装置が搭載されており、225系と同様の組成形態をとる。また、機器の二重系化の観点から2号車は2基設置している。
運転台は227系と同様のグラスコックピット構造で、EB-N装置の搭載によってマスコン・ブレーキハンドルの取っ手部が変化している。
起動加速度は321系等の2.5km/h/sから2.8km/hに向上した一方、営業最高速度は100km/hに抑えられているため、ヨーダンパとアンチローリング装置は準備工事に留められている。
運用・増備
2016年6月30日に第1編成が落成し、同年12月24日より営業運転を開始した。当初計画では21本投入とされていたが、最終的には1本追加増備されて8両編成22本176両体制となった。名目上は大阪環状線・桜島線専用車であるため、それまで103系・201系が担っていた大和路線直通の快速運用は、吹田総合車両所奈良支所の221系に変更されている。
なお、追加投入されたLS22編成は登場順としては14本目となっており、他の若番編成よりも随分と早生まれとなっている。ちなみに最後に登場したのは2019年3月27日に出場したLS21編成であり、同年6月8日より大阪環状線系統の列車は(特急・不定期列車を除いて)全列車が3ドア車に統一されている。
また、LS15編成にUSJの新エリア『スーパー・ニンテンドー・ワールド』をモチーフにしたラッピングを施工、2021年1月27日に運行を開始した。USJのラッピング車両は2019年5月に引退した201系以来で、スーパーマリオシリーズでの全面ラッピング車は本車両が国内初となる。