概要
関西地区の東海道本線・山陽本線(JR京都線・JR神戸線)に残存していた201系・205系(共に他線区へ転用)の置き換え、および207系に続く増備車として、JR西日本が2005年から導入した通勤形電車である。
分割併合には対応せず、登場当初は片町線(学研都市線)松井山手〜木津間の運用が無かった(2010年に当該区間のホーム延長が行われ分割併合が解消)。
従来の系列から大きく設計が見直されており、以降のJR西日本における新系列車両の基礎となった。
因みに新製時、近畿車輛が保有する駐車場に321系の車体鋼体(一部床下機器付き&カラー帯無し)が大量に留め置かれていた時期がある。
実車登場前のイメージイラストは塗装変更される前の207系と同様の青帯で描かれていたが、JR福知山線脱線事故の影響等により現在のカラーリングとなった。
どうでもいいが、前面のデザインからか207系のリニューアル車と見間違える人がいるとかいないとか(ライトの違いや行き先表示のLED、側面ビードの有無など違いはあるのでよく見れば判別できるが遠目で見たら見間違うのも無理はない)。
車両区分について
JR西日本では本形式以降に新製された普通列車用の車両形式区分の第2位(十の位)の数字が「0 - 3, 5, 6」を普通列車用車両のカテゴリとして使用しているため、事実上は一般形電車となるが、本形式は通勤形電車に分類されているため、本項では通勤形電車とする。
営業最高速度 | 120km/h |
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起動加速度 | 2.5km/h/s、2.8km/h/s(6N使用時) |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)、4.2km/h/s(非常) |
歯車比 | 15:98=1:6.53 |
駆動方式 | 平行カルダン駆動・歯車継手方式 |
モータ制御方式 | 2レベル電圧形PWMインバータによるVVVF・ベクトル制御 |
制動方式 | 電気指令式直通空気ブレーキ・台車単位制御 |
台車 | 軸梁式軸箱支持ボルスタレス台車 |
製造所 | 近畿車輛 |
車両設計
構体は223系5000番台の構造を基本とし、側窓が開けられるようになっている。側構体などの接合部・骨組みの構築には新たにレーザー溶接が適用され、強度や見映えの向上が図られている。
新しい設計思想として、「0.5Mシステム」が採り入れられた。
片側が動力台車の全電動車構成を採り、機器類の冗長性向上・車両全体の低重心化・構体の共通設計によるコストダウンを図る。これに当たって徹底した床下機器配置の共通化が行われており、全車両に配電箱・ブレーキ制御装置・空気溜め・蓄電池を搭載するほか、付随車であるサハ321形にも制御装置などの後付が可能となっている。
電動車のうち集電装置・空気圧縮機を搭載する車両は321形、搭載しない車両は320形に区分される。
0.5Mシステムの採用に伴い、主要機器は新設計となる。
223系1000番代以降から引き続き、補助電源装置一体型の車両制御装置を搭載。形式はWPC15形で、東洋電機製造・三菱電機・東芝・日立製作所の4社が製造を担当。
VVVFインバータは207系2000番台までの個別制御ではなく、台車単位での制御となり、また2レベルインバータとしたことで回路構成を簡素化。補助電源部は編成内全ての装置が並列運転を行い、故障が発生した場合は健全な装置が出力を高めて電力を賄う方式となっている。また、従来外付けであったトランスリアクトル・断流器・高速度遮断器・フィルタコンデンサ充電用抵抗器も全て一体の箱に収め、床下機器配置の簡素化を図った。
主電動機は新形式のWMT106形。制御装置にセンサレスベクトル制御方式を採用したことで、速度センサが廃止され整備性が向上したほか、これにより捻出されたスペースを磁気回路増強と冷却性能強化に充て、在来線電車では最大級の出力となる1時間定格出力270kWを実現した。この大出力化と電空協調制御の改良により、回生ブレーキ負担率を上げ省エネルギー化を図っている。
主電動機・歯車装置・継手の改良と床材の変更により、高速走行時の騒音が大幅に抑制されている。
1両に動力台車と付随台車が混在することから、ブレーキシステムは従来の1両単位から、台車単位での圧力制御に変更されており、供給空気溜めとブレーキ制御装置を各台車近傍に配置している。
ブレーキ制御装置は動力台車用・付随台車用で共通で、従来外付けであった滑走防止弁装置の機能が追加されている。また、軸単位でのブレーキ制御に対応する準備工事がなされている。
デジタル制御伝送システムを初採用し、高性能化と配線の簡略化が図られた。ただし信頼性の観点から、従来の指令線も併設されている。
各車両の配電箱に伝送端末装置を搭載し、主回路やブレーキシステム構成と合わせて1両単位での柔軟な編成組成に対応している。
座席は利用実態に合わせ、扉間6人掛けに変更。
天井部には「WESTビジョン」と呼ばれる液晶モニターが配置されており、左側は案内表示、右側は広告となっている。
化粧板や荷物棚、ドアボタンなどの内装部材が新設計され、225系や227系にも引き継がれている。鴨居部や天井部などは極力凹凸が目立たない形状とされ、従来車からの見映えの向上を図った。
編成・車両形式
0.5Mシステムを採用するが、本系列は7両固定編成であり解放による影響が少ないため、1両付随車がある。
- クモハ321形
- 東行き(京都・木津寄り)の先頭車両(7号車)。制御装置・蓄電池・パンタグラフを搭載。
- クモハ320形
- 西行き(西明石・新三田寄り)の先頭車両(1号車)。制御装置・蓄電池を搭載。
- モハ321形
- 2号車・5号車。制御装置・空気圧縮機・パンタグラフを搭載。
- モハ320形
- 4号車・6号車。制御装置・蓄電池を搭載。
- サハ321形
- 3号車。蓄電池を搭載。
←京都・木津 / 西明石・新三田→
7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
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クモハ321 | モハ320 | モハ321 | モハ320 | サハ321 | モハ321 | クモハ320 |
所属・運用
7両編成39本すべてが網干総合車両所に所属し、明石支所に配置されている。基本的に207系と共通運用。
- 東海道・山陽本線(琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線):野洲-加古川
- 日中は京都-西明石間で運用。草津・加古川乗り入れは平日朝ラッシュ、野洲乗り入れは毎日最終電車のみ。普通電車として運転される。
- 福知山線(JR宝塚線):尼崎-篠山口
- 日中は尼崎-新三田間で運用。篠山口乗り入れは朝晩のみ。基本的に大阪で折り返すか、JR京都線およびJR東西線・学研都市線と直通。普通電車・快速として運転される。
- JR東西線・片町線(学研都市線)・関西本線(大和路線):尼崎-京橋-木津-奈良
- JR神戸線・JR宝塚線と直通運転するほか、学研都市線内のみの運用もあり。普通電車・区間快速・快速として運転される。早朝・深夜に限り木津-奈良間も走る。